2023年5月19日

企業による株式分割のメリット・デメリットとは?株価の低迷にはM&Aが有効

MABPマガジン編集部

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上場企業に与えられた選択肢の1つに「株式分割」があります。

株式分割に関して何となくイメージはできていても、その詳細について把握していない人も多いのではないでしょうか。

本記事では「株式分割とは何か」という基礎知識から、投資家や企業のメリット・デメリット、株式分割の手順までお伝えします。

株式分割とは

まずは、「株式分割」の基礎知識や関連用語との違いについて解説します。

 

発行された株式を分割し増やすこと

株式分割とは、上場企業が発行済みの自社株式を分割し、株式数を増やす戦略のことです。

例として、1株を分割して5株に増やす株式分割の場合、「1:5の株式分割」のように表現します。株式数を増やす分、1株当たりの価格は下がるため、トータルでみれば株式の価値は変わりません。

要約すると株式分割とは、株式の価値を維持しながら株式数を増やせる手段といえるでしょう。詳しくは後述しますが、1株当たりの価格を下げるメリットが大きいケースにおいて、株式分割が頻繁に行われます。

ただし原則として、株主総会や取締役会で決議されなければ株式分割は行えないことを把握しておきましょう。

 

投資家が保有する株式は分割したものが割り当てられる

株式分割を企業が行った場合、分割したものが投資家に割り当てられます

投資家が持つ株式数は増えるものの、1株当たりの価値が低下するため、トータルでみると変わりはないでしょう。

例えば、1株当たり1,000円の株式を100株、トータル10万円の株式を保有している投資家がいるとします。1:2の株式分割が行われた場合、1株が2株となり、1株当たりの価格は半分の500円です。

よって、投資家の保有株式数は100株×2=200株、トータルの価値は500円×200株=10万円であるため、価値は変わりません。

 

混同されやすい「増資」との違い

株式分割と混同されやすい言葉に「増資」があります。

増資新しい株式を発行し、株式数を増やすことです。

一方、株式分割既存の株式を分割して株式数を増やすことを指します。

例えば、企業の株式総数が10万株だった場合、新たに1万株を発行すれば、その分だけ追加の資金調達が可能です。ただし、株式市場に出回る株式数が1万株も増えるため、投資家が保有している株式の価値は相対的に下がります。

増資は新たな株式の発行により株式数を増やしますが、株式分割は既存の株を分割することで株式数を増やすのが大きな違いです。

株式分割が投資家にもたらすメリットとは

株式分割を企業が行うことによって、投資家はさまざまなメリットを得られます。

投資家が得られる主なメリットは、次の4つです。

 

利益の還元が期待できる

企業が株主に対して支払う配当金を据え置きとする場合は、投資家は増配の恩恵を受けられるでしょう。例えば、1株当たり100円の配当金が予定されていた場合、株式分割で100株の増加が生じると、配当金は100円×100株=1万円も増えます。

ただし、配当金は企業の利益といった要素の影響を受けるため、必ずしも据え置きとなるわけではありません。

株式分割により株式数を増やした場合、1株当たりの配当金も下げられるケースは多々あります。とはいえ、投資家に利益が還元される可能性があることは、株式分割がもたらすメリットといえるでしょう。

 

株式を購入しやすくなる

1株当たり1.5万円の株式が売買単位100株で出回っていると仮定して考えてみましょう。投資家がこの株式を購入するには、1.5万円×100株=150万円は少なくとも必要です。

しかし、投資資金に余裕のない小口投資家だと、150万円を支払うことが難しい場合もあります。 そこで1:2の株式分割を行うと、1株当たりの価格は0.75万円となるため、0.75万円×100株=75万円で購入が可能です。取引金額が下がる分、小口投資家でも購入がしやすくなるでしょう。

 

安い価格で株主優待が受けられる

株式分割を行った企業の株式に投資すれば、比較的安い価格で「株主優待」が受けられます

株主優待とは、一定数以上の株式を保有することで株主が受けられる、特典や割引といった優遇のことです。

例えば、1株当たりの価格が1.5万円で、100株以上の保有で株主優待を受けられる企業のケースを考えましょう。この企業から株主優待を受けるには、1.5万円×100株=150万円は少なくとも購入が必要です。しかし1:2の株式分割により1株0.75万円となれば、半額の75万円で株主優待が受けられます。

株式分割によって株主優待を受けるためのハードルが下がることは、投資家にとって嬉しいポイントといえるでしょう。

 

自由度の高い売買が可能となる

株式分割を行うことで1株の重みは下がるため、投資家からすればリスクが分散されます。

1.5万円の株式が100株あるよりも、0.75万円の株式が200株あるほうが、1株の判断ミスによるリスクは少ないでしょう。結果として株式の購入・売却がしやすくなり、売買の自由度が上がります

例えば、株価が安いうちに少しだけ買い増ししたり、値上がりしたタイミングで少しだけ売却したりすることも可能です。また、売買が活発になれば売り手も増えるため、自身が希望する価格で購入できる可能性も高まります。 

 

株式分割による投資家のデメリットとは

投資家が得られるメリットの多い株式分割ですが、デメリットも存在します。

投資家にとっての主なデメリットは、次の2つです。

 

株価の乱高下が起こるケースがある

株式分割によって投資家の売買が容易になれば、デイトレードのように株価上昇による利益を目的とした売買も行われやすくなります。その結果、株価が乱高下するケースもあるでしょう。

