企業価値の計算方法は?時価総額との違いも解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

企業価値は、企業の総合的な価値を示す指標として企業全体の価値を評価するために用いられます。

そこで本記事では、企業価値の計算方法や向上させるための施策について詳しく解説します。

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企業価値とは

企業価値は、将来にわたって企業が生み出すと予想される収益を現在価値に割り引いて計算し、会社の真の価値を導き出します。

この計算によって企業の収益力や資産の効率的な活用能力、市場における競争力が数値化され、投資家や企業経営者にとって重要な情報となります。

また、会社の将来性を評価する際の基準としても利用され、企業価値の高い会社は一般的に投資の魅力が高いとされます。

企業価値を決める要因

企業価値を決める要因は複数あります。

事業価値(稼ぐ力)

企業価値を高めるには、事業の収益性の向上が不可欠です。これを実現するためには、戦略の見直しと業務効率化が重要です。

市場の変化に応じて事業戦略を再評価して競合他社との差別化を図り、不要な業務の削減やコスト削減を行いながら、業務プロセスの改善や最新技術の導入を通じて生産性を高めることが効果的です。

これらの取り組みによって持続可能な収益性の向上が期待できます。

無形資産の価値

無形資産は企業価値の評価において中心的な役割を果たします。これには会計上認識される資産(商標権や特許権など)と、帳簿に計上されない資産(ブランドの価値や企業文化など)が含まれます。

これらの資産は企業の競争力を形成し、長期的な成功を支える重要な要素です。
無形資産の重要性が高まるにつれて管理と戦略的活用が企業にとって重要な課題となり、企業価値に大きく影響を及ぼしています。

将来の成長性

投資家や市場は、企業の現在の財務状況とあわせて未来の成長可能性や収益増加の見込みを重視します。

成長性の主要な指標には、新市場への進出、製品ラインの拡充、技術革新、効率的な経営改善があります。

また、専門家による財務の見直しや最適化も、成長指標を補強し企業価値を向上させるためには重要なポイントです。

企業価値の算出方法

企業にとって企業価値は大切な指標です。

企業価値の主な算出方法についてご紹介します。

収益還元法(利益を基準とする方法)

利益を基準とする収益還元法には、以下の二つの方法があります。

直接還元法

直接還元法は「1年間の純利益 ÷ 資本還元率」という計算式によって企業価値を算出します。
そのため、まずは1年間の純利益について、年間の平均収益から年間の諸経費を差し引いて算出します。

例)
・平均収益:1,000万円
・年間諸経費:200万円
・資本還元率:5%

1年間の純利益 = 1,000万円 – 200万円 = 800万円

続いて、算出された純利益を資本還元率で割って企業価値を求めます。

企業価値 = 800万円 ÷ 5% = 1億6千万円

DCF還元法

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出します。

企業価値 =
企業が生み出すフリーキャッシュフロー※1(FCF)の期待値 ÷ 加重平均資本コスト※2(WACC)

※1:納税や投資など必要な出費を行った後に、債権者と株主に分配可能なキャッシュフロー。
※2:株主資本コストと負債資本コストを加重平均して求められる資本コスト。

純資産価値法(資産を基準とする方法)

純資産価値法は、非上場企業の価値を評価する手法の一つで、企業が保有している資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いた金額が企業価値となります。

  • 純資産価値(時価純資産法) = 時価評価された資産(土地や株式)3,000万円 – 時価評価された負債(長期の借入等)1,200万円
  • 企業価値 = 1,800万円

純資産価値法は計算方法がシンプルなため、将来の見通しが不確定な企業でも現時点の価値を評価できるというメリットがあります。

その他の方法(相対的な株価を利用する方法など)

企業価値を算出する方法は多岐にわたりますが、特にビジネスシーンで広く採用されているのが相対的な株価を利用する手法です。

この手法は市場に上場している企業に対して特に有効であり、同業他社との比較を通じて自社の価値を相対的に評価することが可能です。

企業価値と時価総額の違い

この章では企業価値と時価総額の違いについて説明します。

時価総額とは

時価総額(Market Capitalization)は企業が市場で持つ価値の指標で、株価に発行済み株式数を乗算することで算出されます。

この指標は企業の市場評価や規模を把握するのに役立ちますが、企業の全財務状態や安定性を完全に反映することはできません。

したがって、より総合的な企業評価を行う場合は、負債や資産、収益性など他の財務指標も考慮することが重要です。

株式時価総額と企業価値の違い

株式時価総額と企業価値は、企業の経済的価値を測る指標ですが、考慮される要素が異なります。

株式時価総額は企業の発行済み株式の市場価格の合計です。

一方で、企業価値は「株式時価総額に企業の有利子負債を加えてから、現金および現金同等物を差し引いたもの」です。

異なる算出方法による指標を用いることで、投資家は企業を様々な視点から評価することができます。

企業価値を高める方法

企業価値を高め、ステークホルダーから良い評価が得られる組織づくりの方法を解説します。

収益力の向上

企業価値を高めるためには収益性の向上が不可欠で、中長期的な経営戦略を策定し、売上の増加とコストの削減を図ることが重要です。

例えば、顧客満足度を高めてリピート率を向上させたり、マーケティング戦略を最適化して効果的なブランディングをするといったことが挙げられます。

その他にもコストの見直しを行うなど、複数の施策を実施することで中長期的な収益力の向上が期待できます。

資産効率の改善

資産効率の改善は、企業が保有する資産をより効果的に活用して、収益性を高めるプロセスです。
この目的は、投資した資本に対するリターンを最大化し、企業の運営効率を向上させることにあります。

効率的な資産利用はコストの削減と収益の増加につながり、その結果として企業価値の向上が期待できます。

将来性の高い事業への投資

企業の価値を高めるには、資金や資産を効率的に活用することも大切です。
特に、利益を生まない遊休資産の削減は価値向上につながります。

例えば、使用されていない土地や建物などの資産を貸しに出すなど、資産を無駄なく活用することで企業価値を高められます。

企業価値の活用場面

企業価値は多くの場面で活用されます。具体的な活用事例をご紹介します。

M&A評価

企業価値が高い企業はM&Aにおいて多くのメリットを享受しています。

高い企業価値は強い交渉力を発揮し、売り手側はより有利な条件で取引を進めることが可能です。
また、買い手にとっては、企業価値の高い企業を獲得することで自社の成長を加速させることができます。

さらに、企業価値が高い企業は経営が安定しているケースが多く、リスク分散の効果も期待できます。

関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説

上場評価

上場企業の株価は企業の市場での現在価値を反映し、投資家や分析家にとって明確な価値の指標となります。

市場での取引によって設定される価格は企業の実際の時価を示すため、企業評価を理解する上で非常に有効です。

経営判断の指標

企業価値は、会社の健全性や成長性を測るために非常に重要なツールです。
企業価値の指標を通じて収益性や安全性、生産性、成長性などさまざまな要因を数値化することで、経営者は客観的な視点から会社の状態を評価することが可能です。

また、上場企業の場合は投資家やステークホルダーにとって重要な判断基準となります。

まとめ

企業価値は事業価値や無形資産の価値、将来の成長性などを考慮して評価される重要な指標です。

企業価値はM&Aや上場判断の基準としても利用されるため、積極的に高めると中長期的に収益を増加させることが期待できます。

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