事業承継コンサルタントとは?費用や資格について解説

経営者の高齢化や後継者不足などによって事業承継を行いたくても円滑に進められない企業が増えています。

このような問題を解消するために心強い味方となってくれるのが、事業承継のプロである「事業承継コンサルタント」です。

本記事では、事業承継コンサルタントに依頼する場合どの程度の費用がかかるものなのか、信頼性の高いコンサルタント会社の選び方、関連資格にはどのようなものがあるのかも合わせてご紹介します。

事業承継コンサルタントとは

事業承継コンサルタントとは、会社における事業承継のプロセスをサポートする専門家です。

事業承継とは会社の経営を別の経営者に引き継ぐことを指し、子どもや親族を対象とした親族内承継もあれば、社内の役員や従業員に引き継ぐ親族外承継、あるいは社外の第三者に引き継ぐM&Aによる事業承継もあります。

いずれの方法も事業承継においては法的手続きや税務処理が必要であり、経営者や従業員だけでは対処しきれないケースも少なくありません。

そのため、事業承継においては専門のコンサルタントに相談・依頼することが一般的です。

事業承継コンサルタントの業務内容

事業承継コンサルタントはどういった業務を担うのでしょうか。代表的な5つのポイントに分けて解説します。

事業承継計画の策定

事業承継コンサルタントの重要な役割の一つとして事業承継計画の策定があります。

自社の経営状況を正しく分析し、どのような経営課題をクリアしなければならないのか、事業承継後の目標や将来的なビジョンなども策定します。

また、スムーズな事業承継プロセスを進めるために、役割分担や進捗計画の策定なども行います。

後継者の選定・育成

後継者の選定および育成は事業承継の成功に欠かせない要素です。

親族および社内に有力な後継者がいる場合には経営者と相談しながら後継者を選定し、さらには経営者として必要なスキルや知識を身につけるための教育プログラムを設計することもあります。

具体的には経営戦略や財務管理、リーダーシップなど多岐にわたる分野が含まれ、専門家によるメンタリングやコーチングを通じて後継者の育成をサポートします。

また、後継者が実際の業務に携わりながら実践的な経験を積み重ねていくこともあり、リアルな経営環境での判断力を養います。

財務・税務対策の支援

事業承継では財務や税務上の課題・問題が伴うこともあります。

事業承継コンサルタントは企業の財務状況を詳細に分析しながら最適な財務戦略を立案したり、税務上のリスクを解決するための助言を行ったりします。

具体的な財務戦略の支援としては、資金調達や資産管理、投資戦略などに関する助言が挙げられ、税務対策では相続税や贈与税への対策なども含まれます。

法務支援

事業承継に関する法的手続きは複雑であり専門的な知識が必要です。

そこで、事業承継コンサルタントは弁護士などと連携しながら法的課題について専門的な助言やコンプライアンスに関する支援を行ったり、法的リスクを最小限に抑えるために事業承継に関連する契約書の作成支援なども行います。

関係各所間でのコミュニケーション支援

事業承継を円滑に進めるためには社内外の関係者との緊密なコミュニケーションが欠かせません。

事業承継コンサルタントは取引先や顧問弁護士、場合によっては金融機関などとも調整を行い、スムーズな事業承継を支援します。

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

事業承継コンサルタントへの依頼で発生する費用

事業承継を行うためにコンサルタントへ依頼する場合、どういった費用がかかるのでしょうか。それぞれの内訳と費用の相場もあわせて解説します。

初回相談料

コンサルタントに対して事業承継に関する相談や問い合わせを行う際にかかるのが初回相談料です。

初回相談では会社の現状や課題をヒアリングしたうえで、どのような方向性で事業承継を行うべきか、コンサルティングの方向性や大まかな計画が提案されます。

初回相談料の相場は1時間あたり1万円程度と少額の場合が多いですが、近年では相談料無料のコンサルタント会社も増えています。

月額コンサルティング料

事業承継は数日や数週間といった短期間で完了するものではなく、数ヶ月や半年、あるいはそれ以上の長期間を要する場合が多いです。

プロジェクト期間中は1か月単位でコンサルティング料を支払う必要があり、企業規模や事業承継の方法によっても費用は異なるものの数十万円から数百万円にのぼることも少なくありません。

