2024年7月4日

M&Aの目的を4つに分類|売り手と買い手に分けて詳しく解説

MABPマガジン編集部

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M&Aと聞くと「会社の乗っ取り」といったネガティブなイメージを抱かれることもありますが、実際には売り手企業と買い手企業それぞれにメリットがあります。

特に最近では中小企業を対象としたM&Aが増加傾向にありますが、それはなぜなのでしょうか。

今回は企業がM&Aを行う目的について、売り手と買い手それぞれの立場から考えてみましょう。

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称であり、日本語では「合併と買収」と直訳されます。

合併と買収の定義は以下の通りです。

  • 合併:複数の企業が1つの企業に統合されること
  • 買収:企業が他の企業の経営権を取得すること

ちなみに、合併と買収にもさまざまな手法があり、主に以下の4つに分類されます。

【合併】

新設合併:合併する企業がすべて解散したうえで、新たに設立する企業に統合される形態

吸収合併:ひとつの企業が他の企業を吸収し統合する形態

【買収】

株式譲渡:買収先企業の株式を取得することによりその企業の経営権を得る手法

事業譲渡:一部または全ての事業を他の会社に譲渡する手法

2000年代には企業の敵対的買収が大きなニュースとなったこともあり、従来はM&Aに対してネガティブな印象を抱く経営者も少なくありませんでした。

しかし、昨今では中小企業の経営悪化や深刻な人手不足、後継者不足といった課題が山積しており、これらを解決するための手段としてM&Aが再び注目されるようになりました。

