本当に「IT業界に未来はない」のか?職種ごとの将来性と今後求められるスキルとは

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

IT業界は技術革新のスピードが早く、AIの台頭によりさまざまな業務が自動化されはじめています。

これに伴い、特に中小のIT企業について「未来はない」と悲観的に捉えられることもあります。

果たしてこのような見方は正しいのでしょうか。

本記事では、IT業界で将来性が期待される職種や、今後求められるスキルについて解説します。

企業が生き残っていくために、どのような人材を育成・採用すれば良いのかお困りの経営者はぜひ最後までお読みください。

「IT業界に未来はない」と言われる5つの理由

IT業界は将来の成長が期待される一方で、「未来はない」といった悲観的な意見を目にすることもあります。

なぜこのようなネガティブな意見が上がるのか、その背景や理由について考えてみましょう。

AIによる仕事の奪い合い

ここ数年の間に生成AIは飛躍的に進化し、日々の業務にも積極的に取り入れる企業が増加しました。

特にIT業界ではAIの活用が進んでおり、たとえば単純なプログラミングやコーディング作業はAIによって続々と自動化されています。

システムの要件定義や基本的な設計、あるいは創造性が求められる高度な開発はまだ人間が主導していますが、やがてこれらの作業もAIに置き換わるのではないかといった懸念があります。

離職率が高いイメージ

一般的にIT業界は人材の流動性が激しいとされており、さまざまな理由によって短期間で転職するケースが見られます。

一方で、近年の厚生労働省の雇用動向調査の結果を見てみると、IT業界の離職率は全産業の平均値と比較して決して高い割合ではなく、徐々に離職率は改善していることも事実です。

長年にわたって「IT業界=ブラック」というネガティブなイメージが定着したこともあり、優秀な人材が集まりにくく未来がないといわれるようになったと考えられます。

労働環境が過酷

IT企業の多くはプロジェクト単位でさまざまな業務にあたるため、特に納期が差し迫った状況下では長時間労働が常態化することがあります。

また、納品したシステムにエラーやトラブルが発生した際には緊急対応が求められることも少なくありません。

このような環境では、過酷な労働環境に耐えきれず優秀な若手人材から会社を離れていき、会社に残った社員も将来を不安に感じることが多くなります。

多重下請け構造

日本のIT業界はピラミッド型で、主に中小企業が大手の下請けとして開発する多重下請け構造となっています。

元請けと下請け、さらにその下に二次請けや三次請けと構造が連なっていくと、下層にいくほど得られる利益が減少していきます。

また、テストや運用といった下流工程は比較的単純な作業が多く、業務を通してエンジニアとしてのスキルが身につきにくいといった課題もあります。

その結果、下請け企業で働くエンジニアは十分な報酬とスキルが得られず、将来に不安を感じるようになります。

グローバル化による影響

ITは特にグローバル経済の影響を受けやすい業界で、海外企業や外資系IT企業との激しい競争を強いられます。

また、昨今ではコスト削減や人材確保を目的として、海外の企業にシステム開発を委託するオフショア開発に乗り出す企業も増えています。

その結果、日本人エンジニアを育成できず、IT業界から国内人材が離れていく要因にもなります。

関連記事:IT業界の離職率は高い?低い?企業がとるべき対策とは

実際のIT業界の市場動向を検証

日本のIT業界は本当に「未来はない」と断言できるのでしょうか。市場動向をもとに詳しく検証してみましょう。

市場規模は拡大中

総務省が公表している「令和6年版 情報通信白書」によると、世界のIT市場規模は2020年まで400兆円前後を横ばいで推移してきました。

しかし、2020年のコロナ禍を契機に右肩上がりに転じ、2022年には596兆円、2023年には657兆円を記録。

日本国内ではDXを推進する企業が増えたこともあり、IT投資額は16兆円に迫る勢いで過去最高額を更新し続けています。

全体で見ればIT業界の市場は拡大傾向にあることは間違いありませんが、今後伸びる分野とそうでない分野があることも事実です。

IT業界の中でも、特に今後の成長が期待されている分野は以下の通りです。

  • AI
  • IoT
  • サイバーセキュリティ
  • クラウドサービス
  • 量子コンピューティング など

特にAIの技術は加速度的に進化しており、数ヶ月のスパンで革新的なサービスが続々と登場しています。

今後もこの流れはしばらく続くと考えられ、これまで人が担ってきたさまざまな仕事やタスクがAIに置き換わっていく可能性もあります。

また、ハードウェアの分野では量子コンピューティングの本格的な普及が控えており、コンピュータの処理性能が飛躍的に進化するといわれています。

一方で人材不足が課題に

日本国内では近年、多くの業種で人手不足が深刻化しており、IT業界も例外ではありません。

AIによってコーディングやテストなどの業務が自動化・効率化される一方で、システムの要件定義や基本的な設計には人の手が不可欠です。

また、顧客やクライアントの課題を正確に汲み取り、それを解決するためのソリューションを提案するのも人でなければ難しく、エンジニアだけでなく営業職も不足傾向にあります。

