調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場の決め方とは?価格を高額にするポイント

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場の決め方とは?価格を高額にするポイント

近年、調剤薬局業界ではM&Aを実施する企業が増加しています。

調剤薬局の売却を検討している人や、買収しようとしている人のなかには、M&Aの価格相場の決まり方について気になる人もいるでしょう。

この記事では、調剤薬局業界におけるM&Aの動向と、価格相場の決まり方について解説します。

また、価格相場が高額になりやすい調剤薬局の特徴も解説するため、調剤薬局におけるM&Aについて気になる人は参考にしてください。

調剤薬局業界の現状について

調剤薬局業界の現状について

調剤薬局業界のM&Aについて解説する前に、まず調剤薬局業界をとりまく現状について確認してみましょう。

ここでは、調剤薬局業界の現状について解説します。

 

かかりつけ薬局が推進されている

昨今、調剤薬局業界では、地域の医療を強化するため厚生労働省により 「かかりつけ薬局」が推進されています。かかりつけ薬局とは、地域包括ケアシステムを担い、薬に関していつでも気軽に相談できる薬局のことです。

かかりつけ薬局では、ICT技術を導入し、薬の服用による副作用・効果の確認や、薬の重複の管理などの狙いがあります。また、夜間や休日など24時間体制での対応が可能です。

2025年までには、全ての調剤薬局をかかりつけ薬局に移行する動きがあります。

 

後継者不足や薬剤師不足の課題をかかえる

調剤薬局業界では、後継者不足や薬剤師不足などの課題をかかえています。こうした課題をかかえる背景には、高齢化の影響が大きいでしょう。

特に中小企業の場合は、この影響が大きく経営者が高齢となり、後継者が見つからず廃業した企業も存在します。また、薬剤師の資格を持つ人は増加しているものの、薬局やドラッグストアが急激に増えたことで、薬剤師が不足している状況です。

今後、かかりつけ薬局への移行が推進されるなか、後継者不足や薬剤師不足などの課題を早急に解消する必要があるでしょう。

調剤薬局業界におけるM&Aの動向

調剤薬局業界におけるM&Aの動向

近年、調剤薬局業界では、M&Aを実施する企業が増加しています。

ここでは、具体的なM&Aの動向について解説します。

 

薬価・調剤報酬の改定へ対応するためのM&Aが増加している

調剤薬局業界では、「医療費削減 」という国が掲げる方針によって薬価や調剤報酬が改定されました

そのため、これらに対応するためにM&Aを実施する企業が増加傾向にあります。

特に、病院に隣接している調剤薬局や大手調剤薬局は、調剤報酬の改定の影響が大きく、従来と同じ業務を行っているのにも関わらず収益性の減少が予測されました。

そのため、M&Aによってほかの調剤薬局を買収し事業を拡大することによって、スケールメリットを得ようとする動きが活発化しています。

 

かかりつけ薬局に移行するためのM&Aが増加している

近年では、かかりつけ薬局に移行するためにM&Aを実施する企業が増加中です。

今後、かかりつけ薬剤師が一定の条件で行った業務には「かかりつけ薬剤師指導料」と呼ばれる薬学管理料を受け取れるようになります。

ただし、かかりつけ薬局に移行するためには、24時間での対応や、在宅患者への対応などが求められるでしょう。これらに対応するには、薬剤師の確保や設備費などが必要です。

こうした背景から、薬剤師の経営資源などの確保を目的としたM&Aが増加しています。

 

後継者不足・薬剤師不足を解消するためのM&Aが増加している

近年、調剤薬局業界では後継者不足・人材不足を解消するためのM&Aが増加しています。特に、中小規模の調剤薬局では後継者不足の課題が深刻化しており、解消できずに廃業した企業も存在するでしょう。

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、2020年時点で薬局の開設者または法人の代表者の平均年齢が59.9歳という結果が出ています。この結果から今後も後継者不足が続くと予測され、解消するためのM&Aは増えるでしょう。

(引用元:厚生労働省│医師・歯科医師・薬剤師統計の概要

また、調剤薬局業界では多くの企業が薬剤師不足の課題をかかえています。加えて、かかりつけ薬局に移行した場合、さらに多くの薬剤師が必要となるため、薬剤師を確保するためにM&Aを実施する企業が増加傾向にあります。

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場の決まり方について

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場の決まり方について

調剤薬局業界においてM&Aが活発化していることについて解説してきましたが、調剤薬局のM&Aにでは、どのような要因によって価格相場が決まるのでしょうか。

 

