建設業界の中でも、人々の生活インフラに直結する「管工事業(給排水・空調設備)」。
堅調な需要がある一方で、現場を支える技術者の高齢化や、2024年4月から適用された時間外労働の上限規制(2024年問題)への対応など、経営環境は大きな転換期を迎えています。
こうしたなか、事業の継続やさらなる成長を目指す選択肢として、「M&A」が急増しています。
本記事では、管工事業界の最新動向から、譲渡価格がどのように決まるのか、そして成功させるためのポイントまで解説します。
↓ こちらから知りたい情報へ移動できます ↓
目次
管工事業(給排水・空調)におけるM&Aの最新動向
はじめに、管工事業(給排水・空調)のM&A動向をご紹介します。
人手不足と「2024年問題」による業界再編の加速
2024年問題により、従来の働き方では工期維持が困難になるケースが増加しています。
自社単独でのリソース確保に限界を感じた中小企業が、労働環境の改善やDX化を推進するために、資本力のある大手グループの傘下に入る事例が目立つ状況です。
経営者の高齢化と深刻な後継者不在
管工事業の経営者の多くが引退時期を迎えているが、親族内や社内に適切な後継者がいないという課題があります。
「黒字だが後継者がいないため廃業せざるを得ない」という事態を避けるため、第三者への事業承継としてM&Aが一般化しています。
空調・給排水設備メンテナンス需要の拡大
近年のM&A市場では、新築工事メインの会社よりも、保守点検や修理といった「ストック型ビジネス」を持つ会社が非常に高く評価されています。
安定したキャッシュフローが見込めるメンテナンス部門の強化を狙い、買い手企業が積極的に動いています。
管工事業(給排水・空調設備)をM&Aで売却・譲渡するメリット
活発な動きを見せる管工事業のM&Aですが、具体的にどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。
M&Aでどのようなメリットを得られるのか、譲渡企業と譲受企業、それぞれの立場から見たメリットを解説します。
【譲渡企業】後継者問題の解決と従業員の雇用維持
M&A最大のメリットは、会社を存続させられることです。
会社を存続させることで長年共に歩んできた従業員の雇用を守り、培ってきた技術を次世代に繋ぐことが可能になります。
また、オーナー経営者は個人保証から解放され、創業者利益を得ることで、安定したリタイア生活を送ることを実現できます。
【譲渡企業】大手・中堅グループ入りによる経営基盤の強化
大手グループの一員となることで、より大規模な案件の受注や、資材の共同購買による原価低減が期待できます。
福利厚生の充実や「大手グループ」というブランド力がつくことで、若手技術者の採用活動においても有利に働く可能性も期待できます。
【譲受企業】有資格者(施工管理技士等)の獲得とエリア拡大
買い手企業にとって、育成に数年を要する「1級・2級管工事施工管理技士」を抱える企業を引き継げるメリットは計り知れないです。
また、物理的な拠点を得ることで、新たなエリアへの進出スピードを飛躍的に高めることが可能となります。
管工事業(給排水・空調設備)のM&Aにおける評価額を高めるポイントと注意点
M&Aによって事業を譲渡する側となる企業の場合、自社の評価をできる限り高めたいと思われる方は多いです。
そこで、管工事業のM&Aにおける評価額を高めるポイント、そして注意点をご紹介します。
企業価値が高まる評価ポイント
M&Aの企業価値評価を高めるための主なポイントとして、以下のようなことが挙げられます。
- 保有資格:1級管工事施工管理技士などの国家資格保持者の人数
- 取引形態:特定の元請けに依存せず、官公庁案件や直接取引(元請)の比率が高いこと
- 収益構造:定期的な点検・清掃などのメンテナンス契約が売上の一定割合を占めていること
譲渡価格を下げないための注意点
M&Aには、対象企業の事前調査を行うデューデリジェンスというプロセスがあります。
デューデリジェンスでは、財務状況のほか未払い残業代の有無や、現場での安全管理義務違反(労災隠し等)がないかが厳しくチェックされます。
また、工事原価管理が不透明な場合もリスクと見なされるため、事前の帳簿整理が重要です。
管工事業(給排水・空調設備)のM&A事例
「M&Aが活発に行われている」と聞いても、具体的にどのようなM&Aが行われているかわからず、イメージができない方も多いのではないでしょうか。
そこで、実際に行われた管工事業のM&A事例をご紹介します。
日本エコシステムによるM&A
公共サービスや環境、交通インフラに関する事業を手掛ける日本エコシステム株式会社は、大規模プロジェクトを中心に、マンションや大型施設の空調設備工事・給排水設備工事の施工管理などを行う葵電気工業株式会社を子会社化しました。
