
本記事では、40歳で仕事を辞め、子どもがいる家庭でも後悔のないリタイア後の生活を送るには、どのくらいの資金が必要なのかを解説します。
また、早期リタイアのスタイルとして最近話題のセミリタイアやFIRE についても触れ、子どもの教育費や生活費を考慮した場合にどのような選択肢があるのかについても解説しているので、参考にしてみてください。
目次
40代でFIREを目指す!子持ち家庭の必要資金は?
ここでは、40歳で仕事を辞め、子どもがいる家庭でも 後悔のないリタイア後の生活を実現するために、どの程度の資金が必要なのかを解説します。
必要な資産・資金
40歳で仕事を辞め、90歳まで生きると仮定すると、50年間の生活費を確保する必要があります。
必要な資産や運用方法について簡単にシミュレーションしてみましょう。
公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、65歳以上の夫婦のみの最低生活費は月23万円とされています(※1)。
ここでは、ある程度節約しつつも旅行や趣味を楽しめる月27万円の生活費を想定して計算してみると、退職後の生活費は月27万円 × 12ヶ月 × 50年 =1億6,200万円となります。
次に年金収入を考えてみます。
厚生労働省の資料によると、夫婦2人の標準的な厚生年金受給額は月22万0,496円(※2)ですが、40歳で退職する場合、年金の受給額は大幅に少なくなると考えられます。
月15万円を受け取れると仮定すると、65歳から90歳までの25年間で受け取れる年金総額は月15万円 × 12ヶ月 × 25年 = 4,500万円です。
したがって、40歳で早期退職をする場合、1億6,200万円から4,500万円(年金収入)を引いた1億1,700万円 が、退職時点で必要な自己資金となります。
※1参考:公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査
※2参考:厚生労働省「令和4年度 厚生年金・国民年金事業の概況
子どもがいる場合に必要な資産シミュレーション
子どもがいると、日々の生活費が増えるだけでなく、教育にかかる費用も必要になります。
総務省の調査によると、子育て世帯の生活費は月30〜35万円とされており、月35万円を想定すると、40歳から90歳までの 50年間の生活費は2億1,000万円になります。
また、文部科学省のデータをもとに、子ども1人あたり幼稚園から大学卒業までの教育費を1,500万円と想定します。
一方で、65歳から受け取る年金を 月15万円と仮定すると、25年間(65歳〜90歳)での年金総額は 4,500万円になります。
これらを踏まえて計算すると、必要な自己資金は2億1,000万円(生活費)- 4,500万円(年金)+ 1,500万円(教育費)=1億8,000万円です。
夫婦2人だけの場合に比べると、子どもが1人いる場合は約6,300万円 余分に必要になり、子どもが2人いる場合は 約2億2,500万円まで増える計算になるため、40歳で仕事を辞めるには、貯蓄だけでな資産運用や副収入の確保が重要になります。
特に、子どもが大学に進学する時期は教育費が一気にかかるため、計画的な資金管理が必要です。
40歳での早期退職を実現するために必要な視点
40歳で早期退職を目指す場合、独身や夫婦2人だけの生活とは異なり、子どもの成長に伴う支出の変化を考慮したライフプランが必要になります。
特に、教育費や子どもの生活費は年々増加するため、資産運用だけに頼るのではなく、柔軟な収入源を確保することが重要です。
例えば、3,000万円の資産を運用しながら毎月35万円(年間420万円)を得るには、税引後16.8%の利回りが必要ですが、安定してこれを達成するのは現実的に難しいでしょう。
市場の変動や予期せぬ出費(教育費の増加、医療費、住宅費など)が重なると、資産の目減りが加速するリスクもあります。
そのため、早期退職を成功させるには、「収入を補う手段」を持つことが不可欠です。
例えば、リモートワークや小規模なビジネス、投資収益だけでなく、不労所得(賃貸収入や配当金)を組み合わせることで、リスクを分散しながら安定したキャッシュフローを確保できます。
また、「支出をコントロールする力」 も重要で、子どもの教育費がピークを迎える時期に向けて、計画的な貯蓄や支出管理を徹底することが求められます。
40歳で早期退職を目指す場合の資産運用戦略
40歳で仕事を辞めるためには1億8,000万円 が必要と試算しましたが、ここでは手元の3,000万円をどのように活用するかを考えてみましょう。