営業権価格を算出する

まず、調剤薬局業界のM&A価格を決定するうえでの一つの指標となるのが、「営業権価格」です。

営業権価格とは、買収する調剤薬局の営業利益から買収後の将来性やリスクなどを考慮したうえで算出される価格のことを指します。

営業権価格は、3~5年間の経営状況を予測して算出するのが一般的です。

 

時価純資産価額を算出する

次に、「時価純資産価額」が考慮されます。時価純資産価額とは、貸借対照表をベースとして企業の資産を時価で評価し直して、資産から負債を控除したときに算出される数字です。

具体的には、「棚卸資産」や「ソフトウェア資産」、「売掛金」などが資産価値に加えられ、債務や買掛などがあればそれらを差し引くことで、時価純資産価額を算定できます。

 

薬局の規模・立地条件・業績などで価格を左右する

営業権価格や時価純資産価額などのほかに薬局の立地条件、業績、規模などによりM&Aの価格が左右されます。

当然、譲渡する調剤薬局の規模が大きく、また駅前にあるなど立地条件が良好であり、これまでの業績が安定しているという調剤薬局のほうが、より高い買収価格でM&A価格が算定されるというのが一般的です。

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場を高額にするには

M&Aの価格相場は、さまざまな要因によって左右されます。

しかし、売り手側は可能な限り高額で売却したいと考えるものです。

ここでは、調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場を高額にするためのポイントについて解説します。

 

経営が安定している

経営が安定している調剤薬局は、M&Aの価格相場が高額になる傾向にあります。

例えば、顧客を多くかかえていたり、専門的な知識や高い技術を持つ薬剤師が常駐していたりする調剤薬局は、M&Aにおける価格が高額となりやすいでしょう。

このように経営が安定している調剤薬局は、買い手側にとって買収後の未来が想像しやすく、事業の拡大やシナジー効果を目的としたM&Aを検討するようになります。その結果、M&Aの価格が上がるでしょう。

 

多くの薬剤師を保持している

多くの薬剤師を保持していることもM&Aの価格が高額になりやすいポイントの一つです。先述の通り、調剤薬局業界は、慢性的な薬剤師不足なうえ、かかりつけ薬局に移行するにはさらに薬剤師が必要となります。

こうした背景から、保持している薬剤師が多いほど、M&Aの価格相場が高額になる傾向にあります。そのため、多くの薬剤師を保有していることをアピールしましょう

また、M&Aを検討している際は、自社の薬剤師が離職してしまわないように、慎重に進める必要があります

 

M&Aのタイミングを見定める

M&Aを実施する際は、タイミングを見定めることも大切です。M&Aは、相手企業の先手から、統合するまでに3ヶ月〜6ヶ月前後かかります。

既に経営が困難な状態になってからはじめてM&Aを検討し始めるのは、タイミングとして遅いです。場合によっては、廃業しか選択肢がないという状況に陥る可能性もあります。

そのため、M&Aを実施する際は、早めに準備を行い業界全体の動きを確認したうえで、適切なタイミングで行う必要があるでしょう。

 

M&Aの専門家に相談する

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場を高額にするうえで、最も重要なのはM&Aの専門家に相談することです。

M&Aの専門家に相談することは、価格相場を高額にするだけでなく、M&Aを成功させるには不可欠な存在といえます。

M&Aでは、統合するまでのプロセスのなかでさまざまな専門知識が必要です。そのため、自社のみで行うのは困難でしょう。M&Aの専門家であれば、相手企業の選定から統合後のPMIまで徹底的にサポートを行います。また、相手企業の選定では、独自のネットワークにより自社の希望に合った相手企業を選定してくれます。

まとめ

まとめ

近年、調剤薬局業界では、薬価・調剤報酬の改定や、かかりつけ薬局への移行などに対応するためにM&Aを実施する企業が増加傾向にあります。

また、後継者不足や薬剤師不足などの課題を解消するためのM&Aも活発です。

調剤薬局業界におけるM&Aの価格相場は、営業権価格や時価純資産価額などによって決まります。安定した経営を行っている薬局や、多くの薬剤師を保持している薬局などは、M&Aの価格相場が高額になりやすい傾向にあります。また、M&Aを成功させるには、M&Aの専門家に依頼することが不可欠です。

調剤薬局業界におけるM&Aを検討している人は、「M&Aベストパートナーズ」にご相談ください。

M&Aベストパートナーズでは、調剤薬局業界におけるM&Aの実績を多数持ったアドバイザーがサポートいたします。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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