2024年6月14日

食品業界のM&Aのメリットやデメリットを解説

MABPマガジン編集部

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食はヒトの健康を支えるために不可欠な要素であり、それと同時に人生を豊かにしてくれるものでもあります。

安全で美味しい食品を提供するために、食品メーカーではさまざまな研究開発が行われていますが、競争環境の激化や後継者不足などによりM&Aを行う企業も見られるようになりました。

食品業界において企業がM&Aを行うことで、どういったメリットがあるのでしょうか。

また、デメリットや課題として考えられるポイントもご紹介します。

食品業界のM&Aとは

食品業界の企業は、主に原料・素材を提供するメーカーと、それらを加工し提供する企業に分類されます。

原料や素材の一例としては穀物や畜産物、水産物などが代表的であり、加工食品では惣菜類やパン、缶詰などが主な製品として挙げられます。

食品業界のM&Aとは、上記のような素材型のメーカーや食品加工メーカーを対象に行われる吸収合併や事業承継などのことを指します。

食品業界のM&Aでは、素材型のメーカー同士、あるいは素材型と食品加工メーカーが手を組むケースもあれば、流通事業者や小売事業者といった異業種と手を組むケースもあります。

食品業界におけるM&Aの動向

現在の日本ではさまざまな業種においてM&Aの需要が拡大していますが、ほかの業種と比較した場合に食品業界のM&Aにはどういった傾向が見られるのでしょうか。

市場の多様性と複雑さに対応するためのM&A

時代とともに食の嗜好やトレンドは変化し続けており、消費者のニーズにマッチする製品を開発できないと食品業界で生き残っていくことはできません。

自社で培ってきた食品製造の技術やノウハウだけでは消費者が求める製品の開発が難しいケースもあり、このような場合にM&Aを行い他社と手を組む企業もあります。

後継者不足によるM&Aの需要増

食品業界では後継者不足に悩む企業も少なくありません。

特に地元で長年にわたって経営してきた中小企業の中には、人手不足の影響で新たな人材を採用できず、次世代の経営陣を育成することが難しい企業もあります。

このような問題を解決するための手段として、M&Aによって他社に経営権を引き継ぎ会社を存続させるケースも増えています。

グローバル展開を見据えた事業拡大のためのM&A

経済のグローバル化が進んだ現在、従来のビジネスモデルのままでは会社が生き残っていくことが難しい場合もあります。

企業が持続的な成長を続けていくためにはグローバル展開も見据える必要があり、そのためのノウハウが豊富な企業とM&Aを行うケースも少なくありません。

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

食品業界でM&Aを行うメリット

M&Aと聞くと経営者の中にはネガティブなイメージを抱く方も少なくありません。

しかし、実際にはさまざまな経営課題の解決につながるケースも多いのです。

具体的にどういったメリットがあるのか、5つのポイントに絞って解説しましょう。

経済的な恩恵

中小の食品メーカーの場合、経営基盤が盤石とは限らず、倒産や廃業のリスクが高まっている企業も存在します。

M&Aによって大手企業の傘下に入ることができれば豊富な経営資源を活用でき、経営危機を回避できる可能性があるでしょう。

また、会社そのものを譲渡することで利益も得られ、それを借金の返済や経営者の生活資金などに充てることもできます。

市場シェアの拡大

経営規模の小さい食品メーカーの場合、地元では一定のシェアを確保できているものの、それ以外の地域では売上が伸び悩んでいるケースも少なくありません。

新たな地域に進出しシェアを獲得することは簡単ではなく時間も要しますが、M&Aによって他社と手を組むことで、新たな地域への進出も容易になりシェア拡大の足がかりになる可能性があります。

