2023年10月13日

M&Aにおける経営統合と合併の違いとは?統合後はPMIが重要?

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M&Aにおける経営統合と合併の違いとは?統合後はPMIが重要?

M&Aを検討している人のなかには、経営統合と合併のどちらを実施すればよいか、悩んでいるのではないでしょうか。

双方の違いを正しく理解することで、どちらが自社にとって適切な手法なのかを判断できるようになるでしょう。

この記事では、M&Aを検討している人に向けて、経営統合と合併の違いについて解説します。

また、経営統合のメリット・デメリットや成功事例を紹介するため、知識を深めたい人は参考にしてください。

M&Aにおける経営統合とは

M&Aにおける経営統合とは

経営統合とは、持株会社を親会社として設立し、複数の企業を子会社化して統合するM&Aの手法です。

ここでは、合併やPMIとの違いについて解説します。

 

経営統合と合併の違い

経営統合と合併は、企業が統合する際の異なるアプローチです。

合併は、複数の企業が1つの法人格にまとめられるM&Aのスキームです。この過程では、統合する企業の法人格が消滅し、新しい法人格が設立されます。

一方で、経営統合では、各企業の法人格は維持されます。そのため、統合後もそれぞれの企業は、独自の法的実体として存在し続けることが可能です。

経営統合の結果、親子関係が発生することが一般的ですが、合併は必ずしもこのような関係が成立するわけではありません

経営統合は、一般的に業界内での競争力強化やリソースの効果的な活用を目指して実施されます。合併に比べると、法的手続きが簡略化されるのが特徴です。

 

経営統合とPMIの違い

PMI(Post Merger Integration)とは、M&Aが実施された後に、両企業の経営を効果的に統合するプロセスのことです。

この段階では、合併によって統合された企業間での人材配置、業務プロセスの再設計、ITシステムの統合などが行われます。

一方で、「経営統合」という場合、通常はPMIよりも広範であり、合併によって新たな経営組織を構築する一連のプロセスを指す傾向があります。具体的には、持株会社の設立や統合後の組織構造の決定、経営方針の策定などが含まれるのが一般的です。

PMIでは、具体的な統合の手続きや実行に焦点を当てる一方で、「経営統合」は、それに先立つ戦略的な段階から統合の枠組みを設計し、企業全体の方向性を定める役割を果たします。

経営統合に採用される主なM&Aスキーム(手法)

次に、経営統合の際に用いられる主なスキームについて解説します。

 

株式移転

株式移転は、経営統合の際に採用される主要なスキームの1つです。

このスキームでは、既存の企業が新たに設立した親企業に対して、自社の株式を移転します。

株式移転は、純粋な持株会社が関与する場合によく用いられます。統合において、持株会社は子会社の株式を保有し、経営を統括するのが一般的です。この場合、各子会社は独自の法的実体として存続しながら、持株会社の傘下に入ることになります。

株式移転のメリットは、統合に参加する企業がそれぞれの特性や強みを保ちながら、持株会社の傘下に入ることで、経営戦略やリソースの活用が可能になる点です。また、持株会社は子会社間のシナジー効果を狙いやすくなります

 

株式交換

株式交換は、経営統合の一環として用いられる主要なスキームの1つです。

この手法では、複数の企業がお互いの株式を交換し、親子関係を構築します。

具体的には、統合に参加する企業同士が互いに株式を譲渡し合います。このプロセスによって、新たに設立した親会社が形成されるのが一般的です。その結果、既存の会社は親会社の株式を取得し、親会社の傘下に入ることになります。

株式交換のメリットは、統合した企業間での資本移動が柔軟であり、親子会社間での戦略的な統括がしやすくなることが挙げられるでしょう。このスキームを用いることで、各企業はお互いの強みを活かしつつ、一体となって事業を展開できます

 

M&Aにおける経営統合のメリット・デメリット

M&Aにおける経営統合のメリット・デメリット

次に、経営統合のメリット・デメリットについて解説します。

 

経営統合のメリット

経営統合には以下のようなメリットがあります。

 

・PMIの負担が少ない
PMIの負担が少なくて済む点が大きなメリットです。既存の法人格が維持される場合、新たな法人格を設立する手続きが不要であり、統合作業がスムーズに進む傾向があります。

 

・経営資源の配分を最適化できる
合併ではなく経営統合を選ぶことで、各企業の強みを活かしたまま、経営資源の効果的な配分が可能です。各企業の得意領域を活かし合うことで、シナジー効果を最大化できます。

・ブランド力を強化できる
合併に比べると、各企業のブランドイメージを保持しやすいといえるでしょう。強力なブランドを持つ企業同士が統合する場合、その結合によって新たな強力なブランドが形成される可能性があります。

