事業承継や後継者問題、経営資源の強化など、組織再編は企業にとって重要な課題となっています。
そこで本記事では組織再編に焦点を当てて、定義や目的、必要とされる場面を詳しく解説します。
あわせて、会社法に定められている組織再編の種類と成功させるためのポイントについても解説するので、市場での生き残りを目指すための参考にしてください。
組織再編とは
はじめに、組織再編の定義と目的、用いられる主な方法を解説します。
組織再編の定義と目的
組織再編とは、企業内の組織編成を見直し、企業の利益拡大や業務効率の向上、将来の後継者対策を目的として行われます。
似たような言葉に「組織変更」という方法がありますが、法的な意味や目的は全く異なります。
組織変更は1つの企業が株式会社から合同会社にするなど、組織形態を変更するのに対し、組織再編は複数の企業間で行われることが一般的です。
会社法が定める組織再編の方法
組織再編は、会社法第5編に以下の5つの方法が明確に定められています。
合併 (吸収合併・新設合併) | 会社分割 (分割型分割・新設分割) | 株式交換 |
株式移転 | 事業譲渡 | ー |
上記の方法は1社で完結するものではなく、複数の企業間で行われることが組織再編の大きな特徴です。
参考:e-GOV 法令検索|会社法(平成十七年法律第八十六号)
組織再編が必要とされる代表的な場面
組織再編の目的は企業によって異なりますが、主に以下のような場面で用いられることが多いです。
- 経営資源の一元化によるコスト削減
- 事業承継や相続対策
- 財務体質の改善
- 事業単位での売却(M&A)や分社・ホールディングス化
上記以外にも組織再編の目的はさまざまですが、目的を達成するために最適な方法を選択、及び実行をします。
組織再編の方法ごとのメリット・デメリット
組織再編には5つの方法があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。
方法ごとに解説するので、目的達成に向けてどの方法が最適か判断する際の参考にしてください。
合併のメリット・デメリット
複数の企業を一体化させて経営資源を集約し、競争を高める合併の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 経営資源の統合によるシナジー効果
- 市場のシェア拡大と競争力の強化
- コスト削減と効率化
- 企業イメージの向上 など
【デメリット】
- 企業文化や経営方針の統合が難しい
- 人員の増加によるコスト負担
- 組織拡大により責任の所在が不明瞭になる
- 財務面のリスクが生じる など
なお、合併には吸収合併と新設合併の2つの手法があります。詳しくは関連記事をご覧ください。
関連記事:【事例付き】M&Aにおける合併とは?合併の種類とメリット・デメリットを詳しく解説
会社分割のメリット・デメリット
企業が持つ事業の一部、またはすべてを他の企業へ承継させる会社分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 企業の部門ごとの切り離しが可能
- 契約関係を包括的に承継できる
- 債権者の同意が不要
- 責任や業務管理の明確化が図れる など
【デメリット】
- 財務手続きが複雑
- 株主の2/3以上の同意(特別決議)が必要
- 許認可関係は新たに申請し直す可能性がある
- 会社の肥大化により意思統一が難しくなる
会社分割には「吸収分割」と「新設分割」の2つがあり、さらに「分割型分割」と「分社型分割」に分けられます。詳しくは関連記事をご覧ください。
関連記事:会社分割とは?新設分割、吸収分割の概要、メリット・デメリットなどを解説
関連記事:分割型分割と分社型分割の違いと覚え方をわかりやすく解説
株式交換のメリット・デメリット
対象となる企業の株式を取得し、その対価として自社株式を対象企業の既存株主へ交付する株式交換のメリット・デメリットは、以下の点が挙げられます。
【メリット】
- 売却側企業の株主が買収側企業の株式を取得できる
- 資金を抑えることが可能
- 親会社の経営に関与することが可能
- 要件を満たすことで課税されない場合がある
- 売却側企業を別法人として存続させることができる
【デメリット】
- 買収側企業の株主構成が変化する
- 株価が下落する可能性がある
- 手続きが煩雑で日数がかかる
- 簿外債務が発覚するリスクがある
関連記事では、株式交換の詳細や実施の手順などが掲載されているので、ぜひ参考にしてください。
株式移転のメリット・デメリット
自社株式の全てを新設会社へ譲渡する株式移転のメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 経営統合に伴うリスクを最小限にすることができる
- コスト負担の軽減
- 100%子会社化の実現が可能
【デメリット】
- 手続きが複雑化しやすい
