【人手不足・後継者問題】加速する解体工事業の課題解決に向けたM&Aの動向

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

「仕事はあるのに、利益が残らない」
「後継者がおらず、自分の代で廃業せざるを得ないのか」

近年の解体工事業界では、さまざまな背景から立ちはだかる壁が作られ、こうした行き止まりの状況を打破する「攻めの経営戦略」として、多くのオーナー経営者がM&A(企業の譲渡・提携)を選択しています。

そこで本記事では、最新の市場データに基づき、解体工事業界が抱える課題を整理。

そのうえで、なぜ今M&Aが加速しているのか、そしてM&Aを成功させるためのポイントを詳しく解説します。

解体工事業界を取り巻く現状と市場規模

はじめに、解体工事業を取り巻く現状、そして市場規模を解説します。

老朽化インフラ・空き家増加に伴う底堅い需要

解体工事業の市場規模は、現在約1兆円規模にまで達しており、今後も拡大が見込まれる「数少ない成長産業」の一つです。

この背景として、高度経済成長期に整備された道路・橋などのインフラや、ビル・マンションなどが一斉に更新時期を迎えているためです。

また、総務省の「2023年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万戸を超え、過去最多を更新しました。

行政が、この問題に対して代執行や解体補助金制度などを拡充したことも、解体工事業が成長する追い風となっています。

参考:総務省令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果

市場拡大の裏に潜む「人手不足」と「2024年問題」

解体工事業界は、需要が旺盛な一方で、現場の供給能力は限界に近づいてきています。

特に近年では、2024年問題によって時間外労働上限規制が適用され、従来のような「工期短縮のための時間外労働」が困難になりました。

また、既存従業員の高齢化が進むなかで新規入職者は減少。「仕事はあるのに現場を動かせる人材がいない」状況となり、受注を断る機会損失が常態化しています。

需要過多の裏で「倒産件数」が過去最多を更新

解体工事事業の市場規模は拡大しているものの、経営環境は過酷な状況です。

東京商工リサーチの調査では、2024年度の解体工事業の倒産件数は59件と、過去20年間で最多となる勢いです。

特に燃料費や人件費の高騰に加え、産廃処理費の上昇を適切に価格転嫁できない小規模事業者が、資金繰り悪化により淘汰されてきています。

参考:東京商工リサーチ解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

解体工事会社が直面する深刻な経営課題

変革期を迎えているといっても過言ではない解体工事業界ですが、この業界に身を置く企業は深刻な課題に直面しています。

解体工事会社が直面している深刻な経営課題を解説します。

2024年問題による労務コスト増と職人の高齢化

労働時間の厳格化は、単純なコスト増だけでなく「採用競争の激化」を招いています。

週休2日制の導入や賃金引き上げに対応できない企業からは若手が流出し、現場の平均年齢が上昇し続ける悪循環に陥っています。

先行き不透明な「後継者問題」と黒字廃業のリスク

帝国データバンクの調査等によると、建設業界の後継者不在率は6割近くと高く、解体業界も例外ではありません。

しかし「自分の代で終わりにしよう」と考えていても、解体業には重機の処分や産廃の最終処理責任が伴います。

そのため、安易な廃業は多額のコストを伴い、利益が出ているうちに第三者へ繋ぐ「M&A」という選択肢が現実味を帯びている状況です。

参考:帝国データバンク全国「後継者不在率」動向調査(2025年)