経営統合は、企業同士が協力し合いながら持続可能な成長を目指す際に有力な手段となるでしょう。それぞれの企業の強みを活かし、リソースを最適に活用すれば、市場競争力の強化や新たな成長の機会を見出せるでしょう。

 

経営統合のデメリット

経営統合には以下のようなデメリットもあります。

 

・組織に無駄が生じやすい
統合によって、重複する部門や機能が生じる場合があります。これによって、組織全体の効率が低下する可能性があります。例えば、同様の業務を担当する部門が重複して存在する場合は、効率化が困難になるでしょう。

・シナジー効果が薄い
経営統合において、期待したシナジー効果を得られないケースがあります。例えば、以下のようなケースでは十分なシナジー効果を得られないでしょう。

・各企業の文化や経営スタイルが違う企業と統合してしまう
・適切な戦略の策定や実行ができない企業と統合してしまう

上記のようなデメリットを回避するには、統合の計画段階から慎重に進めることが重要です。文化の違いや業務プロセスの整合性を考慮し、適切な統合戦略を策定することで、効果的な経営統合を実現できるでしょう。

M&Aにおける経営統合後に欠かせないPMIのポイント

先述した通り、持株会社の設立後に実施するPMIは、M&Aの成功率を高める重要なプロセスです。

ここでは、PMIのポイントについて解説します。

 

M&Aの実施前に計画を立てておく

M&Aを実施する際は、事前に計画を立てておくことが重要です。

事前に計画を立てておくことで、経営統合の手続きがスムーズに進むでしょう。例えば、M&Aにおける具体的なプロセスやタイムラインを明確にします。なお、システム導入などの時間がかかるプロセスを実施するタイミングも明確化しておくことが大切です。

また、プロジェクトチームの発足も有益といえます。専用のチームがいることで、M&Aにかかるリソースを集中できるため、他の業務にかかる影響を最小限に抑えられるでしょう。

計画を立てる際には、経営統合の目的や戦略を明確にし、関係者のコミュニケーションを円滑に保つことも重要です。これらのプロセスを行うことで、M&Aの成功に向けた基盤を構築できます。

 

不公平のない制度設計を行う

経営統合において、不公平のない制度設計も重要なポイントといえるでしょう。

 

・異なる制度の存在
企業によって、人事や福利厚生などの制度はさまざまです。経営統合後に制度の変更が生じた場合、従業員によっては不公平に感じるケースもあります。このような状態が続くと、人材流出といった問題に陥るでしょう。

そのため、企業では従業員間で不公平のない制度の設計が求められます。公平性を確保することで、社員の安心感が高まり、企業文化の統一や組織全体の調和が促進されるでしょう。

また、従業員への説明やコミュニケーションを図るのも大切です。制度変更前に、変更となる理由や意図を理解してもらう必要があります。

M&Aにおける経営統合の成功事例

M&Aにおける経営統合の成功事例

どのような会社が経営統合に成功しているのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

ここでは、M&Aにおける経営統合の成功事例を2つ紹介します。

 

A社とB社の株式移転

2016年4月、食肉加工企業A社とB社が経営統合し、新たな持株会社が誕生しています。A社とB社はそれぞれ食肉加工に従事しており、この統合により、両社の技術やノウハウが結集され、シナジー効果が期待されました。

新たな持株会社は、グループ内の子会社の経営を統括し、統合によって新たな価値を創造する役割を果たします。この経営統合は、共同株式移転の手法を採用した結果、新たな持株会社が誕生しました。

2023年4月1日には、統合後の持株会社が連結子会社の生産や調達機能を統合する計画を発表しています。これにより、生産拠点が再編され、効率的な経営が図られる予定です。全国の工場再編に着手し、2026年度までに500億~600億円の投資を計画しています。

 

C社とD社の株式交換

業界競争が激化するなか、2021年10月、持株会社C社とD社が経営統合しました。この統合により、両社は相互に店舗展開を補完し合い、顧客接点は約1.1億となり、店舗数は約3,300に達しています。

さらに、販管費の抑制や共同でのデジタル戦略の推進など、さまざまな取り組みが行われました。2023年度3月期には、C社グループ事業でセグメント利益が18.1%増加し、通期では売上高が9500億円(30.1%増)、経常利益が570億円(27.9%増)に達成しています。

まとめ

経営統合は、M&Aにおける1つの手法であり、共同株式移転を通じて持株会社を設立します。

一方で、合併は複数企業が統合し、1つの会社となる手法です。

双方にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、正しく理解したうえで自社に適した手法を選択するようにしましょう。

また、経営統合の実施を成功させるには、PMIの手順を正しく意識しながら進めることが重要です。

経営統合を自社だけで進められるか不安であれば、M&A・事業継承の実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。

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