M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
売上の低迷や後継者不足などの経営課題が山積し、「会社をたたみたい」と考える経営者も少なくありません。
しかし、雇用している従業員や取引先への影響を考えると一歩を踏み出せず躊躇してしまうこともあるでしょう。
本記事では、会社をたたむにはどういった方法があるのか、判断のタイミングや必要な手続き、従業員に迷惑をかけないための方法やポイントなどもあわせてご紹介します。
目次
会社をたたむにはいくつかの選択肢があり、それぞれ必要な手続きや影響が異なります。代表的な4つの方法を解説しましょう。
経営が経済的に行き詰まり、債務を支払う能力を失った場合に取る法的手続きが倒産です。
法律上、倒産は以下の3つの形態に分類され、裁判所に対して申立を行うことで法的手続きが開始されます。
破産:会社の資産を換価し債権者に公平に分配する手続き
民事再生:会社が事業を継続しながら再建を図るために債務を調整する手続き
会社更生:会社が再建計画を策定し、裁判所の監督下で再建を進める手続き
上記のうち、破産は会社を消滅させるために行われる処理であるのに対し、民事再生および会社更生は会社の存続および再建を目的としています。
また、民事再生は中小企業が対象となるケースが多いのに対し、会社更生は主に大企業を対象としている違いもあります。
自主廃業または廃業とは、経営者の判断で会社を自主的にたたむ方法です。
倒産は経済的な理由によって選択されることが多いですが、自主廃業の場合は後継者不足や経営者自身の健康問題などが理由となることもあります。
また、自主廃業は倒産とは異なり法的な制約が少なく、裁判所への申立なども不要のため迅速に進めることができます。
解散とは会社を終了させるための法的手続きです。
倒産と混同されることもありますが、解散は財務状況が深刻化する前に会社の清算手続きを行うという違いがあります。
M&Aとは、他の企業に買収されるか、他の企業と合併することによって会社をたたむ方法です。
破産や自主廃業、解散は従業員の解雇が前提となりますが、M&Aは事業の継続を図りながら会社をたたむ方法のため、従業員の雇用を維持しつつ新たな経営者の下で事業を継続することができます。
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会社をたたむ判断は経営者にとって重要な決断であり、さまざまな要因が影響します。
具体的にどういったタイミングで会社をたたむケースが多いのかをご紹介しましょう。
経営者の健康不安や高齢化は会社をたたむ判断を下す一因となり得ます。
特に中小企業では経営者個人が培ってきた信頼関係によって事業運営が成り立っているケースも多く、健康状態が悪化すると会社経営に直接影響を及ぼすことがあります。
そのため、経営者が健康上の理由で引退を考える場合や後継者がいない場合には、会社をたたむタイミングとなり得るのです。
赤字経営が続き債務超過に陥るなど、会社の財務状況が悪化している場合には事業の継続が難しいと判断されることもあります。
また、仮に債務超過に陥っていない段階であっても、売上の減少や利益率の低下が改善されないと会社をたたむことが選択肢となり得るでしょう。
長期間にわたって経営不振が続くと従業員や取引先への影響も大きくなるため、早いうちから判断を下す経営者も少なくありません。
市場環境の急激な変化も会社をたたむ判断を下す要因となることがあります。
たとえば、技術革新や消費者のニーズの変化により、従来のビジネスモデルが沿わなくなったり受け入れられなくなることもあるでしょう。
また、新たな競合企業の出現や規制の変更により、事業の継続が困難になることも考えられます。
このような環境の変化に適応できないと経営が急激に悪化していき、自主廃業や解散、M&Aなどに踏み切るケースも出てきます。
法的な問題や経済的な要因も会社をたたむ引き金になることがあります。
法的な問題には訴訟やコンプライアンス違反、規制の強化などが考えられ、これらの問題が深刻化すると事業の継続が困難になる可能性が高まります。
経済的な要因としては、資金繰りの悪化や資金調達の問題が挙げられます。
会社をたたむ際にはさまざまな費用が発生します。主な内訳と費用の相場を解説しましょう。
会社を解散する際には法務局での解散登記と清算人の就任登記が必要です。
