M&Aにおける企業の譲渡価格算出にはさまざまな方法がありますが、なかでもDCF法によって導き出された企業価値を基準とするケースは少なくありません。
本記事では、DCF法の定義や計算方法を詳しく解説します。
あわせて、M&AのためにDCF法を活用するメリット・デメリットもご紹介するので、M&Aを検討するための判断基準が欲しいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
DCF法とは
DCF(Discounted Cash Flow)法は、企業価値を算出する手法の一つです。
事業計画書をもとに、対象企業が将来得られるであろう利益を算出し、現在価値に割り引くことで企業価値を求めます。
M&Aにおける企業価値の評価はもちろん、不動産など投資対象となるものに対しても広く用いられています。
DCF法の計算方法
DCF法によって企業価値の評価をする場合、4つの段階を経て計算されます。
DCF法の計算方法をプロセスごとに解説します。
FCF(フリーキャッシュフロー)を設定
はじめに、事業を経営するうえで自由に使うことができる資金(FCF)を算出します。
FCFの計算方法は以下のとおりです。
- FCF=営業利益×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資額-正味運転資本増加額
営業利益は事業計画を、減価償却費や設備投資額は設備投資計画をもとにして計算します。
WACC(割引率)の算出
DCF法の定義は、「将来見込まれる利益」を土台とするため、現在価値に割り引くWACCの設定が必要です。
WACCの計算方法は以下のとおりです。
- WACC(%)=(1-t)×(D×Dc/D×E)+(E×Ec/D×E)※1
※1:t=実効税率 D=有利子負債 Dc=負債コスト E=株主資本 Ec=株主資本コスト
TV(ターミナルバリュー)を計算
「将来見込まれる利益」の予測は難しいです。
しかし、TV(ターミナルバリュー)を設定することで、企業の打ち立てた事業計画移行のキャッシュフローを事業価値として盛り込むことができます。
TVの計算方法は以下のとおりです。
- TV=事業計画最終年度のFCF×(1+成長率)/(割引率-成長率)
企業価値の算出
各期のFCFをWACCによって現在価値へと換算します。
期毎の現在価値FCFとTVを合算し、企業価値を導き出すことができます。
M&AにおけるDCF法のメリット・デメリット
M&Aにおける企業価値の算出はDCF方が広く活用されていますが、メリット・デメリットがあるため、事前の把握が必要です。
DCF法のメリット・デメリットをご紹介します。
DCF法のメリット
DCFの大きなメリットは、対象企業の「将来性」や「のれん」を現在価値に換算して方かできる点です。
そのため、特に成長が著しいスタートアップ企業やベンチャー企業の企業価値評価に適した方法といえます。
DCF法のデメリット
WACCやTVの数値は、評価する担当者がそれぞれの判断で設定することが多いです。
そのため、誰が計算するかによって評価が変わり、場合によってはM&Aに不利となる評価がなされるリスクを伴います。
また、計算が複雑なため、専門的知識が必要なこともデメリットとして挙げられます。
まとめ
M&Aを行ううえで、対象企業にどの程度の価値があるか算出することは、買収価格にも関わる重要なプロセスです。
しかし、DCF法は計算式が複雑なうえ、計算を担当する人物によって評価が変わる可能性もあるため、専門家へ依頼し制度の高い評価をすることが重要です。
M&Aを検討するうえで、「対象企業の適正な企業価値が知りたい」「自社の適正価値を把握したうえで売却額の交渉がしたい」とお考えの方は、まずは私たちM&Aベストパートナーズまでご相談ください。
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