旅館を経営する際の仕事内容とは?旅館業が抱える課題も紹介

旅館を経営する際の仕事内容とは?旅館業が抱える課題も紹介

フロントや客室での接客サービス以外にも、調理や浴場部門でのオペレーションや営業・マーケティングなど、旅館経営の仕事は多岐にわたります。

また旅館を開業する際は、旅館業法に基づく許可を初めとして、サービスや施設に応じた許認可の取得が必要です。

この記事では旅館経営する際に知っておきたい仕事内容や開業に必要な許認可、旅館業が抱える課題などについて紹介します。

旅館業の定義とは

旅館業の定義を知るために旅館業法を見てみましょう。

旅館業法第2条では、旅館業「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定められています。

定義からも分かる通り、旅館とホテルには法律上の明確な違いはありません。

ただし、一般的にホテルは「洋式の構造及び設備を主とする施設」のことを指すのに対して、旅館は「和式の構造及び設備を主とする施設」とされています。

なお旅館業法第2条の定義に従うと、自宅の一部に人を宿泊させる民泊も宿泊料を受け取る以上は旅館業という扱いです。そのため、民泊を行う場合も旅館業の営業許可が必要とされています。

民泊関連の雑務を巻き取るサービスを行っている【民泊管理バンク】のような代行業者を活用するのも一つの手段です。

無許可営業には罰則もあるため注意しましょう。

関連サイト:株式会社BizPato

旅館経営に必要な許認可

旅館経営に必要な許認可

旅館経営を始めるにはいくつかの許認可を取得している必要があります。

ここでは旅館業法に基づく許可の要件や、施設・サービスによって別途必要とされる許認可などについて紹介します。

 

旅館業法に基づく許可の要件

旅館業法に基づく許可の要件には以下のようなものがあります。

  • 構造設備基準を満たしていること
  • 設置場所が学校・福祉施設などから一定の距離があること
  • 設置場所が公衆衛生上適当な場所にあること
  • 営業許可を申請するものが欠格事由に該当しないこと

構造設備基準とは、客室の面積や施設内のトイレ・洗面所の数などを定めたものです。

例えば旅館の場合、客室面積は和室で3.3平方メートル以上、洋室は4.5平方メートル以上という基準を満たしている必要があります。

また学校や福祉施設、公民館のような社会教育施設から約100mの区域内では施設の清純な環境を守るため、旅館の開業が許可されない場合があることに注意しましょう。

 

その他の許認可

旅館で飲食や日帰り入浴といったサービスを提供する場合や、特定の施設を設ける場合などは内容に応じた許認可が必要です。

例として、飲食を提供する場合は食品衛生法に基づく飲食店営業許可が必要ということが挙げられます。また浴場を旅館宿泊者以外に利用させる、いわゆる日帰り入浴を実施する場合は公衆浴場法に基づく許可が必要です。

加えて、映画館や劇場を設けて公衆に見聞きさせる場合は興行場法に基づく手続き、たばこを販売する場合はたばこ小売販売業許可が必要とされます。

許可の取得には時間がかかることもあるため、旅館で提供するサービスや設置する施設が決まったら計画的に手続きを進めることが大切です。

自身で書類をそろえて申請する以外に、行政書士や弁護士などの専門家に手続きを依頼することもできます。

旅館経営の主な仕事内容

旅館経営の主な仕事内容

旅館経営においては、企業全般に必要となる経理や人事・労務管理のほかに、いくつかの業務を行います。以下で詳しく解説します。

 

仕事内容1:オペレーションの管理

旅館の規模によるものの、スタッフはいくつかの部門に分かれていることが一般的です。

旅館全体として質の高いサービスを提供するためには、それぞれの部門でオペレーションが円滑に行われているか管理する仕事が必要とされます。主に支配人が担当することが多いでしょう。

直接的にお客様と接するフロントや客室係を管理し、シフト調整や接客サービスの指導を行います。また調理部門や浴場部門の管理も支配人の仕事の一つです。

 

仕事内容2:営業・マーケティング

営業・マーケティングも旅館の仕事内容に含まれます。

経営を安定させるためには旅行代理店や法人・一般顧客へのセールスなど、利用客数を増やすための努力が欠かせません。

また各種宿泊プランの立案、価格の設定も営業活動の一つといえます。顧客のニーズや競合状況を把握し、魅力的な提案をし続けることで業績アップにつながるでしょう。

なおセールスが功を奏して団体客の予約が入った場合は、予約管理も営業の仕事内容に含まれることがあります。

近年は広告やSNSのような営業以外での集客に力を入れている旅館も多いです。自社でWebマーケティング・SNSマーケティングに取り組む場合は、効果的な方法を立案する必要があります。

 

仕事内容3:旅館管理

円滑な旅館運営には各種設備・建物の維持管理・修繕が欠かせません。

日々の点検や定期点検のための業者の手配などが具体的な仕事内容です。

また料理の提供、浴場に関する衛生面での管理も実施する必要があります。

法令遵守の観点で重要なだけでなく、万が一問題が起これば旅館の経営にも大きな影響を与える可能性があるためおろそかにはできません。

一般企業と同様に、経営全般に関する管理・リスク管理を適切に行うことが大切です。

 

