ビジネスを未来へつなぐためには、後継者へ事業を引き継ぐ「事業承継」が不可欠です。
しかし、実際に事業承継を行ううえでは、さまざまなトラブルに直面することがあります。
事業承継を成功させるためには、トラブルの事例を知り、原因や対応策を把握することが大切です。
本記事では、よくある事業承継トラブルの事例や原因、解決策を紹介します。
目次
事業承継トラブルでよくある6つの事例とその原因とは
経営者の高齢化が進む日本において、多くの企業が事業承継に取り組んでいます。
しかし、何のトラブルもなく事業承継が完了することは稀です。
さまざまなステークホルダーを巻き込む事業承継では、何らかのトラブルに直面するケースのほうが多いでしょう。
ここでは、事業承継トラブルでよくある6つの事例を、原因も交えて紹介します。
多額の費用がかかり、事業の継続が難しくなる
事業承継には多額の費用がかかるため、事業資金を圧迫し、事業の継続が難しくなるトラブルが多くあります。
このようケースの主な原因は、事業承継に関するお金まわりの知識が不足していることです。
例えば、「株式譲渡」により事業承継を実施する場合、後継者は株式を買収するために多額の資金を調達する必要があります。しかし、このような知識が不足している場合、費用が想像以上にかかってしまうでしょう。
また、費用が必要という認識はあったとしても、具体的な見積もりが甘いケースもあります。自社だけで事業承継を進める場合、お金まわりの知識不足がトラブルの引き金となる可能性もあります。事前に必要な知識を集め、見積もりについては専門家の力を借りるとよいでしょう。
意思決定者が分散し、経営方針がぶれる
親族への事業承継を実施する場合、意思決定者が分散し、経営方針がぶれるトラブルがあります。例えば、経営者が自社株の大多数を保有したまま他界し、株式が配偶者や複数の子供に相続されるようなケースが考えられるでしょう。
株式は、企業における経営権の源といえます。株式が複数の親族に分配されれば、それぞれが経営における意思決定者となります。その結果、各意思決定者の間で経営方針の不一致が起きやすくなり、一枚岩の経営ができなくなるでしょう。
こうしたトラブルの主な原因は、事業承継への取り組み開始が遅いことです。早期に後継者を選定して引き継いだり、遺言書で株式の相続先を明記したりすれば避けられたでしょう。後継者の選定や育成を含めて、事業承継は早期に取り組み始めることが大切です。
引き継ぎが不十分なまま承継し、経営が難航する
事業承継では資産や人材だけでなく、経営理念や取引先との関係など、さまざまな要素を引き継がなければなりません。
このような引き継ぎが不十分なまま承継することで、経営が難航するトラブルもあります。
こうしたトラブルの原因も多くの場合、事業承継の取り組み開始が遅すぎることです。事業承継の開始から完了までには、5〜10年ほどかかることも珍しくありません。
「まだ大丈夫だろう」と考えていると、その必要性が訪れたときに間に合わなくなってしまいます。後継者への引き継ぎには十分な時間がかかることを理解し、早期に取り組みましょう。
経営者・経営方針が変わり、取引先が離れる
事業承継は、親族や従業員だけでなく、取引先との関係にも大きな影響を及ぼします。
経営者や経営方針が変わったことが受け入れられず、取引先が離れてしまうトラブルも少なくありません。後継者が大胆な経営方針を打ち出し、取引先離れを起こすケースもあります。
こうしたトラブルの主な原因は、ステークホルダーの意向を取り入れないまま事業承継の取り組みを進めることです。経営者や経営方針が変わることは、従業員・株主・取引先など、多くのステークホルダーに影響します。そのため、事業承継する前に先代経営者と後継者が取引先に挨拶をしにいくといった対応をしておく必要があるでしょう。
企業の統合が上手くいかず、従業員と労務上の問題が生じる
事業承継の手段として、M&Aが挙げられます。
M&Aにより組織体制も社内システムも異なる企業同士を1つに統合することは、容易ではありません。
相手企業との統合が上手くいかず、従業員と労務上の問題が生じるケースも散見されます。例えば、評価制度や待遇が統合前と比べて悪化し、従業員から不満が出るようなトラブルは少なくありません。