株価の安定性が失われると売買の判断が難しくなり、買い控えが起きることも考えられます。

例えば、株式を売却したくても、株価が安定しないために買い手が見つからないといった事態もあるでしょう。

株式分割された企業の株式を購入する場合、こうした株価の乱高下に振り回されないように注意が必要です。

 

単元未満株が生じるケースがある

株式分割によって、「単元未満株(端株)」が生じるケースもあります。

単元未満株とは株式の売買単位に満たず、取引の対象にできない端数の株式のことです。

一般的に株式の売買単位は100株単位でしか売買が行えません。例えば、100株保有している株式に対して1:1.5の株式分割が行われた場合、株式数は150株となります。しかし増えた分の50株は単元未満株のため、そのままでは売却が行えません。

単元未満株を売却するには、株式を発行している企業へ買い取り請求を行う必要があります。

このとき、市場価格よりも安い価格を指定できないため、手数料の分だけ投資家が損してしまうこともあるでしょう。

株式分割が企業にもたらすメリットとは

株式分割には、投資家だけでなく企業にもメリットがあります。

企業が得られる主なメリットは、次の2つです。

 

株価の安定・流動性が見込める

前述の通り、株式分割を行うことで1株当たりの価格は下がります。その分、株式を購入するためのハードルが下がり、多くの投資家が株式を保有できるでしょう。株主が増えることで、1人当たりの売買による株価への影響が少なくなり、安定性向上につながります。

また、投資家の売買が活発化されれば、株式の流動性が高まるでしょう。ただし、前述のように株価の乱高下につながるケースもあるため注意が必要です。

 

東証一部への上場を狙える

株式分割を有効活用すれば、東京証券取引所のなかでも最上位の「東証一部」への上場も狙えます。

東証一部に上場すれば企業の信頼性・注目度は大きく高まり、投資家からの資金調達がしやすくなるでしょう。

「東証JASDAQ」や「東証マザーズ」に属する企業が東証一部へ上場するには、流動株式数・株主数といった条件を満たす必要があります。株式分割によって、流動性や株主数が向上すれば、東証一部へ上場する条件を満たせる可能性は高まるでしょう。

 

株式分割による企業のデメリットとは

株式分割は、企業にとってデメリットもあることを覚えておく必要があります。

 

株主を管理する負担の増大

株式分割によって株式を購入するためのハードルが下がれば、株主数は増えるでしょう。株主数が増えることは資金調達の面ではメリットといえますが、管理の負担が増大しやすい側面もあります。

例えば、株主総会では多くの株主に対応しなければなりません。また、株主優待で商品や割引券などを送る負担も大きくなります。

増えた株主の管理が上手くできないと、企業の信頼失墜につながるため、企業にとっては細心の注意が求められます。

 

企業の信頼が低下する可能性がある

株式分割には、企業の信頼低下を引き起こすリスクが少なくありません。

投資家による売買が活発化されれば株価の乱高下が起きる可能性があります。

不安定な株価により投資家からの信頼を失えば、買い控えが起きる可能性もあるでしょう。

また、短期的な株価上昇を図った株式分割を何度も繰り返すと、株主に不信感を抱かせてしまうことも考えられます。株式分割は、企業だけでなく投資家・株主への影響も大きい戦略のため、実施する際には慎重になるべきです。

株式分割を行う手順・方法

株式分割メリット・デメリットを把握したところで、ここからは具体的な手順・方法も見ていきましょう。株式分割を行う際には、大まかに次の4ステップを進める必要があります。

 

1. 株式分割の決議

株式分割には、取締役会または株主総会による決議が必須です。

具体的には、株式分割の比率や基準日(分割後の株式が割り当てられる日)、効力発生日、株式の種類といった事項について決めなければなりません。

注意点として、企業が発行できる株式総数は定款により決まっています。株式分割の結果として株式総数を超過する場合は、決議の前に発行可能株式総数を変更しましょう。

 

2. 株主に対しての公告

株式分割が決議された後には、利害関係者である株主に対しての公告が欠かせません。

基準日の2週間前までには、いつ株式が割り当てられるのかを株主に対して公表する必要があります。

 

3. 株式分割の効力発生

効力発生日になれば株式が実際に分割され、株主へ割り当てられます

1株未満の端数が生じる場合は競売のような手段で売却し、代金を株主へ割り当てましょう。

 

4.法務局への変更登記申請

株式分割を行う場合、変更内容を管轄の法務局へ登記申請する必要があります。

登記申請は、株式分割の効力が発生してから2週間以内に行わなければなりません。また、定款や株主名簿に変更が生じた場合は、あわせて更新が必要です。

まとめ

今回は、株式分割概要メリット・デメリットなど、基本的な内容を紹介しました。

株式分割を行って株式数を増やせば、1株当たりの価格が下がるため、トータルとしての価値は維持されます。

ただし、株価の乱高下によって企業への信頼が低下するリスクもあるため、株式分割する際は慎重に行いましょう。なお、株式分割による株価の低迷対策としては、M&Aが有力な選択肢です。M&Aにより株式を併合することで株価が上がり、信頼性の向上につながります。

株式併合によるM&Aに疑問やお悩みがある人は、M&A・事業承継のエキスパートであるM&Aベストパートナーズへぜひご相談ください。

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