M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
M&Aストーリー
株式会社アスクラフト
M&A成約事例
譲渡企業
株式会社アスクラフト
代表取締役 高橋一雄氏 インタビュー
私は、岩手県奥州市の出身です。
高校卒業後は上京して、2年半ほど内装仕上げ施工に従事しました。大きなホテルなどの内装工事を手掛けました。都内だけでなく、熱海や千葉、埼玉、そして京都にも出向きましたね。
最初の1年目は後片付けばかりでしたが、2年目からは技能を身につけて施工を任されるようになりました。都会では時間に追われ、先輩たちも厳しかったですが、いい経験でしたね。
その後、サウジアラビアに技術指導に行く話が出たんですが、直前に父親から「戻ってこい」という連絡を受けました。聞くと、地元で新たに会社を立ち上げるって言うんですよ。それをきっかけに帰郷して、父親と一緒にガソリンスタンド経営を始めたんです。
それからはずっと地元で働いてきました。50歳で起業し、55歳で現在のスタンドを作り、65歳くらいで定年を迎えるだろうと考えていましたが、ほぼその通りになりましたね。
我々アスクラフト株式会社の事業は、奥州市の郊外にある大型ガソリンスタンド「ENEOS江刺ふるさと市場前SS」の運営がメインです。スタンドでは、お客様自身で燃料を注ぐセルフ給油に加え、社員がお手伝いするスタッフ給油も提供しています。洗車機や灯油の販売は、セルフサービスのみです。
また、同じ敷地に併設する自動車工場では、車検整備、一般修理、板金塗装、ボディコーティング、消耗部品の販売、そして中古車販売まで幅広く手掛けており、自動車関連の総合サービスを提供しています。
1979年5月、父親とともにスタンド経営をスタートしました。今とは別の場所で、敷地面積は約400坪くらいでしたね。当時は周囲の道路も砂利道で、車の通行量も多くありませんでした。
内装業から自動車関連事業への転身は全く畑違いでしたが、近くの北上川に大きな橋がかかり、東北新幹線も開通したことで交通量が増加し、次第に売上が伸びていったんです。当時はプロパンガスの販売も手掛けていたため、利幅も大きかったですね。その場所では30年ほど過ごしました。
現在の場所に「ENEOS江刺ふるさと市場前SS」を作ったのは、ちょうど15年前のことです。土地の購入には苦労したものの、最終的にはまとめて取得できました。敷地面積は約1,800坪と以前から4倍以上にも広がり、どうせ作るなら大きなスタンドにしようということで、土地をフルに活用した設計を行いました。
資金の調達も難航しましたね。当時は「ガソリンスタンドには金を貸すな」とまで言われるほど、業界の状態が悪かったんです。周囲からは「今どきこんな大きなスタンドを建設してどうするの?」とも言われましたが、地元の銀行に何度も足を運び、頼み込み、15年の返済計画でようやく借り入れができました。
そして、今年でちょうど15年目になりますが、人生設計と同じく、ほぼ計画通りに返済を終えることができそうです。
最終的には、M&Aベストパートナーズ(以下MABP)の菊池アドバイザーが来られて話が進み、それに乗る形になりましたが、そもそもこの業界で一匹狼として将来的にどこまで生き残れるのか、まったく予測がつかなかったのが背景にあります。それならば、いっそのこと大きな会社に株を売却し、私の会社を有効に使ってもらおうと考えたんですよ。
ガソリンスタンド業界の将来についても、電気が主流になるのか、水素が来るのか、まったく見通しが立ちません。当面は石油と電気のハイブリッドが主流になりそうですが、かつては電気が優勢という話もありました。けれども、ヨーロッパでは電気自動車へのシフトが鈍化し、中国でも電気自動車が野ざらしにされている状況です。インフラ整備が進まないのが原因でしょうね。
それに加えて、資金繰りの問題もありました。しばらくの間、銀行から借りて支払いを済ませると、翌月にはまた資金が足りなくなるという状態が続いていました。これは危機的な状況だと、以前から感じていたんです。
財務状態はそこまで悪くはなかったものの、将来の投資を考えると、どうしてもまとまった資金が必要になります。現金精算機の新札対応だけでも100万円以上かかりますから。会社がさらに悪い状態に陥る前に、今のタイミングでM&Aしようと決意しました。
ただ、最終的な決断の決め手となったのは、やはり菊池さんの存在でしたね。
MABPの菊池さんは東北出身ということもあり、我々が岩手にあることも踏まえて、できるだけ良い条件で契約を進めようという姿勢を見せてくれました。面倒見もとても良く、うちの息子も菊池さんと非常に仲が良かったですね。
そんな経緯もあって、改めて菊池さんに相手企業探しをお願いすることにしたんですよ。
菊池さんに初めてお会いしたのは2023年の12月でした。
岩手県内には盛岡を中心に、一関や沿岸地域などに拠点を持つ企業が多いのですが、我々がいる県央部に拠点持つ企業は少ないんですよ。我々のスタンドは規模も大きかったことから、岩手に拠点を持ちたいという企業にとってはぴったりだったんでしょう。多くの企業から打診を受けましたが、最終的にオカモトさんと進めることにしました。
