近年、ゼネコンを含めた建設業界では、課題を解消するためにM&Aを実施する企業が増加傾向にあります。
今後、ゼネコンに参入しようと考えている企業の担当者のなかには、M&Aの動向が気になる人もいるでしょう。
今回は、ゼネコンにおけるM&Aの動向やメリット、事例について解説します。
また、ゼネコンにおけるM&Aの事例やM&Aを成功させるためのポイントについても解説するため、ゼネコンにおけるM&Aを検討している人は参考にしてください。
目次
ゼネコンの概要について
そもそもゼネコンとはどのような企業なのでしょうか。
また、ゼネコンではどのような課題をかかえているのでしょう。
ここでは、ゼネコンの概要やかかえている課題について解説します。
ゼネコンとは
ゼネコンとは、「総合建設業者」のことであり、設計・施工・研究を自社で総合的に行う仕事です。
ゼネコンには発注者から工事を請け、工務店や電気工事業者などの専門業者(サブコン)を使いながら工事全体を取りまとめるという役割があります。
また、ゼネコンは売上高によって「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」「中堅ゼネコン」「地方ゼネコン」に分けられるのが特徴です。
ゼネコンがかかえる課題
ゼネコンを含めた建設業界全体では、人材不足が深刻化しています。
少子化により若手の確保が難しい一方で、従業員の高齢化が進んでいるというのが現状です。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について【報告】」では、ゼネコンを含めた建設技能者のうち、全体の約26%が60歳以上であるのに対し、29歳以下は約12%という結果が出ています。
(引用元:国土交通省│最近の建設業を巡る状況について【報告】)
また、ゼネコンを含めた建設業界の仕事が「きつい」というのも人材不足の原因の一つです。今後も高齢化が進むなか、若手を確保するためには労働環境の改善も求められるでしょう。
ゼネコンにおけるM&Aの動向とは?
近年、ゼネコンにおけるM&Aは増加傾向にあります。
ここでは、ゼネコンにおけるM&Aの動向について解説します。
人材確保の目的のM&Aが増えている
先述の通り、ゼネコンを含めた建設業界では、少子高齢化や過酷な労働環境などの影響より、人材不足の課題が深刻化しています。
なかには、人材不足の課題を解消できずに廃業した企業も存在するのが現状です。
また、人材不足により後継者が見つからず廃業した企業もあります。
こうした背景のなか近年では、人材不足や後継者不足の課題を解消するためにM&Aを実施する企業が増えています。人材不足が深刻化している建設業界において、人材を確保する目的のM&Aは今後も続くでしょう。
異業種とのM&Aも活発化している
近年、建設業界では異業種とのM&Aも活発化しています。これは、ゼネコンにおいても同様で、ハウスメーカーや設備工事会社がゼネコンを買収したという事例もあります。
また、近い業種である不動産会社とのM&Aも増加している状況です。こうした動きにより、事業の多角化やシナジー効果などを期待できます。
建設業界は、新築住宅市場が縮小しているなか、異業種とのM&Aにより業界再編のタイミングに差し掛かっているといえるでしょう。
クロスボーダーM&Aが徐々に増えている
近年、ゼネコンを含めた建設業界では、海外企業との「クロスボーダーM&A」により、海外市場に参入する動きも徐々に増えています。
海外市場に参入する背景として、人口減少や少子高齢化などの影響により建設業の国内市場が縮小傾向にあることが挙げられるでしょう。特に、新築住宅着工数はここ数十年に減少しています。
国内市場の縮小は今後も続くと予想されており、海外企業とのクロスボーダーM&Aはさらに増えるでしょう。
【買い手側】ゼネコンにおけるM&Aのメリット
ゼネコンにおけるM&Aは、増加傾向にありますが、実施することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、ゼネコンにおけるM&Aの買い手側のメリットを解説します。
事業規模を拡大できる
ゼネコンにおけるM&Aの実施により買い手側が得られるメリットとして、事業規模の拡大が挙げられるでしょう。
同業者同士でM&Aを実施した場合、優秀な人材や設備などを確保できるため、事業規模を拡大することが可能です。
また、地方のゼネコンには、特定エリアに強みを持つ「地場ゼネコン」と呼ばれる企業があります。そうした企業を買収すれば、その企業が持つ顧客や地域でのシェアをそのまま獲得できるでしょう。
人材不足を解消できる
M&Aを実施することで、人材不足を解消できるというメリットもあります。
また、建設事業を拡大させるためには、専門的な技術や「一級建築施工管理技士」の資格を持った人が必要です。しかし、こうした人材を育成するには、時間がかかるでしょう。
M&Aを実施すれば、こうした技術や資格を既に持っている優秀な人材を確保できます。人材不足が深刻化しているゼネコンにおいて、優秀な人材を確保できることは、大きなメリットといえるでしょう。
建設業界への参入が容易にできる
ゼネコンにおけるM&Aを実施することで、建設業界への参入が容易にできるという点もメリットの一つです。
異業種から建設業界に参入する場合、許認可の取得や有資格者、従業員、工事するための設備など、用意しなければならないものは多岐にわたります。こうしたものを自社のみで用意するには、多くの時間とコストがかかるでしょう。
しかし、M&Aによりゼネコンを買収すれば、有資格者や設備など建設業界で必要なものをすべて獲得できます。そのため、建設業界への参入がスムーズに進むでしょう。
資材の入手にかかるコストを削減できる
規模が小さい企業は、資材を購入するときには毎回少しずつしか買えないでしょう。また単価を下げてもらう交渉力が弱いのに加えて、毎回の輸送費用もかかるため、資材を入手する費用が高額になりがちです。
M&Aにより事業規模が拡大すれば、一度に大量の資材を購入できるようになります。また、一度に大量の資材を購入できることで、単価交渉力も高まるでしょう。