M&A件数が増加

IT業界で注目すべきトピックが、M&Aの案件数が増加傾向にあることです。

この背景には、同じIT業界でも事業内容によって市場の伸びが異なり、業績が好調な企業とそうでない企業との二極化が進んでいることが主な理由として挙げられます。

また、今後の市場の伸びを見込んで参入したものの、その分野の知見や技術が不足していたり、人手不足が解消できず経営が立ち行かなくなったベンチャー企業などもM&Aに踏み切るケースが少なくありません。

関連記事:IT業界のM&A動向とは?基礎知識や成功ポイントについて理解しよう

IT業界における職種別の将来性

IT業界で活躍する専門職にはさまざまなものがありますが、今後さらにニーズが高まっていくのはどの職種なのでしょうか。

主な職種ごとの将来性を考えてみましょう。

データサイエンティスト

データサイエンティストとは、収集したビッグデータを分析しビジネスの意思決定に役立てる専門職です。

特に、昨今ではAIのニーズが高まっていることもあり、統計解析や機械学習を駆使してビジネス課題を解決に導くデータサイエンティストは引く手あまたです。

ただし、AIの発展により、一部のデータ処理や分析は自動化されていく可能性もあります。

そのため、今後のデータサイエンティストには、単なるデータ分析スキルだけでなく実務を理解したうえでビッグデータをどのように活用できるのかを提案する力が求められます。

AIエンジニア

AIエンジニアとはその名の通り、AIを活用したシステムを開発する専門職です。

昨今では生成AIが広く普及するようになりましたが、ビジネスの分野では今後、製造や金融、医療など専門分野に特化したAIシステムの需要が高まっていくと考えられます。

これを開発するには、機械学習や深層学習の知見を持ったAIエンジニアが不可欠な存在です。

ただし、一部の作業はノーコードツールや大規模なAIモデルによって代替される可能性もあるため、今後のAIエンジニアはビジネス課題への深い理解や提案力などの専門性が要求されます。

クラウドエンジニア

リモートワークが一般的な働き方となった現在、クラウド技術は企業のITインフラに不可欠です。

これに伴い、クラウドエンジニアの需要も急速に高まっています。

AWSやAzureといった主要クラウドサービスの知識を持ち、設計から運用、セキュリティ対策までを包括的に担える人材は特に重宝されるでしょう。

ただし、クラウド技術の進化は早く、それに伴い求められるスキルも変化していくため、継続的な学習とスキルアップが不可欠です。

サイバーセキュリティ専門家

機密情報や個人情報の漏えいは企業にとって大きなリスクであり、セキュリティインシデントを防ぐためにもサイバーセキュリティ専門家は不可欠な存在です。

近年ではゼロトラストセキュリティの導入や、クラウド環境のセキュリティ強化が求められており、つねに最新の情報を収集したり継続的な勉強が欠かせない職種です。

ちなみに、サイバーセキュリティもAIによる自動化が進む分野ですが、リスク分析や対応策の設計には人の判断が不可欠なため、今後も将来性は高い職種といえます。

デジタルマーケター

デジタルマーケターとは、SNSやWebサイト、広告などを駆使しながら、ターゲットに最適なアプローチを検討し商品やサービスの販売につなげる専門職です。

SEO対策など一部の業務は自動化が進みつつありますが、基本的な戦略の立案や具体的な施策の検討は人が担う必要があります。

クリエイティブな発想をもち、さまざまなデータを組み合わせながら効果的なアプローチを立案できるデジタルマーケターは、今後の市場価値をさらに高められる可能性があります。

社内SE

社内SEは企業内のシステム開発や運用、ITインフラ管理を担う専門職で、業務効率化やDX推進に不可欠な存在です。

自社の業務内容を把握しているからこそ、業務プロセス改善のためのシステム開発を内製化したり、セキュリティ対策を任されることも多くあります。

特に、IT戦略の策定やベンダーコントロールができる社内SEは重宝される傾向があり、今後も一定の需要が続くと考えられます。

関連記事:IT業界の将来性|伸びる企業と淘汰される企業の違いとは

IT人材に今後求められるスキルとは?

