
70歳を定年とする方向へシフトする動きがある中、早期に資産を形成して定年を待たずに退職し、余生を謳歌する「早期リタイア」が広まりつつあります。
本記事では、「50歳で早期退職を実現する」というところにポイントを置き、必要な資産や、その資産を作るための方法について解説します。
また、早期リタイアのスタイルとして最近耳にすることの多い、セミリタイアやFIREなどの違いについても触れるので、早期退職を検討していらっしゃる方は、ぜひ参考になさってください。
目次
50歳で早期退職するには|いくらあれば辞められる?
ここでは、50歳で仕事を辞め、後悔のないリタイア後の生活を実現するために、どの程度の資金が必要なのかを解説します。
必要な資産・資金
50歳での早期離職について、具体的にシミュレーションしてみましょう。
例えば、50歳で現在の企業を退職し、90歳までの40年間を過ごすと仮定します。公益財団法人生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」によると、65歳以上の夫婦のみの生活費は、最低ラインが月23万円(※1)ということでした。
ここでは、ある程度節約しつつも旅行や趣味を楽しめる月27万円の生活費を想定して計算してみましょう。この場合、退職後の生活費は月27万円×12ヶ月×40年で、合計1億2,960万円が必要ということになります。
次に、年金収入を考えてみましょう。厚生労働省の資料によれば、夫婦2人分の標準的な厚生年金受給額は月22万0,496円(※2)となっていますが、保守的に見積もって月20万円を受け取れると仮定します。65歳から90歳までの25年間で月20万円×12ヶ月×25年=6,000万円が年金収入として得られます。
したがって、50歳で早期退職する場合、1億2,960万円から6,000万円を引いた6,960万円が、退職時点で必要な自己資金となります。
なお、当然ですが退職時の年齢が上がると必要な資金は減少します。例えば、53歳で退職する場合は5,988万円、55歳で5,340万円、57歳では4,692万円です。
※1参考:公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
※2参考:厚生労働省「令和4年度 厚生年金・国民年金事業の概況」
資産運用のみだと高リスク
早期退職を目指す際に、資産運用のみで生活費をまかなうのは高リスクです。
例えば、完全リタイアをして毎月27万円(年間324万円)の生活費を資産運用だけでカバーするには、非常に高い利回りが求められます。具体的には、3,000万円の資産から年間324万円の配当を得るためには、最低でも10.8%の利回りが必要でしょう。さらに税金を考慮すると、実際には約12.96%の運用成績が求められます。
しかし、年10%を超える利回りを安定して達成するのは非常に困難であり、かなりハイリスクハイリターンな運用を行わなければなりません。そうすれば資産を大きく減らす可能性も出てくるでしょう。
そのため、3,000万円の資産だけで早期退職をするのは現実的ではなく、パートタイムやフリーランスなどでの労働収入を組み合わせる必要が出てくるのです。
参考記事:「資産運用はやめとけ」と言われる本当の理由は?│資産運用を始めるべき理由と必ず知っておくべきこと
3,000万円+年5%で運用するのがベスト
先ほど、50歳で早期退職をするためには、夫婦2人で6,960万円が必要ということが分かりましたが、ここでは余剰資金として3,000万円を持つケースでの運用方法を考えてみましょう。
50歳で早期退職し、その後15年間アルバイトをして、65歳からの年金受給開始後は一切仕事をしない生活を想定します。
まず、3,000万円を年5%で運用すると、15年後には6,236万円に増やすことが可能です。必要な資金は合計で6,960万円なので、残りの700万円をアルバイトで補うことになります。この金額を15年間で用意するには、年46万円(月3万8,000円)の仕事をすれば十分です。
もし、労働収入を得ずに資産運用だけで目標額に達したい場合は、68歳まで18年間運用を続けることで、最終的に7,200万円まで資産を増やせます。
この方法により、余裕を持った早期退職を実現できるでしょう。
早期退職のスタイル

最近、特に若くして資産を築き上げた人のSNSアカウントなどからの発信で「セミリタイア」「FIRE」といった言葉を目にすることが増えました。
この「セミリタイア」や「FIRE」はいずれも早期退職を指す言葉ですが、いずれも少しずつ意味が異なっています。
ここでは、それぞれの言葉の意味について見ていきましょう。
セミリタイア
セミリタイアは、完全に仕事を辞めるわけではなく、メインの仕事を退職して自由な生活を楽しみながら、片手間で収入を得るライフスタイルのこと。
この言葉は辞書等で特に定義されているものではなく、大橋巨泉さんが1990年に発言したことで広まりました。彼は芸能界を完全に引退するのではなく、セミリタイアを選び、海外での生活を楽しみつつも、芸能界とのつながりを維持したのです。
セミリタイアの魅力は、自由な時間を持ちながらも収入を得られる点にあります。
しかし現役時代と比べて収入が大幅に減るため、セミリタイアに踏み切るには十分な貯金や資産を持つことが必須です。
とはいえ、完全に仕事を辞める「完全リタイア」とは異なり、ある程度の収入を得ながら生活するため、比較的少ない資金で実現できるのが魅力といえるでしょう。
セミリタイアを考える際は、自分のライフスタイルや資産状況に合った計画を立てることが重要です。
早期リタイア
早期リタイアは、定年を迎える前に退職することです。「希望退職」とも呼ばれ、セミリタイアとは異なり、完全に仕事を辞めてリタイア生活に入ることを意味します。
企業が提供する早期優遇退職制度を利用して、一定の勤続年数や年齢などの条件を満たす従業員に提供されるのが一般的です。
早期優遇退職制度は、企業が業績悪化や方針転換などの理由で従業員に早期退職を促す際に用いられることもあります。