この際、登録免許税として合計3万9,000円(解散登記3万円、清算人の就任登記9,000円)を納付する必要があります。
会社の解散や清算に関する公告は、官報に掲載することが法的に義務付けられています。
官報公告費用は、解散公告と清算結了公告の両方で1回あたり3万円から4万円程度が必要です。
会社をたたむ際には税務関連の手続きも必要です。解散時や清算時の法人税、消費税、地方税などの申告・納付が求められます。
会社の解散や清算の手続きには法務や税務の専門知識が必要であるため、弁護士や税理士に依頼するケースが一般的です。
弁護士への依頼費用は事案の複雑さや対応範囲により異なりますが、数十万円から数百万円程度が相場です。
また、税理士への依頼費用も手続きの内容や会社の規模に応じて変動します。
債権者への債務や取引先への未払い費用などがある場合には、それらも精算しなければなりません。
また、賃貸借契約やリース契約の解約に伴う違約金や、設備・備品の処分費用なども発生する場合があります。
破産や自主廃業、解散などによって会社をたたむ際には、従業員の解雇が必要となります。
この場合、労働基準法に基づき解雇予告を30日以上前に行うか、30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇予告手当は解雇される従業員の賃金を基準に計算されるため、解雇人数や賃金水準によっても費用が大きく変動します。
解雇した従業員に対して再就職支援も行う場合には、再就職支援サービスを利用するための費用が発生します。
関連記事:M&Aにおける注意点とは?買い手・売り手の両視点から解説【中小企業向け】
企業は従業員を雇用している立場にあることから、会社をたたむことを決断した際には責任をもって適切に対処しなければなりません。
具体的にどういった対応が求められるのか、必要な手続きなども含めて解説しましょう。
会社をたたむことを決定したときには早急に従業員や関係者に通知することが重要です。
従業員は解雇を余儀なくされることから、次の仕事を探すための時間も確保しなければなりません。
通知する際には会社の状況や解散の理由、今後のスケジュールを明確に説明し、従業員の理解を得ることが求められます。
従業員の解雇にあたっては、労働基準法に基づき解雇予告を30日以上前に行うか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。
また、年金事務所に対しては「被保険者資格喪失届」と「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を、さらに職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」も提出します。
このような法的手続きを漏れなく行っておかないと、従業員との間でトラブルや混乱を招くおそれもあります。
解雇した従業員の生活安定を図るためには再就職支援も求められ、企業としての社会的責任を果たすためにも重要な施策のひとつです。
具体的には再就職先の斡旋や紹介などが含まれますが、会社としてこれらのサポートが難しい場合には再就職支援サービスを利用することも検討されます。
会社をたたむスケジュールはもちろんのこと、従業員の役割や責任を具体的に伝えることも重要です。
定期的に進捗状況を共有することで、従業員の疑問に対応し不安や混乱の解消につながります。
会社をたたむ際には法的手続きや関係者への通知など、さまざまな手続きが必要です。
会社をたたむことを決定をしたら、従業員や取引先、金融機関などの利害関係者に向けて早い段階で通知することが何よりも大切です。
これにより関係者が事前に対応策を講じることができ、混乱を最小限に抑えられる可能性があります。
従業員に対しては、解雇予告や再就職支援の手配も含めて詳細に説明することも求められます。
会社をたたむ際には、株主総会を開催し特別決議を行わなければならない場合もあります。
特別決議を採択する際には、会社法に基づき株主総数の過半数を保有する株主の出席と、総議決権の3分の2以上の賛成が求められます。
また、株主総会では解散の理由や今後の手続きについて株主に説明し理解を得ることが求められ、反対意見が多いと経営者の独断によって会社をたたむことはできません。
