市場競争の激しい現代において、このような市場はしばしば「レッドオーシャン」と表現されます。
この記事では、「レッドオーシャン」の本質とその特徴、新規参入する際のメリットとデメリット、そして、その中で生き残るための戦い方について詳しく解説します。
ビジネスの世界では、常に他社とのシェアの取り合いが続いており、価格競争に巻き込まれることも少なくありません。
しかし、そのような環境においても、確かな戦略と革新的なアプローチによって成功を収める企業が存在するのも事実です。
本記事を通じてレッドオーシャンを深く理解し、競争を乗り越えるためのヒントを得ましょう。
目次
レッドオーシャンの言葉の意味とは
レッドオーシャンとは、業界内の競争が非常に激しく、多くの企業が市場シェアを争う状況を指します。
「赤い海」を意味するこの言葉は、企業間の競争が血で血を洗う激しい戦いであることを例えているのです。
このレッドオーシャンを攻略する「レッドオーシャン戦略」は、既存市場内でライバル企業を出し抜き、利益を最大化するための企業戦略ということです。
レッドオーシャンな市場の特徴
レッドオーシャン市場は、競争相手が多いため、事業を展開するには厳しい環境とされています。
それでも、市場の特徴を理解することで戦略を練るためのヒントになるかもしれません。ここでは、レッドオーシャンな市場の主な特徴について具体的に見ていきます。
レッドオーシャンでのビジネス展開の難しさを知り、理解を深めて対策を講じましょう。
成熟した市場であり成長が見込めない
レッドオーシャンな市場は既に成熟し、新たな成長の余地が限られています。こうした市場においては新規参入者が増えることは少なく、既存の企業間でのシェアの奪い合いが頻発します。
大きな成長が見込めないため、企業は既存の顧客基盤を守りつつ、競争相手のシェアや利益を奪うことで収益を確保しようとするのが一般的です。
競争が激しくシェア奪取合戦が常態化
レッドオーシャンの典型例として白物家電の市場が有名でしょう。かつて日本の家電メーカーが市場を支配していた時代もありましたが、現在では世界中の企業が参入し、激しい競争が展開されているのです。
このような環境では、各社が少しでもシェアを拡大しようと奪取合戦を繰り広げ、市場が頻繁に変動します。
企業は差別化を図るために技術革新やコスト削減を追求し、消費者にとっては選択肢が増える一方で、企業間の価格競争が激化することもあります。
価格競争に巻き込まれ収益性が低下しがち
レッドオーシャンな市場では価格競争に巻き込まれることが多く、これが企業の収益性を低下させる大きな要因に。
例えば白物家電市場では、低価格を武器にしたアジア系企業の新規参入が増加し、価格競争が一層激化しています。
このような環境下では、各企業が価格を下げることで優位を確保しようとしますが、それが市場全体の収益を圧迫することも少なくありません。
低価格化は消費者にとっては魅力的かもしれませんが、企業の収益性低下は、投資の減少やイノベーションの停滞につながるリスクもはらんでいます。
ブルーオーシャン・ブラックオーシャンとの違い
レッドオーシャンに対して「ブルーオーシャン」それから「ブラックオーシャン」といった言葉もあるようです。
ここでは、それぞれの違いについて見ていきましょう。
ブルーオーシャンとは?
ブルーオーシャンとは、競争の少ない新しい市場を開拓することを意味しており、レッドオーシャンとは対照の言葉であるといえます。
競争相手が少ないというのが最大のメリットであるものの、そもそもニーズ自体が少ない市場であることも少なくありません。
そのため、既存の需要に応えるというよりは、新たな需要を作り出すことも必要になるでしょう。
ブラックオーシャンとは?