成功報酬

成功報酬とは、一連の事業承継プロセスが完了した際に支払われる費用のことです。

一般的にM&Aによる事業承継を行う際に成功報酬が請求されるケースが多く、取引金額の数%から10%程度が相場となっています。

その名の通りM&Aが成功した場合に支払われる費用のため、何らかの理由によって交渉が決裂し白紙に戻った場合には成功報酬が請求されることはありません。

特定のサービスや手続きに対する個別の費用

親族承継の場合、相続税申告と相続税の納付が必要になる場合もあるため、これらの申告手続きのサポートも依頼する際には個別の費用が請求されることがあります。

また、事業承継計画の策定や自社株評価などに関する費用は月額コンサルティング料に含まれているケースもあれば、個別請求となることも珍しくありません。

このように、依頼する事業承継コンサルタントによっても支払う費用の内訳は異なる場合があるため、見積もりや初回相談の段階で料金の仕組みはしっかりと把握しておくことが大切です。

事業承継コンサルタントの関連資格

事業承継コンサルタントとして業務に従事するためには、弁護士や司法書士、税理士のように特定の資格・免許が必要というわけではなく、実務経験や知識、スキルさえあれば誰でもキャリアアップが可能です。

しかし、関連資格を取得しておくことで大きな武器となり、クライアントからの信頼を得られる可能性があります。

事業承継士

事業承継士とは、その名の通り事業承継に関する専門知識を有し、必要な事務手続きのサポートやクライアントに対する助言などを提供する民間の資格です。

一般社団法人事業承継協会という団体が実施している「事業承継士資格取得講座」を受講し試験に合格することで認定されます。

ただし、上記の資格取得講座を受講するためには以下いずれかの資格を保有していることが条件とされており、受験のハードルは高いといえるでしょう。

  • 中小企業診断士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 一級建築士
  • 不動産鑑定士
  • 宅地建物取引士
  • ファイナンシャル・プランニング技能士

M&Aスペシャリスト

M&Aスペシャリストとは、会社の買収や事業譲渡において重要な適正な事業価値の評価や買収・譲渡の手続き、事業統合(PMI)などに関する専門的な知識・ノウハウを習得できる資格です。

一般社団法人 日本経営管理協会(JIMA)が運営している民間資格であり、一般知識問題と論述問題から構成される試験に合格することで認定されます。

M&Aエキスパート認定資格

M&Aエキスパート認定資格とは日本M&Aセンターが運営している民間資格であり、「事業承継・M&Aエキスパート」と「事業承継シニアエキスパート」、「M&Aシニアエキスパート」の3つから構成されています。

このうち「M&Aシニアエキスパート」は事業承継やM&Aに関する基本的な知識を身につけられる試験であり、これに合格することでレベルに応じて上級資格に挑戦することができます。

JMAA認定M&Aアドバイザー

JMAA認定M&Aアドバイザーは、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が運営している民間資格です。

JMAAが実施している「M&A実務スキル養成講座」を受講し試験に合格した後、日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)正会員として入会することで資格が付与されます。

