M&Aストーリー M & A Story
松栄電機株式会社

3代続く盤製造の事業拡大、継承M&Aが最適な選択肢に

会社名
松栄電機株式会社
業種
配電盤・分電盤・制御盤の設計/製作
M&Aで達成した内容
事業の継続・従業員の継続雇用、盤製造の取引先拡大及び生産能力増強
M&Aアドバイザー
石田 功

M&Aに至る背景父から社長を引き継ぎ、会社経営の面白さに引き込まれた

M&Aに至る背景
松栄電機株式会社は、1941年3月に創設され、1955年 1月に組織を株式会社と改めて発足した電気機器製造業の会社だ。配電盤・分電盤などの電気を流す機器を扱う。主にビル、工場の電柱から引き込んだ電気を建物中で分ける役割だ。2代目社長、新堀健一氏の代のときに工場を東京から山形の新庄市と南陽市に工場に移し、製販分離を行った。
三代目社長である新堀英世氏は、子ども時代は父・健一氏より会社を継がせる意思は伝えられていなかったという。大学卒業後はもともとメーカーのシステムエンジニアとして就職の道を進もうとしていたが、父の勧めで商社に入った。コンピュータ機器の輸入に3年携わり、商売の面白さを知った。そんな新堀氏に転機が訪れたのは26歳の頃。父から会社を継がないかと持ちかけられた。当時、新堀氏は電気系よりコンピュータ系のほうに興味あり、海外出張にも憧れていたため躊躇したが、会社経営にも興味があったため、継ぐことを選んだ。
松栄電機入社後は営業部長からスタートし、父から経営を学んでいった。「祖父が病床に伏し、入院中の会社継承に苦労した父の経験から、同じ思いはさせまいと考えていたようです。自分が元気なうちに引き継いでくれました」と新堀氏は振り返る。また「父が取引先のいしずえを築いてくれていたおかげで、移動体通信の大手メーカーなどのつてもあり、仕事は途切れず業績は順調でした」という。

そんな新堀氏がM&Aの検討をしたきっかけは複数あった。40代半ばくらいから将来的に自分のやりたいことを真面目に考えるようになったこと、事業継承者がいないこと、また娘2人のためにも準備は万全にしておく必要性なども感じていた。さらには従来から起業意識もあった。
そして松栄電機については事業規模を大きくしなければならないという思いもあった。コロナ禍に入った3年ほど前に、新堀氏は工場の生産キャパシティを広げなければ経営が成り立たなくなる懸念があったという。
そこで、後継者のいない小さな会社の工場を買うアイデアが浮かんだ。また知り合いの社長がM&Aで上場企業に売却し「ようやく肩の荷が下りた」という発言は「その手もあるのか」と深く新堀氏の心に響いた。そうして複数のことがすべてつながった。「M&Aなら一気に課題がまとまる。そう、パズルがはまった感覚がありました」と新堀氏は当時を語る。

M&Aの決断製造業出身のM&Aアドバイザーだからこそ心を開けた

M&Aの決断
M&Aを検討しはじめた新堀氏は早速、情報収集を始めた。問い合わせた約10社あまりのM&A仲介会社は「小さな会社を買うよりも、自社を大きな会社に売ったほうが手数料の面で得です」と口を揃えて言った。話を聞く中でさまざまな選択肢があり、何が起きるのかということを理解することはできた。その後、約一年のブランクを経て、改めてM&A仲介会社数社に連絡を取った。そしてMABPのM&Aアドバイザー石田功と初めて面会したのが2021年9月24日。Zoomによるオンラインでの面会だった。
石田の初対面の印象について、新堀氏は「門前払いした会社の担当者も何人もいた中で、石田さんは、お世辞なしで一番“まとも”だと思いました」と振り返る。また石田はもともと製造業の企業出身だったこともあり、話が通じやすかったことも新堀氏が心を開ける大きな理由となったという。石田は新堀氏からの相談にはその都度、経験則を活かして対応した。

石田は新堀氏からの要望である「大きな製造業者で、盤の生産能力が高い会社」を複数、検討し、話を進めた。一社目は新堀氏のよく知っている会社だったが、さまざまな理由から話は前に進まなかった。2社目に紹介された会社は知らない会社だったが、そのグループ内の会社は新堀氏の父の知り合いであり、よく知っていた同業の“盤屋”だった。グループ会社自体は松栄電機の5倍の規模で「同じ盤屋がいるなら話は早いのではないか?」と新堀氏は直感し、そこからスムーズかつスピーディーに話が進んだ。2022年2月7日には社長同士の初顔合わせに至り、約3ヶ月後の2022年5月13日には最終契約を結び、約半年で契約に至った。

新堀氏は話を進めるに当たって、「従業員の雇用を守ってほしいという思いは当然ありましたが、石田さんのほうで完璧に調整していただいていたので、その心配はありませんでした。この会社でなければ断っていたと思います」と話す。石田は選定時のことについて「新堀社長のお考えをお聞きし、それを理解していたつもりだったので、この会社さんだったらその思いは実現できるのではと思い、ご紹介しました。前職では製造業の技術関係に携わっていましたので、ご意図や思いは理解していたと思います」と語る。

譲渡における懸念点をあえてあげるならば「父が何と言うか、どのタイミングで切り出すかが最も不安でした」と新堀氏。緊張の中、父と母に打ち明けたところ、あっさり「良いのでは」「逆にどうするのかと心配だった」と返ってきて拍子抜けをした。「我が子のあまりの緊張具合を見て、気を遣ってくれたのかもしれませんが、正直ホッとしました」と新堀氏は述べた。

M&Aの振り返りと展望事業継承後は起業して新たな道へ

M&Aの振り返りと展望
新堀氏は、譲渡後約1年、常務として会社に残り、任期満了で退任した。その間、営業統括を継続していたが、半年ほどして、後任の役員が配置された。後任役員は、グループの「盤屋」の営業部長が転勤してきたので、業界事情に通じており、取引先、従業員との関係もスムーズに引き継ぐことができた。

また事業譲渡する際に信頼できるM&Aアドバイサーを探すポイントとして、「データをできる限り集めること」だと新堀氏はアドバイスする。「新しく会社の税理士を探すときもそうでしたが、M&Aでもしらみつぶしに当たって探しました。十社も当たれば、たいていの傾向がわかります。そのなかで、石田さんにも出逢えました」。

また、新堀氏は、だまされないためにも知識を入れることは大事だという。「知識をある程度持っておき、わからないことは専門家に聞くようにすれば、舵を大きく取り間違えることはなく、気持ちも負けないと思います」と締めくくった。

新堀氏にとって、これからが第二の人生の始まり。しっかりと事業継承しながら、彼の脳裏には次の事業構想が駆けめぐる。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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