退職金に加えて割増退職金が支給されることが多いのが特徴です。
早期リタイア後は通常の退職と同様に、退職金や事前に蓄えた資産をもとに生活することになります。そのため、年金の受給開始までに長い期間がある場合、必要な生活資金を十分に確保する必要があります。
生活資金が不足するリスクを避けるため、資産運用を行うことでFIREに近い生活スタイルを目指す人も増えているようです。
早期リタイアは自由な時間が増える反面、経済的な準備が不十分であると後悔する可能性も無視できません。そのため、退職後の生活設計を慎重に行う必要があります。
アーリーリタイア
アーリーリタイアとは、早期にメインの仕事から退職し、リタイア生活を始めることを指します。
特に定義があるわけではありませんが、30代から50代の人が選択することが多いようです。内容としては早期リタイアに似ていますが、早期優遇退職制度を利用できない人が退職することを意味するため、同義ではありません。
アーリーリタイアの大きなメリットは自由な時間を確保できることです。ただし、これまで築き上げてきたキャリアが止まることや、収入が減少するリスクが伴います。
アーリーリタイア後の生活スタイルによって必要な資金の準備が大きく異なるため、計画的な資産運用が重要でしょう。
さらに、アルバイトなどで収入を得る場合でも、厚生年金保険に加入できないケースがあり、将来の年金額に影響を及ぼす可能性がある点にも注意が必要です。
FIRE
FIREとは、「Financial Independence Retire Early」の略で、日本語では「経済的自立による早期リタイア」を意味する、早期リタイアの一形態です。しかし、セミリタイアとは異なり、完全な経済的自立が要件となります。
FIREを達成した人々はリタイア後に働く必要がなく、貯蓄を切り崩すこともありません。彼らの収入源は、主に投資による資産運用益のみとなるのです。
その大きなメリットは仕事のストレスから解放され、自由な時間を持てるようになることです。
FIREを実現するためには豊富な資産運用の知識と、まとまった運用資金が不可欠です。また、急な出費に対応できる予備資金を確保する必要もあるでしょう。
FIREは、経済的に自立した生活を送りたいと考える人々にとって魅力的ですが、その実現には時間と努力が欠かせません。
早期退職・リタイアの資産を作る方法

早期退職してリタイアを実現するためには、その後に必要となる資金や資産を築いておくことが必須ということは言わずとも分かることと思います。
問題は「その資産をどのようにして用意するのか」ということでしょう。
ここでは、その具体的な方法の選択肢として考えられることを紹介します。
収入のアップと支出の最適化
まず正攻法として考えられるのは、キャリアアップや資格の取得、転職などによって、本業で得られる収入のベースを引き上げることでしょう。
最近のトレンドとしては本業とは別に、スキルを活かして副業・複業によって収入を得る経路を増やすといった選択肢がとられることも。
起業やビジネスオーナーとなって、リタイア後も収入を得続けられる仕組みを作っておくことを検討する人もいるようです。
また、収入を増やすことと同時に考えなければならないのが支出を減らすこと。自分にとって何が本当に必要なことなのかを考え、固定費を見直したりなど、無駄を削減できないか考える機会にしましょう。
投資による資産形成
投資の知識がある人はハイリスクハイリターンの株式投資に挑戦してみるのも良いでしょう。そうでなければ比較的リスクが低いとされる債券投資といった選択肢も。もちろん、リスクが低い裏返しとしてリターンも小さくなる点には注意が必要です。
また、一度で大きな資産を手にすることを考えず、安定した収入を期待するなら先に挙げた債券をはじめ、高配当株や連続増配株などの、インカムゲイン重視の投資を行うのも一つです。
不動産投資も選択肢に含まれますが、初期費用の捻出や維持費、空室となるリスクがあることには注意が必要でしょう。
関連記事:不動産投資の仕組みとは?初めての人が知るべき収益構造や魅力、注意点|エンマネ
リスク管理とポートフォリオ構築
どのような投資であっても必ず資産を失う危険性は付きまといます。そのリスク管理として分散投資というものがあります。
複数の資産クラスを組み合わせるのであれば、定期的に資産の状況を可視化するためにもポートフォリオを構築することが推奨されます。ポートフォリオ運用に慣れてくると、リタイア後のいつの時点でどれくらいの資産を持つことができているかが分かり、ライフプランを立てやすくなるでしょう。
また、急な病気や何らかの経済危機が起きた場合でも生活そのものや投資計画に狂いが生じないよう、いざという時以外、絶対に手を付けないと決めた一定の資金を、他の講座などで管理しておくことも必要です。
病気をはじめとした不測の事態への備えとして保険に加入することも選択肢の一つですが、保険料の支払い自体が負担になってしまっては本末転倒です。吟味と厳選を重ね、本当に必要な保険のみ加入しましょう。
M&Aの検討
現在何らかのビジネスをやっており、なおかつその事業を手放しても良いという人に限定した方法ではありますが、M&Aによって事業を売却し、その売却益を手にするという選択肢もあります。
投資などと違って、ほとんどリスクなく、まとまった資金を手にしたい場合には真っ先に選択肢に挙がる方法といえます。
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まとめ
早期退職という選択は、強い意志を持ち、自分のやりたいことに情熱を注げる人に向いています。計画的な資産運用と明確な目標設定があれば、後悔のない退職後の生活を送ることができるでしょう。
しかし、軽率な決断は後悔を招く可能性もあります。自分自身のライフスタイルに合った、正しい選択をすることが重要です。
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