M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
M&Aストーリー
アイエススプリンクラー株式会社
M&A成約事例
譲渡企業
アイエススプリンクラー株式会社
代表取締役 久保 慶晃氏 インタビュー
大学の工学部を卒業した後、父とともに地元の和歌山で会社を設立しました。
もともとは弟が高校卒業後に父の会社を継ぐ予定でしたが、事故で急逝してしまい、代わりにといってはなんですが、私が一緒に事業を運営することになったんです。
ちょうどパソコンが普及し始めた時期で、当初は会社のデジタル化に関わることで父の事業を支えました。大学で培った知識をもとにワープロソフトを使って会社の書類を作成したり、手書きの設計図をCADに入力したりするなど、業務効率化を進めました。
2016年には父親から正式に会社を継承し、現在に至ります。
当社では、スプリンクラーヘッドおよび関連機器の設計・製造を行っています。具体的には、スプリンクラーヘッドやアラームバルブ、一斉開放弁などの製造です。
特にアラームバルブは、火災時にスプリンクラーが作動すると、流れる水を検知して信号を出す重要な装置で、関連機器として製造しています。
当社が作る、スプリンクラーヘッドの大きな特徴は「耐衝撃型」だということです。
通常、スプリンクラーは天井に設置されており、その背後にある配管には高圧の水が流れています。火災が発生すると、スプリンクラーヘッドが炎の熱を感知して作動し、水を放出しますが、その性質上、従来品は衝撃に弱く、落下した場合には再利用できないという業界の常識がありました。また、過去には衝撃が原因で、水漏れや誤作動による放水が頻発していたんです。
近年では、個人所有のマンションなどにもスプリンクラーが設置されるケースが増えていますが、こうした場所では管理が行き届かず、誤作動が起きると1分間に150〜200リットルもの水が放出され、階下の住居に大きな損害を与える恐れがあります。そのため当社では、衝撃に強いスプリンクラーヘッドを開発することが必要不可欠だと考え、製品化を目指しました。
その後、設計自体は完成しましたが、他社ではこの製品を作る生産ラインがありませんでした。
そこで当社を設立し、独自のラインでこの耐衝撃型スプリンクラーヘッドの製造を始めたんです。
現在の会社は1991年に、私が大学を卒業してすぐに父親とともに設立しました。
父は工学部出身で、もともとスプリンクラーヘッドの研究に従事しており、大学卒業後は大阪のメーカーで設計担当として働いていました。しかし、経営が不安定になってきたことを理由に退職し、1983年に個人で独立したんです。その会社は1年後、最終的に製品の不具合によって倒産してしまいました。
1989年には、父の手がけた製品が総務大臣型式承認を取得し、翌年には製造販売を始めました。
法人として「アイエススプリンクラー株式会社」を設立したのは1991年のことです。いくつかのクライアントにお世話になり、私が大学を卒業するタイミングで本格的に会社を立ち上げました。これが1993年で、現在の場所に工場、試験場、事務所、倉庫を新築しました。
1992年に開発を開始した耐衝撃型スプリンクラーヘッドは、1998年にようやく製品化に成功しました。この製品は、大手工務店や電力会社を中心に納入され、現在では全国の公共施設、病院、大型店舗、マンション、老人ホームなど、さまざまな建築物で利用されています。
また、当社は和歌山県企業ソムリエ委員会から優良ベンチャー企業として認定を受け、NHKや民放の取材もあって、おかげさまで多く方に我々の事業を知っていただけました。
一番の理由は、私の後継者がいないことです。私には息子が3人いますが、公務員を目指していたり起業を志していたりと、それぞれが自分の道を歩み始めています。私が苦労する姿を近くで見ていたからか、彼らには「お父さんの仕事を引き継ぐのは無理だ」と言われてしまいましたね。
そのため、5年ほど前から「自分の後継者をどうするか」を考え始め、M&Aを検討するようになりました。もっとも、当初はM&Aという明確な手段ではなく、取引先の中でどこかが会社を引き取ってくれるか、もしくは出向で後継者が来るような漠然としたイメージを持っていました。
MABPさんからの案内は、ちょうどそんな時でしたね。ある日、別件で顧問弁護士に相談に行った際にM&Aの話をしたところ「するしないは別にして、一度話を聞いてみたら?」というアドバイスをいただきました。
そのタイミングで、MABPさんからDMが届いたんです。話を聞きに行こうと思って訪問したところ、M&Aアドバイザーの石田さんとお会いすることができました。他社からもたくさんのDMを受け取っていましたが、MABPさんとの出会いは、まさにグッドタイミングでしたね。
M&A仲介会社に相談するのは初めての経験だったので、石田さんとお会いした当初は、かなり慎重に話を進めていました。しかし、お話ししていく中で「これは大丈夫だ、信頼できる」と感じ、MABPさんに任せようと思ったんです。
打ち合わせにおいて石田さんは、具体的な企業名をいくつか挙げられた上で、今後の大まかなスケジュールも示されました。おかげで、M&A全体の流れをイメージしやすかったですね。
また、我々の事業や製品に対する思いを真剣に聞いてくださり、その姿勢にも好印象を持ちました。やはり多くの企業とコミュニケーションの経験がおありで、特に製造業に対する深い理解を持っている方だと感じたんです。
