M&Aストーリー

株式会社Sakae Plus
M&A成約事例

後継者問題と事業拡大を解決!未来につなぐ戦略的M&Aの軌跡。

株式会社Sakae Plus 代表者取締役 舛重 聖長

譲渡企業


株式会社Sakae Plus


代表者取締役 舛重 聖長氏 インタビュー

会社・事業内容等について

  • 代表 舛重聖長さま個人のご経歴を教えてください。

    私は1964年に大阪市平野区で生まれ、幼少期から中学生までは奈良県で過ごしました。高校を卒業すると、新設された大阪ビジネスカレッジに一期生として入学します。ここでは、士業の先生方や元JALのキャビンアテンダントの方々から、ビジネスの基礎的なことを学びました。ただ、会社経営には全く興味がなかったですね。

    卒業後は、地元の自動車販売会社に内定をもらっていたのですが、父から方向転換を促され、関東の「牧野フライス精機株式会社」に入社しました。父の会社に導入された、マシニングセンタ(MC)という金属切削加工機の技術を学ぶためだったんですよ。

    実際、学生時代から付き合っていた女性がいたこともあって、関東行きには乗り気ではありませんでした。さらに相手の親からは「遠距離恋愛は難しい」と反対されましたが、私は「3年後に戻る予定なので、その時に結婚させて欲しい」と告げ、現地に向かいました。

    その約束通り、3年間現地で頑張って技術を身に着け、貯蓄もできましたので、大阪に戻ると現在の妻と結婚します。そして1987年、父が経営する「株式会社サカヱ彫巧社」に入社しました。

    2002年11月には父から会社を引き継ぎ、代表取締役に就任します。それ以来、現在に至るまで会社経営に取り組んできました。

  • 会社・事業内容を詳しく教えてください。

    株式会社Sakae Plusは、箔押し(ホットスタンプ)や浮出し(エンボス)、シール印刷、ウエルダー、PAD印刷など、特殊印刷用の版を製造している会社です。また、専門の協力会社と共にシルクスクリーン版や各種治具の製造も手掛けています。

    主な製品例としては、パッケージや名刺の会社ロゴや文字に箔押し加工を施したり、凹凸をつけたりするための版ですね。また、携帯電話やカメラ、ボールペンなどの曲面に印刷する、特殊な版の製造も得意としています。

    現在、主に使用する材料はマグネシウムですが、私が入社した当時は真鍮や鋼鉄を使用していましたね。当時の代表的な分野はパッド印刷で、特に業務用カセットテープの印字刻印の製造を多く手掛けていました。

    具体的には、パナソニック、日立マクセル、ソニー、TDKといった大手メーカーの業務用カセットテープのラベルに印字する「A面」「B面」あるいは「90分」「120分」といった刻印です。この時代は、大手企業からの仕事が大半を占めていました。

  • 1975年の設立~今に至るまでを教えてください。

    当社は、先代である舛重榮が1970年に株式会社辻川彫刻所を退職し、自宅で箔押し用彫金師として活動を始めたのが起源です。1975年には、大阪市城東区で「株式会社サカヱ彫巧社」を設立しました。1980年頃、事業の拡大に伴って区内の別の場所へ移転します。

    入社してから1998年頃までは、前職で得た経験を活かして、銘板金型の作製や彫刻刃の加工を別工場で行っていました。しかし、機械の老朽化や処理速度の問題、経営の悪化に直面し、工場を一カ所に集約したんです。その際、工作機械を用いた仕事をやめ、エッチングに特化した事業へと舵を切りました。

    旧経営陣は「大手企業との取引があるので、細かい仕事はしない」という方針でしたが、私は大手企業への依存がキャッシュフローの悪化を招いていると感じていました。そこで先代に直談判し、役員に加わる形で経営改革を進めることにしたんです。

    まず、大手企業への依存度を下げるため、小口のお客様を多数開拓してリスク分散を図りました。当時はネットがなく、全国からタウンページを集めて「〇〇印刷」と名のつく会社に片っ端から営業をかけていったんです。その結果、顧客数は大幅に増加し、売上も安定していきました。

