近年では、訪日外国人や地方への観光客などの増加により旅館業界の需要は伸びています。
しかし、なかには後継者が見つからず、廃業を選択した旅館もあるでしょう。また、事業を承継したいがやり方が分からない人もいるかもしれません。
そこで今回は、旅館における事業承継の方法や注意点などについて解説します。
また、事業承継に効果的なM&Aについても解説しているため、事業承継で悩んでいる人は参考にしてください。
旅館における事業承継の方法
事業承継の方法は大きく三つに分けられます。
ここからは、その方法について詳しく解説していきます。
親族間での事業承継
事業承継の方法の一つとして、親族間での事業承継が挙げられます。
これを、「親族内承継」といいます。これまで中小事業の事業承継では、経営者の子どもが後継者となる親族内承継が一般的でした。
しかし、近年では子どもが後継者になることを拒否したり、経営者自身が子どもを後継者にするのを躊躇したりするケースが増えています。そのため、親族内承継を行う旅館は減っているのが現状です。
親族以外での事業承継
親族内承継ができない場合、次の手段となるのが自社の役員や従業員へ事業承継する、親族外承継です。
自社の役員や従業員の場合は、旅館の内部事情を深く理解しているため、引き継ぎが円滑に行われるでしょう。しかし、事業を承継することは、すべての経営資源もともに引き継ぐため、役員や従業員の経営者としての適性を見極めなければいけません。
M&Aによる事業承継
M&Aによる事業承継という方法もあります。
M&Aとは、「Mergers And Acquisitions」の略称で、二つ以上の企業が一つになったり、企業がほかの企業を買ったりする事業承継のことです。
先述した通り、近年のおける旅館業界では後継者問題が深刻化しています。そのため、廃業を選択する旅館も多いでしょう。
こうした課題を解決するために国や地方自治体、金融機関などが協力し、M&Aを実施する旅館が増加傾向にあります。
旅館における事業承継の注意点
旅館では、先代からのしきたりやお客様との関係性などがあるため、さまざまな点に注意しながら事業承継を進めなければなりません。
ここでは事業承継を行う際の注意点について解説します。
情報漏えいに注意する
事業承継を行う際は、情報漏えいしないように注意しましょう。
これは社外だけではなく社内も同様です。
例えば、M&Aを検討していることが社内に流れてしまうと、業務が一新される可能性や、雇用条件の見直しなど、従業員間で憶測が広がります。その結果、従業員のモチベーションが下がり、離職者が続出してしまうことが考えられるでしょう。
また、情報漏えいにより、既存の取引先や顧客が離れてしまう可能性もあります。そのため、事業承継に関する情報はしっかり管理し、適切な時期に伝えるようにしましょう。また、伝えたあとは従業員が抱える不安をケアすることも大切です。
後継者の教育はしっかり行う
事業承継を行う際は、後継者の教育をしっかり行いましょう。
旅館では、しきたりやお客様との関係性など、引き継ぎが必要な項目が多く存在します。
経営者の子どもに事業承継する場合は、先を見据えて早期から教育できるでしょう。また、自社の役員または従業員へ事業承継する場合は、既に旅館の方針やお客様との付き合い方などを理解しているため、教育期間の短縮が可能です。
いずれにしても、後継者の教育は時間がかかるため、早めに取り組む必要があります。
また、M&Aにより事業承継する場合は、これまでと同様の運営を条件として明確に提示しておきましょう。
新たなノウハウを得られる
M&Aにより獲得できるものの一つに「新たなノウハウ」があります。
買い手企業・売り手企業の双方のノウハウを持ち寄れば、より効率的に業務を遂行することが可能です。
例えば、ITシステムの導入には多くの時間とコストがかかるため、導入に踏み切れない中小企業は多いでしょう。しかし、既にITシステムを導入している大手企業に買収されれば、そのシステムをそのまま利用できます。
また、新分野や新規市場を開拓するには、その分野のノウハウが必要です。ほかの企業より優れた技術やノウハウを一から得るには、多くの時間とコストが必要でしょう。しかし、M&Aであれば、短期間でこれらを獲得することが可能です。
異業種とのM&Aにより新たなサービスを提供できる
異業種とM&Aを行うと新たなサービスを提供できる可能性があります。
例えば、ゴルフ場や飲食店などは旅館との相性が抜群です。旅館を運営している企業がゴルフ場を運営している企業とM&Aを実施すれば、レジャー事業を展開することができます。
このように異業種とM&Aを実施すれば、新たなサービスを提供できるでしょう。新たなサービスを提供できれば、新規顧客を獲得できるきっかけになります。
旅館におけるM&Aの注意点
