廃業する会社を買収するメリット・デメリットや買う際のスキームとは

廃業する会社を買収するメリット・デメリットや買う際のスキームとは

廃業する会社の買収は、リスクが大きいと考えている人は多いでしょう。

しかし、リスクはあるものの、対策を講じれば多くのメリットを得ることが可能です。

この記事では、廃業する会社を買収するメリットやリスク、買収する方法について解説します。

また、廃業する会社を見つける方法ついても解説するため、買収を検討している人は参考にしてください。

会社の廃業状況について

会社の廃業状況について

そもそも、日本では廃業する会社が多いのか気になる人もいるでしょう。

まずは、日本における会社の廃業状況について解説します。

 

国内における廃業する会社の現状

昨今の国内における会社の廃業状況はどうなのでしょうか。

帝国データバンクの「全国企業「休廃業・解散」動向調査」によると、2021年に休業・廃業・解散を行った企業は、約55,000件という結果が出ています。2019年は、新型コロナウイルスの影響により約59,000件、2020年は約56,000件と、徐々に減少しています。

しかし、2021年に休業・廃業・解散した企業のうち、約56%が黒字の企業でした。さらに、資産が負債を上回る状態で休業・廃業・解散した企業は、全体の約62%と過去最高に高い数値です。

(引用:帝国データバンク│全国企業「休廃業・解散」動向調

 

廃業を選ぶ理由

廃業を選ぶ背景には、「急速な高齢化の進み」があると考えられます。

2021年に休業・廃業・解散を行った企業の経営者の平均年齢は、70.3歳でした。

これは、後継者が見つからないまま経営者が高齢となり、廃業を選択せざるを得ない状況に陥ったことが考えられるでしょう。

さらに、新型コロナウイルスの支援策が希薄化してきたことから、先行きの見通しを立てるのが難しくなっていることも廃業する理由と考えられます。

こうした要因が組み合わさり、黒字であっても廃業を選択する企業がいるといった状況です。

廃業する会社を買収するメリット

廃業する会社を買収するメリット

結論からいうと、廃業を検討している会社を買収するのは可能です。

しかし、廃業直前の企業を買収することで、買い手側はメリットを得られるのか、疑問に思う人も多いのではないでしょうか。

ここでは、廃業する会社を買収するメリットについて解説します。

 

優秀な人材やノウハウなどの経営資源を獲得できる

廃業する会社を買収するメリットとして、その会社の経営資源を獲得できることが挙げられます。

具体的には、経験豊富な人材や先進的な設備、独自のノウハウなどです。

例えば、新規事業を展開する際、自社のみで事業に必要な人材や設備などを集めるには、多くの時間とコストがかかるでしょう。しかし、既にその事業を展開している企業を買収すれば、これらの経営資源を一気に獲得できます。これは、売却側企業が廃業する会社であっても同様です。

特に、特定の分野での専門的なノウハウを持つ企業の買収は、市場での競争力を高めるための大きなアドバンテージとなるでしょう。

 

通常よりも低コストで買収できる

廃業する会社は、多くの場合、通常の企業よりも低コストで買収できる傾向にあります。

廃業の危機にある会社は、後継者不足や経営難などを解消し、会社を存続させるために早急に売却したいと考える人が多いです。

そのため、売却価格を最優先とせずに、早急な売却を希望するケースが多々あります。特に、後継者不足による廃業を検討している場合は、事業承継に加えて従業員の雇用継続も望んでいることが多いです。そのため、買収側企業の希望を受け入れる可能性が高いでしょう。

 

顧客や取引先、従業員の確保でコスト削減できる

新たな事業を始める際、顧客や取引先との関係構築は課題となるでしょう。

既存の企業を買収することで、原材料の仕入れや販売のルートをそのまま活用でき、コストの削減に直結します。

さらに、新しい事業の展開には従業員の採用が必要ですが、買収を通じて従業員を確保することで、採用・教育にかかるコストの大幅な削減が可能です。

 

節税対策が期待できる

廃業する会社のなかには、繰越欠損金が発生している会社があります。

繰越欠損金とは、税務上赤字である欠損金の累計額のことです。

繰越欠損金がある場合、今後企業が黒字をだせたときに、繰越欠損金と相殺し、課税を減らせます。そのため、買収により繰越欠損金を引き継ぐことで、節税の効果を得られるでしょう。

