
リフォームやリノベーションのニーズ拡大に伴い、異業種企業がリフォーム業界へ新規参入を目指したり、事業拡大に向けたM&Aが活発化しています。
しかし、M&Aと聞くと経営者の方にとってはネガティブなイメージが根強く、不安に感じられることも少なくありません。
そこで本記事では、リフォーム業界におけるM&Aの最新動向や特徴、会社を譲渡するうえで注意すべき点などをご紹介します。
目次
リフォーム業界におけるM&Aの動向
建設に関連する業種のなかでも、リフォーム事業は一定規模以下であれば許認可が不要なため、新規参入がしやすいという特徴があります。
一方で、古くからリフォーム事業を運営してきた企業の中には、深刻な人手不足によって若手人材が確保できていない企業も少なくありません。
その結果として、以下のような目的を目指したM&Aが活発化しています。
- リフォーム事業によって売上・収益の拡大を見込む異業種企業
- 人手不足や後継者不足に悩む既存のリフォーム業者との利害
また、長引く不況の影響から新築住宅の注文が伸び悩む一方で、老朽化した住宅のリフォーム需要は安定的に推移していることもM&Aのニーズを押し上げる一因になっています。
関連記事:リフォーム事業の現状と今後・市場規模と需要から動向とビジネスチャンスを探る
リフォーム業界の今後の展望
新規参入のしやすいリフォーム業界の今後の展望について、詳しく解説します。
今後需要が高まる見込み
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年は工事需要が低下し、市場規模は前年の5.8兆円から5.5兆円へ減少しました。
しかし、2021年は5.9兆円、2022年は6.2兆円と2年連続で回復しています。
住宅設備の中でも特に水廻りは定期的な交換が必要なため、内装と比較しても工事単価が高い傾向があります。
また、頻発している自然災害の影響もあり、耐震性向上を目的としたリフォームの依頼も少なくありません。
以上のことから、今後もリフォームの需要は高まっていくと予想されます。
参考:リフォーム産業新聞
リノベーションニーズの増加
現在、多くの自治体が空き家が急増傾向にあり、有効活用するためのリノベーションが注目されています。
建物の持ち主がDIYでリノベーションを行うケースも少なくありませんが、満足度の高い仕上がりにするに、リフォーム会社に依頼するケースが多くなっています。
このようなニーズは、今後ますます高まっていくと予想されます。
テレワークの普及による住環境への見直し
働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、これまでのようなオフィス出社型の働き方からテレワークへと切り替える企業が増加しました。
自宅で仕事をする機会が増えることで、より集中して仕事に取り組めるような間取りや設計に変更したいと考える方が増加しています。
そのため、テレワークに対応できる住宅リフォームの需要は、今後も増加していくと考えられます。
デジタル技術を応用したリフォーム業界の発展
従来のリフォーム営業といえば、「膨大な量のカタログや資料を持参して対面で営業を行う」といった方法が一般的でした。
しかし、今後もデジタル技術やオンラインを活用した営業手法が拡大していき、時間や場所を問わず自由度の高いリフォーム営業が可能になると期待されています。
たとえば、WebサイトやSNSを活用した集客はもちろん、ARやVRを活用したリフォームイメージの提案などが考えられます。
そのため、ITやデジタル技術に強みをもつ企業とM&Aを行うリフォーム会社が増加することも考えられます。
関連記事:M&Aの目的を買い手・売り手の両視点から解説!課題やポイントも紹介
リフォーム業界のM&Aの特徴と戦略
ほかの業界・業種と比較した場合、リフォーム業界のM&Aにはどういった特徴が見られるのか、戦略も含めて解説します。
M&Aによる業界再編
住宅リフォーム業界では、関連業種の企業が建設・内装業者とM&Aを行い、新たに参入してくるケースが少なくありません。
従来のリフォーム業界では、建設業者や内装業者が中心となって運営する企業が多くありました。
しかし、近年では異業種からの参入も増え、業界再編が進んでいます。
人材獲得と技術の取り込み
異業種から参入がしやすいことがメリットのリフォーム業界ですが、ライバル企業も多いため淘汰されるリスクがあります。
しかし、M&Aによってリフォーム技術とノウハウを持つ人材を獲得できれば、生き残り競争に残れる可能性が高まります。
そのため、リフォーム事業に関する知見と実績がない企業が新規参入する場合、買収先企業にどのような人材が揃っているのか、十分なリサーチが行われています。
また、技術力や信頼性の高い企業から優先的に交渉が進められる傾向があります。
地域密着型企業の買収
住宅リフォームを依頼するエンドユーザーの多くは、信頼できる業者に依頼したいと考えます。
そのため、新規参入事業者と比較すると地域に根ざした経営を行っているリフォーム会社が選ばれやすい傾向があります。
このような理由から、異業種や関連業種からリフォーム業界へ参入する場合、会社の規模が小さくても実績が豊富で信頼性の高い施工会社をパートナーに選び、M&Aを行うケースが多いです。
関連記事:M&Aにおける経営統合と合併の違いとは?統合後はPMIが重要?
