M&Aが一般的な手法となってきた近年、「M&A詐欺」という問題が発生するケースが少なくありません。
M&Aは企業の成長戦略や経営不振となった企業の立て直し、後継者不足の解消などさまざまなメリットがありますが、判断を間違えると思わぬ損失を招く可能性があり注意が必要です。
そこで本記事では、M&A詐欺に焦点を当てて、事例も交えながら詳しく解説します。
「M&Aを検討しているけど、詐欺が怖くて踏み出せない」「トラブルに巻き込まれることなくM&Aを行いたい」と考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
M&A詐欺の基本的な仕組み
M&Aにおける詐欺は特定の立場だけに起こるものではなく、売り手企業や買い手企業・M&A仲介会社など全ての関係者に発生する可能性があります。
詐欺の典型的な方法として、以下のようなことが挙げられます。
- 買収を装って企業の資産を奪い、負債や保証だけを元経営者に残して買い手が消える
- 架空の買収話で手付金や情報を騙し取る
上記以外にもさまざまな手口がありますが、巻き込まれた場合は大きな損害を被る可能性があるので注意が必要です。
M&A詐欺の代表的な手口
被害にあってしまったときは大きな損害を被る可能性のあるM&A詐欺は、M&A取引に関係するさまざまな立場に向けて行われています。
なかでも、買い手側が行う代表的な詐欺の手口をご紹介します。
買い手による詐欺
買い手側によるM&A詐欺の代表的な手口は、以下のようなケースが挙げられます。
- 資金抜き取り型:
買収後、企業の銀行口座や現金を親会社や第三者に送金させ、資金を持ち逃げ。会社は運転資金を失い、最終的に倒産に追い込まれる。 - 個人保証解除の未履行:
「経営者の個人保証を外す」と約束しながら、買収後も保証を外さず、資産だけを抜き取って連絡を絶つ。元経営者は金融機関から保証債務の請求を受ける。 - 役員報酬や借入金の踏み倒し:
新経営陣が高額な役員報酬を受け取り、従業員や第三者からの借入金も返済せずに失踪する。 - 幽霊買収者・架空買収話:
実体のない買収者が現れ、高額な仲介手数料やアドバイザリー費用だけを騙し取って消える。
このように、M&Aを行う目的を逆手に取った巧妙な手口で詐欺が行われています。
そのため、M&Aを行うときは弱みに漬け込まれないよう、十分な事前準備が必要です。
実際に起きたM&A詐欺の事例
M&Aによって多くの被害を出し、新聞にも取り上げられた「ルシアンホールディングス事件」をご紹介します。
この事件が表面化したのは2024年5月、朝日新聞社によって報じられました。
投資会社であるルシアンホールディングスは多数の中小企業を買収し、少なくとも37社が被害にあい、倒産した企業の負債総額は30億円以上になると報じられています。
詐欺の手口として、以下のようなことが挙げられます。
- 現金はあるが経営が厳しい状態の企業を買収
- 買収後、さまざまな理由で現金を振り込ませ、「振り込まれたお金は後日返金する」と約束する
- 実際には振り込まれた資金は抜き取られていた
- 個人保証解除に関する約束も反故にしていた
振り込んだ資金が戻らなかった企業の経営はさらに悪化し、給与や取引先への支払い、金融機関への返済などに苦しみ、最終的には事業の存続が困難な状態になりました。
また、個人保証の解除を反故にされた経営者達は、企業の売却後も債務の弁済責任に追われ、苦しい状況へと追い込まれています。
買収された多くの企業が営業停止や倒産に追い込まれ、多数の従業員が仕事を失ったこの事件は、M&A仲介会社も加担していたとされています。
M&A仲介会社にはM&Aの成功時に成功報酬を受け取るケースが多く、ルシアンホールディングスへ買収を強く促したり、締結を急がせたりしていた会社もあったようです。
事件の背景には、ルシアンホールディングスによる資金の抜き取りや約束の反故だけでなく、M&A仲介会社の仕組みそのものも大きく影響していると考えられています。
参考:産経新聞|中小企業狙う「吸血型M&A」資金吸い上げ連絡絶つ手口横行 各地で被害、警察も情報収集
M&A詐欺に遭わないためのチェックポイント
資金の抜き取りや約束の反故など、M&Aにおける詐欺事件の代表格ともいえるルシアンホールホールディングス事件は、多くの経営者や従業員・関連する人々に被害を与え苦しい状況に追い込みました。
このようなM&A詐欺に遭わないためには、リスクを把握し対策を講じることが重要です。
M&A詐欺に遭わないためのチェックポイントを解説するので、これからM&Aをしようと検討されている方はぜひ参考にしてください。
M&A仲介会社やアドバイザーの実績・評価を確認
ルシアンホールディングス事件では、買い手企業だけでなく、関連するM&A仲介会社も大きく関係していました。
しかし、M&Aは専門的な知識やノウハウが求められ、M&A仲介会社やアドバイザーなどからのアドバイスは不可欠といえます。
そのため、M&A仲介会社やアドバイザーを探す際は、実績や評価を確認し、根拠となる明確なものがある会社へ依頼をしましょう。
関連記事:M&Aアドバイザリーの業務とは?企業の成長をサポートする重要なポジション
契約内容の詳細なチェックと明文化
M&Aでは、プロセスごとにさまざまな契約書を取り交わします。
