M&A失敗の要因や確率とは?大手・中小企業の失敗事例も紹介

MABPマガジン編集部

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経営の立て直しや後継者問題の解決のために、M&Aを検討する中小企業が増えています。

しかし、M&Aは必ず成功するという保証はなく、特に準備不足やリサーチ不足が原因で失敗に終わる可能性も十分考えられます。

本記事では、M&Aが失敗する要因にはどのようなものが考えられるのか、実際にあった失敗事例や失敗する確率などもご紹介します。

M&Aにおける失敗とは?

そもそもM&Aの失敗とはどういったケースが該当するのでしょうか。代表的な失敗のパターンをいくつかご紹介します。

シナジー効果の不発

M&Aを行う目的のひとつに、複数の会社が統合することによって生まれるシナジー効果が挙げられます。

しかし、両社がもっている技術やノウハウが重複していたり、統合後にどのような経営戦略をとっていくのかが明確化されていないと、期待通りのシナジー効果が得られずM&Aそのものが無駄になってしまうこともあります。

買収後の不祥事や経営問題の発生

一連のM&Aのプロセスが完了し経営統合後に、買収先企業での不祥事や経営問題が発覚するパターンもあります。

たとえば、売り手企業に簿外債務や会計に関する不正行為があり、買い手企業がそれを見抜けないまま買収を進めてしまうと、M&Aの完了後に不正が明るみになり買い手企業の信用やブランド価値が低下する可能性もあるでしょう。

企業文化のミスマッチ

企業文化や経営戦略が極端に異なる会社同士が統合すると、環境の変化に対応しきれず戸惑う社員も出てきます。

社員同士の人間関係が悪化したり、経営層との軋轢が生じたりして、仕事に対するモチベーションが低下する社員も出てくるでしょう。

その結果、生産性の低下や離職率の悪化を招き、M&Aを実施する前よりも経営環境が悪くなる可能性もあります。

企業文化の統合はM&Aの成否を左右する大きな要因でもあり、対象企業の選定段階から自社の文化や価値観とマッチするかを慎重に判断する必要があります。

関連記事:M&Aで会社売却後の社長はどうなる?継続的な経営参画など事例まで解説

M&Aが失敗する理由・要因

M&Aが失敗するのはなぜなのでしょうか。主に考えられる理由や要因をいくつかご紹介します。

デューデリジェンスの不足

デューデリジェンスとは、買収先企業の財務状況や法務リスク、経営体制などを事前に詳しく調査するプロセスです。

デューデリジェンスが不十分なままM&Aを進めてしまうと、簿外債務や粉飾決算など重大なリスクを見逃してしまう恐れがあります。

その結果、買収後に想定外の問題が発生しM&Aの失敗を招く要因になりかねません。

買収価格の過大・過少評価

M&Aにおいては対象企業の価値を正しく算定し適切な価格で取引を行う必要があります。

企業価値を過大評価すると、買い手企業は投資額の回収まで長期間を要したり、財務状況の急激な悪化を招く可能性があるでしょう。

過少評価の場合は売り手企業との交渉が決裂し、取引そのものが破談になってしまうケースもあります。

PMIの失敗

PMI(Post-Merger Integration)とはM&A後の統合プロセスを指します。

先述した企業文化の統合もPMIのひとつですが、これ以外にも業務プロセスの統合やシステムの統合、統合後の組織体制構築なども含まれ、PMIは広範におよびます。

PMIが失敗すると企業文化の統合が進まず生産性の低下や離職率の悪化を招く可能性があるほか、業務プロセスや業務フローも混乱し深刻な問題を引き起こすこともあります。

M&A交渉中の情報漏えい

M&Aの交渉を進めている事実が外部に漏えいすると、取引先との関係悪化や社員の退職、金融機関との融資に影響が出ることもあります。

M&A交渉中の情報漏えいは特に売り手企業が発端となって引き起こされるケースが多く、買い手企業からの信用を失い交渉そのものが決裂することも少なくありません。

戦略や見通しの甘さ

M&Aでは統合後にどのような経営戦略をとるのか、将来のビジョンも明確にしておくことが求められます。

戦略や見通しが甘いと、統合後にシェアの拡大やシナジー効果が得られずM&Aが失敗に終わることもあります。

M&Aが失敗する確率はどれくらい?

どれほど入念な準備を行い、コンサルタントや税理士、弁護士などの専門家の協力を得ながら進めたとしても、M&Aは100%成功するとは限りません。

実際のところ、どの程度の割合でM&Aが失敗するのか気になっている経営者も多いのではないでしょうか。

M&Aに関するさまざまな支援を行っている大手コンサルタント会社の調査によると、約3割の企業は期待通りの成果が得られなかったと回答しています。

ちなみに、上記の調査は売上規模の大きい大手企業のM&A案件を対象にしており、中小企業も含めて考えると失敗確率は変動する可能性もあるでしょう。

M&A失敗の責任の所在はどこにある?

