食品業界は、私たちの生活を支えてくれる重要な業界です。
しかし、食品業界にはさまざまな課題を抱えています。近年では課題を解決するために、食品業界におけるM&Aが活発です。
この記事では、食品業界の市場規模や現状、食品業界におけるM&Aの動向について解説してきます。
また、M&Aをすることで買い手側、売り手側が得られるメリットについても解説するため、食品業界のM&Aを検討している人は参考にしてください。
目次
食品業界の市場規模と現状
食品業界は、畜産や水産にかかわる食品をはじめ、調味料や糖類、冷凍食品や総菜など、食べ物に関する全ての食品にかかわっている業種です。
ここでは、食品業界の市場規模と現状について詳しく解説していきます。
食品業界の市場規模
経済産業省の「2020年 工業統計表 産業別統計表」には、食品業界の市場規模は約29.8兆円で前年比より、0.3%増です。また、従業員が4人以上の事業所数は23,648社で前年比より、3.3%減っています。
(引用元:経済産業省│2020年 工業統計表 産業別統計表)
市場規模は、毎年約1%ずつ伸びていますが、企業数は毎年約3%減少しています。これは、食品製造業の生産性がほかの製造業と比べて低いことを受け、改善を行っているためと予想されるでしょう。
食品業界の現状
近年の食品業界では円安により、輸入にかかる価格が大幅に上昇しています。
また、日本では台風や洪水、大雨などの異常気象が多く、原材料の安定した収穫が見込めません。そのため、原材料価格も高騰しています。
これらに加えて、近年では燃料の価格が高騰している点も問題です。光熱費や燃料費などの高騰により、食品業界には大きな影響を及ぼしているでしょう。
また、少子高齢化の影響により消費者の食品の需要が減少傾向にあります。これは、高齢者は、若い人に比べて食べる量が少ないためです。
しかし近年では、健康志向の高まりやダイエットの流行などにより健康食品が注目されています。
ほかにも、食品表示を確認する安全意識の高まりや、環境に配慮された食品を選ぶエコに対する意識の高まりなど新たなニーズが生まれてきました。
食品業界の特性
食品業界では、安全性への精密な取り組みや受注予測などさまざまなものが求められます。
これらにうまく対応しなければ、経営に支障をきたす可能性があり危険です。
ここからは、食品業界の細かな特性について解説してきます。
安心と安全への取り組みが求められる
食品製造をはじめとする食品業界にとって、消費者の安全性は重要です。しかし、近年では、食品偽造問題や異物混入などのトラブルが相次いでいます。
一度このようなトラブルを起こすと食品の信用問題にかかわり、最悪の場合倒産することも考えられます。そのため、食中毒や異物混入などのトラブルがないように、万全の体制で製造できる環境を整えなければなりません。
環境を整えるには、細心の注意を払った対応だけでなく、設備のメンテナンスや交換、工程管理システムの導入など、安心・安全のためにコストをかける必要があります。
受注予測や生産管理の精度の高さが求められる
先述した通り、食品業界では精密な受注予測と生産管理を必要とされています。
これは、食品の多くには消費期限が存在するためです。食品によっては半年から一年以上と消費期限が設けられている食品もありますが、数日しかないものもあります。
食品を製造する際は、作りすぎて廃棄処理されないよう管理をしなければなりません。
また、取引している量販店やスーパーからの受注に合わせて作る必要もあります。量販店やスーパーは受注から納品までの期間が短いため、受注予測や生産管理を正確に行うことが求められます。
季節によって繫閑期間がある
食品業界では、季節によって売れる製品が変化することが特徴です。
季節だけでなく、暦上で設定されている日や、地域、行事などによっても左右されます。スーパーや量販店などの小売店では、その都度仕入れる商品を変えることで対応可能です。しかし、食品製造では季節や行事などにより生産量が増える際は人手が必要になります。
このような繁忙期とよばれる期間がはじまると、食品製造では臨時職員やアルバイト、パートなどを新規で雇います。しかし、繫閑期間の差が大きいほど、無駄なコストや雇用のリスクなどが増すため、事前に対策することが必要です。
食品業界におけるM&Aの動向
食品製造では、大きく2種類に分けられます。
それぞれM&Aの動向が異なるため、型に合ったM&Aを選択しなければなりません。
ここからは、食品業界におけるM&Aの動向について解説していきます。
食品製造業の人は、自社がどのようなM&Aに向いているのかを確認しておきましょう。
食品製造業の種類
食品製造業では、主に2種類に分けられます。
一つ目は素材を生かした製造を行い、原料を加工業や外食業に販売する「素材型」です。
二つ目は、「加工型」とよばれ原料を加工して製造し、商品として販売しています。