    リーマンショックや東日本大震災といった危機にも直面しましたが、この経営方針が功を奏し、無事に乗り越えられました。2020年の新型コロナショックでも約7%の売上減少にとどまり、翌年には反転して過去最高益を達成するなど、盤石な経営基盤をつくれたと自負しています。

    2017年には会社を再移転し、社名も「株式会社Sakae Plus」に改称しました。

M&Aに至る背景

  • M&Aを検討された「背景」や「経緯」を教えてください。

    M&Aを検討した背景は、主に2つあります。

    1つ目は「後継者問題」です。私には娘がいますが、彼女は会社を継ぐ意思はなかったので、最初は弟に継承させるつもりで準備を進めていました。親族での事業承継が当たり前だと思っていましたし、弟が適任だと考えていたんです。

    ところが、弟と経営に関して意見が対立するようになり、諸問題も発生したため、彼には会社を離れてもらいました。そして「いったん外部の人間に経営を任せ、会社を変えた上で親族に渡すのも一つの方法ではないか」と、考えを改めたんです。

    2つ目は「資金面」ですね。移転前の大阪工場は老朽化が目立ち、鉄骨が錆びついて崩れそうな状態でした。何とか現在の場所を見つけて移転しましたが、この際に大きな借金を背負うことになったんです。会社を10年先、20年先まで継続させるには、外部の力が必要だと感じました。

    気がつけば私も50代半ばとなり、改めて跡継ぎの問題に直面します。周囲からも「次の社長をどうするのか」と問われる中、M&Aに興味を持ち調査を始めました。経営を“ガラス張り”にするなど約3年にわたる準備を経て、ようやく現実的に話を進められる状態にまでこぎつけましたね。

弊社との出会い

  • 担当アドバイザー 一山の第一印象を教えてください。

    正直なところ、最初はどの仲介会社の「M&Aアドバイザー」も、ちょっと胡散臭いなと思いながらお会いしていました。ただ、M&Aベストパートナーズ(以下MABP)の一山さんだけは、他社の方とは少し様子が違っていましたね。

    最初に接触したのは別の大手仲介会社の方でしたが、私がどうしても担当者の人柄を信用できなかったんですよ。好条件の案件をいくつか提案されましたが「一緒に仕事をしたい」と思える相手ではなく、丁重にお断りしました。

    次に紹介された2社目の仲介会社も、譲受企業の候補としてファンドが多く提示され、やはり気が進みませんでした。長期的な会社の成長よりも、利益追求が優先されるのではないかと心配だったんです。

    その後、同業他社に直談判し、お付き合いの関係上、銀行に仲介役を担って頂き、相手企業から前向きな回答を得られました。進める上で、すでに前年に2社買収されていたこともあり、想定していたよりも経営統合に時間がかかっており、結論これ以上の譲受は難しいとお断りの連絡がありました。結局、M&Aは振り出しに戻ってしまいます。

    一山さんからのDMが届いたのは、ちょうどそんなタイミングでした。普段であれば、こうした営業はすぐに断っていたと思いますが、一山さんのDMは他社とは違い、当社の現状を考慮した具体的な候補企業が提案されていたんです。それが妙に気になって、経理担当とも相談した上で「一度会ってみよう」と面談を決めたのが、2023年11月のことでした。

M&Aの決断

  • ご成約までの経緯を教えてください。

    2024年4月末、一山さんから譲渡先となる企業の提案を受け、M&A交渉がスタートしました。同年の6月19日にはTOP面談を実施し、11月14日にクロージングを迎えます。とてもスピード感がありましたね。ちょうど同じ時期に友人が取り組んでいたM&A案件は、もっと時間がかかっていたので。

    スムーズに進んだ要因としては、私自身が一山さんと出会う以前から1年半ほど、独自にM&Aの実現に向けて動いていたことが挙げられます。その間に必要な知識を積み重ねており、交渉の土台が整っていたんですよ。

    また、財務や労務に精通した、元銀行員の経理責任者が当社に在籍していたことも大きかったです。重要な検討事項が発生した際にも迅速に対応できるなど、彼のサポートがM&Aのプロセス全体を大きく後押ししてくれました。

    さらに、私自身も10年以上にわたって大手会計事務所のTKCさんから支援を受け、“ガラス張りの経営”を実践してきました。小さな規模の会社ながら、売上や利益をはじめとした経営状況を全てオープンにし、健全な経営基盤を目指してきたんです。

