企業活動でよく耳にする「業務提携」ですが、その実態や意味を正確に理解している人は少ないでしょう。
業務提携を行うことで企業にどのようなメリットがあるのか知りたい人もいるかもしれません。
本記事では、業務提携とはどのようなものなのか、概要や類語、メリットなどについて解説します。
また、具体的な事例も紹介するため、業務提携について気になる人は参考にしてください。
業務提携とは
まずは、業務提携とはどのようなものなのかを確認しましょう。
ここでは、業務提携の概要や締結するとどうなるのか解説します。
業務提携の概要
業務提携とは、複数の企業が経営リソースを共有し、共同で事業活動を進める取り組みのことです。
業務提携を進めることで、企業は競争力を強化したり、事業領域を拡大したりすることが期待されます。
業務提携の形態は多岐にわたり、目的や関わる企業との関係性によって異なります。技術の共有、マーケティング協力、共同製造などが業務提携の例です。
正確な目的の理解と適切な契約により、両社が大きな利益を得ることが期待されます。
業務提携を締結するとどうなる?
業務提携を締結することで、相手企業との連携が強まり、新しいビジネスのチャンスが増えます。
例えば、ある企業が別の企業と業務提携を結ぶことで、共同での新しいプロジェクトの立ち上げや、既存の事業領域を拡大できるでしょう。
さらに、業務提携によって双方のリソースや知識を共有することで、目標達成に伴うリスク・コストを最小限に抑えつつ、最大の利益を追求することが期待できます。
業務提携と混同されやすい類語について
業務提携は、似た言葉や概念が多く、混同しやすいことがあります。
これらの意味を適切に理解し区別することは、ビジネスの現場での意思疎通や戦略の立案において重要です。
ここでは、業務提携と混同されやすい「資本提携」や「業務連携」、「業務委託」、「M&A」などについて、その特徴や違いを明確に解説します。
資本提携
資本提携は、企業同士が資本を通じて関係を強化することを指します。
資本提携の特徴は、経営に大きな影響を及ぼさない範囲の他社の株を購入し、出資を通じて連携を深めることです。
この提携により、相互のビジネス展開をサポートして、情報共有の窓口を確保できます。
業務提携との違いは、資本提携では資本関係の変動や株の移動が伴う点です。これにより、連携の安定性や持続性などで差が生まれます。
業務連携
業務連携とは、複数の企業が共同で活動を進める手法のことを指します。
ただし、「業務連携」の言葉には一定の定義がなく、場合によっては業務提携も含まれるでしょう。
例えば、情報の共有や共同のプロジェクト推進など、多岐にわたる活動が業務連携に該当します。
一方、業務提携は契約や合意に基づくものが多いため、連携の内容・範囲を明確にすることが必要です。どちらの言葉を用いるにせよ、共同での活動内容や目的をしっかりと確認し合うことが大切です。
業務委託
業務委託は、自社での対応が困難な業務を外部の専門家や企業に依頼する方法です。
主に、専門的な技術・知識が求められる場合や、自社のリソースが不足している場合に採用されます。
業務委託は、発注者と受注者の間に明確な契約関係が生まれるのが特徴であり、目的は業務の遂行です。
一方、業務提携は、双方の企業が相互に補完関係となり、共同で新しい価値を生み出すことを目指します。この違いを把握することで、どちらの方法が適しているかを判断できるでしょう。
M&A
M&Aは、企業が新しい市場進出や技術獲得を目的に、他社の株を購入し親子関係を構築する戦略です。
資本提携とは、企業間が資本で結びつく点で似ていますが、M&Aはさらに経営権も移行する違いがあります。
例えば、A社が技術を持っているが市場が狭く、B社は市場が広くても技術が足りない場合、A社がB社にM&Aを実施することで、双方の弱点を補完し強固な企業を築けるでしょう。M&Aは業務提携よりも強い結びつきを持つため、より戦略的な判断が求められます。
業務提携の形態とは
企業は自らの強みを活かすために業務提携を行いますが、業務提携には、技術や生産、販売など、さまざまな形態が存在します。
