アパレル業界の現状やM&Aの動向や目的、メリットについてご紹介

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M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部
洋服屋

私たちの生活を豊かにする衣服。

生活を彩るために欠かせないアパレル業界では近年M&Aが増加傾向にあります。

コロナ禍を機に多くの小売店では事業の在り方を見直しており、アパレル業界も他企業と互いの利点を組み合わせることで新たな在り方を模索しています。

アパレル業界は流行の盛衰が早く、ニーズが多様化している特徴が見られる中で他社と手を組み広いニーズに対応して利益確保は欠かせない要素です。

当記事ではアパレル業界の現状や課題、M&A実施のメリット・デメリットを紹介します。

アパレル業界の現状

ここではアパレル業界の現状を確認します。

2019年から2020年は新型コロナウイルスの流行から外出制限があり、新しく衣服を購入する方が減少し、市場規模も縮小傾向にありました。しかし、コロナ明けからは少しずつ需要が拡大し、2025年までにはコロナ前の市場規模に戻ると予想されています。

特に、コロナ禍を機にECサイトの充実が加速したころから、これまでの実店舗対面販売だけでなく、オンラインでの市場が拡大する見込みがあるでしょう。

また、これまでは顧客の心を満たすだけでなく社会的な課題解決を前提とした製作、独自のストーリーを持つ服作りが求められているため、市場規模の回復だけでなく新たな市場の在り方が求められるでしょう。

アパレル業界のM&Aの動向と特徴

ここではアパレル業界におけるM&Aのトレンドや特徴を確認します。

特徴としては下記が挙げられます。

一気通貫の生産販売体制の確立を求める動き

幅広いターゲットニーズを獲得するM&Aの動き

D2C事業開拓を目的としたM&Aの動き

後継者不在企業が存続を目的としたM&Aの動き

 

一気通貫の生産販売体制を求める動き

近年、リーズナブルかつ流行を取り入れたファストファッションに注目が集まっています。

ファストファッションは「早い」を表し、短期間で大量生産することでまとまった品数をコストを抑えながら販売する手法です。

国内においては年齢問わず人気を集めるH&Mやユニクロが挙げられます。

1つの企業で一気通貫の体制を確立すると、生産がスムーズかつコストを減らして行えます。そのため、自社内で材料の調達、生産、販売まで対応する目的でM&Aを検討する企業が見られます。

 

幅広いターゲットニーズを獲得するM&Aの動き

M&Aの傾向として幅広いニーズに応え、売上上昇を目指す取り組みも見られます。

近年、アパレル業界だけでなく様々な業界で多様化が進んでいます。ユーザーが多くの情報が気軽に入手でき、かつインフルエンサーが様々な提案を行っていることから、従来のファッションにこだわらない傾向が顕著です。

例えば、メンズのファッションをレディースに取り入れる、1つ上の世代でかつて流行したスタイルを取り入れるなどが挙げられます。そのため、これまでの各属性におけるデータだけでなく、視野を広げたデータ収集やアイディア創出が求められるでしょう。

その際に、自社のターゲットと異なる層の支持を獲得している企業と協力することで、幅広いターゲットニーズを獲得できる可能性が高まります。

M&Aで双方の強みやノウハウを活かし、自社ファンの場を広げることでニーズの変化に対して柔軟な対応が叶うでしょう。

また、近年は衣服に対してもストーリーを添え、アピールするトレンドも見られます。自社ストーリーを落とし込んだ上での販売がブランドの価値を高めたり差別化につながったりします。

 

D2C事業開拓を目的としたM&Aの動き

近年、業界問わず課題となるものにD2C事業への挑戦があります。

かつて実店舗のみで販売だった小売店も次々とオンラインでの顧客獲得に踏み出しています。コロナ禍をきっかけに、オンラインサービスを活用する顧客が増加し、アパレル業界においてもECサイトの強化は急務です。そのために、EC関連のサービスを提供する企業を買収する傾向も見られます。