しかし、繰越欠損金の引き継ぎには条件があり、すべての会社が適用されるわけではありません。共同で事業を行うための合併であるといった要件が求められるため、詳細は税理士や専門家に相談することが必要です。節税対策としての買収は、適切な知識と判断が求められます。

廃業する会社を買収するリスク

廃業を検討している会社を買収することは、多くのメリットをもたらす一方で、さまざまなリスクも伴います。

買収を成功させるためには、これらのリスクを正確に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

ここでは、廃業する会社を買収する際に、考慮すべきリスクについて解説します。

 

簿外債務の可能性がある

簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない隠れた債務のことを指します。

買収を検討する際、この簿外債務を見過ごすと、買収後に予期せぬ債務が発覚するリスクがあるでしょう。簿外債務が発覚する理由は、廃業する会社を買収した場合、買収側企業にその債務を負担する義務が発生するためです。

このリスクを最小限に抑えるには、デューデリジェンスを徹底する必要があるでしょう。デューデリジェンスを通じて、隠れた債務やリスクを事前に把握し、適切な評価と対策をすることが重要です。

 

従業員や顧客が離れてしまう可能性がある

廃業する会社を買収する際、従業員の離反は避けられないリスクの一つです。

特に、売却側企業の従業員が新しい経営方針や事業戦略に対して理解が得られない場合、離反する可能性が高まるでしょう。また、売却側企業の顧客が離れてしまう可能性もあります。

こうしたリスクを回避するには、買収後の経営方針・事業戦略を明確にし、従業員や顧客に対して十分な説明とコミュニケーションを図る必要があります。このようなアプローチを徹底することで、従業員の理解と協力を得られるでしょう。

 

買収できる廃業予定の会社を探す方法

廃業する会社を買収することで、さまざまなメリットを得られますが、廃業予定の会社はどうすれば見つかるのでしょうか。

ここでは、廃業予定の企業を探す際の有効な方法を紹介します。

 

M&A仲介会社の活用

M&A仲介会社は、M&Aの際に買収側企業と売却側企業の間に立ってサポートします。

M&A仲介会社に依頼することで、さまざまな業種や規模の企業のなかから、自社の希望に合ったM&Aの相手を見つけてくれます。さらに、M&Aを進めるにあたって、さまざまなアドバイスを行います。

M&A仲介会社との連携を深めることで、よりスムーズなM&Aを実現できるでしょう。

 

金融機関に相談する

M&Aを検討する際、金融機関に相談する方法もあります。

長年の取引関係がある銀行は、企業の実情や経営状況を深く理解しているため、的確なアドバイスを受けられるでしょう。

特に地方銀行に相談する場合は、地域特有の情報ネットワークを持っています。これにより、地方での最適なM&Aの機会や情報を提供してくれる可能性が高まります。

ただし、地方銀行は大規模なM&Aを重視する傾向があるため、その点を踏まえたうえで交渉することが大事です。信頼できる金融機関との連携は、成功への第一歩といえるでしょう。

 

無料の公的機関を利用する

公的機関の事業承継・引継ぎ支援センターは、多くの案件情報を無料で提供しています。

国が全国各地に設けており、このデータベースを利用することで、多様な選択肢のなかから自社の目的にマッチした会社を見つけられるでしょう。

さらに、日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援サービス」を利用すれば、詳しいサポートを受けつつ譲渡案件を探し出せます。これらの機関を活用することで、効率的にM&A先の企業を見つけられるでしょう。

 

マッチングサイトの活用

M&Aの相手を探す際は、マッチングサイトも役立つでしょう。

このサイトを活用することで、瞬時に多くの会社のM&A情報を確認できます。

さらに、自分の希望する業種や予算などの条件を絞り込んで検索することも可能です。

小規模な会社から大手企業まで、幅広い情報が掲載されているため、条件に合った会社を見つけられます。マッチングサイトは、M&Aの成功に向けて頼りになるツールでしょう。

廃業する会社を買収する3つのスキーム

廃業する会社を買収する3つのスキーム

廃業する会社を買収するには、どのような方法があるのでしょうか。こ

こでは、廃業する会社を買収する際のスキームを解説します。

 

