M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
M&Aストーリー
MBS株式会社
M&A成約事例
譲渡企業
MBS株式会社
代表取締役 益田 詩歩氏 インタビュー
私は新潟県長岡市出身で、9歳から野球を始めました。父の影響でプロ野球選手を目指し、特に読売巨人軍に入りたいと強く思っていたんです。2009年、20歳の時に日本女子プロ野球機構が発足すると、ドラフト会議で兵庫のチームから指名を受けてプロ契約を結びました。その後、大阪のチームに移籍し、2013年に引退しました。
2015年、会社の代表だった父が亡くなり、社内でNo.2だった方から「自分が引き継ぐから、株券を置いていってくれ。株を持っていても価値はないよ」と迫られたのを機に、自分が野球一筋でビジネスについては何も知らないことに気づかされました。しかし、父が人生をかけて築き上げた会社の価値がゼロかのように言うのはおかしいと思いながらも、結局はその方が代表権を握ってトラブルにまで発展したんです。
2016年にワーキングホリデービザでニュージーランドに渡った時に、英語を学べば世界が広がり、自分のビジネススキルを高められると感じました。この経験が、No.2との戦いに勝つ糸口になると確信するとともに、後継者としての自覚も芽生え始めるきっかけとなったんです。
翌年からはアメリカに渡り、飲食店で働いてセールスの基本を学びます。英語が不十分な状態でも、ナンバーワンセールスの同僚のパフォーマンスを真似するところから始め、3ヶ月以内にはそのフィールドでナンバーワンセールスの成績を残せるようになりました。レギュラーを勝ち取るため、常に他者と差をつける方法を考えていたプロ選手時代の経験がここで役立ちましたね。
その後、7年の歳月をかけて8割の株式を取り戻し、2023年10月に晴れて代表取締役に就任しました。
MBS株式会社は、貿易事務の人材派遣をメインとする会社です。具体的には、貿易に関わるさまざまな必要書類の作成作業を、請負業務として受託しています。また、貿易業務に特化した人材を派遣することも主な事業のひとつです。
会社は祖父の代から始まり、父の代で事業が大きく拡大しました。しかし、近年では国の施策によって急速に電子化が進んでおり、これまで人手が必要だった業務が自動化されつつあります。そのような環境下での人材派遣ということで、事業体としての難しさは常に感じていました。
当社は、創業者である祖父によって設立されました。戦時中に熊本県天草市の貧しい家庭で生まれ育った祖父は、戦後に進駐してきたアメリカ兵が持つ先進的なモノに触れたことで、海外への強い憧れを抱くようになったそうです。
祖父は独学で英語を学ぶと、18歳で上京します。アラブ系の大使館で英語を武器に働きながら、夜間は早稲田大学で勉強を続けました。
その後、自民党の結党に関わった三木武吉氏の孫にあたる女性と結婚しますが、同じころ、都心近くの名門ゴルフコースに通うようになりました。そこで商社関係者とのつながりを築き、彼らが面倒だと感じていた貿易事務の仕事を請け負うようになったそうです。
祖父はゴルフの腕前がプロ級で、容姿もハンサムだったと聞いています。高いコミュニケーション能力と抜群の営業センスを持っていました。
また起業家として、相手に軽んじられないようお金持ちを装うことで、銀行からの借り入れを成功させていたそうです。仕事を確保して必要な資金も集めたことで、ビジネスを軌道に乗せます。
1999年には事業を父が継ぎ、現在の貿易事務の人材派遣を中心とする会社へと発展させていきました。
M&Aを検討したのは、自分がこの会社の利益を最大化する専門家ではないと判断したからです。最初は私にも経営できると自信を持っていましたが、人材派遣部門の値上げが思ったほど上手くいかなかった時に、これは違うなと感じ始めました。
当社の事業には、貿易事務を担当する「業務請負/人材派遣部門」と、完成した書類を大使館や商社、船会社に届ける「バイク便部門」という2つの柱があります。最初に手がけたバイク便の値上げは、全体で23%の引き上げに成功したものの、営業利益を大幅に向上させる要因とはならず、目先の小さな問題解決にとどまりました。