 

後継者不在企業が存続を目的としたM&Aの動き

少子高齢化や働き方の多様化による企業の後継者不在もM&Aを加速化させる要因の1つです。かつて、企業における後継者の育成はコンスタントに行われ、また継承者も「自分が後を継ぐ」という前提で取り組む企業がほとんどでした。

しかし、近年は企業の盛衰が著しく、後継者を育てるに至らないケースが見られたり、他に成長が見込まれる企業を見つけて候補者が離脱するケースが増えています。その結果、どれだけ歴史あるアパレル企業であっても後継者不在で事業の存続が危ぶまれることも見られます。

その際に、M&Aで業務提携を行うと培ったノウハウを伝承できる人材が増えたり、新たな形で残すことが可能です。アパレル業界を取り巻く様々な課題を解決するためのM&Aが見られます。

関連記事:アパレル業界のM&Aの成功事例や業界の最新動向について

アパレル業界でM&Aが行われている背景

ここからはアパレル業界においてM&Aが盛んに行われている3つの背景を解説します。

アパレル業界におけるM&Aトレンドの背景には、市場の成熟とグローバル化、テクノロジーへの対応が潜んでいます。

 

成熟市場と競争激化

アパレル業界において、もっとも課題となっているのは市場の成熟と競争の激化です。

日本国内において、洋服は第二次世界大戦後から急速に普及し、1960年代から産業として形成され、1970年代には1つの産業体型が確立されました。かつて洋服と言うと一着ずつ型紙を起こして裁断、仮縫い、仕上げと行っていましたが、生産ラインの確立で大量生産が実現

さらに、海外からのファッション動向が入ってくるタイミングに合わせて様々なブランド展開も進みます。百貨店における高級ブランドの取り扱い、ファストファッションの充実など顧客が求めるニーズを一定数満たしたことから、現在アパレル市場は飽和状態にあると見られます。

しかし、市場が成熟している中でも差別化を狙う動きが求められ、自社のみの力で限界を感じた企業がM&Aにより手を取り合うケースが多いでしょう。

 

グローバルブランドの強化と国際市場進出

ネットワークインフラの急速な発展から、国内にいながら海外の衣服を購入できるようになりました。ユーザーはプラットフォームを利用して世界中のアパレル商品をいつでもどこでも閲覧可能です。そのため、アパレル業界において戦うべきフィールドは国内だけでなく世界に広がっています

ユーザーが海外商品と比較してもなお「このブランドのアイテムが良い」と思わせるには、海外トレンドを取り入れながらも自社ならではの販売戦略や市場戦略が欠かせません。頭打ちになっているアイディアをM&Aを通じて獲得する必要性もまたM&A加速の要因です。

 

テクノロジーと持続可能性の重要性が増加

近年、アパレル業界に求められるテーマとしてサスティナブルが挙げられます。

生産体制から販売にいたるまで、環境や人権など様々な配慮や工夫が求められます。世界規模で進められる「SDGs」が最たる例ですが、地球が、人が、様々な動植物が永続的に反映するためのビジネスモデルやテクノロジーに注目が集まっています。

このニーズを満たすには、業界業種問わず最新のテクノロジーを扱うスペシャリストやサステナブルへの深い知見を持つ企業とのかかわりが欠かせません。多職種連携を実現し、将来性がある企業を目指す必要性もまたアパレル業界のM&Aを加速させています。 

スーツが並ぶ写真

 

アパレル業界のM&Aの目的とメリット

ここからはアパレル業界におけるM&Aの目的とメリットを紹介します。

M&Aは譲渡企業、買収企業双方がメリットを享受できます。

譲渡企業のメリット買収企業のメリット
・経営基盤の安定
・後継者不足の解消
・粗業者利益獲得
・既存従業員の雇用維持
・事業規模の拡大
・優秀な人材の確保
・新規事業への進出  

 