M&Aには、スキームといわれるさまざまな手法があります。
旅館におけるM&Aでは、「事業譲渡」というスキームを使うのが一般的です。しかし、このスキームは手続きが煩雑になる特徴があります。
事業譲渡を行うとさまざまな契約が白紙になってしまうため、一から契約を締結しなければなりません。例えば、事業譲渡により許認可が白紙に戻るため、買い手企業は新規に許認可を取得する必要があります。
このように事業承継により、許認可はじめとするさまざまな契約を再び締結しなければならないことに注意しましょう。
旅館におけるM&A(事業承継)を成功させるポイント
旅館業界でM&Aを成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
ここでは、成功させるポイントについて詳しく解説していきます。
運営している旅館の強みを確認する
M&Aを成功させるために、旅館の強みを確認しておきましょう。
M&Aの取引価格は、資産の時価評価および将来的な利益を基に算出します。資産の時価価値は客観的に評価できますが、将来的に得られる利益を客観的に評価するのは難しいです。
そこで、売り手企業は自社の強みを把握すれば、取引価格を決める際にアピールできるでしょう。そのため、ほかの旅館にはない自社独自の強みを把握しておくことが大切です。
M&A先の企業はしっかり選定する
M&A先の企業をしっかり選定することも大切です。
M&Aの実施を急いでしまうと自社にとって不利な条件があるにもかかわらずそのまま進めてしまう可能性があります。
企業を選定する際は、信頼できるかを慎重に見極め、そのうえで丁寧に選定するようにしましょう。
また、M&A実施後のトラブルを想定することも大切です。例えば、M&Aを進める際に、従業員の雇用条件を明確に決めておらず、統合したあとに労働条件が悪化したり、リストラが行われたりするケースも考えられるでしょう。
そのような事態を防ぐためにも、引き継ぎの条件を明確にして、相性がよい企業を見つけるようにしましょう。
M&Aの専門家へ相談・依頼する
M&Aを成功させるうえで最も大切なのは、M&Aの専門家に依頼・相談することです。
旅館業界でM&Aを行う場合、その過程で法務、税務、財務などの専門的な知識が必要になります。また、相手企業との交渉力も必要です。
これらを自社だけで進めるのは難しいでしょう。そのためM&Aの専門家へ相談することをおすすめします。旅館業界でのM&A実績がある専門家に依頼すれば、豊富な知識と経験を生かしたサポートを受けられるでしょう。
M&Aの成功確率を上げるためにも、専門家のサポートは欠かせません。
M&Aの専門家を選ぶ際のポイント
旅館業界のM&Aを円滑に行うには、さまざまな点に配慮しなければなりません。
そのうちの一つがM&Aの専門家の選び方です。
ここでは、M&Aの専門家を選ぶ際のポイントを解説していきます。
実績が十分にあるのか確認する
M&Aの専門家を選ぶ際は、十分に実績があるのかを確認しましょう。
旅館業界のM&Aでは、M&Aの専門知識に加えて、許認可をはじめとする業界特有の知識も必要です。また、旅館業界での幅広いネットワークも必要でしょう。そのため、旅館業界におけるM&A実績がある専門家へ依頼するのがおすすめです。
M&Aの実績数や成約率は一般的にホームページで公開されています。実績を確認すればその専門家が得意としている分野が分かるでしょう。
また、専門家によって、成約までの期間や金額が大きく異なるケースもあります。そのため、専門家の選定は慎重に行いましょう。
自社の規模に合う案件を取り扱っているのか確認する
M&Aの専門家を選ぶ際には、自社の規模に合う案件を取り扱っているのかを確認しましょう。
M&Aの専門家によっては、中小企業のみを扱っていたり、対応エリアが絞られていたりします。ほかにも、国内の案件のみを対応している専門家もいるため、海外企業とのクロスボーダーM&Aを検討している人は注意が必要です。
自社の規模に適した案件を扱っているかは、各社のホームページで確認できます。ホームページに詳細が記載されていない場合は、直接問い合わせしてみましょう。
まとめ
今回は旅館における事業承継の方法やM&Aについて解説しました。
旅館における事業承継の方法は、親族間での事業承継、自社内での事業承継、M&Aによる事業承継の三つがあります。そのなかでも、効果的なのはM&Aによる事業承継です。
M&Aでは、後継者問題の解決や新たなノウハウの獲得、新サービスの提供などのメリットがあります。また、M&Aを成功させるには、M&Aの専門家へ相談・依頼することが重要です。
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また、無料相談も可能ですので、M&Aについて悩んでいる人はお気軽に問い合わせください。