誰よりも深く考え、最高のシナジーを導く
自ら考え、這い上がる精神の源泉
まずは、大沼さんの学生時代について教えてください。
学生時代はソフトテニスに打ち込んでいました。地元は静岡県の伊豆で競技人口もそれほど多くなく、中学で県大会に出たときは強豪選手たちにまったく歯が立ちませんでした。自分の実力が県内ではどの位置にあるのかを初めて知った機会でしたね。
高校に入って最初のインターハイ予選も一回戦負けでしたが、最終的には県大会で優勝し、インターハイに出場しました。振り返ると、県大会で勝つことを遠く感じていた自分が、県の代表として全国の舞台に立つようになった。その変化は大きかったと思います。
結果を残せたことはもちろんですが、以前は手が届かないと感じていた水準で勝負ができるようになったことが、自信につながりました。
挫折を乗り越えてこられたのですね。大学卒行後はどのような道に進まれたのですか?
「地元に戻って仕事がしたい」という思いから静岡県内の地方銀行に入行しました。個人営業では住宅ローンなどの融資を、法人営業では融資や新規開拓を担当していました。
特に印象に残っているのは法人営業で出会った経営者の方々との対話です。事業の現状や資金のご相談に加え、会社を立ち上げた経緯や経営で大切にしていることまで伺う機会がありました。同じ業種であっても歩んできた歴史や目指す未来は一社一社違います。会社を理解するには数字だけでなく、その背景にいる経営者を知る必要があるのだと学びました。
経営者の言葉に直接触れながら会社を見る視点を養えたことは、今の仕事にもつながる大切な経験です。
そこからM&A業界を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
伊豆を担当していたときに、経営者の方々から後継者不在の悩みを伺うことが何度もありました。お子様がいても東京や神奈川で生活の基盤を築いているため、地元に戻って会社を継ぐことは難しい。「自分の代で会社を畳もうと思っている」と話される方もいらっしゃいました。
ただ、当時の私の立場ではその悩みの解決に直接関われる機会が限られていました。目の前で相談を受けているのに十分に応えられない、そのもどかしさがM&A業界を目指すきっかけになりました。
経営者の決断をより当事者に近い立場で支えたい。同時に、財務や税務、経営戦略などの幅広い知識が求められる仕事で自分の力を試したいという思いもありました。銀行で身につけたものを土台にさらに専門性を磨ける仕事として、M&Aアドバイザーを志しました。
銀行員時代の経験を活かし、数字を読み解く

前職の銀行とM&Aベストパートナーズ(以下、MABP)での営業活動において、最も大きな違いはどこにありますか
自分の提案によってお客様に示せる成長の選択肢が大きく広がったことです。
銀行で私が担当していた営業は、お客様の資金ニーズを捉えて融資を通じた支援を考えることが中心でした。今はどの企業を譲り受けるかによって、参入できる事業や展開するエリア、得られる技術や人材も変わります。ご紹介する企業の選び方そのものにアドバイザーの考えが表れる仕事だと感じています。
だからこそ、ご希望の業種や規模を確認したうえで「この会社を迎えることでどんな可能性が生まれるのか」まで考えるようにしています。そのためには現在の事業を知るだけでなく、どこに成長の壁があり、これから何を実現したいのかを理解する必要があります。
自分なりの仮説を持って経営者の方と会社のこれからを議論する。提案の自由度が高い分だけ考える責任も大きいのですが、そこにこの仕事の難しさと面白さがあります。
未経験からM&A業界に挑戦されて、銀行時代の経験が直接生きていると感じる部分はありますか?
数字を見たときに、その数字を生み出している事業の仕組みまで考える習慣です。
例えば利益率の高い会社であれば、なぜその水準を実現できているのかを掘り下げます。独自の技術が評価されているのか、価格決定力を持っているのか、あるいは商流や顧客基盤に強みがあるのか。同じ利益率でも背景によって会社の評価は変わりますし、その収益が今後も続くかどうかの見方も違ってきます。
こうした視点は銀行で決算書を読み、経営者のお話と照らし合わせるなかで身につきました。数字から問いを立てて事業の実態を確かめていく。その繰り返しが会社を理解するうえでの土台になっています。
今も企業をご紹介する際には業績だけでなく、その数字を支える強みや収益の持続性をどう見ているかまでお伝えすることを意識しています。数字の説明から一歩踏み込んでお客様の判断に役立つ材料を示せることが、前職の経験を生かせる部分だと感じています。
現場の「一次情報」と「徹底的な仮説検証」で勝ち取る信頼

大沼さんが普段、日々の業務の中で最も大切にしていることは何でしょうか?
