物流業界におけるM&Aの動向とは?解決できる課題やポイント、事例を紹介

物流業界におけるM&Aの動向とは?解決できる課題やポイント、事例を紹介

企業と消費者をつなぐ物流業界は、これからの日本社会に欠かせない存在です。

しかし、経営者やドライバーの高齢化が進み、廃業に迫られている物流会社も多く存在します。

そのなかで、物流業界において注目されているのが、買収や合併により企業を統合する「M&A」です。

本記事では、物流業界におけるM&Aの動向についてお伝えします。

M&Aで解決できる物流業界の課題やM&A成功のポイント、事例も併せて解説するため、ぜひ参考にしてください。

M&Aの重要性が高まる物流業界の現状・動向

M&Aの重要性が高まる物流業界の現状・動向

物流業界において、M&Aの重要性は高まっており、M&Aを実施する物流会社も増えています。

なぜ、これからの物流業界においてM&Aの重要性が高まっているのでしょうか。

以下では、政府が公表するデータを基に、物流業界を取り巻く現状や懸念事項をお伝えします。

 

市場規模20兆円を超える大市場

国土交通省の「物流を取り巻く動向について」によると、物流業界の市場規模は2017年度時点で約24兆円です。

物流業界は、非常に大規模な市場を持っているといえます。

(引用:国土交通省|物流を取り巻く動向について

また、2020年以降はコロナウイルスの感染拡大により在宅需要が伸びました。在宅の消費者が商品を求めるようになり、商品を届ける物流会社の需要はより高まったと考えられるでしょう。

ただし、コロナウイルスが一定の落ち着きを見せつつあり、今後は在宅需要の伸びがそれほど期待できません。大市場の物流業界ですが、今後は市場が縮小する不安もあります。

市場が縮小すれば物流会社同士の競争が激しくなるため、競争力が求められるでしょう。

 

ますます深刻化するトラックドライバー不足

物流業界において、トラックドライバーの需要が深刻化しています。

政府の「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、運転従事者数は1995年頃から徐々に減少傾向です。それどころか、2015年からの15年で約24.8万人も減少すると予測されています。

その一方で、トラックドライバーの需要は依然として高水準です。需要に対して人材の供給数が減れば、人手不足は避けられないでしょう。

政府が発表している資料によると、2028年度には約27.8万人ものトラックドライバーが不足すると懸念されているのです。

(引用:経済産業省・国土交通省・農林水産省|我が国の物流を取り巻く現状と取組状況

トラックドライバーが不足すれば、既存人材への負担は大きくなります。しかし、トラックドライバーの高齢化も深刻化していることから、リタイアやトラブルの増加も今後の懸念事項です。

物流業界の大半を占める中小企業にとって、人材不足の解消は急務といえるでしょう。

 

加速する物流コストの増大

燃料価格の高騰によって物流コストの増大も加速しています。

政府の「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、軽油価格は2020年頃から上昇傾向です。

物流において、軽油価格は生産コストへの影響が大きく、経営を圧迫する要素といえます。

(引用:経済産業省・国土交通省・農林水産省|我が国の物流を取り巻く現状と取組状況

また同資料によると、運輸業の物価高倒産は2020年頃から増加傾向です。

これは、物流コストの上昇を価格に転嫁できず、経営が立ち行かなくなる企業が増えていると考えられます。

設備の維持にも多額のコストがかかる物流業界では、コスト削減に向けた対応も急務といえるでしょう。

 

高まる「2024年問題」への懸念

物流業界では「2024年問題」への懸念も高まっています

2024年問題とは、自動車運転業務の時間外労働が2024年4月1日から規制されることにより生じる問題です。

働き方改革関連法が適用されることで、「年間960時間まで」という上限規制が追加されます。

上限規制の問題点は、トラックドライバーの走行距離が大幅に制限され、遠方への配送が難しくなることです。

そうなれば物流会社の売り上げが減少し、ほかのビジネスや消費者への影響も大きいでしょう。

2024年問題の解決にあたり、物流業界には大きな変革が迫られています。物流会社が2024年問題に立ち向かうには、物流拠点の拡大や、人材確保によるトラックドライバーの負担軽減が必要です。

しかし、これを実現するには多額のコストがかかるため、現実的には容易ではありません。

M&Aによって解決が期待できる物流業界の課題

M&Aによって解決が期待できる物流業界の課題

物流業界のさまざまな懸念事項を払拭する解決策として、M&Aの重要性が高まっています。

M&Aによって解決が期待できる物流業界の主な課題は、次の4つです。

 

後継者問題の解消

M&Aを実施することで、物流会社の後継者問題を解消できます。

「親族や従業員に適した後継者がいない」と悩んでいる経営者は多いでしょう。

M&Aでは、さまざまな業界の企業と統合し、相手企業に経営権を委ねることが可能です。

M&Aの買収によって買い手企業の傘下に入れば自社を廃業せずに済み、従業員の雇用も守れます。

 

人材不足の解消

M&Aを実施することで、物流業界において深刻化する人材不足の解消も可能です。

人材の豊富な物流会社とM&Aにより統合すれば、相手企業の人材を取り込めます。

また、大手企業の傘下に入ればブランド力が高まり、人材が集まりやすくなるでしょう。

相手企業の教育システムを活用することで、人材育成を効率化できる可能性もあります。

 