1. 株式譲渡

株式譲渡とは、売却側企業が持つ「すべての株式」を対価と引き換えに、買収側企業へ譲渡する方法のことです。

この方法は、廃業する会社をはじめ中小企業のM&Aの際に多く用いられます。

株式譲渡では、すべての資産や契約をそのまま引き継ぐことが特徴です。そのため、従業員や取引先と改めて契約を結ぶ必要がありません。

ただし、売却側企業の不要な負債や資産も引き継がれるため、その点をしっかりと確認する必要があります。

 

2. 事業譲渡

事業譲渡とは、売却側企業の「すべての事業」または「一部」を買収側企業に譲渡する方法です。

この手法の大きな特徴は、譲渡する事業を選べる点にあります。

買収側企業は、売却側企業の必要な事業のみを選択することが可能です。そのため、負債がある会社を買収する場合でも、リスクを負わずに進めることができます。

ただし、売却側企業の経営者だけで事業譲渡を決定するのは難しく、従業員や取引先の同意を得るプロセスが求められます。スムーズに進めるには、それぞれの関係者とのコミュニケーションをとり、理解を得ることが大切です。

 

3. 会社分割

会社分割は、廃業を検討している会社の「事業部門をすべて」引き継ぐ方法です。

事業譲渡と似ていますが、会社分割の場合、特定の事業を選んで引き継げません。そのため、事業部門が持つすべての負債簿外債務も一緒に受け継ぐことになります。

会社分割では、事業に必要な許認可もスムーズに引き継げるのが利点です。リスクは存在しますが、適切に取り組めば、効果的な買収方法として活用できるでしょう。

廃業する会社を買収する際のポイント

廃業する会社を買収する際、事前の準備と正確な情報収集が成功のカギになるでしょう。

ここでは、廃業する会社を買収する際のポイントについて解説します。

 

廃業する理由・目的が明確になっているか

廃業を検討する会社の背後には、さまざまな理由や目的が隠れています。

買収を成功させるためには、これらを明確に把握することが大切です。

売却側企業の経営者との対話・調査を通じて、本当の廃業の理由や隠れたリスクがないか確認しましょう。買収を進める前に、十分な情報収集と理解を深めることで、後々のトラブルを回避できます。

 

デューデリジェンスで財務管理体制を確認する

経営状態が悪化し、廃業の危機にある会社は、財務管理が不十分であることも原因の一つと考えられるでしょう。

隠れた債務や、経営者の私的な資金との混在は、買収後の運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

そのため、デューデリジェンスを実施する際に、専門家による詳細な財務調査を行うことが重要です。これにより、未知のリスクを早期に発見し、安全な買収を進められるでしょう。

関連記事:M&Aのデューデリジェンスとは?進め方や注意点、費用感について徹底解説

 

M&A仲介会社に相談する

M&A仲介会社の助言は、廃業を考えている会社を買収する場面で大きな助けとなります。

M&A仲介会社は、デューデリジェンスの過程や取引の詳細をサポートし、見落としがちなリスクを早期に発見できるでしょう。

サービスを受けるには費用が伴いますが、買収後のトラブルを避けるための投資としては有用といえます。専門家のアドバイスをもとに、安心してM&Aの手続きを進められるでしょう。

 

債務超過している会社も悪いことばかりではない

債務超過の会社が廃業を考えているとき、買収側にとってはチャンスとなることがあります。

債務超過している会社は、売却価格が安価になることが多く、繰越欠損金を活用すれば、節税の効果にも期待できるためです。

ただ、このような会社を買収する場合、将来の利益で債務を返せるのか、また債務を引き継ぐための資金を確保できるかなどをしっかりと検討しなければなりません。

まとめ

まとめ

廃業する会社を買収する際は、さまざまなリスクを考慮する必要があります。

背景にある理由や目的、財務状態、債務超過の有無など、詳細な調査と分析が必要です。これらを調査したうえで、買収を進めることで、低コストでの買収や経営資源の獲得などのメリットを得られるでしょう。

廃業する会社の買収には、さまざまな専門知識が必要です。M&Aの専門家に依頼すれば、サポートやアドバイスを受けながら買収を進められます。

廃業する会社の買収を検討している人は、「M&Aベストパートナーズ」にご相談ください。

正確な情報と専門的な知識を持ったアドバイザーが、成功への道をサポートいたします。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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