なお、「M&A実務スキル養成講座」は事前に7時間の動画を視聴した後に全国の会場で実施されている集合形式の講座を4時間受講し、最後に修了試験が行われます。

関連記事:M&Aで会社売却後の社長はどうなる?継続的な経営参画など事例まで解説

事業承継コンサルタントの選ぶ際のポイント

事業承継コンサルタントを調べてみると、数多くのコンサルタント会社がヒットするため本当に信頼性の高い会社はどこなのか分かりづらいものです。

そこで、どのような点に注意してコンサルタント会社を選べば良いのか、7つのポイントに分けてご紹介します。

専門的な資格の有無

先述した通り、事業承継に関する公的な資格は存在しないため、特定の資格や免許を保有していなくても事業承継コンサルタントを名乗ることができます。

しかし、だからこそ専門的な資格の有無はコンサルタントの信頼性を客観的に評価する材料となります。

実績・経験

過去にどのような会社の事業承継を手がけてきたのか、実績や経験を確認しておくことも重要なポイントです。

特に自社と同じ業種や規模の事業承継を多く手掛けてきたコンサルタントは、専門的なノウハウや知識が豊富で有益なアドバイスを提供してもらえる可能性が高いでしょう。

コンサルタント会社のWebサイトやパンフレットなどには、これまでの実績や支援した企業の事例などが掲載されているケースも多いため、これらの情報は大いに参考になるはずです。

自社の業種への理解度

コンサルタント選びにおいては、自社が属する業界や事業内容に対する深い理解を持っていることも重要なポイントとなります。

業界や業種によっても市場動向は異なるほか、法規制などについても正確な理解が求められます。

これらを熟知しているコンサルタントはより的確なアドバイスを提供できるほか、法的リスクを最小限に抑えたり事業承継の円滑なプロセスも支援できる可能性も高くなります。

後継者への育成などを行っているか

事業承継は単に後継者を指名して経営を引き継いで終わりではなく、むしろその後に後継者が安定して経営を持続していけるかが勝負となります。

優秀な人材であっても経営者に求められるすべてのスキルや能力が備わっているとは限らず、事業承継の前段階でさまざまなトレーニングや教育を受けなければならないケースも多いものです。

そこで、事業承継コンサルタントを選ぶ際には後継者育成の教育やプログラムを提供しているかどうかを確認しましょう。

自社では教育やトレーニングに対応しきれない場合でも、後継者の成長をサポートし事業承継を円滑に進める助けとなります。

費用の透明性・分かりやすさ

「事業承継コンサルタントへの依頼で発生する費用」の中でもご紹介しましたが、初回相談料や月額コンサルティング料、成功報酬、個別のサービス料など、全ての費用項目が明確に示されているかを確認しておきましょう。

費用の透明性が高く内訳が分かりやすいコンサルタントは、信頼性が高く後々のトラブルを避けることができます。

円滑なコミュニケーションが可能か

事業承継のプロセスは長期間にわたるため、コンサルタントとの緊密なコミュニケーションが欠かせません。

ストレスなく事業承継を進めていくためには、こちらの質問や不安に対して分かりやすく説明し迅速かつ適切に対応してくれるコンサルタントが求められます。

些細なことでも相談しやすいコンサルタントであるかはもちろんですが、こちらの質問に対して分かりやすく真摯に対応してくれるかどうかも重要なポイントといえるでしょう。

評判や口コミ

コンサルタント会社の評判や口コミも大いに参考になります。

過去に依頼した経験のある顧客やクライアントからの口コミをチェックすることで、実際のサービスの質や信頼性を把握できます。

同業者からの紹介や業界内の評判などはもちろんですが、近年ではレビューサイトも充実しているため参考にしてみましょう。

関連記事:M&Aの目的を4つに分類|売り手と買い手に分けて詳しく解説

まとめ

事業承継にはさまざまな方法・パターンがありますが、従来であれば自社で後継者を探して事業を引き継ぐのが一般的でした。

しかし、昨今では後継者不足が深刻化しているほか、事業承継に関する法的手続きや税務も複雑化しており、自社だけでは対処しきれない会社も増えています。

そのような場合において事業承継コンサルタントは心強い味方であり、さまざまな相談に乗ってくれたり円滑な事業承継プロセスを支援することもできます。

信頼できる事業承継コンサルタントを探す際には、今回ご紹介した7つのポイントを参考にしてみてください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

VIEW MORE

M&Aストーリー一覧へ