M&Aや設備投資などの経営判断をする際の客観的根拠を示す指標を換算する方法として、NPVという算出方法が用いられます。
本記事では、NPVの定義や重要とされる理由、具体的な計算方法について詳しく解説するので、意思決定をするための指標を探している方はぜひ参考にしてください。
目次
NPVの定義と重要な理由
NPVの定義、そして重要とされている理由を解説します。
NPVの定義
NPV(Net Present Value)は正味現在価値の略称で、将来得られるであろうキャッシュフローを現在価値へと換算し、初期投資額との差額を算出することで投資価値を判断するときの指標とします。
NPVが重要とされる理由
NPVは、一般的な企業価値の評価手法とされるDCF法の基礎となっています。
DCF法は主にインカムアプローチの手法として用いられ、将来獲得すると予測されるフリーキャッシュフローから割引率を勘案し、現在価値に割り引いたものの合計を対象の価値として算出する企業価値の算出方法です。
そのため、NPVは企業価値を算出するうえでなくてはならない指標といえるでしょう。
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NPVの計算方法
企業価値を算出するうえで不可欠ともいえるNPVの具体的な計算方法を解説します。
NPVを計算するための前提条件
NPVを計算するうえで欠かすことのできない前提条件として、フリーキャッシュフロー(FCF)と割引率の適切な設定が重要です。
- フリーキャッシュフロー:企業が自由に使える現金。
FCF=営業利益×(1-法人税率)+減価償却費-設備投資額-正味運転資本増加額 - 割引率:投資の効率性を図る指標。WACCで計算することが一般的。
WACC(%)=(1-t)×(D×Dc/D×E)+(E×Ec/D×E)※1
※1:t=実効税率 D=有利子負債 Dc=負債コスト E=株主資本 Ec=株主資本コスト
具体的な計算方法
フリーキャッシュフローと割引率の設定ができたら、NPVを計算します。
- NPVの計算式:
(FCF×年数(t))÷(1+割引率)-初期投資額
上記によって算出された数値に、求めたい年数分のキャッシュフロー「(FCF×年数(t))÷(1+割引率)t乘」を加えることでNPVが算出されます。
最終的に算出された数値から初期投資を差し引き、差引額がプラスであれば投資価値がある、マイナスであれば年価値がないという判断の指標となります。
Excelを活用した計算方法
NPVは、エクセルの関数を用いることで比較的簡単に計算することもできます。
例)
年数を5年、割引率を5%、フリーキャッシュフローを下表のようにした場合
年数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
FCF | -100億円 | -50億円 | 50億円 | 70億円 | 80億円 | 100億円 |
はじめに、エクセルに各数値を入力します。

続いて、B4のセルに「=NPV(B1,C3:G3)+B3」と数式を入力します。

この計算式により、NPVは102.4億円と算出することができます。

NPVと他の指標との違い
企業価値を算出する方法として、NPVのほかに3種の方法があり、それぞれ以下のような特徴と違いがあります。
指標 | 特徴 | NPVとの違い |
NPV (正味現在価値) | 割引率で評価し利回りを算出 | ー |
IRR (内部収益率) | 時間経過を盛り込んで計算を行った利回り。 | 利回りでの比較が可能だが、規模の比較できない。 |
回収期間法 | 資金回収までの期間を重視した指標 | 期間重視のため収益性の評価ができない。 |
ROI (投資利益率) | 投資に対する利益率を評価 | 会計上の利益のため判断材料として不十分な場合がある |
M&AにおけるNPVの活用事例
M&AにおいてNPVを活用する場合、以下のような目的で用いるケースが多いです。
- 買収価格に対する客観的な指標が欲しい
- 将来見込める収益に基づいた意思決定のため
- 経済合理性に基づいた裏付け(根拠)を示すため
上記のような目的で使われることの多いNPVですが、計算の前提となる割引率やフリーキャッシュフローが適切でないなど、設定が甘かった場合は信憑性が薄れます。
また、あくまでも「数値として算出できる部分」の評価指標のため、人的資産や技術、ブランド力といった無形財産の評価はできません。
数値による経営判断は重要ですが、あくまでも「指標の一つ」とし、総合的に考慮・判断することが重要です。
まとめ
企業価値を算出するうえで、NPVによる客観的な指標は非常に重要です。
しかし、あくまでも予測値であり、相手企業の人的資産や技術力、ブランド力といった無形審査は含まれないため、M&Aをする際は総合的に判断することが重要です。
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