日本の不動産市場が成熟期を迎えるなか、賃貸管理業界は大きな転換点に立たされています。
少子高齢化に伴う空き家問題や、2021年に施行された「賃貸住宅管理業法」によるコンプライアンス遵守の徹底など、経営環境は年々厳しさを増しています。
自社努力のみによる「管理戸数の積み上げ」が困難になりつつある今、多くの経営者が次なる一手として注目しているのがM&A(合併・買収)です。
かつては「身売り」というネガティブなイメージも強かったM&Aですが、現在は「事業規模の急速な拡大」や「人材確保」「IT投資の効率化」を実現するための極めてポジティブな成長戦略として定着しています。
本記事では、賃貸管理業界の最新動向を整理したうえで、なぜ今これほどまでにM&Aが活発化しているのか、その背景や具体的なメリット、実際のM&A事例までを徹底解説します。
業界再編の波に乗り、自社の持続的な成長を目指すためのヒントとしてぜひご活用ください。
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賃貸管理業の業界動向
現在の賃貸管理業界は、さまざまな理由を背景に大きな変革期を迎えています。
はじめに、賃貸管理業の業界動向を解説します。
管理業法の施行とコンプライアンス強化
2021年の「賃貸住宅管理業法」全面施行により、200戸以上を管理する事業者の登録が義務化されました。
業務管理者の配置や分別管理の徹底など、適切な運営体制の維持が必須となり、体制整備のコスト増が中小事業者の再編を後押ししています。
参考:国土交通省 |賃貸住宅管理業法ポータルサイト
管理戸数の集約化と規模の経済
1戸あたりの管理報酬が低下する中、収益維持には「規模のメリット」が不可欠です。
エリア内の管理密度を高めることで、清掃や原状回復の効率を最大化させる動きが加速しており、M&Aによる戸数獲得競争が激化しています。
参考:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会|日管協 短期市況データ(市場動向)
不動産テック(DX)による格差拡大
電子契約やIT重説、スマートロック等の導入により、管理業務の効率化が進んでいます。
一方で、これらIT投資に資金を割ける大手と、アナログな業務フローが残る中小との間で生産性の差が広がっており、システム統合を目的としたM&Aが増えています。
賃貸管理業界でM&Aが活発な背景
賃貸管理業界では、次のような目的からM&Aが活発化しています。
管理戸数の早期獲得とシェア拡大
ゼロから新規の受託(PM営業)を行うには膨大な時間とコストがかかります。
M&Aであれば、数百〜数千戸単位の管理戸数とオーナーとの信頼関係を即座に引き継ぐことができるため、エリアシェアを急速に広げたい大手・中堅企業にとって最も効率的な成長手段となっています。
関連事業(リフォーム・仲介)とのシナジー
賃貸管理は、原状回復工事や設備交換、さらには売買仲介(出口戦略の提案)といった「周辺事業」への入り口になります。
管理部門をM&Aで強化することで、グループ全体の収益性を高める狙いがあります。
人材不足と専門知識の確保
賃貸不動産経営管理士などの有資格者や、トラブル対応に慣れたベテランスタッフの確保は容易ではありません。
M&Aを通じて、実務経験豊富な「現場チーム」をそのまま引き継ぐことができる点は、買い手にとって大きなメリットです。
業態転換(仲介から管理へ)の加速
景気に左右されやすい「仲介メイン」の業態から、安定収益が見込める「管理メイン」へシフトしたい企業が、M&Aを通じてストック収益を確保しようとする動きが目立ちます。
創業オーナーの事業承継問題
不動産バブル期前後に創業したオーナーの引退期が重なっています。
管理オーナー(家主)との長年の付き合いを大切にするからこそ、信頼できる企業に事業を託し、従業員の雇用と家主へのサービスを継続させるためのM&Aが増えています。
賃貸管理業界でM&Aを行うメリット
賃貸管理業におけるM&Aは、譲渡企業と譲受企業それぞれにメリットをもたらします。
それぞれの立場から見たメリットをご紹介します。
譲渡企業(売り手)のメリット
- オーナー(家主)への責任完遂:
自身が引退しても、大切なオーナー(家主)に迷惑をかけず、継続的な管理サービスを提供できる - 個人保証の解除と創業者利益:
管理戸数に応じた正当な対価を得て、リタイア後の資金を確保 - 最新システムの導入:
大手グループのIT基盤を活用し、業務効率化と入居者満足度の向上を実現 - スムーズな事業承継:
後継者問題が起こっている場合、第三者へと事業を引き継いで存続させることが可能 - 従業員の雇用維持:
廃業を検討した場合、従業員は仕事を失うが、M&Aによって事業が存続すれば雇用を維持することが可能
譲受企業(買い手)のメリット
- 安定収益(ストック)の即時積み上げ:
月額管理料という、計算できる収益基盤を確実に増やせる - 周辺業務の受注:
管理戸数に付随するリフォームや再リーシング(仲介)の機会を独占的に獲得できる - スムーズなエリア拡大:
買収企業の営業エリアを獲得することで、新規エリアへスムーズな参入が可能になる
賃貸管理業界で実際に行われたM&A事例
M&Aが活発な動きを見せる賃貸管理業界で、実際に行われたM&A事例をご紹介します。
日本駐車場開発によるM&A
駐車場の総合コンサルティング事業を展開する日本駐車場開発株式会社は、完全子会社で不動産の売買・賃貸・管理業務を手掛ける株式会社ロクヨンを吸収合併しました。
ロクヨンは経営成績が低迷しており、直近の決算では純資産がマイナスでした。
そこで、日本駐車場開発は事業の整理・統合を進め経営資源の最適化を図るためにロクヨンを吸収合併。既存事業の効率化を進めることにより、より強固な経営基盤の構築を目指します。
参考:日本駐車場開発株式会社|連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ
東急コミュニティーによるM&A
2013年、マンション・ビル施設の総合不動産管理事業を行う株式会社東急コミュニティーは、大手マンション管理会社であるユナイテッドコミュニティーズ株式会社を子会社化しました。
このM&Aにより、東急コミュニティーズは管理ストック(合計45万戸/当時)を活かした管理会社の新たなプラットフォームの形成、複数ブランド戦略による成長力強化、業界トップポジションの獲得によるブランド力向上を目指すとしています。
参考:株式会社東急コミュニティー|ユナイテッドコミュニティーズ株式会社の株式の取得(子会社化)及び金融機関からの借入に関するお知らせ
燦(サン)キャピタルマネージメントによるM&A
燦(サン)キャピタルマネージメント株式会社(現:北浜キャピタルパートナーズ株式会社)は、クリーンエネルギー事業の取り組みの一つとして山林の売買・管理専門の不動産会社である株式会社早稲田不動産管理を子会社化しました。
早稲田不動産管理は、所有する山林を活用して地熱発電やバイオマス発電、マイクロ水力発電の開発を行う資源活用発電事業を行ってきました。
このM&Aは、燦キャピタルマネージメントが持つクリーンエネルギー事業関連の資本を活用することで両社にメリットをもたらすと判断されたことで実現しました。
なお、燦キャピタルマネージメントは2024年に「北浜キャピタルパートナーズ株式会社」に商号変更しました。
参考:燦キャピタルマネージメント株式会社|当社による事業会社の株式の一部取得(子会社化)に関するお知らせ・商号変更及び定款の一部変更に関するお知らせ
まとめ
空き家問題や「賃貸住宅管理業法」によるコンプライアンス遵守の徹底など、大きな転換期を迎えている賃貸管理業界。
自社だけで対応することが難しくなった企業経営者が、事業の存続・拡大を目的としてM&Aが大きな注目を集め、実際に活発に行われています。
しかし、M&Aが完了するまは長い時間とさまざまなプロセスを滞りなく進める必要があり、トラブルなく成功させるためにはM&Aの専門的知識やノウハウが必要となります。
私たちM&Aベストパートナーズには、賃貸管理業に精通した専任アドバイザーが在籍しており、課題を丁寧にヒアリングさせていただき、M&Aが成立するまで伴走型サポートをさせていただきます。
賃貸管理業を営み、課題解決の選択肢としてM&Aを検討されている方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズまでご相談ください。