この契約書に不備や曖昧な表現などがあった場合、取引締結後トラブルに発展するリスクが高まります。
譲渡金額の支払い方法や個人債務の解除・条件に違約したときの対処方法などが具体的に明記されているか、入念に確認することが重要です。
契約書には専門用語が含まれていることも多く、内容も正しいか否か判断が難しいものが多いです。
契約書の確認時は、信頼できるM&A仲介会社やアドバイザーにも確認してもらうことをおすすめします。
やりとりの記録をすべて残す
M&Aを締結するまでの期間、相手企業との交渉はもちろん、M&A仲介会社やアドバイザー・株主などさまざまな関係者と話し合うことになります。
この話し合いでの内容を議事録として記録しておかなかった場合、後々「言った・言わない」などトラブルの原因になります。
最悪の場合、自社の不利益になるようなことでも「もしかしたら本当に約束していたかも」と思い込んでしまい、条件を受け入れてしまう可能性もあるでしょう。
交渉はもちろん、関係者との話し合いをするときは口約束は行わず、話した内容も必ず公式な議事録として書き留めておくようにしましょう。
また、万が一被害にあった場合の証拠にできるように、会話を録音しておくこともおすすめです。
買収後の資金管理体制を透明化
M&Aの詐欺は、ルシアンホールディングス事件のように取引締結後に行われることもあります。
買収完了後も資金が適切に管理されているか適宜確認を行い、少しでも不審な点があれば早急に専門家や関係機関へ相談をするようにしてください。
M&A詐欺が疑われる際の対応
M&Aは専門的な知識やノウハウを必要とするため、詐欺が行われていても気づかないケースは少なくありません。
そこで、「もしかしたら騙されているかも」と詐欺の疑いを感じた時の対応方法をご紹介します。
早期に専門家へ相談
少しでも詐欺の疑いが出た場合は、早い段階で専門家へ相談することでトラブルに巻き込まれるリスクを低減することができます。
M&Aにおける詐欺は、以下のような専門家に相談するとよいでしょう。
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- M&Aアドバイザー
- ファイナンシャルアドバイザー
上記に挙げた専門家はM&Aに関する知見が深く、契約書を読み解いて法律の抜け穴がないかも見極めることができます。
知識と豊富な経験を持つ専門家に相談することで、安全にM&Aの交渉を進めることができるでしょう。
証拠の保全と記録管理
前述したように、M&Aの詐欺に合わないためには、議事録や会話の録音などの証拠を残しておくことが重要です。
しかし、ただ記録をしただけでは被害に合わないとは言い切ることができません。
記録にアクセスできる人間を限定したり、出し入れの管理記録を残したりと、徹底した記録保全を行いましょう。
取引の一時停止・契約内容の再確認
M&Aの取引では、秘密保持契約(NDA)や基本合意書(LOI)、最終的な締結のための本契約書など、さまざまな契約書を取り交わします。
しかし、デューデリジェンスの結果によって契約内容が変更になるケースは少なくありません。
契約内容が変更になった部分を見逃してしまうと、不利な条件になっていることに気づかないまま最終合意を締結してしまうリスクが高くなります。
契約内容の変更の有無に関わらず、交渉期間中は定期的に契約内容の再確認を行うようにしましょう。
また、契約内容の変更が自社にとって古りな内容だったときは、取引の交渉自体を一時的にストップさせることも詐欺被害を予防するうえでは重要です。
関連記事:【専門家監修】NDA(秘密保持契約)がM&Aにおいて果たす役割
関連記事:LOI(基本合意書)とは?法的効力やMOU(基本合意契約書)との違いについてわかりやすく解説
関係機関・信用調査会社への相談
少しでも詐欺と疑われることが発覚したときは、早急に関係機関や信用調査会社へ相談をしてください。
弁護士や公認会計士・M&A中会社はもちろん、信用調査会社の協力によって相手企業の情報を入手することができます。
M&Aのプロセスにおいて重要なデューデリジェンスを専門としている信用調査会社なら、相手企業の財務状況や企業の透明性など、さまざまな視点から徹底的に調査をしてくれます。
入手した情報を元に、厳格な判断をすることができるでしょう。
関連記事:M&Aにおけるデューデリジェンスとは?費用や期間についてわかりやすく解説
法的措置の準備
M&A詐欺が発覚したときは、法的措置の準備を始めてください。
法的措置の準備では、加害者の細かな情報、被害の詳細(被害に遭った経緯、被害額など)、交渉時の記録などを用意します。
また、法的措置は被害発覚後できるだけ早い段階で行うことが大切です。
被害が起きてから時間が経過した場合、詐欺で得た資金や情報を隠蔽される可能性があります。
迅速に対応することで、被害に遭った資金を取り戻せる可能性が高まります。
まとめ
M&Aが活発に行われている昨今、弱みを逆手にとった詐欺が増加傾向にあり、被害に遭ってしまうと自社や資金を失うだけでなく、従業員が仕事を無くしたり、債務を負い続けることにもつながります。
詐欺被害に遭わないためには、相手企業の厳格な調査や、信頼できるM&A仲介会社の選定が重要です。
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