私の目標はお金持ちになることですが、会社を資産運用に使う前に、まずは社員の給料を確実に上げ、彼らの幸せを確保したうえで堂々とお金持ちになることをポリシーとして掲げていました。しかし、会社の利益はそれほど大きくなく、次は派遣の値上げも必要だと気付きます。
ただ、そのためには、顧客が求める人材を確実に獲得するシステムが必要で、その分野のプロフェッショナルになる必要がありました。さらに値上げ交渉までしなければならないと考えた時、自分がそのマネジメントをしたいとは思えませんでした。
親が残したものをさらに成長させようと力を尽くしましたが、最終的に自分がやりたい仕事ではないと悟ったんです。その過程で必要なスキルを身につけるより、他のことを一から始めてもいいと感じたため、M&Aの道を選びました。
複数の仲介会社の中から、MABPさんにM&Aを任せたのは「信頼できそうだ」と感じたからです。もちろん、初対面では確実なものはありませんでしたが、そもそも投資家には、確実性がない状況で現在の情報をもとに判断する力が求められます。そこで、複数のインタビューを通じて、それぞれの対応力を評価しました。
担当していただいた西山さんは、正直なところ、他社の担当者に比べて話があまり面白くないと感じていました。他社の担当者はみんな話上手で、楽しく打ち合わせできたんです。しかし、西山さんは対照的に現実的な話ばかりで、特にワクワクしませんでした。
ただ、ビジネスにおいて、話が楽しいかどうかは関係ありませんよね。大事なのは「誰が仕事をきちんとこなしてくれそうか」だと思ったんです。
打ち合わせでM&Aの流れをしっかりと説明してくれた西山さんからは、こちらをリードしながら着実に仕事を進めてくれそうな印象を受けました。さらに、短期間でフォローアップをしてくれたのも西山さんだけでした。スピード感があり、常に仕事に取り組んでいる姿勢が非常に好印象でしたね。
西山さんと当社で初めて打ち合わせをした後、TOP面談まで進めたのは2社でした。
1社は大手企業、もう1社が今回成約に至った株式会社カイゼンさんです。
この2社は全く異なるタイプの会社でしたが、私はMBSのセールスポイントを正確に理解し、上手に活かして上昇気流に乗せられる会社に譲渡したいと考えていました。売却後に何も残らなくても、先祖が築いた企業なので、「売って潰れる」という結果だけは絶対に避けたいという強い思いがあります。単に貿易事業を営んでいるだけの会社には、譲渡するつもりはなかったんです。というのも、絶対に売却しなければならない状況ではなかったため、相手選びには非常に慎重で、最悪の場合、会社が売れずに終わることも視野に入れていました。
最初の企業は、ただ買収して自社の規模を拡大したいという姿勢で、私は残念ながら違うと感じました。一方、2社目のカイゼンさんは我々の事業を単なる貿易業務として捉えず、その本質まで深く理解してくれたんです。西山さんには、本当の意味でMBSの後継者を見つけてくれたと感謝しています。
実際、私が株主として残って後継者を雇うという選択肢も同時に進めていましたが、結果的に最適な企業が見つかりました。私が手放した後も、MBSをきちんと健康的に成長させてくれると確信できたため、最終的にカイゼンさんへの譲渡を決断しました。
M&Aで一番重視したのは「スピード感」です。そして、もちろんですが「売却価格」にも注視していました。
MBSでの役員報酬は自分で決めていましたが、現状では自分が満足できるような金額を設定できませんでした。今後さらに努力しても、この企業の利益を最大化するためにやるべきことがあまりに多く、その膨大さを時間や予算に落とし込んだとき、一人でできることには限りがあると感じました。
自分がやりたいことで資産を形成したいという思いが強かったため、スピーディなM&Aを目指しました。
プロ野球に例えるならば「いい球団でプレーしたい」という気持ちですね。西山さんにもスピード感を持って進めるようプレッシャーをかけ、迅速な進行をお願いしていました。