素材型は外食産業を中心に、加工業者にも商品を販売することで原料の供給を行っていることが特徴です。
加工型は、購入した原料を利用し、缶詰や冷凍食品、外食用の食事などに加工し家計を中心に供給をしています。
素材型のM&Aの動向
素材型の食品製造業者は、さまざまな観点を必要としたM&Aが活発に行われています。
近年、食品製造に関する世間の目は厳しくなり、消費者からの要望やクオリティの願望などは高くなっています。そのため、消費者の求める要望や願望に対応するためにM&Aを行い、質の高い商品を提供する業者は多いです。
また、素材型は、多角化が必要とされています。異業種からの参入ではなく、同業者同士がM&Aを行い、両社のよい所を生かして課題点は補い合う形で規模を拡大するのが特徴です。
近年では、関税が引き下げられ、入ってくる輸入品との競争が激化しています。また、加工業者や外食産業からの値下げを求められている現状を受け、同業者同士でM&Aを行い、規模を大きくしたり再編したりする動きが高まっています。
加工型のM&Aの動向
競争が激しく激化している日本の食品市場では、加工型の食品製造業が立ち行かなくなる場合が多く、海外進出を目的としてM&Aを行う動きが盛んです。
加工型の食品製造業は、アジア圏を中心にアメリカや外国諸国とM&Aを行うことで、海外に日本の高いクオリティの加工食品を輸出し、市場で活躍できる場を作っています。
異業種からのM&A
同業他社だけでなく、異業種からも食品製造業へM&Aを通して参入する動きが高まっています。
特に、健康志向を掲げる人が増えたことを受け、健康食品を製造する企業の買収が増加傾向です。ダイエットや美容などの健康目的で食事を改善する人が多く、その需要を見込んだM&Aといえます。
健康食品を製造する食品製造業のなかには、後継者問題を抱えていたり、地域密着型で経営が立ち行かなくなったりなどの問題を抱えていたりする企業もあります。しかし、M&Aを行うことでこれらの課題を克服し、健康志向のニーズにこたえられるようになれば、経営を立て直せるでしょう。
同業種だけでなく、異業種からの参入も見込めることで、よりよいM&Aが行える可能性は高いです。
食品業界でM&Aを行うメリット
食品業界に限らず、他社とM&Aを行う際は、買い手側、売り手側の双方に利点があることが大切です。
食品業界におけるM&Aでは、双方にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、食品製造業界がM&Aを行うことで得られるメリットについて買い手側、売り手側に分けて解説していきます。
双方のメリットを理解した上でM&Aを検討しましょう。
買い手側のメリット
買い手側は、売り手側となった企業が提供していた商品を新しく取り込めます。
そのため、新商品として自社レーベルで提供が可能です。需要が安定している商品であれば、経営にもよい影響を与えるでしょう。
また、原材料の収穫時期や季節によって商品のニーズは変化します。繁忙期と閑散期が交互に来る商品もあるでしょう。生産性に波がある商品を提供している場合は、M&Aを行うことで閑散期をなくせます。これは、買い手側企業が閑散期間中に、売り手側企業が繁忙期間であれば、安定した生産ができるためです。
また、買い手側がM&Aを行うことで、取引先を拡大できます。
売り手側がこれまで培ってきた販売先や仕入れ先と継続して取引することで、既存の基盤にプラスして新たなルートの確保が可能です。
売り手側のメリット
売り手側は、自社を大手企業や有名企業に売却することで、生産性を向上させられるメリットがあります。
M&Aによっては、生産の規模が高まるだけでなく、製造に必要な設備の強化やメンテナンスも行えるようになるでしょう。
衛生管理や設備強化が行えれば、さらなる改善が可能となり、高い収益性が確保できる確率が高まります。加えて、大手企業が切り開いた販路に商品を並べられるようになるため、販売促進や売り上げ効果に期待できるでしょう。
企業によっては海外進出を計画している場合もあり、さらなる販路の拡大ができるかもしれません。また、食品製造業界が課題として挙げている後継者不足の解消や、従業員の雇用を守れるなどのメリットもあります。
まとめ
食品業界は、食品の製造から加工品まで幅広く取り扱っています。
食品を取り扱うため、安心や安全性に気を配り、緻密な計画を必要とする点が特性です。後継者不足や原材料の高騰などにより経営が難しくなることもあります。
そのため、食品業界では、M&Aが活発に行われています。
M&Aを行いたいが不安であるという場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
M&Aベストパートナーズでは、食品製造業界に精通した専門家によるアドバイスが受けられます。
M&Aに関する質問や不安をお持ちの人は、M&Aベストパートナーズへお気軽にご相談ください。