    一山さんも「ここまで綺麗でスムーズに進む案件はあまりない」と驚いていましたね。特に急いでいたわけではありませんが、結果的にとてもスピーディなM&A交渉となりました。

  • M&Aの際に重きを置いた点を教えてください。

    M&Aを進める上で、最も重視したのは「既存社員の継続と雇用の安定」です。

    従業員の生活を守り、引き続き安心して働ける体制を整えてもらうことが、譲渡先選定の絶対条件でした。また、私自身が引き続き社長として会社を運営し、これまで築いてきた事業内容を継承・発展させられることも重視しましたね。

    一方で、営業部門の責任者には、1年ほど前からあえて厳しいことを伝えてきました。営業部門は、譲受企業の手法と合わなければ、真っ先にリストラ対象になると思ったからです。

    そのリスクを理解してもらうため、彼らには「これまでのやり方を変えるのは難しいし、怖くて嫌だという気持ちも分かる。でも、10年先の会社を引っ張るのは、あなたたちの世代なんだ。だからこそ、これからの時代を見据えて人脈やスキルを習得しつつ、どうやって譲受企業と共存しながら競争力を保つか、しっかりと考えて欲しい」と、意識の向上を求めました。

  • M&Aの際の心配や懸念されていた点を教えてください。

    M&Aで最も気にかけていたのは「既存社員の継続雇用」と「会社の運営方法」ですね。ただ、交渉の過程で2つともクリアできると分かりましたので、大きな不安はありませんでした。

    いきなり新たな役員を送り込み、運営方針をすべて変更するような譲受企業であれば、間違いなくお断りしていたと思います。ただ、会社が赤字で厳しい経営状況だったなら、役員を派遣されて経営の立て直しを求められたかもしれません。

    実際には、当社は3期連続で黒字を計上していることもあって、先方はこれまでのやり方を大切にしてくれる姿勢を示してくれました。おかげで、安心して話を進められましたね。

    もちろん、一山さんから紹介された譲受企業だからこそ、こうした安心感が得られたのかもしれません。別の企業が相手だった場合は、また違った不安が生まれていた可能性もあります。

    正直なところ、オーナー経営を続けるのはとても大変でした。同業の仲の良い経営者たちも「5年後、10年後の経営がどうなるか分からない」と、不安を口にしています。今回のように、そうした不安を取り除ける形のM&Aであれば、経営者にとって有効な選択肢になると感じましたね。

  • 譲受企業様の第一印象を教えてください。

    実は、譲受企業の経営者は、この話が出る前から「ぜひ一度お会いしてみたい」と思っていた方だったんですよ。その方と一緒に事業を進められる可能性が生まれたことに、大きな喜びを感じていました。

    M&Aを検討する遥か以前から、先方の社長の噂は耳にしていました。デジタル化が進む中でも、事業を印刷に特化させている姿勢がとても興味深く、業界内でも「一度はお会いしてみるべき」と、多くの業者さんが口をそろえるほどの方です。

    実際に交渉でお会いすると、やはり想像以上に素晴らしい方でした。特に印象的だったのは、社員や会社の設備に対する深い理解と配慮です。一緒に先方の会社を回った際、社長が担当者に向かって「この機械はそろそろ耐用年数が来る頃だね。減価償却も終わっているから、次の手を考えよう」と気軽に声を掛けていたんです。

    それに対して、担当者も「実はちょうどそのように進めようと考えていました。社長の口添えがあるなら、稟議書も書きやすいですね」と笑顔で応じていて、社内の信頼関係がとても強固であることを感じましたね。

    こうした細やかな気配りやスピード感のある意思決定は、彼らの社風を表していて、この方と共に事業を進めていく未来に大きな期待を抱いています。

  • 決め手になったポイントを教えてください。

    最大の決め手は、憧れていた方が経営するグループの一員となって、一緒に事業を進めたいという私自身の強い思いでした。長年にわたりその方にお会いしたいと思っていただけに、大きなご縁をくださった一山さんには、本当に感謝しています。

    M&A自体に対する不安はありませんでしたが、一方で「今回のご恩を、先方にこれからどうやって返していけばいいのか」といった、大きなプレッシャーを感じています。むしろそちらの不安の方が大きくて、我々がグループに貢献できる方法について、真剣に検討しているところです。

