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岡山沢井薬品株式会社
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譲渡企業
岡山沢井薬品株式会社
取締役会長 真黒 康夫氏 インタビュー
私は高校を出るとすぐに就職しまして、この業界に入ったのは20歳のころです。入った会社は急成長の真っ只中で、21歳には営業部長に就任し、22歳の時には新たに展開された福岡支店の支店長も兼務しました。
しかし、24歳の時にその会社が倒産してしまいます。当時は結婚して、子どもが生まれたばかりでした。何とかしなければと、私1人で医薬品販売の事業を始めたんです。
知人の薬局の社長にお願いして、個人でも医薬品を仕入れられるルートをどうにか確保し、医師の先生方に直接訪問して購入をお願いするなど、精力的に働きました。そのころは調剤薬局も少なく、医薬品を売るとかなりの利益が出たため、なんとか家族を養えたんですよ。
ところが27歳の時、今度は知人に騙されて資金が回らなくなり、医薬品の仕入れができなくなってしまうという状況に陥りました。お金は戻らず、泣き寝入りでしたね。
そんな中、兄がちょうど同じビジネスを始めていて「一緒にやらないか」と誘ってくれたため、岡山に戻り事業を立ち上げました。1976年のことで、これが会社設立のきっかけです。
それから48年間、紆余曲折ありながらも、この会社を経営してきました。
当社は岡山県岡山市に拠点を構え、医療機関への医薬品の情報提供や販売、納品を行っています。営業エリアは岡山県全域が中心で、鳥取県の一部、広島県の福山地方も販売地域です。
取引先は総合病院をはじめ、個人医院や診療所、歯科医院、調剤薬局など多岐にわたります。現在、取り扱い製品のメインは沢井製薬のジェネリック医薬品です。
従業員は16名、年間売上高は直近で10億円ほどの規模で、事業を運営してきました。
当社は1976年に「海外製薬岡山販売株式会社」として設立し、4〜5人の社員でスタートしました。規模は大きくありませんでしたが、食べていければ十分と考えていたんですよ。新薬が次々と登場し、薬価制度にも守られた売りやすい時代が続きましたね。
当時の私は「24時間営業」を信条に、どんな時間帯でも注文が入れば責任を持って薬を届けるという姿勢を貫いていました。私が率先して一生懸命な姿勢を示すことで、社員たちも自然とその姿勢を見習ってくれましたね。そのためか、今でも当社には真面目な社員が多くいます。
同業他社さんは自前で薬局を持っているところが多く、私も知り合いの医者から薬局を開設するよう再三にわたり勧められました。しかし私は、1つの仕事を大事にしたかったんですよ。結局のところ当社は卸売業に専念し、薬局経営には手を出しませんでした。
事業が成長すると、扱う金額や取引先が増えて手狭になったため、事務所を現在の場所へ移転します。同じころ、取り扱い製品の主力を沢井製薬に絞ることを決め、メーカーの経営者からの推薦もあって、2006年に社名を「岡山沢井薬品株式会社」と変更しました。
これまで一貫して、何よりも「信頼」を大切にし、社員や取引先など人とのつながりを重視して経営してきました。
私の会社経営の基本方針は「関係者に迷惑をかけない」というものでした。万が一会社を畳むことになったとしても、メーカーや金融機関に大きな負債を抱えさせるような事態にはしたくない。そう考えて、堅実な経営を心がけてきたんです。
しかし、ここ2~3年で業界の状況は急激に変わり、円安の影響もあって製品の原価率が上昇します。昨年にはメーカーの販売奨励金も下がってしまい、今後の経営に不安が生じ始めました。
私のもとにはM&Aに関する案内が頻繁に届いていたものの、これまでずっと断り続けてきたんです。正直に言えば、一度は耳を傾けてみたい気持ちもありました。ですが、自分が動くことで社内が不安定になるのではないかと懸念して、なかなか踏み切れませんでしたね。
転機となったのは、知り合いの同業他社さんが大手グループにM&Aしたことです。会社を譲渡した経営者の方から「社員が良い環境で生き生きと働けている」と、事後の様子を伺ったことをきっかけに、少しずつM&Aの可能性を考え始めました。
昨年の10月には再び、販売奨励金が下がる通知が届きました。決算書を見ながら社内で数字を検討した結果、今後の大幅な利益は望めないとの結論に至ります。資産を食いつぶせば2~3年は持ちこたえられますが、それ以降の見通しは不透明でしたね。
全社員を集めて会議を開き、現在の経営状況と今後の可能性について率直に話しました。このままでは給与や昇給面での改善が難しいこと、そしてM&Aを選択すれば環境が大きく変わる可能性があることを伝えたんです。
その上で「M&Aで未来を拓くか、もしくは会社を閉じて退職一時金を受け取るか」という二つの選択肢を示し、全員に意見を求めます。出た結論は<M&Aの実行>でした。
私はもともと、二者択一といった決断が得意ではなく、担当いただいたM&Aベストパートナーズ(以下MABP)の岡田さんには、そういった性格面の部分で特に配慮いただきました。M&Aを進める中でも、細かなところまで親身になって教えていただき、私もその姿勢に応えるべく努力したつもりです。
岡田さんのおかげで、今回のM&Aが実現できました。彼には心から感謝していますし、元社長も同じように感謝の気持ちを抱いています。
私は「すべての物事は縁でつながっている」という考えを大切にしてきました。今回のM&Aでも、他社との比較などは一切行わず、岡田さんがつなげてくださったご縁を信じて話を進めました。岡田さんは若く洗練された印象の方で、私もいろいろな話をさせていただき、信頼してお任せできると感じていましたね。