そのため、どの形態が自社の状況に適しているか判断が必要です。ここでは、それぞれの主要な形態について解説します。
技術提携
技術提携とは、一方の企業が持つ技術やスキルを基に、パートナー企業が製品の開発や研究を進める協力関係を指す言葉です。
この提携によって企業は技術革新の加速や専門性の向上といった効果が得られるでしょう。
技術提携の方法は、主に特定の技術を使用する権利を持つ「ライセンス契約」と、複数の企業が共同で研究を進める「共同契約」の2つがあります。これらの提携を通じて、企業は新たな技術の取得や市場への迅速な展開が可能になるでしょう。
生産提携
生産提携は、企業が生産効率を最大化するための戦略です。
具体的には、自社の製造能力やリソースを超えた部分を他社に依頼することで、スムーズな生産・コストの削減を実現します。
この提携の形態では、「OEM」と「ODM」が主流です。OEMは、発注者の指示に従って製造業者が商品を生産する方法を指します。ODMは製造業者が独自に商品を開発・製造し、発注者がそれを自社ブランドで販売する方法です。
これらの提携を適切に活用することで、企業は市場での競争力を高めることができるでしょう。しかし、効果的に効果を出すには、提携先の選定や契約の詳細は慎重に検討する必要があります。
販売提携
販売提携は、商品の開発や供給に秀でた企業が、販売のプロフェッショナルである別企業に商品の販売を委ねる手法です。
販売提携をうまく活用できれば、各企業の得意分野を最大限に活用し、相乗効果を狙えるでしょう。
主な契約形態として、製品を直接顧客に提供する「販売店契約」、供給者と顧客が直接取引を行う「代理店契約」、特定の販売権を加盟店に与える「フランチャイズ契約」の3つが挙げられます。これにより、企業は市場での競争力を高め、より多くの顧客に製品を届けられるでしょう。
その他の形態
提携の形態は多岐にわたり、上記以外にもさまざまな提携形態が存在します。
なかでも、「共同調達」は複数の企業が共同で商品や素材を購入することで、コストを削減できることから注目されている手法です。また、「共同流通」は、物流の設備やルートを複数の企業で共有し、経費を節約する方法として実施されています。
ほかにも、異なる分野の事業者同士が業務で連携する「包括連携」は、サービスの質を高めるための総合的な協力として行われている方法です。これらの提携形態は、企業間の協力を深め、事業の拡大や効率化に寄与するでしょう。
業務提携を結ぶメリットとは?
業務提携は、企業間での協力を形式化する手段として多くの企業に採用されています。
業務提携を選択することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、業務提携を結ぶことで得られる主要なメリットについて詳しく解説します。
経営リスクを軽減できる
企業が業務提携を行う大きな理由の一つは、経営リスクの軽減です。
技術や生産、販売といった各分野での能力を向上させることで、企業はリソースを効果的に活用し、リスクを減少できます。
特に、新しい事業領域への進出を検討している場合、既にその事業領域に進出している企業と業務提携を締結すれば、失敗のリスクを軽減することが可能です。これにより、企業は安定した経営基盤を築き、持続的な成長を目指せるでしょう。
独立性を保ちつつ他社と協力関係を築ける
業務提携のメリットは、企業の独立性を損なわずに他社との協力関係を実現できる点にあるでしょう。
資本関係を持たずに特定の業務で協力できるため、業務提携先の業績変動の影響を直接受けるリスクを避けられます。
ただし、成功のためには、業務提携先との目的やビジョンの一致が不可欠です。適切な提携を築くことで、新たなビジネスの機会を掴めるでしょう。
多額の資金は必要ない
提携時に多額の資金を必要としない点も業務提携のメリットの一つです。
資本関係を結ばないため、多額の投資をすることなく、効果的な成果を上げることに期待できます。そのため、会社の経営が圧迫されるようなリスクを感じることはありません。