こうしたトラブルの主な原因は、M&A実施前に十分な経営統合計画を立てていないことです。M&A実施後に経営統合の方法を考え始めるのでは間に合いません。相手企業との違いを加味して、事前に制度設計やシステム導入などの計画を立てておくことが大切です。
後継者探し・交渉がスムーズに進まない
M&Aによる事業承継で多いトラブルは、後継者探しや交渉がスムーズに進まないことです。
M&Aでは、数多くある企業のなかから自社に合った相手を選び、取引条件に関して合意を得る必要があります。ブランド力や知名度の高い大企業であればいざ知らず、中小企業が理想の相手を見つけて成約を果たすことは容易ではありません。
こうしたトラブルの主な原因は、経験や知識がないまま自社だけでM&Aを進めようとすることです。
M&Aで自社に合った相手を探したり、取引条件の折り合いをつけたりするためには、多くのスキルが求められます。M&A未経験の経営者が適切に後継者探し・交渉を進めることは難しいでしょう。M&Aの成功率を高めるうえでは、専門家の依頼も検討することをおすすめします。
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事業承継のトラブルを防ぐ対応策とは
事業承継ではさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
事業承継のトラブルを防ぐために、ここで紹介する4つの対応策を知っておきましょう。
早期に計画を立てる
事業承継は、早期に計画を立てることが大切です。
年単位の長いスパンで取り組まなければならないため、計画が不十分では頓挫してしまいます。
早期に計画を立てておくことで、トラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。
また、相続や贈与が必要となるケースでは、遺言書や生前贈与などの準備も早めに進めておくべきです。
後継者は幅広い候補者から探す
事業承継では、誰を後継者にするかで大きく成否が変わってきます。
後継者選びで失敗しないように、できる限り幅広い候補者から後継者を探しましょう。
親族間で事業承継する場合にトラブルが起きやすい理由の1つとして、適任者でない人を後継者にしていることが挙げられます。親族内だけで後継者を探そうとすると、適任者を見つけることは難しくなるでしょう。親族への事業承継にこだわりすぎず、社外を含めて幅広い選択肢から最適な後継者を探すことが大切です。
事業承継税制などの制度を利用する
事業承継には、税金を含めて多くの費用がかかります。
金銭面の負担を減らすために、公的な制度を利用することも考えましょう。
例えば、「事業承継税制」を利用することで、相続税や贈与税の猶予を受けられる可能性があります。
こうした公的な制度を有効活用することで後継者の負担も小さくなり、トラブルの抑制につながるでしょう。
M&Aの専門家からアドバイスをもらう
M&Aにより事業承継を図る場合、専門家のサポートが不可欠です。
M&Aには法務や税務などの専門知識が欠かせず、自社のみで適切に進めることは難しいでしょう。
M&Aの専門家に依頼すれば、成功につながるアドバイスやサポートを受けながらM&Aを進めることができます。M&Aの成功実績が豊富な専門家であれば、手続きや交渉のコツを熟知しています。M&Aの後継者探しや交渉、手続きなどに不安がある場合は、専門家を利用しましょう。
まとめ
事業承継では、多額の費用がかかり事業の継続が難しくなったり、意思決定者が分散し、経営方針がぶれたりなど、さまざまなトラブルに直面することがあります。
今回ご紹介したトラブルを防ぐためには、事業承継の準備を早期に取り組むことが大切です。
また、M&Aによる事業承継を行う場合は、自社だけで進めようとせず、専門家の力を借りることも考えましょう。
事業承継をトラブルなく進められるか不安であれば、さまざまな業界におけるM&Aの実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。