近年、企業の事業継承や経営体制の見直しの手段として、MBO(マネジメント・バイアウト)が注目を浴びています。
そこで本記事では、M&Aの専門家がMBOの定義や方法について詳しく解説します。
併せて、MBOが活用される代表的な場面やメリットについても解説するので、経営体制の見直しや事業の分割、経営権の世代交代を検討されている方はぜひ参考にしてください。
目次
MBO(マネジメント・バイアウト)とは
MBO(Management Buyout)は、経営陣が投資ファンドや金融機関などを通じて資金調達を行い、得られた資金によって自社株式を買い取る方法を指します。
他企業を買収・または吸収するM&Aとは異なり、自社(経営陣)が買い手となることが特徴です。
MBOではどのように経営権が取得されるのか
MBOは、対象とする企業(既存の自社)の受け皿となるSPC(特別目的会社)を設立することが一般的で、全体の流れは以下のとおりです。
- 経営陣は金融機関や投資ファンドから資金調達を行う
- 特別目的会社(SPC)を設立して株式を買収
- 株式の過半数を取得する
- 株主総会の普通決議を単独で可決できるようになる
- 実質的な経営支配権を得る

関連記事:SPC(特別目的会社)が設立される目的と資金調達スキーム
MBOはどのような場面で使われるか
SPCを設立することで自社株の買取をおこなうMBOは、主に6つの場面で使われることが一般的です。
MBOが使われる主な場面をご紹介します。
経営体制の見直しを行うとき
自社の株主が多くいる場合、経営に関する意思決定は投資家や株主の要求に左右されやすくなります。
経営状態が悪化してしまったとき、体制の見直しをしたくても利害の調整がスムーズに行うことができず、体制の見直しに遅れが生じるケースは少なくありません。
しかし、MBOによって株主を経営陣に変更をすることで決定権が社内に集中できるため、意思決定がしやすくなります。
上場廃止をするとき
自社の上場を維持し続ける場合、収益や株価の維持のために多額のコストを必要とし、企業によっては経営資源を圧迫する可能性があります。
MBOによって発行済みの自社株を全て買取り上場廃止を行えば、上場維持に使われていたコストを本業に集中させることが可能です。
上場というステータスは失いますが、本業へリソースを集中させることで、経営基盤の強化や本業による収益拡大などを目指すことができるでしょう。
敵対的買収(TOB)を回避したいとき
株式市場への上場を目指す企業は多いですが、株式公開をすることで敵対的買収(TOB)のリスクがあります。
そのため、自社株を社内に取り込み、公開株式を減らすことでTOBを回避するケースは少なくありません。
世代交代を図りたいとき
MBOを行う場合、SPCを設立することになります。
後継者となる人物をSPCの経営者にすることで、円滑な事業承継ができる可能性があります。
関連記事:「承継」と「継承」の違いとは?M&Aにおける違いを解説
本業との関連性が低い事業を切り離したいとき
本業とは関連性が低かったり、不採算事業があったりする場合、事業を維持することで収益が低下するケースがあります。
そのような場合に、MBOによって本業をSPCへ移行させることで、関連性が低い事業または不採算となっている事業を切り離すことができます。
本業に集中することができれば、事業の立て直しや経営戦略の見直しがしやすくなるでしょう。
既存の組織形態を維持しつつ経営権を移動させたいとき
MBOは、既存株主の保有する株式を自社の経営陣へ移すことで株主構成が変わりますが、組織形態に変更はありません。
そのため、現状の組織形態を維持したままの状態で経営権を移動させることが可能です。
MBOが企業に与えるメリットとは?
MBOはさまざまな目的に使われる手法ですが、その背景には5つのメリットが存在しています。
MBOで得ることのできる5つのメリットを解説します。
経営の効率化につながる
ご紹介したように、株主や投資家といった多くのステークホルダーがいる場合、経営方針に対する意思決定がスムーズに行えないケースは多いです。
しかし、MBOは株式を経営陣に集約するため、迅速な意思決定がしやすくなり、経営の効率化を図ることができます。
また、経営方針に関する自由度の向上や独自の経営判断もできるようになることも大きなメリットです。
中長期的な戦略を立てやすくなる
株主や投資家の多くは短期的な利益を求める傾向があり、経営陣の考える成長戦略と行き違いが生じることは少なくありません。
しかし、MBOを行うことで経営陣が株主となるため、自社の成長を見据えた意思決定がしやすくなります。
また、成長戦略に対する設備投資もしやすくなるため、MBOは中長期的な経営戦略を立てるための有効な手段といえます。
従業員の理解を得やすい
従業員からの理解が得やすいことは、MBOならではのメリットです。
TOBや合併など、組織体制の変化を伴う手法だった場合、雇用条件や労働環境の変化に戸惑いや不満を抱くケースは少なくありません。
しかし、MBOであれば経営陣や組織形態は維持されるため、従業員に対する変化は少なく、理解が得やすくなります。
SPC設立に伴う人員配置の変更があったとしても、既存の業務を行う場所が移動するだけのため、円滑に引き継ぎができるでしょう。
後継者問題の解決手段となり得る
近年では、さまざまな業種・業界で後継者不足が大きな社会問題となっています。
特に親族経営による企業の場合、引き継ぐ親族がいないことで廃業を検討するケースも少なくありません。
しかし、MBOであれば自社の信頼できる幹部や従業員へスムーズに事業を承継(親族外承継)できるため、後継者不足を解決できる可能性があります。
後継者不足が深刻化している昨今、スムーズに事業を引き継げることは経営者にとって大きなメリットといえるでしょう。
経営の独立性強化につながる
MBOによって経営陣が株主になることで、外部からの干渉を受けにくくなります。
すでにご紹介した「自由度の高い経営判断を迅速に行うことができる」「中長期的な戦略が立てやすくなる」といったメリットの相乗効果によって、経営の独立性が強化されます。
最終的には経営理念やブランド力・企業文化の維持にもつなげることができるでしょう。
MBOが事業承継にどのように関わってくるか
第三者へと企業全体、または一部の事業を譲渡するM&Aとは異なり、MBOは従業員や既存の取引先・ステークホルダーからの理解が得やすい方法です。
そのため、後継者に悩みを抱える企業の場合、親族外承継による事業承継がしやすいです。
また、組織形態を維持したまま経営権を強化できるため、企業の持続や中長期的な成長戦略も叶えることができます。
このように、MBOはさまざまな方向から企業を支える役割をになっています。
まとめ
MBOは、M&Aとは異なり自社(経営陣)が株主となることで、経営体制の見直しや後継者問題の解消などさまざまなメリットを得られます。
一方で、SPCの設立や後継者への事業承継に関する手続きなど、専門的な知識やノウハウが必要になります。
私たちM&Aベストパートナーズは、M&Aのプロフェッショナルとして、事業承継に関するさまざまなお悩みを解決してきた実績がございます。
また、これまで積み重ねてきた知識やノウハウを活かし、経営体制の立て直しや市場拡大に向けた戦略の策定など、企業様の抱える課題を解決するための最適な方法をご提案させていただきます。
「MBOによる事業承継を行いたい」「経営体制の立て直しをしたいけど、どのような方法が適しているかわからない」といった悩みを抱える経営陣の方は、ぜひ一度M&Aベストパートナーズへご相談ください。