オカモトさんとのTOP面談は2回しました。1回目は3月で、岩手まで来ていただきましたが、2回目は帯広にある岡本社長のゲストハウスに息子と2人で招かれ、1泊2日を過ごしました。
その際には、シェフを呼んでの会食など、丁重なもてなしを受けました。オカモトさんはガソリンスタンド以外の事業もされているので、道の駅やコインランドリーなどにも案内してもらえましたね。
正式な契約を交わし、クロージングしたのが2024年9月です。
特に私がこだわったことはありませんでした。むしろ、アスクラフトが今後もっと成長していくことを望んでいたんですよ。資金力がなければ、どの業界であっても大きくなることは難しいと感じています。
実は、我々の近隣にある某施設が来年の3月で終了するという話をしたところ、オカモトの社員さんがすぐに反応してくれて、「地元なので、ぜひ一緒にやりましょう」と提案されていたんです。決断のスピードが早くて、本当にびっくりしました。
岡本社長だけでなく、他の社員さんも自分たちで判断して即行動に移すなど、その決断力には男気を感じました。この企業姿勢にも非常に惹かれましたね。
私個人としては、特に心配や懸念することもなかったんですよ。だけど、やはり従業員たちは不安を抱いていたようです。契約が無事に終わったので、これから会社に戻って、一人ひとりに「今まで本当にありがとう」と感謝の気持ちを伝えたいと思っています。
従業員の雇用はもちろん継続されますが、私自身も今後6ヶ月ほどは引き続き会社に関わることになりました。当初は3ヶ月ほどと聞いていましたが、岡本社長からは「地元との橋渡しをして欲しい」と依頼され、ポストもいただいたため、もう少し長くお世話になることになったんです。本当にありがたいですね。
岡本社長は、とても優しい方ですよ。第一印象から今に至るまで、それは変わりませんね。
菊池さんからは「大企業のトップは非常に多忙で、M&Aの交渉には顔を出さないことが多い」と事前に聞いていました。特にオカモトさんは売上が1,700億円を超えるグループ企業ですので、社長自らがTOP面談に来られることはないだろうと思っていたんです。
ところが、先方にとっては<肝入り案件>と位置づけられていたようで、あいにくの悪天候にもかかわらず、社長自ら足を運んでいただきました。当社の所在地やスタンドの規模が大きいことから、オカモトさんから見ると非常に魅力的だったのだと思います。
決め手はやはり、岡本社長が自ら足を運んでくださったことですね。前述の通り社長の人柄も非常に良く、信頼感を抱きました。菊池さんからも「タイミングが大事で、あと5〜10年経つと厳しくなる」とアドバイスをいただき、こちらもM&Aの決断を後押ししました。
また、岡本社長が私の息子を非常に気に入ってくれたことも大きかったです。私自身も地元ではそれなりに顔が立つと自負していますが、若い世代の顔として息子を期待してくださっているようです。先方にとっても、社内に強い味方がいることが決め手の一つだったと伺いました。
今の時代は、まさにマッチングが重要ですね。菊池さんには、本当に感謝しています。
正直なところ、資金繰りの心配から開放されたというのが一番の感想ですね。これまでは常に資金繰りに追われていましたから。そのストレスが無くなり、笑顔になれるというか、心からホッとしています。
午前2時に出勤して、5時にはスタンドをオープン。7時頃まで働いて、間で席を外すこともありますが、基本的には22時まで営業を続けるというのが日々のルーティーンでした。また、夏場の虫対策や冬場の除雪など、苦労も絶えませんでしたね。
これからもしばらくは在籍する予定ですので、ライフワーク的には急激な変化はなく、実感もまだありません。新しい環境には徐々に馴染んでいくでしょう。先方とも良好な人間関係を築けたと感じており、今後は穏やかに過ごしていけそうです。
大事なのは、決断のタイミングです。意地を張って「まだいける」と思っているうちに状況が悪化してしまうことも考えられますので、そうなるもっと手前で動くべきです。特に、銀行からの借り入れが大きくなっているところは、早めにM&Aを検討した方がいいと思います。
全国的に年々、倒産件数が増加しています。特に岩手エリアでは、ここ3年で倍増していると聞きますが、会社が潰れてしまってからではM&Aどころではなくなってしまいます。
状態が悪化してからではなく、ある程度儲かっている時期、経営状態がそこそこ良い時にこそ、M&Aを検討する絶好のチャンスです。大きな借り入れを行う前に、ぜひM&Aを考えてみてください。その方が、従業員にも迷惑をかけずに済むと思いますよ。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
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