財務状況の悪化などの原因により、再建を目指して会社更生法や民事再生法という方法を検討する方は少なくありません。
どちらも似たような意味合いに捉えられがちですが、対象となる企業や関係者の取り扱いなどさまざまな違いがあります。
そこで本記事では、会社更生法と民事再生法の違い、会社更生法のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
会社の再建を目指すためにどのような手段を選ぶか悩まれている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
会社更生法とは
会社更生法は、法律で定められた再建型の倒産手続きです。
会社更生法の手続き開始の申立て後、裁判所において「事業の継続を内容とする更生計画案の作成若しくは可決の見込み又は事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき」など※1を除き、手続き開始が認められます。
※1 :決定されない場合は、破産手続きへ移行される場合がある
参考:e-GOV 法令検索|会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)
会社更生法と民事再生法の違い
会社更生法と混同されやすい法律として民事再生法がありますが、内容は大きく異なります。
それぞれの相違点を比較して解説します。
対象となる企業
会社更生法と民事再生法の違いとして大きく異なる点は、その対象となる企業です。
会社更生法 | 民事再生法 |
株式会社のみに適用 | 法人・個人事業主を問わず適用 |
会社更生法では「株式会社のみ」という限定がある一方で、民事再生法は合同会社や有限会社、医療法人、NPO法人など幅広い事業者を対象としています。
経営陣と株主の取り扱い
会社更生法と民事再生法では、経営者や株主の取り扱いも異なります。
会社更生法 | 民事再生法 |
・経営陣は退陣し、管財人が管理を行う ・株主の保有株式は原則無価値化する | ・経営陣の続投が可能 ・新株発行や減資の可能性はあるが、原則として維持される |
会社更生法は経営権や株主の地位が厳しく制限されますが、民事再生法の場合は柔軟な対応が可能です。
手続き・費用
会社更生法と民事再生法は、手続きやかかる費用にも違いがあります。
会社更生法 | 民事再生法 |
厳格な手続きのもとで行い、費用もかかる | 比較的簡単で、費用も抑えられる |
会社更生法は比較的規模の大きな企業向けの法律のため裁判所の関与が強く、手続きも厳格かつ複雑化しています。
しかし、民事再生法は企業規模や法人種別を問わず利用しやすい制度となっているため、手続きも簡素化され費用を抑えることも可能です。
担保権の取り扱い
債権を確実に回収する権利である担保権の取り扱いにも違いがあります。
会社更生法 | 民事再生法 |
大きく制限される | 原則として行使が認められている |
会社更生法では、裁判所の管理下に入った時点で債権者が担保権を行使することができなくなります。
また、場合によっては担保権者に対して減額や繰延べが認められるケースもあります。
一方で民事再生法の場合、原則として担保権は再建計画の対象外となるため、手続き中でも担保権の行使を止めることはできません。
会社更生法の手続きの流れ
会社更生法の一般的な手続きの流れは下図のとおりです。

会社更生法のメリット・デメリット
事業の再建を目的として会社更生法を選択する場合、メリット・デメリットを理解しておかなければ、適切な事業再建を目指すことはできません。
会社更生法のメリット・デメリットを解説します。
会社更生法のメリット
会社更生法の主なメリットは、以下のとおりです。
- ステークホルダーへの影響をコントロールできる
- 担保権の行使に制限があるため、再建に集中できる
- 大規模な組織再編も可能
会社更生法は、更生計画案に則って計画的に再建を目指すため、ステークホルダーへの対応がしやすく、再建後の信頼回復も見込みやすいです。
また、担保権の行使に制限がかかり、更生手続き中の強制的な債権回収を止められるため、集中して再建に向き合えることは大きなメリットです。
その他にも、裁判所や金融機関、取引先も関与するため、企業の社会的責任や雇用維持など、大規模な組織再編も可能な再建方法です。
会社更生法のデメリット
会社更生法のデメリットとして、主に以下の4点が挙げられます。
- 経営陣の退任が必要
- 手続きが厳しく費用もかかる
- 社会的信用の低下を招く可能性がある
- 株主や債権者の権利が制限される
これらのデメリットは再建後もさまざまな影響を与える恐れがあるため、事前に理解したうえでリスクを最小限に止められるような更生再建計画を立案・実行することが重要です。
会社更生法以外の選択肢
会社更生法は事業を続けながら会社全体の再建を目指す手段の一つですが、状況によっては社会的信用の低下につながり、結果として企業価値をさらに低下させる可能性があります。
このようなリスクを防ぐために、会社更生法以外の再建方法としてM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
M&Aにはさまざまなスキームがあり、企業の置かれている状況や再建ビジョンに適した方法の選択が可能です。
まとめ
脆弱化した事業の再建を目指して会社更生法を検討する方は少なくありません。
会社更生法の適用が受けられれば計画的な事業再建によってステークホルダーからの信用も早期に回復できる可能性があります。
一方で、計画通りに再建が進まない場合はさらなる信用低下につながるなど、目標とする再建が困難になるリスクが生じます。
リスクを最小限に止めて再建を目指したいと考えている方は、M&Aという選択肢を検討材料に加えてみてはいかがでしょうか。
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