JSRは26日、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC、東京都港区)によるTOB(株式公開買い付け)を受け入れると発表した。成長資金を確保して国際競争力を高めるとともに、半導体材料業界の再編加速につなげる狙い。JICは全株式の取得を目指しており、買付代金は最大9039億円。国内外の競争当局などの承認を得たうえで、12月下旬をめどに買い付けを始める予定。TOBが成立すれば、JSRは東証プライム市場への上場が廃止となる。
TOB主体はJICの傘下企業が設立したJICC‐02(東京都港区)。JSR株の買付価格は1株につき4350円で、TOB公表前日の終値3234円に34.51%のプレミアムを加えた。買付予定数は2億779万7073株。買付予定数の下限は所有割合66.67%にあたる1億3853万1400株。JSRはTOBに対する賛同と株主への応募推奨を表明している。
JSRは1957年に政府と民間の出資で合成ゴムの国産化を目的とする国策会社の日本合成ゴムとして発足。その後、1969年に純民間会社に移行。1970年代に半導体材料に進出した。微細回路の形成に欠かせないフォトレジスト(感光樹脂)では世界的な大手メーカーに成長している。
1970年に東証2部に上場し、71年に東証1部に指定替え(2022年4月に東証プライム市場に移行)。創立40周年の1997年に現在のJSRに社名を変更。2022年には祖業の合成ゴム事業をENEOSに売却し、半導体材料に注力する姿勢を鮮明にした。
半導体は経済安全保障推進法で指定される特定重要物資の一つ。また、トヨタ自動車、ソニーグループなどの出資で次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」(東京都千代田区)が動きだしたが、政府は多額の資金支援を決めている。こうした中、半導体の材料分野でも技術開発競争が一層激化している。
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