自分の理解を現場の一次情報で確かめることです。
M&Aで扱う企業は業界も事業内容もさまざまです。インターネットやAIで情報を集めることはできますが、そこに書かれていることを知っただけでは個々の会社の強みや業界の中での立ち位置までは捉えきれません。
そこで譲受企業の方との面談では、実際にその業界で事業を営む方の見方を伺うようにしています。「この利益率は業界では一般的な水準なのでしょうか」「この会社の収益性の高さをどのように見られますか」。自分なりに考えたうえで質問し、仮説が実態に合っているかを確かめます。
資料を読んで感じた小さな違和感も曖昧にしたままにはしないようにしています。率直に伺ってみると、強みだと思っていた点に別の側面があったり、見落としていた価値に気づいたりすることがあります。
その場で疑問を解消するだけでなく、得られた理解を次のご提案に生かす。そうして会社を見る視点を一つずつ増やしていくことを大切にしています。
そうした地道な「一次情報」へのこだわりが、顧客からの深い信頼につながっているのですね。
お客様から「大沼さん自身はこの会社をどう見ていますか」と聞いていただけることがあります。私自身の見立てを求めていただけるのはうれしいですね。同時に簡単には答えられない問いだとも感じています。
その際は強みと感じている点に加えて、懸念していることや確認が必要なことも自分の言葉でお伝えしています。どこまで理解できていて、どこから先は確かめる必要があるのか。その境目を曖昧にせずに話すことも判断を支えるうえで大切だと思うからです。
意見を求めていただける関係に甘えず、次のご相談にも応えられるだけの準備をする。信頼はそうした一回一回の対話の中で積み重ねていくものだと考えています。
一方で、プライベートで力を入れていることはありますか?
ランニングです。多いときには月に200km以上走っていました。仕事の後に7〜8km、週末のどちらかに20km走る生活をしていた時期もあります。
面白いのは積み重ねた練習が数字にも体の感覚にも表れるところです。以前と同じペースなのに楽に走れたり、同じ距離のタイムが縮まったりすると成長を実感できます。
もともと数字を振り返りながら改善の方法を考えるのが好きなんです。ランニングウォッチで計測したラップタイムや心拍数をAIに共有して、練習の振り返りや次のメニューの相談にも使っています。
「次はどうすればもっと速く走れるだろう」と考えて試してみる。走ること自体はもちろん、その工夫も楽しみの一つですね。記録を残すと小さな変化にも気づけるので、それがまた走りたい気持ちにつながっています。
経営者の次の一手をともに考える存在へ
大沼さんが現在新しくチャレンジしていることや、今後の目標について教えてください。
今は専門知識の幅を広げるために資格取得に挑戦しています。
M&Aの検討を進める中では、事業や財務への理解だけでは対応しきれない論点に出会います。自分に知識があれば問題が表面化する前に気づき、必要な確認や対応を早く始められるかもしれません。知識の幅は検討の過程で気づけることの幅にもつながると感じています。
担当者と連携する場面でも、確認すべきこととその理由を自分が理解していれば相談の仕方や議論の深さは変わります。お客様に対しても検討上の課題とその整理の仕方を、より具体的にお伝えできるはずです。
資格取得を一つの目標に置きながら学んだことを実務で使える知識にしていきたいですね。企業の魅力を伝えるところから、その先の判断や進め方まで支えられるようになることが今の課題です。
将来的にはどのようなアドバイザー、あるいはキャリア像を描いていますか?
一社一社の経営課題や成長戦略まで理解していれば、企業を見たときに希望条件の一致だけでは見つからない組み合わせを考えられるはずです。お客様自身もまだ気づいていない可能性を示し、「確かに当社が検討する理由がある」と納得していただける提案ができるようになりたいですね。
その先に目指しているのは、具体的な案件があるときだけでなく「これから会社をどう成長させていくか」を考える段階から声をかけていただける存在です。経営者が次の一手を考えるときに、まず相談したい相手として自分の名前が浮かぶ。その期待に応えられるだけの知見と提案力を磨いていきたいと思っています。
最後に、これからM&Aアドバイザーを目指す方へ向けてメッセージをお願いします。
今ある知識に加えて、目の前の仕事からどれだけ学び続けられるかが問われる業界だと思います。
一つの案件に向き合えば、それまで知らなかった業界の仕組みを知ることができます。一人の経営者と深く話せば、その会社がなぜ今の事業を営み、どのような判断を重ねてきたのかが見えてきます。自分が問いを持って向き合うほど、同じ資料から読み取れることも面談で伺えることも増えていきます。
私も銀行での経験を土台にしていますが、それだけでは足りないと感じる場面はあります。だからこそ分からないことをそのままにせず、自分で調べたり現場の方に伺ったりしながら理解を深めていく。その積み重ねが次の提案で自分を支えてくれます。
「なぜこの会社は強いのだろう」「どうすればもっと成長できるのだろう」。そんな問いを持つことを楽しめる方にはとても面白い仕事だと思います。
ぜひ、熱い想いを持った方と一緒に働けることを楽しみにしています!
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