コストの削減

M&Aを実施することで、コストの削減も期待できます。

同じ物流会社とM&Aにより統合すれば、相手企業の物流拠点や設備といった経営資源のシェアが可能です。重複する要素を1つにまとめることで無駄が減り、メンテナンスにかかるコストの削減につながるでしょう。

また、サプライチェーンにおいて隣接する企業とM&Aを実施することで、業務プロセスの統合も可能です。

これを実現することで、業務効率化によるコスト削減だけでなく、物流サービスの品質向上にもつながるでしょう。

 

物流ネットワークの拡大

M&Aを実施することは、物流ネットワークの拡大を図るうえでも有効です。

物流拠点を自社で新たに設置する場合、多くの資金・期間が必要となります。しかし、異なる商圏の物流会社とM&Aにより統合すれば、相手企業の物流拠点を取り込めるでしょう。

その結果、コストを抑えつつ、比較的早期に物流ネットワークの拡大が期待できます。

2024年問題によりトラックドライバーの走行距離が制限されれば、近隣の競合他社との競争が激化することも考えられます。

物流ネットワークの拡大により多くの需要を取り込めるようになれば、競争力強化にもつながるでしょう。

物流会社がM&Aを行う際のポイント

さまざまな課題を抱える物流業界にとって、M&Aの実施は解決に向けた有力な選択肢です。

しかし、M&Aのポイントを把握していないまま実施しても成功につながる可能性は低いでしょう。

以下では、物流会社がM&Aを行う際のポイントとして、次の2つを押さえておきましょう。

 

シナジー効果が期待できる相手企業を選ぶ

M&Aによって「シナジー効果」が期待できる相手企業を選びましょう

シナジー効果とは、2社が統合することで、各々が単独の場合よりも成果が高まることです。例えば、物流拠点の統合により両社のコスト削減につながれば、シナジー効果が生じているといえます。

シナジー効果を得るには、自社だけでなく相手企業にとってもベネフィット(成果)がなければなりません。

お互いがベネフィットを得られるような関係性の相手企業を選ぶと、両社の利害が一致して成功しやすくなります。

 

物流業界に強いM&Aの専門家からサポートを受ける

M&Aには企業選びや交渉、リスク分析、契約手続きなど、さまざまなプロセスがあります。

これらのプロセスには専門知識が求められるため、未経験の経営者が適切に進めることは困難です。

M&Aの成功率を高めるのであれば、専門家のサポートを受けるのが賢明でしょう。

ただし、M&Aの専門家にも得意分野・不得意分野があります。そのため、物流業界に強いM&Aの専門家を選ぶのがおすすめです。

物流業界のM&A実績が豊富な専門家であれば、業界の実態にあった的確なサポートを提供してくれるでしょう。

物流業界におけるM&Aの事例3選

物流業界におけるM&Aの事例3選

物流業界のM&Aがイメージできない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、物流業界におけるM&Aの事例3つピックアップして紹介します。

 

買収により物流拠点を拡大

A社アパレルや食品、医療機器など幅広い商品の物流を担う物流会社です。

A社は物流拠点が少なく、高まる需要に応えるために物流拠点の拡大を課題としていました。

そこで、別の地域で物流サービスを展開するB社を「株式譲渡」と呼ばれるM&A手法で買収しています。B社の株式を100%取得することで、完全子会社化しました。

このM&AにおけるA社の狙いは、B社が保有する物流拠点や取引先を取り込むことです。

B社の事業地域が新たな商圏となったことで、より広範なビジネスの展開が可能となりました。

 

大手傘下に入り経営基盤を安定化

C社は小ロット共同配送や倉庫サービスなど、幅広い事業を地方都市向けに展開する物流会社です。

しかし経営基盤には不安があり、自社の将来を考えて経営基盤の強化を課題としていました。

そこで、C社はM&Aの株式譲渡により自社株を売却し、運送業や倉庫業を展開するD社の傘下に入ります。

その結果、盤石な経営基盤を持つD社の傘下で経営基盤を安定化しました。

また、D社の大規模な物流ネットワークによって、地域を問わないサービス提供も実現しました。

 

合併により物流ネットワークを強化

E社は貨物自動車運送事業や倉庫業など、幅広い物流事業を展開するホールディングカンパニーです。

E社は4つの子会社を保有していたものの、各社の連携には課題があり、物流ネットワークの強化を目指していました。

そこで、M&Aの合併により4つの子会社を1社に統合しています。

その結果、各社の物流拠点や事業エリアが統合され、物流ネットワークの再構築が容易となりました。

E社は各社をつなぐための幹線の構築にも取り組み、物流ネットワークの強化を図っています。

まとめ

物流業界は市場規模が大きく、これからも日本社会にとって欠かせないでしょう。

しかし、トラックドライバーの人材不足や物流コストの増大など、多くの懸念事項があります。M&Aを実施することで、これらを払拭し、物流会社のさまざまな課題を解決することが可能です。

これからの時代に物流会社が存続・発展するには、M&Aの実施がより重要となります。

ただし、M&Aには専門知識を要する多くのプロセスがあり、経験の少ない経営者が適切に進めることは難しいでしょう。M&Aを成功させたいのであれば、M&Aの豊富な実績・知識を持つ専門家に依頼することをおすすめします。

「どのM&A手法を選ぶべきかわからない」「M&Aの手続きを進められるか不安」などの悩みがある人は、物流業界におけるM&Aのサポート実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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