激化する受注競争とコンプライアンス対応

2022年のアスベスト事前調査報告の義務化(2023年からは有資格者による実施・報告)など、環境規制は年々厳格化しています。

これに伴う事務負担や法的リスクは、小規模な組織では抱えきれない重荷となっており、「コンプライアンス維持のためのコスト」が収益を圧迫しています。

参考:厚生労働省4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします

課題解決の切り札となる「解体工事業のM&A」最新動向

さまざまな課題に直面している解体工事業界では、課題解決の選択肢の一つとしてM&Aが注目を集めています。

そこで、解体工事業におけるM&Aの最新動向をご紹介します。

後継者不在による「黒字廃業」を回避する第三者承継

近年、後継者不在の解決策としてM&Aを選ぶ経営者が急増しています。

そのため、M&Aは単なる売却ではなく、「個人保証の解除」「創業者利益の確保」「従業員の雇用維持」を同時に実現できる、唯一の出口戦略といえるのです。

大手ゼネコン・ハウスメーカーによる「垂直統合」の動き

買い手側の動向として、ゼネコンやハウスメーカーが解体工程を内製化するために、解体工事会社を買収する「垂直統合」が加速しています。

売り手となる解体工事業者は、大手グループの傘下に入ることで、営業活動なしで安定した案件を確保できる体制が整います。

リソース確保を目的としたM&Aが増加

解体工事業において、売上の次に評価されるといっても過言ではないのが「人材」です。

そのため、一級建築施工管理技士や熟練の重機オペレーターを抱える企業は、採用コストをかけたくない企業にとって非常に魅力があります。

このような背景から、「人」そのものを目的とした買収が行われ、予想以上の高値で譲渡されるケースも珍しくありません。

解体工事業のM&Aを成功させる3つのポイント

M&Aは、ただ事業を売買すればよいというわけではなく、しっかりとポイントを押さえて行わなければ成功させることはできません。

解体工事業における「M&Aを成功させるための3つのポイント」をご紹介します。

保有資産(重機・車両)と産廃許認可の整理

解体工事業のM&Aでは、純資産に加え、保有する重機の年式や種類、「産業廃棄物収集運搬業」の許可エリアが評価を左右します。

そこで、これらを正確にリスト化し、いつでも提示できるようにしておくことが重要です。

コンプライアンス体制(アスベスト・産廃処理)の透明化

買い手となる企業は、買収後の不祥事リスクを最も嫌います。

このようなリスクを回避するために、マニフェスト管理が適正か、アスベスト除去作業の記録が残っているかなど、「クリーンな経営」を証明できる資料を揃えることで、交渉が有利になる可能性が高まります。

業界特有の商慣習に詳しいM&A仲介会社の選定

解体工事業界は「重機の資産価値」「現場特有の労務リスク」「許認可の継続性」など、一般の仲介会社では判断が難しい専門知識が必要です。

しかし、業界特化型の仲介会社であれば、強みを正しく買い手に伝え、最適なマッチングを実現可能にしてくれます。

私たちM&Aベストパートナーズは、解体工事業を含む建設業界に特化したアドバイザーが在籍しており、業界特有の商慣習を考慮したうえでのご提案をさせていただきます。

M&Aを成功させ、解体工事業の未来を明るくしたいとお考えの方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズまでご相談ください。

解体工事業界で実際に行われたM&A事例

解体工事業界でM&Aが注目を集めていると聞いても、イメージしづらい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、実際に解体工事業界で行われたM&A事例を幾つかご紹介します。

カシワバラ・コーポレーションによるM&A

大規模建築物やプラント工場の建設、メンテナンス事業を行う株式会社カシワバラ・コーポレーションは、解体工事業と環境事業を手掛ける株式会社小椋組を子会社化しました。

このM&Aにより、小椋組が持つ専門性の高い解体技術をグループに加え、解体から建築、修繕、メンテナンスをワンストップで提供できるようになり、今後さらにカシワバラグループの発展を目指すとしています。

参考:株式会社カシワバラ・コーポレーション(プレスリリース)カシワバラ・コーポレーションが「住」事業をワンストップに。大型物件の解体事業を展開する「株式会社小椋組」を完全子会社化

鈴木商会によるM&A

北海道を拠点に資源リサイクル事業を展開し、産業廃棄物処理・リサイクルを一貫して行う株式会社鈴木紹介は、同じく北海道で解体事業を行う株式会社木村工務店を子会社化しました。

このM&Aにより、鈴木商会は解体事業へ参入。解体から廃棄物処理・リサイクルまでを一貫して行う体制を構築し、道東エリアにおけるサービスの利便性向上、持続可能な資源循環の実現を目指すとしています。

参考:株式会社鈴木商会【プレスリリース】株式会社木村工務店の全株式取得による完全子会社化のお知らせ

ベステラによるM&A

主に製鉄・発電・ガスなどの大規模プラントを対象に、各種特許工法を用いた解体工事業を行うベステラ株式会社は、石油精製装置や化学装置などのプラント建設とメンテナンス工事を中心に、躯体工事も行うオダコーポレーション株式会社を子会社化しました。

このM&Aにより、ベステラはプラントや設備更新ビジネスにおいて協力し、両者の発展と企業向上に寄与するとしています。

なお、このM&Aではオダコーポレーションの100%子会社で大規模改修工事を展開し、お客様の視点に立ち「全ての工事原価の開示(オープンブック)」を実施、適切な修繕工事を低こにしてきた株式会社TOKENも傘下としています。

参考:ベステラ株式会社株式取得(子会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ

コンセックによるM&A

建設・土木工事向けの製品開発や施工を行う株式会社コンセックは、公共工事を中心に土木工事・舗装工事・解体工事を行う株式会社丸金建設を子会社化しました。

このM&Aにより、コンセックは工事部門を強化し、グループ内での技術交流や相互支援を強化。さらに地域密着型の丸金建設を傘下とすることにより、より安定した事業基盤を確立するとしています。

参考:株式会社コンセック株式会社丸金建設の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

まとめ

近年の解体工事業界では、行き止まりの状況を打破する「攻めの経営戦略」として、多くのオーナー経営者がM&A(企業の譲渡・提携)を選択しています。

しかし、M&Aを成功させるためには「ただ相手企業と交渉すればよい」というわけではなく、しっかりとポイントを押さえたうえで、M&A仲介会社などのサポートを受けながら行うことが必要です。

私たちM&Aベストパートナーズには、解体工事業を含む建設業界に強みがあり、業界に特化したアドバイザーが多数在籍しております。

課題解決に向けた「戦略的M&A」を成功させ、未来の解体工事業界をさらに発展させたいとお考えの方は、ぜひ私たちM&Aベストパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

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