業務移管とは?事業移管との違いをわかりやすく解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

「事業移管」と混同されやすい「業務移管」ですが、法律的にも経済的にも意味合いは大きく異なります。

そこで本記事では、業務移管が行われる目的や場面について詳しく解説します。

併せて、同じ意味合いとして捉えられやすい「事業移管」と「事業譲渡」の内容・業務移管の進め方などもご紹介するので、目的に合った方法を模索している経営者の方はぜひ参考にしてください。

業務移管が行われる目的とケース

企業が業務移管を行うときの目的やケースは以下のとおりです。

  • 効率化・コスト削減目的
  • 業務の一元化・集約
  • ノンコア業務のアウトソーシング
  • 不採算事業の立て直し
  • 働き方改革・業務負担改善
  • グローバル化・オフショアリングの一環として

効率化・コスト削減目的

複数の部署で行っている業務をまとめたりアウトソーシングしたりすることで、業務の効率化を図ることができます

また、重複する業務に関わる人員の業務負担を減らすことによって、コスト削減も可能になります。

業務の一元化・集約

業務移管は重複している業務をまとめることができるため、業務の一元化や集約を目的として行われることがあります。

業務の一元化や集約ができれば、前述したような効率化やコスト削減にもつなげることができるでしょう。

ノンコア業務のアウトソーシング

ノンコア業務のアウトソーシングを目的として業務移管を行う企業も少なくありません。

例えば、営業支援業務やITインフラの管理、人事・労務関連などのなかでもアウトソーシング可能なものを業務移管することができれば、従業員はコア業務へ集中することが可能になります。

不採算事業の立て直し

不採算事業を専門企業へ業務移管し、事業の立て直しを目的としている企業も多いです。

業務移管をすることで不採算事業にかかっていた経営資源を集約でき、経営基盤の強化を図ることが可能になります。

働き方改革・業務負担改善

近年では、働き方改革法案の影響で従業員の残業時間や業務負担の削減が求められています

これらに対応する目的で業務移管を行う企業も多くあります。

グローバル化・オフショアリングの一環として

業務移管は、企業のグローバル化やオフショアリング※1と密接な関係にあります。

なかでも、コスト削減や人材活用・24時間体制を必要としている企業にとって、業務移管は経営戦略の重要な役割を担っています。

※1:(主に人件費の安い)海外へ業務を移管すること

業務移管を言い換える言葉と意味合いの似た言葉

「業務移管」は「事業移管」と呼ばれることもありますが、厳密には内容が異なります。

また、M&Aの手法の一つである「事業譲渡」も、意味合いの似た言葉として用いられるケースもあります。

「事業移管」と「事業譲渡」の詳細、「事業移管」との違いについて解説します。

事業移管

「業務」と「事業」は同じものと捉えるケースは少なくありません。

しかし、例えば大企業の場合、複数の業務を連携させることで一つの「事業」として成立させています。

このように、複数の業務の総称を事業とした場合、「事業移管」と呼ばれます。

一方で、中小企業の場合は一つの業務を事業としているケースが多く、この場合は業務と事業は同一となるため、「業務移管」もしくは「事業移管」のどちらの名称も当てはめることができます。