レッドオーシャンやブルーオーシャンはビジネスにおいてよく使われる言葉として認知されていますが、それに続く新たなものがブラックオーシャンです。
「深海のように真っ暗な」という意味合いがあり、他の誰も足を踏み入れていないものの、非常に参入障壁が高く、挑戦することすら困難な市場のことを指しています。
レッドオーシャンな市場の例
レッドオーシャンは競争の激しい市場であると説明してきましたが、具体的にはどういった市場が当てはまるのでしょうか。
ここでは主に日本国内に目を向けて、レッドオーシャンな市場の例をいくつか見ていきましょう。
スマートフォン市場
Apple、Samsung、Huaweiなどといった、誰でも名前を耳にしたことのある大企業が熾烈な争いを繰り広げています。
もはや現代人とスマートフォンは切っても切り離せない関係性と言っても過言ではなく、新たな技術やツールが開発されれば基本的にはスマートフォンにも実装されるため、高い技術力と資金力を持つ巨大企業のみがシェア争いに参加できる環境となっているのです。
飲料市場
コカ・コーラ、サントリー、キリンなどの有名な大手飲料メーカーが多数存在し、これから参入するのがあまり現実的とは言えない市場です。
テレビCMやSNSを活用したマーケティング戦略はもちろん、他業界とのコラボレーション案件に困らないブランド力の高さも求められます。
ファストフード市場
マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、モスバーガーなど、ファストフードといえば名前が挙がる企業が多く、これらの大手と明確な差別化を行い、かつ知名度を上げる手段を持ち合わせていなければ参入することは難しいでしょう。
近年では健康志向やSDGsといった新たな価値観が生まれたことから、これらを取り入れる柔軟さも必要となります。
オンライン小売市場
通販で買い物をするならどこ?と聞かれたら、日本国内ならAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングで9割5分以上の人が完結してしまうのではないでしょうか。
商品ジャンルを絞るにしても、洋服ならZOZOTOWNやSHEINなどがあり、その他でもBASEやSTORESなどの通販プラットフォームを活用している事業者も数多くいるので、ファンを作るためには戦略的に取り組んでいく必要があるでしょう。
自動車市場
古くからトヨタ、MAZDA、日産などの大企業がシェアを奪い合い、ここ数十年で見るとフォルクスワーゲンなどの国外企業も参入してきている市場です。
国内外に自動車の製造ラインを格納できる広大な土地を、複数拠点持っていなければならないため、ここまで挙げてきた中でもきわめて新規参入が困難な市場といえるでしょう。
レッドオーシャンな市場に参入するメリット
レッドオーシャン市場への新規参入は、競争が激しいとされるものの、その市場が持つ固有のメリットを理解することで、意外なチャンスを見出すことができるかもしれません。
ここでは、新規参入がもたらすメリットを解説します。これらの情報を踏まえ、レッドオーシャンで成功するための鍵を見つけましょう。
需要の大きさが保障されている
レッドオーシャンへの新規参入におけるメリットの一つは、その市場が既に大きな需要を持っている点です。
多くの企業が競争しているということは、それだけ多くの顧客が存在し、製品やサービスに対する需要が確実にあることを示しています。
この既存の需要をターゲットにすることで、新規参入企業は市場分析や顧客のニーズを理解するためのリソースを大きく節約することができます。
独自の価値を提供できれば高いシェアを確保し、それに伴う利益の獲得が期待できるでしょう。
マーケティングコストを抑えられる
マーケティングコストを抑えられるのもメリットです。レッドオーシャンな市場は需要が既に顕在化しているため、トップシェアを獲得しなくても利益を上げやすいという特徴があります。
当然、大多数のシェアを確保することができれば多額の利益を上げられるため、勝算がある場合は、競争の激しい市場へ進出するリスクを冒す価値はあるといえるでしょう。
レッドオーシャンに新規参入するデメリット
レッドオーシャンな市場への新規参入には当然デメリットも伴います。例えば競合が多く、市場内での生存が非常に困難である点が、最大のリスクでありデメリットです。
ここでは、新規参入後に直面する可能性のある問題点について解説します。特に、参入後に事業を持続させることの難しさと、競争を生き抜くために必要となるコストの問題に焦点を当てます。
参入後に生き残ることが難しい
レッドオーシャンな市場では既にライバル企業が多く存在し、それぞれの企業間での序列や順位が長年にわたって確立されています。
このような状況では、新規参入企業が市場内での足場を固めることは極めて困難であり、既存の企業たちが獲得している顧客層を切り崩すことは、より一層難しいといえます。