株主総会での決議が採択され会社をたたむことが合意できたら、2週間以内に法務局に対して解散登記と清算人の登記を行います。
解散登記の申請にあたっては以下の書類が必要です。
次に、「法的手続きと義務の遵守」でもご紹介した通り、年金事務所へ「被保険者資格喪失届」と「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」、職業安定所(ハローワーク)へ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。
また、会社の拠点を構える自治体や管轄の税務署に対しても解散の届け出を行います。
会社が解散した場合、その事実を官報に公告として掲載する必要があります。
解散公告は利害関係者に対して会社の解散を周知するための重要な手続きであり、公告の日から2ヶ月以上経過した後に清算手続きを進めることができます。
解散の後に会社の資産や債務の整理が完了したら清算結了登記を行います。
清算結了登記とは会社の清算が完了したことを公式に通知する手続きであり、これにより会社は法的に消滅することになります。
清算結了登記に必要な書類は以下の通りです。
会社の清算が完了したら最終的な税務申告を行います。清算中に発生した収益や費用についても適切に申告し、税務署に納税しなければなりません。
関連記事:M&A買収された後の会社はどうなる?運営のポイントや給料事情
M&Aによって会社をたたむケースが増えていますが、それはなぜなのでしょうか。M&Aを選択するメリットやおすすめの理由をご紹介します。
M&Aによって会社が他の企業に買収された場合、長年築き上げてきたブランドやノウハウが無駄にならず、事業を継続できる点が大きなメリットです。
買い手企業は売り手企業の既存のビジネスモデルや顧客基盤を引き継ぐことで安定した事業運営を続けられるため、従業員や取引先にとっても安心感があります。
M&Aが成功すると従業員の雇用が維持される可能性も高まります。
解散や倒産の場合、多くの従業員が職を失うリスクがありますが、M&Aでは買い手企業が従業員を引き継ぐケースも多く雇用の安定が図られます。
従業員にとっては再就職の不安を抱える心配がなく、それまで培ってきたスキルや能力を活かしながら仕事を続けられるでしょう。
会社を解散する際には法的手続きや清算手続きなどが伴い、経営者には大きな負担がかかります。
M&Aによって他の企業に事業を譲渡することができれば、必要な手続きの多くを買い手企業に引き継ぐことも可能なため経営者の負担が大幅に軽減されます。
中小企業の経営者は個人保証によって会社の債務を負っていることが少なくありません。
M&Aによって会社が買収されると買い手企業が債務を引き継ぐことになるため、経営者の個人保証が解消される可能性があります。
経営者の個人資産が失われる心配がなく、経済的な安定につながるでしょう。
中小企業を中心に後継者不足に頭を抱える経営者も多く、この問題を解消できないと将来的に会社そのものの存続が難しくなることがあります。
M&Aによって他の企業に事業を引き継ぐことができれば、後継者問題も解決され経営者にとっても安心です。
中小企業の後継者不足は深刻な問題であることから、これを解消するために税制優遇措置が講じられています。
たとえば、特定の条件を満たす場合、株式譲渡益や事業譲渡益に対する税金が減額または免除されることがあります。
また、買い手企業がM&Aによって設備等を取得した場合、10%(資本金3,000万円超の中小企業者は7%)相当額の税額控除または全額即時償却が受けられる制度もスタートしました。
会社をたたむ方法としては、一般的に倒産や自主廃業、解散などが多いですが、近年ではM&Aによる事業承継も有力な選択肢として注目されています。
いずれの方法もさまざまな書類の作成や法的手続きを経る必要があるため、自社だけで対応が難しいケースが多いでしょう。
また、そもそも会社をたたむタイミングや方法が分からず、最初の一歩が踏み出せない経営者も少なくありません。
このようなお悩みを抱えている場合には、M&Aのサポートを行っている専門家や会社に相談してみましょう。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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