譲渡企業

譲渡企業においては下記のメリットを享受できます。

経営基盤の安定

後継者不足の解消

創業者利益獲得

既存従業員の雇用維持

現状、財政面で課題を抱える企業はM&Aにより経営基盤の再生や安定化を目指せます。

親会社が大手企業の場合は独自ネットワークを活用して販路を拡大できるため、勝ち筋を見つけられるでしょう。また、後継者が不足する企業においてはM&Aによりノウハウを多くの人材に継承できる、マニュアル化して提供できる、という可能性があります。

さらに、自社を売却するとそれに見合う対価を得られます。

そのため、新たな投資資金を得られるでしょう。あわせて、財政難から人員整理を行おうとしている場合もM&Aにより既存従業員の雇用維持につなげられます。

 

買収企業

買収企業においては下記のメリットを享受できます。

事業規模の拡大

優秀な人材の確保

新規事業への進出

M&A実施により、事業規模の拡大が期待できます。これまで20代をメインターゲットとしていた企業の場合、ミセスファッションに強い企業をM&Aで獲得するとターゲット層の拡大を狙えます。

また、双方の経験を活かし新たなニーズ創生につながる可能性もあるでしょう。また、M&Aにおいては双方が優秀な人材確保も期待できます。

小規模企業がニッチなノウハウを買収先企業に提供し、大企業がセールスノウハウを有した人材を提供、と双方が経験を元に企業成長を狙えます。

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

アパレル業界のM&Aをする際のポイント

アパレル業界においてM&Aを実施する際に知っておきたいポイントは以下の3つです。

自社の強みと弱みを把握した上でM&Aを実施する
異業種とのM&Aを視野に入れる
顧客ニーズを鑑みたM&Aの実施に心がける

第一に、M&A実施前に「なぜ行うのか」を確認します。その上で、自社の強みと弱みを明確にし、強みを活かしつつ弱みを補うためにM&Aを決定しましょう。

M&Aの大きな目的は双方の企業成長や利益向上です。自社の強みを活かせないM&Aは将来性が期待できず、かつ自社の歴史を失う結果につながります。

顧客へ意識を向ける点も重要です。M&Aにより既存顧客を失うと事業継続が難しくなります。そのため、これまで収集した顧客ニーズや実際のデータを元にM&Aや戦略制定を行いましょう。

 

アパレル業界のM&Aの売却価格相場

M&Aを検討する際に気になる要素として売却価格が挙げられます。

アパレル業界におけるM&Aの売却相場は他業界と大きな差が見られません。

なお、M&Aの売却相場としては時価純資産に営業利益を加えたものが相場です。営業利益は2〜5年程度の価格を見込みましょう。ただし、実際にM&A実施においては下記のポイントを意識しましょう。

緊急度
期待できるシナジー
資源の希少性や将来性
倒産リスク

財政状況が危機的状態の場合は、多少価格に不満を覚えても実施に踏み込む必要性があるでしょう。しかし、譲渡先の持つ資産の希少性が高かったり将来性が期待できたりする場合はM&Aの価値が高まります。また、負債額が大きくネガティブな要素が高い場合は価格にマイナス反映されることもあるでしょう。

上記を加味して譲渡企業と買い手企業が交渉しながら価格を決定します。もしも交渉に自信がない場合、買い叩かれるリスクを最小限に留めたい場合は専門家への依頼がおすすめです。

アパレル業界のM&Aの動向やメリットを理解する。

アパレル業界はその長い歴史から市場の成熟が課題とされている一方で、直面する社会問題に対応したビジネスモデルの確立も求められています。

これまで各企業が培ったノウハウを守りつつも、変化に富む時代を生き延びるにはM&Aの選択肢も検討しましょう。

自社の弱みを補え、また自社のノウハウを提供してシナジーを得られる企業とのマッチングが叶うと永続的な企業成長が見込めるでしょう。

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MABPマガジン編集部

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