まず、この3,000万円を年5%で運用 すると、25年後(65歳時点)には約1億250万円まで増やすことができますが、それでも 約7,750万円が不足するため、資産運用だけでは足りないことがわかります。
特に、子どもがいる家庭では教育費や日々の生活費がかかるため、より安定した収入を確保する工夫が必要です。
そこで、仕事を完全に辞めるのではなく、月15万円の収入を15年間続けることで、2,700万円を確保できます。
また、配偶者がパートや在宅ワークをすることで、さらに家計の負担を減らすこともできます。
さらに、資産運用の期間を延ばすのも選択のひとつで、68歳まで運用を続ければ、約1億4,000万円まで増やせるため、より余裕を持った生活が可能になります。
早期退職とは、単に「働かなくなること」ではなく、「自分たちがどんな人生を送りたいのか」を考えることでもあります。
子どもがいる家庭では、ライフステージごとに必要な資金が変わるため、柔軟な働き方や資産運用のバランスを取りながら、長期的に持続可能な生活を築くこと が成功のカギとなるでしょう。
早期退職のスタイル

最近、特に若くして資産を築き上げた人のSNSアカウントなどからの発信で「セミリタイア」「FIRE」といった言葉を目にすることが増えました。
この「セミリタイア」や「FIRE」はいずれも早期退職を指す言葉ですが、いずれも少しずつ意味が異なっています。
ここでは、それぞれの言葉の意味について見ていきましょう。
セミリタイア
セミリタイアは、完全に仕事を辞めるわけではなく、メインの仕事を退職して自由な生活を楽しみながら、片手間で収入を得るライフスタイルのこと。
この言葉は辞書等で特に定義されているものではなく、大橋巨泉さんが1990年に発言したことで広まりました。彼は芸能界を完全に引退するのではなく、セミリタイアを選び、海外での生活を楽しみつつも、芸能界とのつながりを維持したのです。
セミリタイアの魅力は、自由な時間を持ちながらも収入を得られる点にあります。
しかし現役時代と比べて収入が大幅に減るため、セミリタイアに踏み切るには十分な貯金や資産を持つことが必須です。
とはいえ、完全に仕事を辞める「完全リタイア」とは異なり、ある程度の収入を得ながら生活するため、比較的少ない資金で実現できるのが魅力といえるでしょう。
セミリタイアを考える際は、自分のライフスタイルや資産状況に合った計画を立てることが重要です。
早期リタイア
早期リタイアは、定年を迎える前に退職することです。「希望退職」とも呼ばれ、セミリタイアとは異なり、完全に仕事を辞めてリタイア生活に入ることを意味します。
企業が提供する早期優遇退職制度を利用して、一定の勤続年数や年齢などの条件を満たす従業員に提供されるのが一般的です。
早期優遇退職制度は、企業が業績悪化や方針転換などの理由で従業員に早期退職を促す際に用いられることもあります。
退職金に加えて割増退職金が支給されることが多いのが特徴です。
早期リタイア後は通常の退職と同様に、退職金や事前に蓄えた資産をもとに生活することになります。そのため、年金の受給開始までに長い期間がある場合、必要な生活資金を十分に確保する必要があります。
生活資金が不足するリスクを避けるため、資産運用を行うことでFIREに近い生活スタイルを目指す人も増えているようです。
早期リタイアは自由な時間が増える反面、経済的な準備が不十分であると後悔する可能性も無視できません。そのため、退職後の生活設計を慎重に行う必要があります。
アーリーリタイア
アーリーリタイアとは、早期にメインの仕事から退職し、リタイア生活を始めることを指します。
特に定義があるわけではありませんが、30代から50代の人が選択することが多いようです。内容としては早期リタイアに似ていますが、早期優遇退職制度を利用できない人が退職することを意味するため、同義ではありません。
アーリーリタイアの大きなメリットは自由な時間を確保できることです。ただし、これまで築き上げてきたキャリアが止まることや、収入が減少するリスクが伴います。
アーリーリタイア後の生活スタイルによって必要な資金の準備が大きく異なるため、計画的な資産運用が重要でしょう。
さらに、アルバイトなどで収入を得る場合でも、厚生年金保険に加入できないケースがあり、将来の年金額に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。
FIRE
