ビルメンテナンスの将来性を市場動向や課題からひも解く

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

ビルメンテナンスは、オフィスビルをはじめとする建物のメンテナンスに携わる重要な仕事です。
ビルメンテナンス業界への参入に興味があるものの、将来性に不安を抱いている方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、ビルメンテナンス業界の現状や今後について詳しく解説します。
ビルメンテナンス業界が抱える課題や対策方法もご紹介するので、ビルメンテナンス業界に興味をお持ちの方はぜひ参考にしてください。

ビルメンテナンス業界の現状と今後とは

ビルメンテナンスは安定性の高い業界として、今後もニーズの継続が期待できる業界です。
ビルメンテナンス業界の現状と今後について、詳しく解説します。

ビルメンテナンス業界の現状について

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が発表した「ビルメンテナンス情報年鑑2023」によると、2020年に4.25兆円だった市場規模が、2021年には4.57兆円と増加しています。

2020年以降には新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、さまざまな業界に大きなダメージを与えました。しかし、ビルメンテナンス業界の現状を見ると、市場規模の急激な縮小はありませんでした。

社会情勢によって売り上げが流動しやすい業界が多いなかで、ビルメンテナンス業界は安定した業界だといえます。

ビルメンテナンス業界の今後について

ビルメンテナンス業界は、今後も安定したニーズを継続することができるでしょう。

ビルメンテナンスの対象となる建物は、オフィスビルだけではありません。商業施設や宿泊施設、病院など、求められている建物はさまざまです。

こうした建物がある限り、ビルメンテナンスの仕事の需要が急減することはないでしょう。

そもそもビルメンテナンスの業務は何を行う?

ビルメンテナンス業界といっても、その業務内容はさまざまです。ビルメンテナンスの業務内容は、主に以下の4つに分けることができます。

  • 清掃管理業務
  • 保安管理業務
  • 設備管理業務
  • 衛生管理業務

それぞれの業務について、詳しく解説します。ビルメンテナンス業界での仕事に興味のある方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

ビルを清潔に管理する「清掃管理業務」

建物が清潔な状態を保てるように管理することが主な仕事です。トイレや床面といった建物内の清掃だけでなく、敷地内の植え込みなど清掃も業務の対象です。

清掃対象の素材や汚れの状態に合わせて適切な清掃方法や溶剤を選択する必要があり、専門的な知識と経験が求められます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、建物内の消毒や殺菌といった感染症防止対策も、今では清掃管理業務に含まれるようになりました。

ビルの安全性を管理する「保安管理業務」

建物の防犯や防災など、安全の確保をする業務です。火災や怪我といった事故に備えて建物内外を点検・監視し、危険性があれば是正策を講じます。
また、入退館者の管理や駐車場の整備も業務の対象です。

建物の利用者に危険が及ばないようにするうえで、保安管理業務は欠かすことのできない業務です。 

ビル設備機器の運行を管理する「設備管理業務」

「設備管理業務」は、建物にある設備機器全般の管理を行います。
電気設備や空調設備などの点検や監視・整備など、利用者が快適に設備を利用できるようにします。

設備に異常が生じた場合、不快な空間になるだけでなく事故など危険を伴う場合があるため、保安管理にも通じる業務といえるでしょう。

ビルの衛生面を管理する「衛生管理業務」

建築基準法によると、百貨店や店舗、事務所・学校など相当程度の規模を有する建物は「特定建築物」と定義されています。
特定建築物は、厚生労働省が定める「建築物環境衛生管理基準」に従って維持管理をすることが必要です。

「衛生管理業務」は、衛生管理基準を満たしているかを測定・点検・調整する仕事です。例えば、空気中の二酸化炭素含有量や水道水の水質などを測定し、適切でなければ是正策を講じます。