実際にM&Aを進めていく中で、一番重要かつ負荷が大きいというデューデリジェンス(買収監査)の段階でも、こちらが提供した資料をもとにスムーズかつスケジュール通りに進めていただき、非常にスピーディに対応されていたのが印象的でした。
M&Aを進める上で一番重視したのは、私たちの会社と「一緒にやっていける会社かどうか」という点でした。
具体的には、業界にどっぷりと入り込んでいる会社ではなく、かといって全く異業種の会社でもなく、ちょうど良いバランスを持った企業さんですね。
業界に精通しすぎていると柔軟性に欠ける部分がありますし、逆に全く畑違いの企業だと運営や文化の違いでやりにくさが出るだろうと思っていました。
結果として、MABPさんからは我々から見て「ちょうどいい」企業をご紹介いただきました。石田さんのマッチングのおかげで、抵抗なくスムーズにM&Aを進められましたね。
私の当初のイメージでは、M&Aが成立すると役員が全て入れ替わり、社長も3〜4年で引退するものだと考えていました。そのため、自分が辞めた後のことをいろいろと心配していたんです。
ところが、ポエックさんから「辞めないでほしい」という条件をいただき、その不安が一気に解消されました。取引先についても現状のまま、取引銀行や顧問弁護士、税理士も変更する必要がなく、結局のところ心配は無用でしたね。
M&Aを進める際に一番大変だったのは、守秘義務のために第三者に話ができなかったことです。
もちろん従業員にも相談ができず、極秘裏に話を進めることに対して心苦しく感じていました。
お客様への訪問活動も、契約が成立するまでは控えざるを得ませんでしたが、今週から来週にかけて、M&Aが円満に成立したことを順次、お客様に報告して回っているところです。
従業員やお客様に対する告知のタイミングについては、石田さんと相談しながら慎重に決めました。
ポエック株式会社さんは、大型ポンプや送風機、熱交換器といった産業インフラ製品を手掛けられている会社です。事前に調べてみたところ、以前に一度、当社の製品を使用していただいていたことが分かりました。さらに、うちのターゲットとなるお客様もほぼポエックさんと取引があって、親和性が非常に高いと感じましたね。
最初のTOP面談には5名ほどの大人数でお越しいただき、さらにリモートで数名の方が同席されていましたが、特に印象に残っているのは先方の会長さんです。お会いした時、最初の印象は非常に穏やかな方だなというもので、落ち着いた雰囲気にとても好感を抱きました。
決断に至った最大のポイントは、ポエック株式会社の会長さんのお話を伺う中で、その人柄が非常に伝わってきたことです。
最初のイメージとは一転して、とても人情あふれる熱い方で、事業に対する思いが非常に強く、一代で会社を築き上げたその姿勢には感銘を受けました。会長さんの性格的にも、私の父とどこか通じる部分があり、親しみを感じました。
また、M&Aに対する期待も非常に大きかったです。当社は一応全国展開しているものの、クライアントの多くは主に大阪や首都圏に集中していて、地方への営業は札幌や九州にたまに赴く程度でした。そもそも、営業は私一人で活動していたため、手が回らない部分が多くあったんです。
交渉の中で、ポエックさんからは営業担当をあと2名ほど増員してもらえるというお話をいただき、さらに技術スタッフについても増員をお願いした際に、快く「ぜひやりましょう」と前向きな回答をいただきました。これによって、会社の成長に向けた具体的なビジョンが見えたことが、最終的に決断する大きな要因となりましたね。
正直なところ、まだ実感が湧いていません。株式を譲渡したものの、日常業務や環境に大きな変化がないため、M&Aを終えたという実感がいまいちないんですよ。これから実務的な話が進んで具体的に動くことになれば、その実感が湧いてくるのではないかと思っています。
ポエックさんは上場企業で、さらに決算が8月ということもあって、まず優先的に経理面から動き始めました。7月29日に契約が成立したばかりで、お盆休みも挟んだことから実務的な話はまだこれからです。9月に入ったら、改めてポエックさんにご来社いただき、営業や実務面での具体的な話を進めていく予定です。
今後の展望としては、ポエックさんとの協業を通じて、シェアを少しずつ広げていきたいと考えています。当社が製造するスプリンクラーヘッドの分野では、日本に同業者が3社しかおらず、そのうちの1社が独占的なシェアを持っているからです。
スプリンクラーは消防法上、不可欠な製品で、これがなければ物件の引き渡しや登記ができません。そのため、シェアが1社に偏ることにはリスクが伴うんですよ。もしその1社に何かあれば、業界全体が大きな混乱に陥る可能性があります。シェアをより健全に分散させて、微力ながら日本の建設業界全体の安定性を高める体制を作っていきたいと考えています。
企業によって事情や想いはそれぞれ異なると思いますが、まずは「一度話を聞いてみること」が大切だと思います。我々も最初は、MABPさんに相談するところからスタートしましたので。
そこから、自社にとって最良となる選択肢が見えてくることもありますし、新しい可能性が広がることもあるでしょう。M&Aを検討することは、自社の今後を考えるきっかけとして非常に有意義なプロセスになると、今回の交渉を通じてつくづく思いましたね。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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