新規参入企業は顧客に選ばれるための独自性や価値を提供する必要がありますが、これには多大な努力が必要です。
したがって、この市場で成功するためには、従来の業界の枠を超えた革新的なアプローチが必須といえるでしょう。
コストがかかる
競合が多い市場で差別化を図り、顧客の注意を引くためには、大規模な広告戦略が必要になることが多くあります。
具体的にいうと、テレビCMやオンライン広告、プロモーション活動など、多額の費用が必要ということです。
激しい競争に対応するためには、外部の専門家からコンサルティングを受けるのが最善であり一般的です。
これらのサービスもまた、企業の運営コストを大きく上げる要因となります。したがって、新規参入企業はこれらの高コストを見込んで、市場参入の前に十分な財務面での準備と戦略を練る必要があるのです。
レッドオーシャンな市場での戦い方
レッドオーシャンでの勝利を目指す企業にとって、効果的な成長戦略の策定は必須です。ここでは、レッドオーシャンで成功するための具体的な戦略をわかりやすく解説します。
これらの戦略を知ることで、競争が激しい市場においても成長し、目標達成に近づくことができるでしょう。
競合他社の徹底分析
成功しているライバル企業の戦略を調査し、分析することは基本であり重要な手法です。
この分析を通じて、ライバルがどのような製品やサービスを提供しているか、どのようなマーケティング戦略を採用しているか、また顧客ニーズにどう応えているかなどを把握します。
そこから、自社に取り入れられるものは取り入れる、勝ち目の薄い分野では勝負しない、などといった戦略を打ち出していきましょう。
レッドオーシャン市場の中のブルーオーシャンを模索
レッドオーシャンな市場の中にも、意外と他の企業が手を出していない分野があるかもしれません。
例えば、自動車業界というレッドオーシャンな市場の中で、製造・販売は大手が独占していても、自動車を構成する部品は多数あり、とある部品を製造する工場が少ないというケースは十分に考えられます。
ニーズの隙間となっている分野を見つけ出すことができれば、競争を回避しつつ需要がなくなる可能性が低いというレッドオーシャンの恩恵を享受できるでしょう。
独自の付加価値でブランド化を推進
既存の市場を深く分析し、顧客がまだ気づいていないニーズを発見することで、企業は自社の製品やサービスに独自の付加価値を加えることができます。これは顧客の注目を引く鍵ともいえます。
自社のブランドを明確に位置付け、顧客にとって唯一無二の価値を提供することで、他の競合と差別化を図り、市場における確固たる地位を築くことができるでしょう。
競争を避けるためのブルーオーシャン戦略
ここまではレッドオーシャンの中でどのように戦い、生き残るかといった部分に焦点を当てて話をしてきましたが、人的、あるいは資金的なリソースに限りがあり、レッドオーシャンからは徹底せざるを得ないこともあるでしょう。
ここでは、記事の前半でも触れたブルーオーシャン市場を開拓する方法について見ていきましょう。
新たな価値を創造する新市場の開拓
参入障壁が低い市場では、新規参入企業が市場のルールや慣行を自ら形成することが可能です。これは既存の市場構造に縛られず、革新的な製品やサービスを提供しやすい環境であることを意味します。
新市場での成功は、顧客自身も認識していないニーズを見つけ出し、それを満たすことから始まります。この過程では、顧客との密接なコミュニケーションが重要となり、彼らの潜在的な要望を理解し、それを製品やサービスに反映させることが重要です。
ブルーオーシャンを開拓すれば、市場の新たな基準を設定する役割を担い、場合によっては長期的にその市場での優位を確立することができるかもしれません。
競争を回避して高い収益性を実現
競合が少ない環境では、市場内でのシェアを伸ばすチャンスが多く、自社の存在価値や注目度を高めることにより、より多くの顧客を引きつけられるでしょう。
そこに戦略的なマーケティング活動が加えられ、顧客の購買意欲を刺激できれば高い収益が見込めます。
競争が少ないことは顧客との関係構築の面でも有利です。競合が少ないことから顧客が他社へ流れるリスクが低く、顧客の要望をひとつひとつ反映させていくことでブランドが確立され、リピート購入にもつながるでしょう。
まとめ
レッドオーシャンでは、まずその競争の激しさと戦略の必要性を知ることが重要です。
本記事ではレッドオーシャンな市場の特徴、新規参入のメリットとデメリットを紹介し、さらに競合との差別化や、ブルーオーシャンへの進出といった別の成長戦略の探求にも言及しました。
レッドオーシャンにおける成功は簡単ではありませんが、適切な戦略と革新的なアプローチ、そして独自の付加価値によって、大きな成果を上げることも夢ではありません。
これらの知識を活用して持続可能な成長を目指す第一歩を踏み出し、市場の荒波を乗り越えていきましょう。