M&Aの実施をする際に行われる企業価値算出の代表的な方法として、インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチが用いられています。
本記事では、3つの方法のなかでも主に中小企業のM&Aで広く用いられているコストアプローチについて詳しく解説します。
あわせて、コストアプローチのメリット・デメリットも解説するので、M&Aを検討されている経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
コストアプローチとは
コストアプローチとは、M&Aの対象となる企業の貸借対照表(バランスシート)の純資産額を基準値として企業価値を算出する評価方法の一つです。
貸借対照表を基にするため他の評価方法とは異なり比較的簡単であり、主に中小企業の企業価値算出で用いられています。
関連記事:インカムアプローチとは?DCF法による算出方法も解説
関連記事:マーケットアプローチの評価方法|M&Aにおけるメリット・デメリットも解説
M&Aにおいてコストアプローチの算出に用いられる方法
コストアプローチによる企業価値の算出方法は、以下の4つの手法が使われることが一般的です。
- 簿価純資産法
- 直純資産法
- 時価純資産+のれん代
- 再調達原価法
それぞれの手法について解説します。
簿価純資産法
簿価純資産法は、貸借対照表に記載されている簿価を基準とする評価方法です。
資産から負債を差し引いた純資産を企業価値とするため、コストアプローチの手法のなかでも比較的簡単な方法です。
しかし、貸借対照ほうに記載された簿価が基準となるため無形資産の評価ができない、実際の市場価格(時価)とズレが生じる可能性があるといった注意点があります。
また、企業の将来性の評価ができないこともデメリットの一つです。
時価純資産法
時価純資産法は、資産や負債を時価に換算してから純資産を算出し、企業価値を算出する手法です。
資産から負債を差し引く点は簿価純資産法と同様ですが、時価純資産法は評価時点での時価に換算するため、不動産や有価証券など変動しやすい資産の評価もしやすいです。
流動性のある資産も評価できる反面、市場価格が変わった場合は企業価値が変化する可能性があります。
また、簿価純資産と同じく企業の将来見込まれる利益が評価されない点もデメリットとして挙げられます。
時価純資産+のれん代
時価純資産法で算出された企業価値にのれん代(企業がもつ無形固定資産)を加算することで、企業の持つ有形資産と無形資産の両方から評価をする方法です。
時価純資産法だけでは無形資産(ブランド力・技術力など)を考慮した評価ができないため、より詳細な企業価値を算出することが可能です。
のれん代の詳細については、以下の関連記事をご参照ください。
関連記事:M&Aの「のれん代」とは?基礎知識や会計処理・今後の動向を詳しく解説
再調達原価法
再調達原価法は、対象となる企業が保有している資産・負債について、評価する時点での再調達原価に換算することで評価をする方法です。
ゼロの状態から対象とする事業を創り上げるとした場合にかかるであろうコストを企業に対する必要投資額(売買価格)とするため、客観的な視点から評価をすることができます。
不動産や設備など減価償却が必要なものについては減価修正がされるため、企業価値が過小評価される可能性がある点に注意が必要です。
コストアプローチのメリット
コストアプローチは純資産額を土台とするため、客観的な判断基準を得ることができます。
また、貸借対照表を参考とするため、企業価値の算出が比較的簡単であることもメリットです。
コストアプローチのデメリット
コストアプローチは評価時点での純資産(のれん代を加算するケースも含む)や再調達する場合のコストから算出するため、将来見込めるであろう利益といった成長性は含まれません。
そのためM&A後のイメージがしづらいといったデメリットがあります。
また、簿価純資産法の場合は含み益が考慮されないというデメリットもあるため、あくまでも参考値ととらえ、その他の評価方法と組み合わせることが多いです。
まとめ
M&Aにおける企業価値の評価は、売買価格を検討するための非常に重要なプロセスです。
複数の評価方法のなかでも、コストアプローチは比較的簡単な評価方法ですが、将来見込まれるであろう利益の考慮が難しく、より詳細な評価をする場合は専門知識を必要とします。
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