2024年7月2日

負債比率とは?目安や計算式について徹底解説

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自社の経営状況を見極めたり、M&Aなどの際に他社の企業価値を評価する際の重要な項目として「負債比率」というものがあります。

会計に関する専門的な知識がない方にとっては、「負債比率は低いほうが良い」と思われがちですが、それは正しいのでしょうか。

今回は負債比率の概要や計算式、業種ごとの平均値、負債比率が高まることでどういった影響があるのかを詳しく解説します。

負債比率とは?

負債比率とは、自己資本に対してどの程度の負債を有しているのかを割合で示したものです。

ここで押さえておきたいのが「自己資本」と「負債」という2つのキーワードです。

自己資本とは、貸借対照表における「純資産」にあたるもので、この中には資本金や税引き後の利益なども含まれます。

言い方を変えれば、後で返済する必要のない会社のお金ということになるでしょう。

一方、負債とは、買掛金や借入金、支払手形などが含まれ、後で返済しなければならない会社のお金のことを指します。

負債比率の計算式・求め方

負債比率は以下の計算式に数字を当てはめることで算出できます。

  • 負債比率(%)=負債÷自己資本×100

負債比率の目安

一般的な見方で考えると負債比率は少ないほうが返済に困るリスクが低く、安定的な経営につながると思われがちです。

しかし、金融機関から融資を受けて資金を確保することで、より大きな事業に挑戦できるようになり、事業規模や売上・利益の拡大につなげられることも事実です。

そのため負債があるからといって即座に経営不振につながるとは限らず、自社の経営規模や経営状況に応じて適切な負債比率を保つことが重要といえます。

では、適切な負債比率とはどの程度が目安となるのでしょうか。

企業の業種や事業内容、経営規模などによっても変わりますが、一般的には100〜150%程度の負債比率が適正な範囲内といわれています。

また、負債比率が100%以下の場合、万が一企業の業績が急激に悪化したとしても自己資本で負債を返済できることから、中長期的に見れば安定性が高いといわれています。

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業種ごとの負債比率の平均

業種によってもビジネスモデルは大きく異なることから、負債比率にも差が見られます。

今回は中小企業庁が実施した「令和4年度 中小企業実態基本調査」の結果をもとに、代表的な業種ごとの負債比率の平均をご紹介しましょう。

建設業:132%

建設業では建機や重機、その他作業に必要なツールなどに多額のコストがかかることから、これらを捻出するために融資を受けるケースが少なくありません。

一方、工事費用など得られる単価も高額であることから、負債比率は全業種の中でそれほど高くはなく、2023年の時点で132%となっています。

製造業:125%

製造業においても一定の設備投資が必要となるほか、製造ラインの変更やメンテナンスなど維持費用も必要となるため、平均の負債比率は100%を超える水準となっています。

情報通信業:75%

主にIT関連やWeb関連の企業が該当する情報通信業では、一部の大手を除き大規模な設備投資が必要となるケースは少ないため、平均負債比率は全業種の中でもっとも低い75%となっています。

運輸業:195%

物流を支える運輸業では、トラックやバスなどの大型車両が必要であるほか、物流拠点となる倉庫などの建設にも多額のコストを必要とします。

また、トラックやバスは毎年車検や整備にも多額の維持費がかかることから、平均負債比率は195%と高めの水準となっています。

卸売業:152%

生産者やメーカーと消費者の間に立ち、商品を広く流通させる役割を担っている卸売業では、仕入れや物流、在庫管理などに多額のコストを必要とします。

そのため、平均負債比率も150%を超える高めの水準となっています。

小売業:172%

一般消費者向けにさまざまな商品を販売する小売業者では、店舗の建設や在庫を保管しておくための倉庫、販売管理システム、人件費などに多額のコストを要します。

また、価格競争が進んだ結果、小売業者が得られる利益も決して多くないため、卸売業に比べると負債比率は高い傾向にあります。

不動産業:184%

不動産業者の中には、売買や賃貸の仲介を担う業者もあれば、自社で物件を建設し販売・賃貸として提供する業者、さらにはオーナーからの委託を受けて物件の管理を行う業者もあります。

特に事業用地の取得し自社物件を建設する不動産業者の場合、多額のコストが必要になることから平均負債比率も引き上げられ、180%以上の水準となっています。

サービス業:85%

マッサージ店や学習塾、飲食店、娯楽業などに代表されるサービス業では、小売業者のように商品の仕入れがなく、小規模な店舗で運営できるケースが多いことから、平均負債比率も低い傾向があります。