    一例として、これまで資金力の問題から実現できなかったことの一つに、発展途上国での製版支援があります。このようなグローバルな取り組みを本格化させ、我々らしい尖った事業を進めることで、新しい価値を提供していきたいと考えています。

M&Aの振り返りと展望

  • M&Aを終えられて、感想を教えてください。

    「あっという間に済んでしまった」というのが率直な感想です。思っていた以上にスムーズに進み、私も驚いています。

    譲受企業からは「オーナーが変わっただけで、経営に関しては今まで通りです」というお話をいただきました。もちろん上場企業のグループに入るわけですから、3ヶ月に1度の経営報告など、これまで以上に明確な方向性を示す必要はあります。しかし、それ以外はこれまで通りのスタイルで進めて良いとのことで、非常にありがたく感じていますね。

    私は経営者として「社員とのコミュニケーション」を大切にしてきました。給与や賞与の明細を渡す際に、少しでも時間をつくって、仕事に限らず趣味や個人的な話を交わすよう心がけています。趣味については一緒に楽しんだり、事前に詳しく調べて話を盛り上げたりしますね。せっかく当社に来てくれているので、彼らにはできるだけ長く、気持ちよく働いて欲しいですから。

    特に若い世代の製造担当者は、表舞台に出たいという欲求が少なく、引っ込み思案で誰かに相談したいけれどもできない、というケースが少なくありません。そんな彼らのストレスを、少しでも和らげたいとも思ったんです。彼らとのコミュニケーションは、これからも続けていきます。

    私は今後、あと10年ほどは会社に残ると思います。その後は社内から次の社長を立てるのか、譲受企業から迎えるのか、まだ分かりませんが、会社を存続させるには必要なプロセスです。どちらにしても私は、次世代につなぐ「潤滑油」になろうと思っています。

  • M&Aを検討されている経営者様に一言お願いいたします。

    M&Aを検討する際、不安な部分があるのは当然ですが、勉強を重ねることでその多くは解消できるはずです。アドバイザーとの相性や、譲受企業のことをよく知れば、一歩踏み出す勇気が持てると思います。

    また、実際にM&Aをする・しないにかかわらず「まずは会って話を聞いてみる」ことがとても大切だと感じますね。その際、事前に経営の透明性を確保しておけば、話もスムーズに進められるでしょう。見せたくない部分があると、相手企業もその点を探ることになり良い信頼関係が築けません。M&Aの成功には、隠し事をしないことが大切です。

    現在、M&Aはまだ一般的に認知されているとは言えません。そのため、私は自分の経験を通じて、悪いイメージを払拭し、多くの方にM&Aの可能性を知って欲しいと考えています。加入している団体で「ぜひ勉強会で話をしてほしい」というオファーもいただいており、少しでもお役に立てたらと思いますね。

    もちろん、M&Aには報道されるような悪い事例も少なくありません。しかし、慎重に準備して適切な相手を選べば、M&Aは会社をより良い方向に導く手段になると確信しています。

    また、当社は15年ほどかけて株式を一本化しましたので、M&Aの諸手続きはとてもスムーズでした。多くの中小零細企業では、親戚や従業員、旧経営陣などが株式を持っているケースが多く、それらを買い上げる準備には、早めに着手すべきです。

    さらに、当社では銀行から経理担当者を迎えていました。経営者によっては抵抗があるかもしれませんが、経理に熟知している人材を受け入れるメリットは大きいですね。

    怖がっていても前には進めません。ぜひ一歩を踏み出し、M&Aの可能性を前向きに検討していただければと思います。

会社情報

企業名
株式会社Sakae Plus
代表者
舛重 聖長
所在地
大阪府城東区森之宮2-2-14
M&Aで達成した内容
後継者不在、事業拡大
詳細業種
印刷用金版製造
ホームページ
https://www.sakae-takumi.com/

担当アドバイザー

担当アドバイザー

経営者様と真摯に向き合い、
常に『全身全霊』で取組む。
一山 佑介
得意業種
製造
資格
  • 事業承継・M&Aエキスパート
  • M&Aストーリー

    M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
    ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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