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

【売り手側】M&Aの目的を4つに分類

M&Aに踏み切る売り手の企業側にはさまざまな目的がありますが、特に以下の4つが代表的です。

後継者問題の解決

経営者の高齢化に伴い次の世代へ経営を引き継ぎたいと考えているものの、少子化や企業自体の業績悪化などによって後継者が見つからないケースは少なくありません。

このような後継者問題は中小企業が頭を悩ませていることが多いですが、M&Aを通じて経営を引き継ぐことで会社の存続とさらなる成長につなげられる可能性があります。

従業員の雇用

従業員を雇用している企業の場合、廃業をするということは従業員の解雇にもつながります。

従業員とその家族の生活を守るためにも、どうしても解雇は避けたいと考える経営者は少なくありません。

M&Aによって会社が存続できれば、従業員の雇用が維持されるばかりではなく、労働環境や福利厚生も改善される可能性があります。

資金調達

事業の成長や新たな投資を行うための資金を得るためにM&Aを選択する企業もあります。

M&Aによって得られた会社の売却益は、新たなビジネスチャンスへの投資や事業の拡大に活用できます。

また、資金不足や債務超過に陥っている企業の場合、財務健全化にもつながるでしょう。

創業者利益の獲得

創業者が多くの株式を保有している場合、M&Aによって創業者個人が利益を得られる場合もあります。

老後資産の確保はもちろんのこと、得られた売却益を新たな事業の立ち上げに活用したり、個人保証の返済に充てたりすることも可能です。

関連記事:M&Aを失敗する要因と失敗を防ぐための方法と対策

【買い手側】M&Aの目的を4つに分類

次に、買い手側にとってのM&Aの目的として考えられるものをご紹介します。

技術・ノウハウの獲得

新たな製品開発や新規事業の創出にあたっては、自社にない技術やノウハウが必要になることもあります。

そこで、業界特有のノウハウを持つ企業を買収することにより、買い手企業は開発期間の短縮や競争力の向上につなげられるでしょう。

経営資源の獲得

M&Aは新たな経営資源の獲得を目的として行われることもあります。

たとえば、土地や建物、設備といった資産はもちろんですが、専門人材や顧客基盤、サプライチェーンなども含まれます。

特に人手不足が深刻化する昨今、専門人材の確保に苦戦する中小企業は多いことから、即戦力の確保を目的としてM&Aが採用されるケースも増えています。

市場シェアの拡大

地元を中心に事業を展開してきた地場の企業が、他のエリアに進出し市場のシェアを獲得することは簡単ではありません。

そこで、同業種または関連性の高い業種の企業を買収することにより、買い手企業はシェアを拡大しやすくなります。

また、自社と競合するライバル企業を買収することにより、価格競争を緩和し利益を確保しやすくする狙いもあります。

事業の多角化

特定の事業のみに特化した経営はポジティブに捉えられるケースも多いですが、経営の観点から見るとリスクが集中するため必ずしも最適な手段とはいえません。

そこで、事業を多角化し安定した収益を確保するためにM&Aが行われることもあります。

自社とは異なる業種の企業を買収することにより、シナジー効果を生み出したりリソースの最適化やコスト削減を実現することができるでしょう。

関連記事:M&A仲介会社とは?利用するメリットや仲介業者の選び方

M&Aの流れをわかりやすく解説

M&Aはどのようなプロセスに沿って進められるのでしょうか。大まかな流れと各プロセスの内容を解説します。

戦略立案

はじめに、どのような目的でM&Aを行うのか、そのために必要な戦略や計画を立案します。

たとえば、「後継者問題を解決し経営を安定的に引き継ぎたい」「新たな市場に進出するために技術やノウハウを獲得したい」などの目的を設定し、どのような企業をターゲットとするのかを検討します。

対象企業の選定

M&Aの交渉を行うターゲット企業の選定にあたっては、市場調査を行ったうえで自社の戦略にマッチする企業をリストアップします。

対象企業を選定する際には、事業内容や経営規模はもちろんのこと、財務状況や経営状況などを評価する必要があります。

幅広い選択肢の中から候補をリストアップするためにも、M&Aの仲介を専門に行っている業者に依頼するケースも少なくありません。

初期交渉

対象企業が決定したら、相手先企業との初期交渉に入ります。初期交渉のフェーズでは、まず相手先企業に対してM&Aの意向を伝え、先方の反応を確認します。

後継者不足や経営状況の悪化などさまざまな課題を抱えており、初期交渉では好意的な反応を示す売り手企業も少なくありません。

初期交渉での反応が良好であれば、買収価格や条件についての大まかな合意を目指し交渉を進めていきます。

また、このタイミングで秘密保持契約(NDA)を締結し機密情報の漏えいを防ぎます。

デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、相手先企業の財務状況や法務リスク、労務管理などに関するリスクを詳しく調査することです。

正式契約の後に経営上のさまざまな問題が発覚すると、買い手企業が一方的にリスクを負うことにもなりかねないため、潜在的リスクを事前に把握・解消しておくためにもデューデリジェンスは不可欠なプロセスです。

最終交渉と契約締結

デューデリジェンスの結果に問題がなければ最終交渉のフェーズに入ります。ここでは、買収価格や具体的な契約条件などを細かく確認しながら双方の合意を得ます。

その後、正式なM&Aの契約書を作成し契約を締結します。

契約書には法的拘束力があるため、細かい部分までお互いがしっかりと確認し認識の相違がないようにしなければなりません。

株主・関係者の承認

会社の規模や組織体制、株主構成によっては、株主総会や取締役会などを経て関係者からの承認が必要となることもあります。

株主総会や取締役会などではM&Aの内容について丁寧に説明し、理解と支持を得ることが重要です。

クロージング

クロージングでは、契約内容に基づいて会社資産の移動や株式の譲渡などが行われます。

また、登記をはじめとした法的手続きや書類の作成・提出もこの段階で行われ、一連の手続きが完了するとM&Aの事務的なプロセスは完了となります。

ポストマージャーインテグレーション(PMI)

ポストマージャーインテグレーション(PMI)とは、M&A後の経営統合プロセスのことです。

具体的には、新組織における経営陣や従業員の役割分担、業務に必要なシステムや業務プロセスの統合といった実務的な内容のほか、組織文化の統合なども含まれます。

最終的にM&Aが成功するかどうかはPMIにかかっているといっても過言ではなく、両社のシナジー効果を最大限に引き出すためにも全社で取り組んでいく必要があります。

まとめ

M&Aは買い手企業が優位な立場で進められるものというイメージがありますが、売り手企業にとっても後継者問題の解決や資金調達などに役立てられることから、買い手企業に対して自らの会社を売り込むというケースも珍しくありません。

M&Aの目的は企業によってもさまざまであり、最終的な目的を明確にしておくことでターゲットとなる企業の選定や交渉も進めやすくなるでしょう。

著者

MABPマガジン編集部

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