
建築する際に必要な材料を調達し、卸売りを行う建材卸売業界ではM&Aが活発に行われています。
この記事では、建材卸売業界の今後の変化や懸念事項、解決策などについて詳しく解説します。
併せて、建材卸売業界におけるM&Aの動向も解説するので、「事業の継続に不安がある」「抱えている課題の解決法が分からない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
今後の建材卸売業界で期待される変化
建材卸売業界は、以下のような理由から、今後も売り上げが伸びていくと予測できます。
- リフォームに対する需要の増加
- 木材利用の推進
- 海外への輸出拡大
それぞれの理由について、詳しく解説します。
リフォーム需要の拡大
近年、中古物件や老朽化した住宅の増加により、リフォームに対する需要が拡大しています。
また、新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務やテレワークなどを推奨する企業が増えたことから、今後も家で過ごす時間が増えていく見込みです。
そのため、ワーキングスペースとプライベートスペースの両方を兼ね備えた、職住融合型住宅へのリフォーム需要は続くと考えられています。
新型コロナウイルスの感染拡大により、営業活動の制限・自粛など多くの企業が影響を受けました。しかし、職住融合型住宅へのリフォームなど、今後も需要の拡大は続くでしょう。
木材を利用しやすい環境づくりによる需要拡大
林野庁は、木材を利用しやすい環境づくりのための活動を実施しています。
具体的には、木材を利用することで得られる効果の発信です。
木材を採用することで得られる効果の科学的な裏付けや、木造建築物のライフサイクルコストなどを発信しています。
その他に、木材の特性を生かした高いデザインの建物・製品の普及や、クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)の普及活動も行っています。
このような活動の成果として、今後木材を利用した建物の需要増加が期待できるでしょう。
海外への輸出拡大
近年、付加価値の高い木材を海外へ輸出することを促進しています。林野庁では、2025年に718億円、2030年には1,660億円の林産物輸出を目標としています。
また、日本の木造建築の普及を目的に、中国や韓国などに向けて合板などの建築建材を輸出しています。その他に、アメリカ向けにフェンスなど屋外での使用を目的とした、耐久性の高い木材を輸出する動きも活発です。
さまざまな用途で使うことができる木材を国内外問わず使ってもらえるよう、政府と業界全体が協力し合って販路の拡大を図っています。
建材卸売業界の今後は、世界市場での事業拡大にかかっているといえるでしょう。
建材卸売業界における今後の懸念事項
リフォーム需要の増加や木材を利用しやすい環境づくり、海外販路の拡大など多くの施策がされている一方で、懸念事項もあります。
建材卸売業界が抱える主な懸念事項は、以下のとおりです。
- 住宅新設需要の減少
- 建材価格の高騰によるコスト増大
- 人材不足による廃業の増加
建材卸売業界が抱える懸念事項について、詳しく解説します。
「確かに!」と共感できるものがないか、探してみてはいかがでしょうか。
住宅新設需要の減少
人口減少の影響により、新築住宅の需要は減少するといわれています。
新築住宅の需要減少は、建設会社やハウスメーカーなどの建設業だけでなく、建材卸売業にも大きな影響を与えます。
また、2020年度の新型コロナウイルスの感染拡大も、建築業界へ大きなダメージとなりました。住宅展示場への来場者減少や対面での営業自粛などが原因です。
在宅勤務の普及によって家にいる時間が増え、住環境への関心が高まることで住宅新設の需要は回復傾向にあります。
しかし、人口の減少は続いているため、住宅新設需要の成長には限界があるでしょう。
建材価格の高騰によるコスト増大
新型コロナウイルスの影響を受け、ウッドショックが発生しています。ウッドショックとは、世界的に建材が足りず価格が高騰する現象です。
新型コロナウイルスにより、建築業は一時停滞の様子を見せました。しかし、中国やアメリカではすぐに景気が回復し、住宅のリフォームまたは新築を考える人が増加しました。
急激な需要の高まりによって建材が足りなくなったことが、価格が高騰した原因です。
日本国内で流通している建材の多くは海外から輸入されているため、ウッドショックは大きな痛手になりました。そのため、日本では今でも建材の価格高騰が続いています。
人材不足による廃業の増加
建材卸売業や建築業界だけでなく、さまざまな業種で後継者不足や人材不足問題が問題となっています。
人材不足は、作業量に見合わない給与形態、不規則な勤務形態などが原因で離職率が高くなっているためです。
また、少子高齢化の影響で労働人口が減少していることも、原因として挙げられます。
人材不足が続くと従業員一人当たりの業務負担は増え、離職者がさらに増える可能性があります。状況によっては、廃業の危機にさらされる企業もあるでしょう。
今後の建材卸売業界の懸念事項に対する解決策