- 買い手企業側の株主構成が変わる
- 株価が下落する可能性がある
事業譲渡のメリット・デメリット
企業が保有する事業の一部、または全てを他企業へ譲渡する事業譲渡のメリット・デメリットは以下のとおりです。
【メリット】
- 会社名を維持したまま新規事業を行うことができる
- 優秀な従業員の雇用を維持できる
- 売りたい事業のみを譲渡できる
- 後継者不足の解消
【デメリット】
- 個別で契約を結び直す必要がある
- 税負担の必要がある
- 一定期間は同じ事業が行えなくなる
なお、関連記事では事業譲渡に関する情報を詳しく掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:事業譲渡とは?会社分割との違いやメリットやデメリットを解説
組織再編を成功させるポイント
組織再編を成功させるためには、以下のポイントを抑えて行うことが大切です。
- 明確な目的と戦略の設定
- 従業員やステークホルダーへの十分な説明
- 綿密なスケジュール設定と管理
- 入念なアフターフォロー
各項目を詳しく解説します。
明確な目的と戦略の設定
組織再編をする根拠となる目的や戦略が不明瞭だった場合、再編方法の選択を誤ったり、ステークホルダーからの理解が得られなかったりする可能性があります。
また、戦略が不明瞭な状態で再編を目指すと社内で混乱が生じ、求めていたシナジー効果を得られない可能性もあります。
「なぜ組織再編をするのか」「組織再編によって何を実現したいのか」など、目的と戦略を明確にすることが重要です。
従業員やステークホルダーへの十分な説明
従業員やステークホルダーへの十分な説明も、組織再編においては重要です。
従業員んへの説明が不十分だった場合、「雇用に影響があるのではないか」「会社の業績が不安定なのか」といった不信感につながります。
また、株主や金融機関といったステークホルダーへの説明が不足した場合、信頼の失墜によって株価へ影響を与えるリスクがあります。
このようなリスクを回避するためにも組織再編をする目的、再編後に目指すビジョンなどを明確にし、十分な説明をしましょう。
綿密なスケジュール設定と管理
組織再編は、法務や税務、人事・会計など複数の部門が関わります。
そのため、スケジュールが曖昧だと社内の混乱を招くリスクが生じます。
また、手続きには期日や順序が法的に定められているため、綿密なスケジュールに則った組織再編の実行が求められます。
そのため、組織再編に関わる全ての企業が決まった段階で入念な交渉を行い、ゴールから逆算してしっかりとスケジュールを計画するようにしましょう。
入念なアフターフォロー
組織再編では、再編後のアフターフォローも不可欠な要素です。
方法によっても内容は異なりますが、組織再編をした場合、企業文化や人事評価に変化が起きるケースは少なくありません。
そのため、再編後に業務に支障が出たり、従業員が流出したりする可能性があります。
また、このような事態になるとステークホルダーからの信用を損なうリスクも生じます。
事業再編を行う際は、業務プロセスや人事評価の見直しを含めた入念なPMI(統合プロセス)の計画と実行が成功させるための重要なポイントです。
関連記事:【PMIの重要性】M&Aを成功させるためのポイントを解説
組織再編をする際の注意点
組織再編では、成功させるためのポイント以外にも注意していただきたい点があります。
各種手続きに対する適切な対応
組織再編は、会社法に定められているだけでなく、税法にも関係しています。
そのため、各種手続きにおいて適切な対応をしなかったり手続きが漏れたりした場合、法的なトラブルに発展するリスクがあります。
これらの手続きは専門的な知識やノウハウを必要とするため、組織再編の検討段階で専門家からアドバイスを受けることがおすすめです。
従業員に対する平等な人事評価の設定
組織再編を行うことで、人事評価制度が見直されるケースが少なくありません。
特に複数の企業が関わる場合、異なる人事評価制度を統合することで従業員が不満を抱く可能性が考えられます。
新たな人事制度に不満を感じ「平等ではない」といった感情が生まれると、人材が流出するリスクが高まります。
新たな人事評価制度を設ける際は、全ての従業員に対して平等に評価できる仕組みづくりが必要です。
まとめ
組織再編は、事業承継や後継者問題、経営資源の強化など、企業が抱えるさまざまな課題を解決するために有効な方法です。
しかし、複数の方法から最適な方法を選び、複雑な手続きを進めるためには専門的な知識や豊富な経験に基づいたノウハウが必要です。
「組織再編を検討しているけどどの方法がよいかわからない」「自社とマッチする企業が見つからない」といったお悩みのある方は、まずはM&Aベストパートナーズへご相談ください。
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