業務提携した企業は相手との連携を深めることで、技術や知識を共有し合いながら、それぞれの強みを活かして事業を展開できます。資金面での心配をせずに安心して業務提携の道を選べるでしょう。
業務提携の解消が容易
業務提携のメリットとして、柔軟性の高さも挙げられます。
資本の流れがないため、提携関係の終了もスムーズです。業務提携がもたらす利益や価値が薄れた際に、迅速に関係の見直しができます。
これにより、企業は戦略の変更や新しい業務提携先の探求など、スピーディに次のフェーズへと移行できるでしょう。総じて、業務提携は企業間の協力を深める一方で、それぞれの企業の自主性も尊重するバランスの良い形といえるでしょう。
業務提携を行うときの注意点
業務提携を成功させるには、さまざまなリスクや課題が潜んでいることにも目を向ける必要があります。
業務提携を行う際の主な注意点について確認しましょう。
情報流出のリスクがある
業務提携を進める際に懸念されるのが、情報流出のリスクです。
企業が長年にわたり蓄積してきた技術やノウハウが、業務提携を通じて他社に知られる可能性があります。業務提携先の不注意や管理不足により、情報を第三者に漏らしてしまうケースでも、自社の信用に大きなダメージを与えかねません。
こうしたリスクを回避するためにも、業務提携を締結する前に情報管理に関する契約をしっかりと結びましょう。契約には、情報の取り扱いや漏洩時の対応策などを詳細に記載し、双方が納得の上で合意することが重要です。
問題への対応が遅れるケースがある
業務提携では、提携によって発生した問題への対応が遅れてしまうケースも見受けられます。
その理由として、業務提携が資本提携とは異なり、大きな資金の動きが少ないため、問題発生時の緊急性が低く感じられることが挙げられます。
このような問題への対策として、早期の専門家への相談が効果的です。適切な対応を怠ると、後々の業務遂行に支障をきたすリスクが高まります。提携の際は、常に問題への迅速な対応体制を確立することが重要です。
業務提携の事例を紹介
業務提携は、大企業・中小企業問わず、さまざまな業界で実施されています。
ここでは、異なる背景を持つ2つの業務提携の事例を紹介します。
大手企業A社とベンチャー企業B社の業務提携の事例
まず紹介する事例は、家電業界の大手であるA社と、デジタルキー技術を専門とするベンチャーであるB社の業務提携です。
この2社は、スマートフォンを使って遠隔地からの住宅設備操作を可能にする革新的な技術である、「デジタルキー技術」を焦点にした業務提携が締結されました。
この提携の狙いは、双方の技術や知見を組み合わせ、消費者に新しいサービスを提供することです。さらに、B社はA社からの資金援助も受け、その成長を加速させる一助となりました。この事例は、大手とベンチャーが協力し、新しい時代のニーズに応える取り組みの一例として注目されています。
同業他社同士のC社とD社の業務提携の事例
ITプロ人材のマッチングを専門としたサービスを手掛けるC社と、フルリモートの求人に特化した転職サイトを運営するD社が業務提携を実施しました。これは、コロナ禍を経て変わりゆく社会のニーズに応えるのが狙いです。
新型コロナウイルスの影響で変化した生活様式に対応し、フルリモート業務の需要が高まるなか、両社はそのニーズに応えるための新しいワークスタイルを提案しています。この提携により、双方の顧客基盤を最大限に活用した、時代の要請に合わせた働き方の実現に期待できるでしょう。
まとめ
業務提携とは、複数の企業が経営リソースを共有し、共同で事業活動を進める取り組みのことです。
企業間での協力関係を築くための手段として、多くの企業が取り組んでいます。適切な業務提携ができれば、経営リスクの軽減や他社のノウハウの吸収など、さまざまな恩恵を受けられるでしょう。
しかし、業務提携を成功させるためには、専門家のサポートが不可欠です。
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