建材卸売業界が抱える懸念事項の解決は、事業の維持だけでなく、従業員の雇用維持にもつながる重要事項です。
建材卸売業が抱える課題の解決策について、詳しく解説します。懸念事項で該当する項目があった方は、解決するための参考にしてください。
ITシステム導入によるオンライン化
建材卸売業で生き残るためには、ITシステムを導入し、さまざまな業務を簡略化させることが大切です。
建材卸売業の企業では、現代でも受発注にFAXや書類を利用するケースが多いです。また、取り扱っている建材の種類が多いため、在庫の確認や納期の回答に時間や手間がかかります。
ITシステムを導入すれば、パソコンやタブレット端末で、手軽に在庫確認や受発注の対応ができます。システムによっては、スマートフォンから対応できることもあるでしょう。
アナログなやり方で行ってきた業務をデジタル化することは、業務効率が向上し、人材不足の解消や人件費削減につなげることができます。
ITシステムの導入は、さまざまな業務を効率化でき人材不足を解消できる可能性があります。 しかし、ITシステムを導入するためには、時間やコストがかかるため、慎重な検討が必要です。
M&Aによる課題の解決
近年では、建材卸売業界でもM&Aが活発に行われています。
後継者不足や人材不足などの懸念を抱える企業は、M&Aを行うことで課題解決を目指します。
また、M&Aは事業の継続や人材不足を解消するだけでなく、既存の従業員の雇用を守ることも可能です。事業を引き継いだ買い手企業へ雇用契約が移管できるためです。
その他に、同業者同士でM&Aを行うことで販売網の拡大が期待できます。
資材メーカーといった異業種とのM&Aを行えば、木材の仕入れから卸売りまでを自社で完結するなど、新たな事業展開ができるでしょう。
このように、建材卸売業におけるM&Aは課題を解決させるだけでなく、シナジー(相乗)効果が期待できます。
建材卸売業におけるM&Aの動向
建材卸売業界では、事業やサプライチェーンの拡大を目的としたM&Aが注目されています。
建材卸売業界のM&Aに関する動向をご紹介します。
既存の事業を拡大する
近年の建材卸売業では、顧客からのさまざまなニーズに応えることが重要となっています。そのため、同業者同士でM&Aを行い、不足しているサービスや強みを補完することで事業を拡大する企業が増加しています。
例えば、外装材を専門とする企業が内装材専門の企業を買収することで、内装材分野への事業拡大が可能になります。一方で、内装材分野専門の企業は外装材分野を強化することができます。
同業者同士でM&Aを行えば事業の範囲を拡大することが可能で、受注数の増加が期待できます。また、業務範囲を広げることで、他社との差別化も図ることができるでしょう。
サプライチェーンを拡大する
工事業や建材メーカーなど、サプライチェーンに位置する企業とのM&Aも増加しています。
サプライチェーンとのM&Aをすることで、木材の仕入れから卸売りまでの工程を自社内で完結できます。
各工程を自社で完結できれば、生産性の向上やコスト削減が期待できます。また、品質管理がしやすくなるといったメリットもあります。
他社との差別化が難しい建材卸売業界では、サプライチェーン内の企業とのM&Aによって価格競争を回避するなど、今後さらに活発化するでしょう。
建材卸売業界におけるM&Aの成功事例
M&Aベストパートナーズでは、株式会社翠豊のM&Aをお手伝いさせていただきました。
株式会社翠豊は、主に大断面集製材加工や建設業、山林・丸太の売買、植林、育林、伐採業務、太陽光発電工事や太陽光発電事業を行っている企業です。
株式会社翠豊は同族経営を行っており、自身の息子へ事業継承をしたほうがよいのか悩んでいました。しかし、息子には経験や知識などがなかったことに加え、経営というつらい仕事を息子へ継承したくないと考え、M&Aを検討し、M&Aベストパートナーズに相談します。
その後、木造耐震設計を手掛ける企業とM&Aを行い、同族経営の離脱に加えて、事業拡大の実現ができました。
同族経営による後継者不足を脱却し、幅広い業務が行える企業へ生まれ変われたことは、M&Aが成功したといえるでしょう。
まとめ
リフォーム需要の増加、木材を利用しやすい環境づくりによる需要拡大、建材輸出の促進など、建材業界は今後も需要が伸びていくことが予想されます。
しかし、新設住宅需要の縮小や人材不足、後継者不足など、人的な課題を抱える企業は少なくありません。
また、ウッドショックによる建材価格の高騰も重要な問題です。
課題解決に向けてM&Aをすることは、とても有効な方法です。しかし、M&Aには専門的な知識が必要なため、実行に踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。
私たちM&Aベストパートナーズは、建材卸売業界でのM&Aで豊富な成功事例があります。抱えている悩みや課題に寄り添い、専門知識を持ったアドバイザーが解決に向けたサポートをさせていただきます。
収益の低迷や後継者や人材不足、さらなる事業拡大などでお悩みの方は、まずはお気軽に、M&Aのプロである「M&Aベストパートナーズ」へご相談ください。