技術・ノウハウの獲得

食品製造には高度な技術とノウハウが求められ、他社には真似できない独自の技術をもった食品メーカーも少なくありません。

消費者のニーズやトレンドに応えるために新製品を開発したいと考えたとき、自社の技術やノウハウだけでは実現が難しいこともあるでしょう。

そこで、M&Aによって他社と手を組むことにより、その企業が長年にわたって蓄積してきた技術やノウハウを活かし質の高い製品を開発できます。

ブランド価値の維持・向上

M&Aはブランド力や知名度の向上につながる可能性もあります。

中小企業の場合、地元では高いブランド力があってもそれ以外の地域では知名度が低く、新規エリアへの進出に苦労することも多いでしょう。

しかし、M&Aによって大手メーカーの傘下に入ることができれば、大手の知名度を活かしつつ自社製品やブランドの価値を高められる可能性があります。

事業の継続

後継者不足に悩む中小メーカーにとって、事業の継続はもっとも優先すべき経営課題といえるでしょう。

M&Aによって資本力の大きいメーカーへ経営を譲渡できれば、事業を継続しながら従業員の雇用も守れる可能性が高まります。

関連記事:M&Aを失敗する要因と失敗を防ぐための方法と対策

食品業界でM&Aを行うデメリット・課題

食品業界でのM&Aは経営においてさまざまなメリットがありますが、その一方でデメリットや課題が存在することも事実です。

M&Aを行う前に押さえておきたい重要なポイントを3つご紹介します。

統合の難しさ

食品業界に限ったことではありませんが、企業によって社風や文化は大きく異なるケースもあります。

このような企業がM&Aを行った場合、経営統合した後に従業員同士の軋轢が生じたり、新しいやり方についていけず離職者が増えることも考えられるでしょう。

最悪の場合、製品の品質や信頼性の低下を招き、取引先や顧客離れを引き起こし経営そのものが悪化する可能性もあります。

このような事態を防ぐためには、M&Aに踏み切る前にお互いの企業文化や経営方針、将来的なビジョンなどを十分にすり合わせたうえで慎重に交渉を進めていかなければなりません。

法的なリスク

食品の製造にあたっては食品衛生法や食品表示保、食品安全基本法などさまざまな法律を遵守しなければなりません。

食品業界のM&Aにあたっては、相手先企業が各種法令を遵守しているかをしっかりと調査しておく必要があるでしょう。

十分な調査を行わないままM&Aを進めた結果、買収後に法令違反が発覚し、M&Aを行った結果自社のブランド力が毀損されるリスクもあります。

また、M&Aが成立した後、帳簿に記載されていない簿外債務や取引先との不利な契約などが発覚するケースもあることから、事前にこれらの法的リスクを調査しておくことも大切です。

競争環境の変化

ビジネスの業界はつねに流動的であり、M&Aを行ったからといってその後の安泰が約束されているわけではありません。

特に食品業界はニーズの多様化やライバル企業の台頭などによって競争環境が変化しやすいことから、統合後にどういった経営戦略をとるのか、将来的なビジョンを共有したうえでM&Aの交渉を進めていく必要があります。

関連記事:M&Aにおけるシナジー効果とは?種類や成功事例、フレームワークを紹介

食品業界のM&Aの成功事例

競争の激しい食品業界において、M&Aに成功し順調な経営を行っている企業の事例をご紹介します。

株式会社ユーグレナ

ユーグレナはミドリムシを原料としたサプリメントや乳酸菌飲料などを製造する健康食品メーカーです。

2005年に創業した比較的新しい企業ですが、青汁でおなじみの「キューサイ」を買収するなど10社以上の積極的なM&Aによって事業規模を拡大させてきました。

ユーグレナが創業した背景には、将来懸念されている世界的な食糧不足を解決したいという願いがありました。

そのための手段として食用ミドリムシに着目し、世界で初めて大量培養に成功しています。

ユーグレナはSDGsというワードが一般的になる以前から「サステナブル」を大きな経営理念として掲げ、現在までその姿勢は一貫しています。

近年では食品事業に加えてコスメやスキンケアアイテム、バイオ燃料事業なども積極的に手掛けるようになり、順調に売上と利益を拡大。

創業から積極的なM&Aと研究開発、設備投資を行ってきた結果赤字が続いていましたが、2025年を目処に営業利益の連結黒字化を目標としています。

食品業界のM&Aについてのまとめ

消費者の嗜好が多様化し、競争環境も激化する食品業界において、企業が生き残っていくためにはM&Aが有力な選択肢となります。

ただし、M&Aを行ったからといってその後安泰が約束されているわけではないため、将来的なビジョンや経営戦略を入念に考えたうえで経営統合を進めていくことが大切です。

また、M&Aにあたっては簿外債務の発覚や取引先との不利な契約条項が発覚するケースも珍しくないため、このような法的リスクもしっかりと確認しておきましょう。

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