資材を安く入手できたり、購入する回数を減らしたりできれば、資材の入手にかかるコストが削減できます。
【売り手側】ゼネコンにおけるM&Aのメリット
ゼネコンにおけるM&Aにより、買い手側企業は、優秀な人材の確保や異業種の場合建設業界への参入が容易にできるなどのメリットがありました。
その一方で、売り手側企業の場合はM&Aによりどのようなメリットがあるのでしょうか。
売り手側の企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。
廃業を免れる
ゼネコンを含めた建設業界では、少子高齢化や人材不足などの影響により、後継者が見つからないという問題が深刻化しています。なかには、後継者不足を解消できずに廃業を選択する企業もあります。
帝国データバンクが行った調査によると、2022年11月時点にある国内の全業種約27万社の企業のうち、後継者不足率は57.2%という結果でした。業種別で見た場合、建設業界の割合が最も高く、後継者不足の企業のうち63.4%は建設業界が占めています。
(引用元:帝国データバンク│特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022))
M&Aにより第三者に事業承継を実施すれば、こうした後継者不足による廃業を免れることができるというメリットがあります。
また、M&Aでは、売り手側企業の従業員を買い手側企業に引き継ぐことができます。そのため、廃業を回避できれば従業員の雇用を維持できるという点も大きなメリットといえるでしょう。
安定した経営と事業の成長に期待できる
M&Aにより大手企業のグループ傘下に入れば、安定した経営と事業の成長に期待できるでしょう。
大手企業のグループ傘下に入れば、その企業のノウハウや技術などを共有してもらうことができます。また、大手企業のブランド力や資金の後ろ盾も得られるでしょう。そのため、経営の効率化や事業の成長に期待できます。
また、買い手から資本の後ろ盾を得られることで、建設業許可の要件である「財産的基礎等」を維持できることもメリットの一つです。さらに、大手企業のブランド力も活用できるため、新規採用がしやすくなり人材不足の解消につながるというメリットもあるでしょう。
創業者利益をもらえる
M&Aの実施により、売り手側企業の経営者は創業者利益をもらえることもメリットの一つです。
創業者利益とは、経営者が創業し運営してきた会社の資本と株式資本から、IPOや会社を売却した際に生じた売却金との差額のことを指します。
売り手企業がM&Aによって譲渡されることで、経営者は自社の株式を売却し、現金を手に入れることが可能です。ここで得た創業者利益をもとに新たな事業を展開することや、引退後の生活費としてあてることもできます。
ゼネコン(建設業)におけるM&Aの事例
売却側にも買収側にもメリットがあるM&Aですが、実際にはどのような企業で行われてきたのでしょうか。
ここでは、ゼネコンにおけるM&Aの事例を紹介します。
中堅ゼネコンA社とシステム開発B社のM&A
買い手側企業であるA社は主に土木・建設工事の請負や立案、設計などを行っている企業です。A社は業務のDX化を進めて次世代型の事業運営を行うことを目指しており、デジタル事業の体制強化を図っていました。
一方の、売り側企業であるB社はITシステム開発及び運用保守を行う企業です。
A社はB社を買収して、B社が持つITに関する高い技術力と企画・開発力を確保しました。
スーパーゼネコン会社のC社と道路塗装D社のM&A
買い手側企業であるC社は、土木建築工事の請負や企画、施工などをトータルで行うスーパーゼネコン会社です。一方の売り手側企業であるD社は主に道路整備工事や建設工事を行う会社です。
C社は、グループ内での一体感を高めることや、技術力・顧客などの経営資源を共有することが目的でM&Aが実施します。
このM&AによりC社は、インフラ運営事業が拡大したことにより、安定した収益基盤を確立しました。一方のD社においても新たな事業における収益基盤を確立できるというメリットがあります。
M&Aを成功させるには
M&Aは実施すれば必ず成功できるとは限りません。M&Aを成功させるにはどうすればよいのでしょうか。
M&Aには専門的な知識が必要で、自社だけで進めるのは困難です。そのため、M&Aを成功させるには、信頼できるM&A仲介会社に相談するのがおすすめです。
M&A仲介会社とは、買い手側企業と売り手側企業の間に中立的な立場として入り、双方が満足の行くM&Aが実現できるようにサポートする会社のことです。
M&Aにおいて最も重要なことは、相手企業の選定でしょう。M&A仲介会社は、独自のネットワークにより、自社の希望に合った相手企業を紹介することが可能です。
また、M&Aを成立するには、さまざまな手続きやプロセスを漏れなく実施しなければなりません。M&A仲介会社に依頼すれば、煩雑な手続きやプロセスに漏れがないようサポートしてもらえるため、成立までスムーズに進みます。
このように、M&Aを成功させるためにはM&A仲介会社への依頼は不可欠といえるでしょう。
まとめ
今回は、ゼネコンにおけるM&Aの動向や実施するメリットなどを解説しました。
総合建設業者であるゼネコンは、住宅の設計や施工、研究までさまざまな業務を請け負います。
建設業界では人材不足が大きな課題としてあり、ゼネコンにおいても例外ではありません。人材不足や後継者不足などの問題が解消できずに、廃業した企業も存在するのが現状です。
こうした問題を解決する手段として、M&Aを実施する企業が増えてきています。M&Aにより廃業を免れられるほか、買い手側企業が持つ技術や顧客基盤などの恩恵も受けられるでしょう。
M&Aの実施には、目標設定や調査、成立後の体制整備などさまざまな準備を行う必要があります。そのため、M&Aを成功させるには専門家への依頼が不可欠です。
ゼネコンにおけるM&Aを検討している人は、ぜひ「M&Aベストパートナーズ」へご相談ください。