このM&Aにより、日本エコシステムはファシリティ事業でのサービス拡大を図るとともに、業容拡大による新規取引先開拓にも期待するとしています。
参考:日本エコシステム株式会社|株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ
前澤化成工業によるM&A
上下水道関連製品の生産・販売を主軸として事業展開をし、民間企業の産業排水処理システムの提案・設計を得意とする前澤化成工業株式会社は、茨城県を基盤として品質の高い施工力・施工管理能力などにより、各種公共事業に強みを持つ常陽水道工業株式会社を子会社化しました。
このM&Aにより、前澤化成工業は技術・ノウハウの融合を期待すると共に公共事業・民間事業への取り組みを共同で進め、事業基盤強化と収益力向上を図るとしています。
参考:前澤化成工業株式会社|常陽水道工業株式会社の株式取得(子会社化)についてのお知らせ
コムシスホールディングスによるM&A
情報通信工事業や電気設備工事事業、情報処理関連事業、子会社の経営管理などを行うコムシスホールディングス株式会社は、管工事・水道設備工事・機械器具設置工事・土木工事・電気工事・さく井工事と、数多くの工事を行う朝日設備工業株式会社を子会社化しました。
このM&Aにより、東海を中心とする対象地域や事業分野などについて、両社の強みを活かした広範囲での事業展開と経営資源の連携によるシナジーの最大化を追求。
グループとしての成長戦略を強力に推進することによって企業価値の一層の向上を図るとしています。
参考:コムシスホールディングス株式会社|簡易株式交換による朝日設備工業株式会社の完全子会社化に関するお知らせ
管工事業(給排水・空調設備)のM&Aを成功させるためのステップ
M&Aは、「ただ事業を売却すればよい」というわけではなく、正しいプロセスの進め方を押さえることでより成功へと近づきます。
管工事業を譲渡する場合の、M&Aを成功させるためのステップをご紹介します。
自社の強みを「可視化」する
まずはじめに、自社が保有する資格、主要取引先のリスト、過去の施工実績、メンテナンス契約件数などを数値化しましょう。
買い手にとっての「買う理由」を明確に整理することで、交渉をしやすくなる可能性が高まります。
業界に精通したM&A仲介会社に相談する
M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社などの専門家へサポートを依頼することが一般的ですが、業界知識がない仲介会社に相談した場合、本来の価値よりも低い価格で成約してしまうリスクがあります。
そのため、管工事業特有の商習慣や、有資格者の価値を正しく理解しているアドバイザーが在籍するM&A仲介会社へ相談することは不可欠な要素です。
従業員や取引先への説明タイミングを見極める
従業員や現場に不安を与えないよう、どのタイミングで、どのようなメッセージで伝えるべきか、慎重に検討する必要があります。
この判断を見誤ると、M&Aの交渉中、もしくはM&A成立後に大切な人材が流出するリスクを招きます。
NDA(秘密保持契約)の締結
M&Aは、情報の取り扱いが命で、漏洩するとさまざまなリスクがあります。
このリスクを極限まで低くするためにNDAを必ず締結し、情報管理を徹底することが重要です。
PMI(Post Merger Integration)の実行
M&A成約後、買い手企業と売り手企業が組織として一体化するプロセスを行わなければ、M&Aが成功したとはいえません。
管工事業のPMIにおいては、以下の統合が必要です
- 現場ルールの統一:
安全基準や原価管理、報告体系の統合 - 評価・給与体系の整備:
職人や技術者が不利益を感じ、離職してしまうのを防ぐための調整 - IT・システム統合:
工事管理ソフトや勤怠管理の共通化。 PMIを丁寧に行うことで、従業員が安心して働ける環境が維持され、M&Aによるシナジーが最大限に発揮される
まとめ
現在の管工事業界は、人手不足や2024年問題、後継者不在といった課題を解決するため、「守りの廃業」ではなく「攻めのM&A」へと大きくシフトしています。
しかし、M&Aを成功させるためには有資格者の数やメンテナンス契約による収益の安定性を可視化することが不可欠であり、また専門的な知識やノウハウも必要とします。
私たちM&Aベストパートナーズには、管工事業を含む建築業全体に特化したアドバイザーが多数在籍。
これまで数多くのM&Aを成功に導いてきた豊富な実績に裏付けされた知識と経験を活かし、徹底したサポートをさせていただきます。
M&Aを成功させ、管工事事業を、そしてこれまで一緒に働いてくれた従業員の未来を守りたいとお考えの方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズまでご相談ください。
