人材不足や後継者不足などは大きな社会問題となっており、内装工事業界も例外ではありません。
こうした問題を解決する手段として、M&Aが注目を集めています。
そこで本記事では、内装工事業界の現状やM&Aの動向、実施するメリットについて詳しく解説します。
また、内装工事業界におけるM&Aの事例や成功させるためのポイントもご紹介するので、人材や後継者不在に悩む内装工事事業者の方はぜひ参考にしてください。
内装工事業界の現状
はじめに、内装工事業界の現状について解説します。
新築住宅の着工数が減少している
国土交通省の「新設住宅着工戸数の推移」によると、2006年には新築住宅の着工数が約128万戸ありましたが、そこから減少しはじめ、直近の2023年では80万戸まで減少しています。

(参考:国土交通省|新設住宅着工戸数の推移)
新築住宅の着工数が減少した要因として、少子高齢化や婚姻件数の減少による住宅購入世代の減少が挙げられます。
こうした人口の減少や未婚者の増加は社会問題となっており、今後も続くと予想されています。
リフォーム事業は需要が高まっている
新築住宅の着工数が減る一方で、リフォーム事業の需要は増加傾向にあります。
2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、在宅勤務といった働く環境の変化に伴い、リフォーム市場は拡大しました。
しかし、2023年をピークに物価上昇などを背景に減少しましたが、持続可能な資源の活用や少子高齢化に伴いバリアフリーの需要によって再び需要が拡大すると予測されています。
人材不足・後継者不足が深刻化している
内装工事業界では、人材不足や後継者不足が深刻化しています。
その原因として、少子高齢化の影響が大きく、少子化により若手の確保が難しい一方で、既存の従業員の高齢化が進んでいる状況です。
総務省の労働力調査によると、内装工事業を含む建設業全体の就業者数は、2004年の584万人に対して2024年は477万人と、20年で100万人以上減少しています。

(参考:総務省|労働力調査)
少子高齢化の影響もあり、今後も労働人口は減少すると考えられます。
新規参入によって市場競争が激化している
内装工事業は異業種から参入してくる企業も多く、今後も増加することが考えられます。
そのため市場競争が激しく、内装高事業として生き残るためには新たな経営戦略や同業他社との差別化が求めれられています。
内装工事業界におけるM&Aの動向
他の業種と同じように、内装工事業界も人材不足や後継者不足の解消、市場での競争力強化といった目的でM&Aが注目されています。
後継者不足を解消する目的のM&Aが増加
以前は、経営者が高齢となり後継者が見つからない場合に廃業する内装工事会社が多い状態でした。
しかし、近年ではM&Aを通じて後継者不足を解消し、大切にしてきた会社を存続させる動きが活発になっています。
元請けが下請けを買収するケースが増加
元請け会社が下請け会社を買収し、業務を自社で完結させるためにM&Aが活用されるケースが増加しています。
これまで下請け会社に依頼していた業務を自社で対応することで、外注コスト削減による利益率の向上やサービスの品質向上を目指すことが可能です。
大手建設会社によるM&Aが増えている
大手建設会社が内装工事業者を買収する動きも増えています。
トータルリフォーム事業や総合新築事業などを行っている大手建設会社が、M&Aによってすでに技術を身につけている人材を確保しています。
すでに業界の知識や技術をもつ人材は、即戦力として現場に送り出すことができます。
内装工事業界におけるM&Aのメリット
買い手側・売り手側企業それぞれの立場で得られるメリットについて解説します。
買い手側企業のメリット
買い手側企業の主なメリットは、次の3点が挙げられます。
- 優秀な人材の確保
- 事業拡大
- 業務効率の向上
M&Aは、内装工事業界において専門的な知識や技術を持った優秀な人材を確保ができるため、教育にかかるコストの削減が可能です。
また、売り手側企業が参入している市場を獲得できるため、事業拡大による収益の向上を目指すこともできます。
その他にも、これまで内装工事を外注してきた企業の場合は受注から施工まで自社で完結でき、業務の効率化が期待できます。
売り手側企業のメリット
売り手側企業の主なメリットは、以下の2点が挙げられます。
- 後継者不足の解消
- 従業員の雇用維持
後継者不足による廃業が増えている近年、M&Aによって第三者へ事業を引き継げることは大きなメリットといえるしょう。
事業を存続させることができれば、これまで会社のために頑張ってきた従業員の雇用を維持することにもつながります。
上記以外にも、M&Aによるさまざまなメリットがありますが、これまで大切にしてきた会社、そして従業員を守ることができることは経営者にとって非常に有益なものとなるでしょう。
関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説
内装工事業界におけるM&Aの事例
内装工事業界におけるM&A事例を2つ、ご紹介します。
建材販売及び内外装工事A社と不動産B社のM&A
譲渡企業であるA社は、建材販売や内装工事などの事業を展開していました。
一方の譲り受け企業であるB社は、注文住宅や不動産の売買に加えて、カフェ、レンタルスペース運営、アパレル、雑貨などの事業も展開している会社です。
M&Aの目的は、B社のリフォーム事業の拡大にあります。今後、少子高齢化に伴う新築住宅の着工数が減少すると予想されるなかで、M&Aにより建材の仕入れや技術力を強化し、リフォーム事業を拡大することが狙いです。
株式譲渡により、B社がA社の全株式を取得したため、A社は完全子会社化されました。
建築造作及び内装工事C社と内外装工事D社のM&A
譲渡会社であるC社は、商業施設もしくは宿泊施設などの木造専門建築造作や内装工事の事業を展開していました。
一方の譲り受け企業であるD社は、大手ゼネコンの子会社として事業を展開している会社です。伝統的な建築物を含めた広範囲な建物の内外装工事を請け負っています。
M&Aを行う背景には、グループ建設事業の拡大と木造建築分野の強化がありました。
D社は、C社の株式を譲り受けたため、C社は完全子会社化されています。
M&Aを成功させるためのポイント
M&Aは必ずしも成功するとは限らず、ポイントを抑えて行うことが大切です。
M&Aを実施する目的を明確にする
M&Aを実施する際には、実施する目的を明確に定めることが重要です。
目的が曖昧のまま進めると、「M&Aを実施すること」だけが目的となってしまい十分な効果を得られない可能性があります。
相手企業の選定をしっかり行う
M&Aを実施する際は、相手企業の選定をしっかり行うことも大切です。
条件面だけでなく、信頼できる相手かを慎重に見極めたうえで選ぶことでM&Aの目的達成に近づくことができます。
M&A専門家へ依頼する
M&Aには、法務や財務、税務などの専門的な知識や、相手企業との交渉力も重要です。
そのため、M&Aを実施する際は、M&Aの専門家へ依頼することがおすすめです。
M&Aの専門家に依頼すれば準備から統合までのプロセスを全面的にサポートしてくれるため、成功率を上げることができます。
まとめ
内装工事業界は人材不足や後継者不足などの問題を抱えており、課題解決に向けてM&Aが増加しています。
M&Aは人材不足や後継者問題だけでなく、事業規模の拡大などさまざまなメリットがある一方で、成功させるにはM&Aに関する専門的な知識やノウハウが必要です。
M&Aによって抱えている課題の解決を検討されている方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。
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