MABPの岡田さんと初めてお会いしたのが2024年7月19日、そこから早い段階で話が進み、8月9日にはTOP面談に臨みました。契約を締結して正式なクロージングを迎えたのが9月27日でしたので、比較的スムーズに進んだのではないかと思います。
実は30年ほど前、当社は税務署から決算に対する指摘を受けた過去があります。関係者の方々には、多大なご迷惑をおかけしてしまいました。この経験から「真っ当に稼ぎ、きちんと税金を納める」という信念を持ち、社員とも話し合った上で、原因となった業界の慣習から距離を置くことにしたんです。
それ以降は、法人税をしっかり納めつつ、きれいな決算を心がけて参りました。今回のM&Aにあたっては、岡田さんから「修正すべき箇所が何もない」と評価されたほど決算状態が良好だったことで、スムーズな契約成立に貢献できたかと思います。
最も重視したのは、M&A後の社員たちの働く環境や待遇が、現状のまま維持できるのかという点でした。幼い子どもを抱えた社員や、家を建てて間もない社員もいましたので。
会社の将来を話し合った会議では、8~9割の社員がM&Aに賛成の意を示してくれました。生活がかかっていますから、退職一時金だけでは将来への不安を払拭することはできないと考えたのでしょう。安定した職場があり、毎月の給与が得られることの大切さを、社員の声から改めて感じました。
退職を検討していた社員も数名いましたが、M&A成立後も会社に留まってくれました。「今まで通り何も変わらない環境」が、彼らにとって大きな安心材料となったようです。これまで培ってきた営業力を強みに、社員たちが仕事に専念できる体制が整いつつあります。
譲受企業である株式会社E-BONDホールディングス(以下E-BOND)の方からも、今後の処遇について「ご心配には及びません。安心してください」と社員に直接、説明いただきました。社員一人ひとりが将来を見据え、安心して働ける環境を得られたことで、今回のM&Aの決断は正しかったと確信しています。
重視した点と重複しますが、社員の働く環境がそのまま維持されるかどうかを最も心配していました。岡田さんには、E-BONDさんについて何度も確認を重ねましたが「問題なくお任せできます」と力強くお話しくださったので、私も安心できましたね。
私たちはいずれ会社を去りますが、旧体制の者がいつまでも残るのではなく、きれいにバトンタッチしてこそ、会社の未来にとって良い結果をもたらすと信じています。岡田さんのおかげで、最善のかたちで会社を託せました。
E-BONDさんのことは、前述の同業他社さんから事前に伺っており、好印象を抱いていました。実際の譲受企業は子会社の株式会社中部日本医薬さんですが、その親元となるE-BONDさんの体制には、大いに期待を寄せています。
グループでは各会社の実績に基づき、上層部に対して社員の賞与アップを提案できる仕組みがあります。努力に対して具体的な報酬で応える体制は、社員の働く意欲を高めてくれるでしょう。
実際に、M&Aを経て新体制に移行してから、当社の社員にも火がついたように感じます。
以前は「茹でガエル」状態で、実績が悪くてもそれなりの給料が保証されていたため、業績向上に向けた強い動機づけが生まれにくい環境でした。しかし現在では、本気で会社を成長させる意識が浸透し、社員それぞれが積極的に行動を起こすようになりましたね。
決断の決め手となったポイントは「社員が今まで通りの環境で働けること」と「社員がよりチャレンジできる環境が整うこと」です。この2つが確保されていると判断できた段階で、E-BONDホールディングスさんとのM&Aを決意しました。
前述したように岡田さんを信じて他社とは比較せず、E-BONDさんの姿勢や体制にも共感しての決断です。
譲渡は終えましたが、正直なところ、やはり会社の行く末が気になりますね。
今回、E-BONDさんから「顧問」という肩書をいただきました。まだ具体的な役割は定かではありませんが、恐らく相談役のようなポジションだと思っています。ただ、今後起こる諸問題に対しては、あくまでアドバイザーに徹し、前面に出ることは避けるつもりです。
M&Aを機に、社長をはじめマネージャーやリーダーも若手に任せることとなり、若い人材が存分に力を発揮できる環境が整ったと感じています。彼らにはチャンスをもらったからこそ、経営に対して誠心誠意取り組み、自分らしいリーダーシップを発揮して欲しいですね。
私自身も、これからは釣りやゴルフ、農業といった趣味に時間を使えるようになるのが楽しみです。経営者の立場を降りたとはいえ、むしろ日々が忙しくなりそうな予感がしています。
60代で次世代に事業承継できる方は、非常に幸運だと思います。しかし、現実には「そう簡単に任せられる相手がいない」というのが、多くの経営者の悩みでしょう。特に年齢や時代背景が異なると、自分たちが積み重ねてきた経験や視点に若い世代がすぐに追いつくのは難しいですし、だからこそ「本当に任せていいのか」という不安がつきまとうものです。
一方で、事業承継をいつまでも先延ばしにするわけにもいきません。どこかで思い切ってバトンを渡さないと。私自身、若い後継者がいきなり経営の全てを把握するのは難しいと感じていますが、それでも彼らに任せてみる価値は十分にある。我々も若いころは、多くの試行錯誤をしながら今に至ったわけですから、同じことを後継者にも経験してもらいたいですね。
また、事業承継は必ずしも身内に限る必要はなく、同族以外にも経営を引き継げる人材は必ずどこかにいるはずです。自分がやってきたのですから、次の世代も必ず経営を続けていけるでしょう。バトンタッチの手段として、M&Aは有効な選択肢の一つだと思いますよ。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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