また、ネズミや昆虫といった衛生面を脅かす生物の防除も業務の対象です。

ビルメンテナンス業界の課題とは

ビルメンテナンス業界は安定してした業界ですが、解決すべき課題も抱えています。
ビルメンテナンス業界が抱える課題は、以下の3つです。

  • 企業にとって有益な人材の不足
  • 新規需要の低下・市場成長の鈍化
  • 資源コストの高騰

課題の具体的な内容について解説します。

企業にとって有益な人材の不足

多くの業界が影響を受けている少子高齢化の問題は、ビルメンテナンス業界にも影響を与えています。

ビルメンテナンスの従事者は高齢者が多く、若い人材が慢性的に不足してる状況です。
また、マネジメント層の人材も足りておらず、後継者の育成に頭を悩ませている企業も少なくありません。

需要が安定していても、人材不足が続いてしまうと事業の継続が困難になる可能性があります。

新規需要の低下・市場成長の鈍化

他の業種と同じように、ビルメンテナンス業界も新型コロナウイルスの影響を受けています。

感染リスクを避けてホテルや商業施設の利用者が減少したり、施設の開閉時間に制限をかけたりするなどが原因で、メンテナンス業務が減ってしまった企業もあります。

新規需要の低下が原因で競争が激しくなったとき、市場の成長は鈍化する可能性は否定できません。

資源コストの高騰

設備管理や保安管理など、ビルメンテナンス業界には電気が欠かせません。電気式の清掃用具を使うケースもあるでしょう。
しかし世界情勢の悪化が原因で資源コストが高騰し、電気代に大きな影響を与えています。

資源コストの高騰は、企業だけでなく一般家庭にまで大きな影響を及ぼしていますが、ビルメンテナンス業界にとっても重要な課題といえるでしょう。

ビルメンテナンス業界における課題の改善策

ビルメンテナンス業界にはさまざまな課題があり、放置することで経営の悪化をまねく原因にもなります。

ビルメンテナンス業界の課題を解決する方法をご紹介します。 

人材不足問題に対する解決策

人材不足を解決する方法として、「外国人労働者の雇用拡大」が挙げられます。外国人も積極的に採用することで、労働力の確保がしやすくなるでしょう。

2019年には入国管理法が改正され、外国人の在留資格に「特定技能」という項目が追加されました。

特定技能とは、特定の技能を持つ外国人が日本に滞在できる資格です。この在留資格が適用できれば、ビルメンテナンスの技能を持つ外国人を雇用しやすくなるでしょう。

新規需要の低下・市場成長の鈍化における解決策

新規需要の低下・市場成長の鈍化に対する解決策として、「海外への進出」が挙げられます。ビルメンテナンスの需要が高い国にアプローチすることで、国内の需要低下をカバーできるでしょう。

例えば都市化が進んでいる東南アジア諸国の場合、ビルメンテナンスの需要は高いものの、技術が不足している国は少なくありません。
培ってきた技術力を活かし、技術が不足している国々へアプローチすれば、市場拡大が図れます。

予算の都合で海外進出が難しい場合は、国内の既存ビルに対して修繕・建て替えを提案することも一つの方法です。

資源コスト高騰における解決策

資源コスト高騰に対する解決策として、IT技術の導入が挙げられます。

業務の効率化で人件費を削減し、高くなった資源コストの補填ができる可能性があります。例えば、清掃ロボットを導入できれば、清掃管理業務の効率化が期待できます。

IT技術の導入には初期コストが必要です。しかし、長期スパンで考えたとき、コスト削減につなげることができるでしょう。
また、人材不足に伴う従業員の負担が増加することを防ぐ効果も期待できます。

まとめ

ビルメンテナンス業界は市場が安定しており、今後もニーズの継続が期待できる業界です。

ビルメンテナンスの対象となる建物は、オフィスビルや百貨店、宿泊施設などさまざまです。こうした建物がある限り、ビルメンテナンスの仕事が急激に減ることはないでしょう。

しかし、他の業種と同じように、ビルメンテナンス業界もさまざまな課題を抱えています。
今後ビルメンテナンス業界への参入を考える場合は、課題を理解し、事前に解決策を考えておくことが必要です。

ビルメンテナンス業界への参入や事業承継・M&Aに興味がある方は、事業承継・M&Aのエキスパートである「M&Aベストパートナーズ」へぜひご相談ください。

業界の抱える課題を踏まえたうえで、最適なご提案をさせていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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