リフォーム会社が押さえておきたいM&A後も抱える課題
M&Aは、リフォーム会社が抱えるさまざまな経営課題を解決する有効な手段です。
しかし、M&Aの実施後も課題に対して継続的に行わなければならないことがあります。
職人の採用と育成
リフォーム会社にとって、高度な技術をもった職人は不可欠な存在です。
M&Aによって企業が統合されることによって、一次的に人手不足を解消できるかもしれません。
しかし、事業規模が大きくなるにつれて、再び人手不足に陥る可能性が考えられます。
そのため、M&Aを行った後も継続的に職人の採用や育成に取り組んでいくことが必要です。
DX化による業務の効率化
人手不足は少子高齢化によって深刻化し、日本全体の構造的な問題といえます。
そのため、今後劇的に人手不足が解消できる可能性は低く、限られた人員の中で生産性を維持・向上することが求められています。
この課題の解決策として、IT技術の導入によるDX化の推進が必要です。
- 従来のような対面による営業からオンラインを活用した営業手法に切り替える
- 会計ソフトなどを活用しながらバックオフィス業務を自動化する
など、業務の効率化は急務といえるでしょう。
リフォーム業界のM&A事例
最後に、リフォーム業界においてM&Aを成功させた企業の事例をご紹介します。
株式会社MIMA
株式会社MIMAは、大阪府八尾市で住宅設備会社として創業した企業でした。
リフォームのニーズが高まったことを受けリフォーム事業に進出し、地元八尾市においてトップを走り続ける規模にまで成長しました。
ところが、近年になって深刻な人手不足や後継者不足に頭を悩ませるようになり、自社を存続させていくための手段としてM&Aの提案を受け入れることを決意。
当初は先代の社長から強い反対があったり、社長である美馬氏本人もM&Aには良いイメージがなかったといいます。
しかし、M&Aによって両社のシナジーを発揮し成長していくことにこだわり、候補先企業との面談においてもその旨を伝えたところ、理解を示してもらえ、資金面でのバックアップを得ることにも成功しました。
多くの経営課題が山積していた状況からM&Aによって経営環境が一転し、今では攻めの経営に転換し積極的な事業展開を行っています。
まとめ
リフォーム事業は建設業界の中でも、将来的なニーズの拡大が期待できる分野です。
また異業種からの新規参入もしやすいことから、M&Aの注目度が高まっています。
ただし、M&Aをしただけですべての経営課題が即座に解決できるとも限らず、競合が多い業界だからこそ戦略的な事業展開が求められます。
M&Aによって一時的に経営課題が改善できたとしても、それを継続していくためには職人の採用や教育を続けていくことが重要です。
そのため、M&Aを検討する際は専門のアドバイザーへすることで、一貫してサポートを受けることができます。
M&Aベストパートナーズでは、経営改善に向けた最適な方法のご提案はもちろん、M&A締結後の統合プロセスもサポートしています。
経営状況の改善や後継者問題、新規市場への参入に向けてM&Aを検討されている経営者の方は、ぜひ一度M&Aベストパートナーズへ悩みをお聞かせください。