M&Aを進める際に心配していたのは、株主にトラブルの当事者が含まれていたことです。実際に、弁護士を通しても相手と連絡が取れないという状況が続いていました。さらに、株主の持ち株が分散していたため、その取りまとめ自体が大変な作業となりました。本来であれば、これは株主間で解決すべき問題でしたが、その全てを西山さんが引き受けてくれました
西山さんからは「トラブルを抱えていることもあって、1300社ほどアプローチしてようやく数社からの反応を得た」と聞いています。このような難しい状況にもかかわらず、西山さんの尽力で無事に話を進められました。その努力には本当に感謝しています。
株式会社カイゼンの竹村社長と初めてお会いした時、その起業家としての姿勢に惚れ込みました。竹村社長は自分の強い意思を持ち、起業家として必要な欲をしっかり持っているタイプで、その率直さと情熱が非常にかっこいいと感じました。
また、同席された馬目部長ともお話ししましたが、竹村社長のバランスをうまく取っている姿が印象的で、非常に良いパートナーシップを築かれていると思いました。
正確に言えば、竹村社長、馬目部長のご夫婦に惚れたというのが率直な感想です。初回の面談でその人柄に触れ、交渉内容さえ整えば全く問題なく会社を譲渡できると確信しましたね。
M&Aの決め手になったポイントは、カイゼンさんが「経営のプロ」だったことですね。
1社目の交渉相手は同業でした。私は、同業同士でのM&Aでは新しい発想が生まれにくく、事業の発展性が限られてくると感じました。
一方で、カイゼンさんは事業の本質をしっかりと見極め、どのように成長のプロセスを描けるかという視点で我々の会社を見ていました。実際に、彼らは企業のコンサルティングを行う経営のプロで、MBSの事業を見て、「人を増やして派遣契約を請負契約に変えればいい」といった具体的な改善策をすぐに提案されました。こうした素早い見極めと、具体的かつ現実的な施策がすでに描かれており、すぐに行動に移せそうだという印象が、私の期待にぴったりハマったんです。
私自身も経営のプロを探しており、もし雇えるならそれが理想的だと思っていましたが、カイゼンさんは買収を希望されていました。これが最終的な決断の決め手でしたね。
無事に契約を終えることができて、西山さんにはとても感謝しています。私としては、こちらの意向にしっかり沿って動いてほしかったため、かなり強めのプレッシャーをかけ続けました。私は野球文化の中で育ち、西山さんも野球をされていたと聞いて、このプロジェクトでも目標達成に決して手を抜かない方だと信じていました。大変だったと思いますが、西山さんはそのプレッシャーの意図を理解してくれるプレイヤーであると、日常の働きぶりをみて確信していたんです。
時に「そんな条件なら売らない」と言ったこともありましたが、彼は私の言葉の裏側にある「絶対に良い取引にしてほしい」という本当の意図を汲み取ってくれました。こうした信頼関係を築けたことで、最終的にカイゼンさんとの契約まで至ったと感じています。
まず、自分がどのような人生を歩みたいかをしっかり考えることが大切だと思います。親が残した事業が楽しく、続けたいと思うならそれも良い選択です。一方で、もし他に楽しいことや挑戦してみたい事業があるのなら、継承したものに執着せず、手放すことも一つの選択肢だと思います。
悩むくらいなら、自分の人生を生きた方がいいですよ。それを可能にするのがM&Aです。私も西山さんのおかげで新たな門出を迎え、自分がやりたいと思った事業にジョインすることで、人生の再スタートが切れました。
また、M&Aの経験を通じて多くの学びと自己成長も得られましたので、迷っている経営者の方は、ご自身の未来に向けて一歩踏み出すことをおすすめします。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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