旅館業界が抱える課題とは

旅館業界が抱える課題とは

近年はホテルの新規開業が各地で相次ぐ中、旅館はむしろ廃業が相次いでいます。

旅館業界がホテル業界ほど盛り上がりを見せていないのは、業界特有の課題が原因です。

ここからは旅館業界が抱える課題を紹介します。

 

時代の変化に対応していない

昔ながらの和風の雰囲気が魅力である一方、旅館の課題の一つが時代の変化に対応していないという点です。

ホテルに宿泊する際と異なり、布団の上げ下げや食事の用意のために仲居さんが部屋の中に入ってくるのが嫌という人もいます。

また朝食や夕食の時間が決まっている点も、一部の人からは不評です。朝は部屋から出て大広間のような共用スペースで食べないといけないことも少なくありません。

特に比較的自由なタイミングで食事を取れる、ホテルのスタイルに慣れている外国人から不満の声があがっています。

 

最新のIT技術に対応していない

昔ながらの方法を取り続けていて、最新のIT技術に対応していない旅館が多い点も業界の課題です。

現代は宿泊予約サイト(OTA:Online Travel Agent)から旅館やホテルを検索し、比較した上で宿泊予約することが一般的になっています。

ところが、そもそもOTAに対応していなかったり対応していても国内OTAのみに限定されていたりする旅館がまだ多いのが現状です。

インターネットを使い慣れた若年層や、海外のインバウンド需要を取り込めていない旅館が多いといえるでしょう。

またオペレーションの面でもDXの活用が遅れています。業務がシステム化されていないため、結果として労働生産性の低下につながっているといえます。

 

経営体質が脆弱

旅館は中堅企業・中小企業が多く、経営体質が脆弱な傾向にあります。また経営者の高齢化や後継者不足も深刻な問題の一つです。

経営体質が脆弱なために、施設・設備が老朽化していても資金難で改修できないところもあります。

結果として「旅館は設備が古い」というイメージを持たれてしまい、そのイメージがお客様を呼び込めない原因になっているといえるでしょう。

旅館経営におけるM&Aのメリットやデメリット

旅館経営におけるM&Aのメリットやデメリット

さまざまな理由から旅館業を売りたいという企業と、新規に旅館業に参入したい企業の間でM&Aが活発に行われています。

売り手・買い手側の双方にメリット・デメリットがあるのが旅館経営におけるM&Aです。それぞれについて詳しく解説します。

 

売り手側のメリット

売り手側のメリットとしてまず挙げられるのが、後継者不足を解消できることです。

人気の旅館であっても後継者の確保に悩み、廃業を回避するために買い手を探しているケースもあります。

また経営体質が脆弱な旅館にとっては、M&Aにより大きな企業の傘下に入って財務体質を強化できることもメリットの一つです。経営が安定し、施設への投資も行えるようになるかもしれません。

なお近年は異業種から旅館業へ参入する例も増えています。異業種ならではの新しいノウハウを取り入れられる点も、M&Aのメリットといえるでしょう。

 

売り手側のデメリット

M&Aのタイミングで労働環境が変わることにより、従業員が流出する恐れがあることは売り手側のデメリットといえます。

M&Aの場合、現在いる従業員を引き継ぐことは可能です。しかし、経営体制が変わることで従業員の働く環境にも何らかの影響が出ることが考えられます。

特に旅館の場合、長年勤務している従業員を多数抱えている傾向にあり、そういった人材は変化を嫌うことが多いです。M&Aをきっかけに、一斉に退職してしまう可能性もあるでしょう。

 

買い手側のメリット

買い手側にとってのM&Aのメリットは、新規参入に必要となる時間とコストを削減できることです。

旅館業を新規開業する場合、土地や建物の購入、従業員の確保、顧客基盤作りなどに時間とコストを投入する必要があります。

一方で、既存の旅館を活用する方法であれば、効率がよいといえるでしょう。

またノウハウを継承できる点も買い手側のメリットの一つです。特に異業種から参入する場合にこのメリットを感じられるでしょう。

 

買い手側のデメリット

M&Aをきっかけにノウハウを持った人材が流出する可能性があることは、売り手側だけでなく買い手側にとってもデメリットです。

また旅館自体を気に入ってリピートしていたお客様が、経営の方向性が変わったことで離れてしまう可能性もあります。

従業員が持つノウハウや顧客基盤に魅力を感じてM&Aを行うケースでは、大きな損失となってしまうでしょう。

またM&Aの手法の一つである事業譲渡では、さまざまな契約が白紙に戻ります

旅館経営のために取得した許認可も取り消され、新たに取得し直さなければならない可能性がある点に注意しましょう。

まとめ

旅館経営の主な仕事内容として、オペレーションの管理や施設管理、営業・マーケティングなどが挙げられます。

また旅館経営を始める際は旅館業法の許可のほか、さまざまな許認可が必要です。開業準備では計画的に申請を進めましょう。

なお旅館業界は時代の変化やIT技術への対応の遅れ、脆弱な経営体質といった多くの課題を抱えています。これから参入する企業は課題解決にも取り組む必要があるでしょう。

後継者不足や資金面での問題から廃業する旅館も多い一方で、インバウンド客の増加を見据えて旅館業への参入を検討する企業も増えています。

旅館業界でのM&Aを検討している場合は、M&Aベストパートナーズへお気軽にご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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