事業譲渡

M&Aでよく用いられる「事業譲渡」という手法も、意味合いが似ているため混同されがちです。

しかし、「事業譲渡」は事業の売買によって成立します

「業務移管」は特定の業務の管轄を他部署、もしくは外部へ移管する行為のため、目的や金銭の流れは異なります。

関連記事:【M&A用語解説】スキームとストラクチャーの違いについて

業務移管の社内での進め方

業務移管は、主に以下のプロセスで進められるケースが多いです。

  1. 業務の棚卸し・現状把握
  2. 業務の文書化
  3. 業務移管計画の策定
  4. 移管先の選定と調整
  5. 引き継ぎ・移管の実施

各プロセスについて、具体的に解説します。

業務の棚卸し・現状把握

業務移管のプロセスにおいて、自社の全ての業務を把握することは非常に重要です。

業務の全容が把握できていないまま移管した場合、他業務に支障が出るなど移管後のトラブルが生じやすいです。

そのため、まずは業務全体の棚卸しを行い、「どの業務を移管したらメリットが得られるか」など現状をしっかり把握しておきましょう。

業務の文書化

移管する業務が決定したら、業務を行うための手順書やガイドラインなどを文書として残すようにします。

用意した文書をもとに移管先の従業員へ教育をすることで、移管後の業務進行をスムーズにすることが可能になります。

業務移管計画の策定

下準備が完了したら、業務移管や移管後の定常化までのスケジュールについて具体的な計画を策定してください。

業務移管をした場合、新たに携わる従業員がスムーズに業務を遂行できるようになるまで時間がかかるケースは少なくありません。

そのため、移管計画はある程度余裕を持って策定することがポイントです。

移管先の選定と調整

移管先の選定は、「移管する業務の元環境や遂行プロセスを現状の業務に追加することで十分なメリットが得られるか」を考慮したうえで決定することが大切です。

移管先が不適切だった場合、業務負担が増加するだけでなく、移管した業務と移管先が以前から行っていた業務の両方がスムーズに稼働しないリスクが生じます。

ただ移管するだけでなく、「移管後に業務効率の改善ができるか」「不採算事業の立て直しなどが図れるか」といったことも考慮しながら移管先の選定を行ってください。

このとき、移管元と移管先それぞれの従業員に誤解や衝突といったトラブルが起きることを防ぐために、必ずステークホルダーへのアナウンスを実施しましょう

引き継ぎ・移管の実施

全ての段取りが終わったら、移管計画を実行に移します。

計画の実行は一度で移管を終了するのではなく、事前に用意した文書も活用して移管先へ業務を引き継ぎ、段階的に移管することが成功させるためのポイントです。

移管する業務のプロセスに優先順位をつけ、リスクの低いものから引き継ぎをすると、移管先の従業員も高度な業務への対応がしやすくなるでしょう。

業務移管を行う場合のポイントと注意点

業務移管をするにあたって、事前にポイントや注意点を把握しておくことでスムーズに引き継ぎを行うことができます。

業務移管を行う場合のポイントと注意点を紹介するので、ぜひ事前準備の参考にしてください。

業務内容を洗い出し文書化しておく

業務を引き継ぐとき、業務内容を口頭で説明するだけでは移管先の理解を深められないケースは多いです。

そのため、移管をする業務が決定したら、必ず内容を整理したうえで文書化しておきましょう

文書を活用しながら引き継ぐことができれば、移管先の従業員の理解度を高められるだけでなく、不明点が出た時のマニュアルとして見返すことも可能です。

段階的に業務移管を行う

業務移管を一度で終わらせようとした場合、業務に不慣れなまま高度な業務も行うことになります

そのため、業務全体に支障が出たり、場合によっては取引先にも影響を及ぼし信頼度を損なう可能性もあります。

しかし、段階的に業務を移管することで、移管先の従業員が新たな業務に慣れるための余裕を生み出すことができます

段階的に移管することで時間はかかりますが、最終的にはトラブルのリスク回避に繋げることができます。

移管元と移管先でコミュニケーションを密にする

業務移管に関わるステークホルダーへ事前に説明を行っても、意図がしっかり伝わっていなかったり、引き継ぎがうまくいかずミスが生じたりすることは少なくありません。

これらの行き違いを回避するためには、実行に移す前の段階から移管元と移管先のコミュニケーションを密にし、互いの業務に対する理解を深めることが大切です。

従業員や関係各所への配慮

業務移管を実行した後も、従業員に不安や不満がないかヒアリングを実施し、フォローを行いましょう。

また、移管した業務に関連する部署へ「移管後に支障は出ていないか」といったヒアリングなどの配慮も必要です。

最終的に会社全体でフォローできる体制を構築できれば、業務移管のメリットを高めるkとができるでしょう。

契約・法的手続きの確認

アウトソーシングのように外部企業へ業務移管をする場合、自社の機密情報を共有することになります。

情報漏洩を防ぎ、取引先からの信頼を損なわないようにするためにも、必ず秘密保持契約を取り交わしましょう

また、委託する業務の範囲を明確にするための業務委託契約書など、法的トラブルが生じたときに対処しやすいように書面を取り交わすことは重要なポイントです。

関連記事:【専門家監修】NDA(秘密保持契約)がM&Aにおいて果たす役割

まとめ

企業の業務効率の改善やコスト削減・グローバル化への対応を目的とした場合、業務移管はとても有益な方法です。

一方で、綿密に計画を立てて的確な引き継ぎができなかった場合は、求めていた効果が得られなかったり、移管した業務にトラブルが生じたりするリスクがあるため注意が必要です。

また、求める目的によっては「業務移管」ではなく「事業譲渡」といったM&Aが有効なケースも少なくありません。

しかし、M&Aの場合は業務移管以上に複雑な手続きやプロセスが必要で、実行するためには専門的な知識を必要とします。

「自社にとってどの方法が向いているのかわからない」「不採算事業を立て直すための他の手法も知りたい」といったお悩みのある方は、まずはM&Aベストパートナーズまでご連絡ください

専任アドバイザーが丁寧にヒアリングをさせていただき、御社に最適な方法をご提案させていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

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