M&Aのプロセスはさまざまな立場の人間や専門家が協力しながら進めていくため、万が一失敗に終わった場合に責任の所在がどこにあるのか曖昧になりがちです。

どのような場合に誰に責任があるのか、いくつかの例を交えながらご紹介しましょう。

双方の経営陣

M&Aが失敗に終わるパターンとして多いのが、買い手企業と売り手企業双方の経営陣に問題があるケースです。

たとえば、M&A後の経営戦略や見通しの計画を立てるのは経営陣の大きな役割であり、これらが十分検討されないままプロセスを進めてしまうとM&Aが失敗に終わることがあります。

また、売り手企業からM&Aの交渉を行っている情報が漏えいした結果破談になるパターンや、交渉の結果一度まとまった条件を破棄するなど、経営陣の誠意のない対応が原因で失敗に終わるケースも少なくありません。

M&Aアドバイザー

M&Aでは専門的な知識やノウハウが求められるため、M&Aアドバイザーと契約するパターンが一般的です。

しかし、アドバイザーの経験が不足しているとデューデリジェンスで重大なリスクを見落とし、統合後に買い手企業が。

また、M&Aの候補先企業を選定する際に、アドバイザーが自社の経営方針やビジョンを正しく理解できていないとミスマッチを引き起こす可能性もあるでしょう。

法務・財務部門

M&Aの一連のプロセスが完了した後に、売り手企業において簿外債務や会計に関する不正行為が発覚した場合、その企業の経営陣はもちろんのこと法務・財務部門にも責任が問われます。

これらの不正は担当者の一存のみで行えるものではなく、組織的な不正が横行しているケースが少なくありません。

双方の社員

M&Aの統合を円滑に進めるためには、双方の会社に在籍している社員がお互いを尊重し理解し合う姿勢も求められます。

しかし、そのような姿勢がなく自社のこれまでのやり方や価値観を押し付けてしまうと、社員同士の反発を招き統合がスムーズに進まずM&Aが失敗に終わってしまうケースもあるでしょう。

関連記事:M&Aで中小企業が解決できる課題とは?実施に向けた課題やPMIの課題と併せて解説

大手企業のM&A失敗事例

M&Aを成功させるためには、過去の失敗事例を参考にしながら対策を講じることが大切です。過去に実際にあったM&Aの失敗事例をいくつかご紹介しましょう。

ライザップ

パーソナルトレーニングジムを中心に複数の事業を展開するライザップでは、短期間に小規模のM&Aを繰り返し経営規模を拡大していきました。

しかし、あまりにも多くの企業を子会社化した結果、買収した企業の経営を立て直すための時間が不足し、思うように利益が伸びず経営の足を引っ張るようになります。

また、グローバル化が進む中でも国内事業のみに特化し、海外展開を行わなかったため利益も小さく、結果としてライザップのM&A戦略は失敗に終わってしまいました。

このような反省を踏まえ、ライザップは経営陣の刷新や肥大化したグループ企業の整理、ガバナンスの強化などに取り組み経営体制を立て直しています。

キリン

大手飲料メーカーのキリンは、2011年にブラジルの大手ビールメーカーを買収しました。

しかし、株主によって訴訟が提起されたことで全株式を取得せざるを得なくなり、当初の予定よりも買収金額が大幅に増加。

さらにM&A後もブラジルにおける市場シェアは低下し、加えて通貨安の影響もあり急激な業績悪化を招く結果となりました。

ニデック(旧社名:日本電産)

電動機(モーター)の分野で高いシェアを誇るニデックは、これまで国内外の60社以上の企業を買収し経営規模を拡大してきました。

しかし、海外のあるメーカーが供給していた製品について不具合が発生し、それらを納品していた取引先から訴訟が提起され巨額の損害賠償が請求される事態に。

結果として、売り手企業が抱えていた”負の遺産”までM&Aによって引き継ぐことになってしまったのです。

中小企業のM&A失敗事例

上記はいずれも知名度も高い大手企業の事例ですが、中小企業にも多くの失敗事例があります。

着手が遅れM&Aのタイミングを逃したケース

ある会社では経営者の高齢化と後継者不在の悩みを抱えていたこともあり、M&Aアドバイザーから候補となる買い手企業を打診されました。

しかし、日々の業務に忙殺されM&Aへの着手が遅れてしまい、その間に買い手企業は競合他社とのM&Aが成立。

結果としてM&Aの絶好のチャンスを逃してしまいました。

急激な業績悪化によって不成立となったケース

自社の経営を立て直すためにM&Aを検討していた会社では、買い手企業の候補先が打診され交渉を進めていました。

しかし、交渉が長期化する間に売り手企業の業績が急激に悪化。買い手企業は当初の買収価格を下げるか契約の解除を求めましたが、売り手企業はどちらにも応じることができず交渉は破談となりました。

不正が発覚したケース

ある会社では双方の交渉がスムーズに進みM&Aが成立しましたが、契約成立後に売り手企業の粉飾決算と簿外債務が発覚します。

結果として買い手企業は想定外の負債を抱えることになり、売り手企業の経営者を相手取り損害賠償請求を行いましたが、裁判には長期間を要し納得の得られない結果となりました。

M&Aの失敗で倒産になるケースもある?

これまでご紹介したM&Aの失敗事例は、いずれも倒産にまでは至らず経営の立て直しが可能なものばかりです。

しかし、会社の業績が急速に悪化している場合、M&Aが成立したとしても経営危機を脱することができず倒産に至るケースもあります。

また、不正の横行や製品・サービスの品質低下などが原因で取引先との関係が悪化し、訴訟問題にまで発展すると巨額の損害賠償が求められ、それが引き金となって倒産に至る可能性もあるでしょう。

関連記事:M&Aの目的を4つに分類|売り手と買い手に分けて詳しく解説

まとめ

M&Aを進める際には入念な準備とリサーチが必要であり、これらをしっかりと行うことで失敗のリスクを抑えられる可能性があります。

また、M&Aが失敗に終わる背景には、経営陣や法務・財務部門に問題があるケースもありますが、依頼するM&Aアドバイザーやコンサルタントの経験不足や信頼性の低さが原因となっている場合もあります。

M&Aの失敗を防ぐためにも、安心して任せられる信頼性の高い専門家を選ぶことが大切です。

著者

MABPマガジン編集部

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