宿泊業:617%

ホテルや旅館といった宿泊業では客室の建設に多額のコストがかかる一方で、1泊あたりの単価も低く長期にわたって負債を返済するケースが少なくありません。

また、全業種の中で圧倒的に負債比率が高い理由として、2020年に拡大したコロナ禍が大きく影響しています。

特に小規模のホテルや旅館では利用客が大幅に減少し、コロナ融資を受ける事業者が増加したことも大きな要因と考えられます。

負債比率が高いことによるデメリット

負債比率が高くなると、企業経営においてはどういったデメリット・影響が考えられるのでしょうか。5つのポイントをもとに解説します。

財務リスク・倒産リスクの増大

負債比率が極端に高くなると財務状況が悪化し、急激に業績が低下したり売上が減少したりしたときに、負債を返済するだけの余力がなくなってしまいます。

その結果キャッシュフローが悪化し、最悪の場合廃業を余儀なくされたり倒産に至る可能性もあるでしょう。

利益の減少

負債比率が高まると、元本が増えるだけでなく利息も増えていくことを意味します。

事業によって売上や利益が増えたとしても財務状況が改善されず、新たな設備投資や事業規模の拡大がままならず競争力の低下を招くこともあるでしょう。

株主価値の希薄化

企業の業績や財務状況から、期待されるキャッシュフローを評価したものを企業価値とよびますが、企業価値から負債を差し引いたものを株主価値とよびます。

株主価値が高まることで多くの投資家から資金を集めやすくなりますが、負債比率が高まりすぎてしまうと株主価値が希薄化するリスクがあります。

資金調達の制約

銀行などから融資を受ける際、企業の財務状況は特に厳しくチェックされる傾向があります。

負債比率が高いと中長期的な経営リスクも高いと判断され、希望通りの融資額が受けられなかったり、融資そのものが断られてしまう可能性もあるでしょう。

関連記事:M&Aにおける注意点とは?買い手・売り手の両視点から解説【中小企業向け】

負債比率と自己資本比率の相互性

負債比率と対照的な存在が自己資本比率です。自己資本比率とは何を評価する指標なのか、負債比率との関係を解説しましょう。

自己資本比率とは

自己資本比率とは、企業の総資産のうち自己資本が占める割合を示したものです。

自己資本比率は以下の式に当てはめることで算出でき、この割合が高い企業は経営が安定していることを意味します。

自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

自己資本は純資産にあたるもので、返済の必要がない資本を指します。これに対し返済の必要があるものは他人資本とよばれ、負債にあたります。

負債比率と自己資本比率の関係とは

上記の説明を聞くと、自己資本比率が高ければ高いほど良いと思われがちですが、すべてのケースにおいてそれが正しい見方とはいえません。

たとえば、企業によっては新たな事業に乗り出すために大規模な設備投資を行った結果、一時的に負債比率が高まっているケースもあるでしょう。

それだけ積極的な事業を展開しようと取り組んでいる証でもあり、新たな事業が軌道に乗ればこれまで以上の成長が期待できる可能性もあります。

そのため、企業価値を正しく評価するにあたっては、極端に負債比率が低く自己資本比率が高い企業が良いとは限らず、両者のバランスや負債比率が高い理由を分析することが重要といえるのです。

関連記事:企業M&Aに欠かせない「負債比率」の読み解き方と活用術

負債比率を改善するには

負債比率が高まりすぎて経営に影響を及ぼしている場合には、どういった方法で改善していけば良いのでしょうか。

負債の返済

もっともシンプルで分かりやすいのは、負債を計画的に返済していくことです。

特に継続して安定した利益が出ている企業では、無理のない範囲で負債の返済計画を立て、実行していくことで負債比率は徐々に改善できるでしょう。

利益の増加

財務的な余力がなく返済計画が立てられない場合には、利益率の改善を優先的に検討することも大切です。

商品単価のアップや固定費、変動費の削減などが可能であれば利益が増加し、それを負債の返済に充てることで負債比率も改善できる可能性があります。

自己資本の増強

短期的な解決方法として考えられるのが自己資本の増強です。自己資本比率が高まると相対的に負債比率も低下するため、有効な改善策といえるでしょう。

自己資本を増やすには新株の発行が代表的な手法ですが、出資比率が変動し株主の議決権などにも影響するおそれがあるため慎重な判断が求められます。

不動産資本の売却

土地や建物など不動産資本の売却が可能であれば、売却利益を負債の返済に充てることで負債比率の改善につながる可能性もあります。

財務構造の改善

自己資本の増強や不動産資本の売却によって一時的に負債比率が改善できたとしても、根本的な財務構造が変わっていないと再び負債が増える可能性もあります。

そこで抜本的な取り組みとして重要なのが、財務構造の改善です。

具体的な例としては、経費のムダを徹底的に見直すことや、低金利ローンなどを含めた資金調達方法の見直し、収益率の低い事業の見直しなどが挙げられます。

まとめ

自己資本に対してどの程度の負債を有しているのかを示す負債比率は、低いほど中長期的に安定した経営が期待できるのは事実です。

しかし、企業の中には積極的な設備投資を行い事業の拡大に取り組んでいるところも多く、負債比率が高いからといって一概に経営危機にある企業であると評価することは難しいでしょう。

重要なのは負債比率のバランスであり、またどういった理由で負債比率が高まっているのかを正しく分析することも重要です。

経営環境の悪化によって負債比率が高まっている場合には、今回ご紹介した改善策を参考にしながら、自社がとるべきアクションを検討・実行していきましょう。

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