IT業界の進化は加速しており、求められるスキルも変化し続けています。

今後のIT人材に求められる主要スキルを紹介します。

技術スキル

IT業界といえばプログラミングが代表的なスキルとして挙げられますが、AIの進化によって単純なコーディングやテストは自動化されていくと考えられるため、今後身につけておきたい技術的なスキルとしては、主に以下の3つが挙げられます。

AI・機械学習

AIは専門分野に特化したシステム開発の需要が高まると考えられるため、機械学習や深層学習の基本を理解したうえでモデル開発のノウハウを修得しておくと大きな武器になるはずです。

クラウドコンピューティング

先述の通り、クラウドコンピューティングはAWSやAzureといった主要クラウドサービスの知識のほか、システム設計から運用、セキュリティ対策まで広範囲のスキルが備わっていることが理想的です。

サイバーセキュリティ

最新のサイバー攻撃の手法やそれに対する有効な対処方法、ゼロトラストセキュリティやクラウド環境のセキュリティ対策についても学習しておくと良いでしょう。

データリテラシー

ビッグデータの活用が進む中ではデータを適切に分析・解釈し、ビジネスに活かす能力が求められます。

たとえば、売上データから売れ筋商品をピックアップするといった単なるデータ分析ではなく、一緒に購入されている商品の傾向やユーザーの属性、SNSの声なども踏まえて商品開発のヒントにするといった方法もあります。

データをヒントにどのようなことが読み取れるのかを深く考え、実際の業務改善や意思決定につなげる力が重要になっていくでしょう。

ソフトスキル

IT人材には技術的な知識だけでなく、仕事に対する姿勢や取り組み方といったソフト面でのスキルも不可欠です。

チームワークやコミュニケーション

リモートワークが普及したこともあり、これまで以上にチームワークやコミュニケーション能力が重要になっています。

プロジェクトマネジメント

AIによって単純作業が自動化されていくと、少人数のチームでプロジェクトマネジメントを任される可能性もあります。

複数のプロジェクトに参画し同時並行で仕事を進めることも出てくるため、スケジュール管理やリソース調整のスキルが不可欠です。

変化への適応性

テクノロジーが加速度的に進化していく中で、従来の仕事のやり方に固執していると十分な成果が得られなかったり、競争に負けてしまう可能性もあります。

そのため、新しい技術や手法を柔軟に受け入れる姿勢が求められます。

学習意欲が高い

自己学習を続け、新しい技術や業界のトレンドをキャッチアップできる人材は市場価値が高まりやすく、持続的な成長が期待できるでしょう。

ビジネスニーズへの感度

ITエンジニアにとって技術的な知識やスキルは大きな武器ではありますが、見方を変えれば課題を解決するための手段に過ぎません。

これから重要になるのは、ITの技術が顧客の課題をどのように解決するのか、あるいは利益につながるのかを考えることです。

ビジネス視点を持ち、顧客やクライアントの立場で考えられるエンジニアは重宝され、将来性も期待できるでしょう。

関連記事:IT業界の今後の展望|企業が生き残るための戦略設計について

IT業界のM&A仲介ならM&Aベストパートナーズまで

ITは成長産業ではありますが、テクノロジーの進化のスピードが早い分、将来性が見通しにくく不安を感じる経営者も多いものです。

また、深刻化する人手不足によって優秀なエンジニアが見つからず、事業の継続が困難になることも考えられるでしょう。

このような経営課題を解決するための手段として、M&Aも選択肢のひとつとしてご検討ください。

IT業界でのM&Aは増加傾向にあり、大手の傘下に入ることで経営の安定化を図れる可能性もあります。

MABPではこれまで数多くのM&A仲介実績があり、IT業界の事例も豊富です。

M&Aに不安を感じていたり、M&A以外にもさまざまな選択肢を比較しながら経営の立て直しを検討している方は、ぜひお気軽にMABPまでご相談ください。

まとめ

「IT業界に未来はない」 と言われる背景には、AIの進化によって業務が自動化される懸念や、ネガティブなイメージの定着、業界の多重下請け構造といったさまざまな要因が考えられます。

また、同じIT業界の中でも職種によって将来性は異なり、今後さらに需要が高まっていく専門職もあります。

企業が生き残っていくためには、業界の動向をつねに把握し従業員のスキルアップを支援したり働きやすい環境を整えていくことが重要です。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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