FIREとは、「Financial Independence Retire Early」の略で、日本語では「経済的自立による早期リタイア」を意味する、早期リタイアの一形態です。しかし、セミリタイアとは異なり、完全な経済的自立が要件となります。
FIREを達成した人々はリタイア後に働く必要がなく、貯蓄を切り崩すこともありません。彼らの収入源は、主に投資による資産運用益のみとなるのです。
その大きなメリットは仕事のストレスから解放され、自由な時間を持てるようになることです。
FIREを実現するためには豊富な資産運用の知識と、まとまった運用資金が不可欠です。また、急な出費に対応できる予備資金を確保する必要もあるでしょう。
FIREは、経済的に自立した生活を送りたいと考える人々にとって魅力的ですが、その実現には時間と努力が欠かせません。
早期退職・リタイアの資産を作る方法

早期退職してリタイアを実現するためには、その後に必要となる資金や資産を築いておくことが必須ということは言わずとも分かることと思います。
問題は「その資産をどのようにして用意するのか」ということでしょう。
ここでは、その具体的な方法の選択肢として考えられることを紹介します。
収入のアップと支出の最適化
まず正攻法として考えられるのは、キャリアアップや資格の取得、転職などによって、本業で得られる収入のベースを引き上げることでしょう。
最近のトレンドとしては本業とは別に、スキルを活かして副業・複業によって収入を得る経路を増やすといった選択肢がとられることも。
起業やビジネスオーナーとなって、リタイア後も収入を得続けられる仕組みを作っておくことを検討する人もいるようです。
また、収入を増やすことと同時に考えなければならないのが支出を減らすこと。自分にとって何が本当に必要なことなのかを考え、固定費を見直したりなど、無駄を削減できないか考える機会にしましょう。
投資による資産形成
投資の知識がある人はハイリスクハイリターンの株式投資に挑戦してみるのも良いでしょう。そうでなければ比較的リスクが低いとされる債券投資といった選択肢も。もちろん、リスクが低い裏返しとしてリターンも小さくなる点には注意が必要です。
また、一度で大きな資産を手にすることを考えず、安定した収入を期待するなら先に挙げた債券をはじめ、高配当株や連続増配株などの、インカムゲイン重視の投資を行うのも一つです。
不動産投資も選択肢に含まれますが、初期費用の捻出や維持費、空室となるリスクがあることには注意が必要でしょう。
関連記事:不動産投資の仕組みとは?初めての人が知るべき収益構造や魅力、注意点|エンマネ
リスク管理とポートフォリオ構築
どのような投資であっても必ず資産を失う危険性は付きまといます。そのリスク管理として分散投資というものがあります。
複数の資産クラスを組み合わせるのであれば、定期的に資産の状況を可視化するためにもポートフォリオを構築することが推奨されます。ポートフォリオ運用に慣れてくると、リタイア後のいつの時点でどれくらいの資産を持つことができているかが分かり、ライフプランを立てやすくなるでしょう。
また、急な病気や何らかの経済危機が起きた場合でも生活そのものや投資計画に狂いが生じないよう、いざという時以外、絶対に手を付けないと決めた一定の資金を、他の講座などで管理しておくことも必要です。
病気をはじめとした不測の事態への備えとして保険に加入することも選択肢の一つですが、保険料の支払い自体が負担になってしまっては本末転倒です。吟味と厳選を重ね、本当に必要な保険のみ加入しましょう。
M&Aの検討
現在何らかのビジネスをやっており、なおかつその事業を手放しても良いという人に限定した方法ではありますが、M&Aによって事業を売却し、その売却益を手にするという選択肢もあります。
投資などと違って、ほとんどリスクなく、まとまった資金を手にしたい場合には真っ先に選択肢に挙がる方法といえます。
当社、M&Aベストパートナーズは製造・建設・不動産・ヘルスケア・物流・IT業界に特化したM&A仲介業者です。着手金無料で仲介を承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
早期退職という選択は、強い意志を持ち、自分のやりたいことに情熱を注げる人に向いています。計画的な資産運用と明確な目標設定があれば、後悔のない退職後の生活を送ることができるでしょう。
しかし、軽率な決断は後悔を招く可能性もあります。自分自身のライフスタイルに合った、正しい選択をすることが重要です。
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