企業に関係する名称でよく聞く、「関連会社」。言葉は知っていても、子会社やグループ会社などとの違いやその定義を詳細に把握している人は少ないのではないでしょうか。
今回は関連会社の定義や子会社・グループ会社との違い、設立するメリット・デメリットや類似するその他の会社形態などを詳しく解説します。
1. 関連会社と
「関連会社」とは、特定の会社と資本・人事的に密接な関係がある会社のうち、親会社が自社株の20%以上を保有し、かつ親会社の連結決算対象になっている企業のことを指します(20%未満でも15%以上で一定の条件を満たす場合も含まれます)。
類似する企業に「子会社」「グループ会社」などがありますが、会社法上や財務諸表規則上の規定で名称が異なります。まずは、関連会社の定義と、子会社・グループ会社との違いを確認してみましょう。
会社法上の定義
関連会社とは、ある会社に対して他の会社が財務・業務の方針に影響を与える関係にある場合、影響を受ける側の会社のことを指します。「会社計算規則」において、以下のように定義されています。
“関連会社 会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く。)をいう。”
第一編総則第二条第二十一項
財務諸表規則上の定義
財務諸表規則上では、ある会社に対して他の会社が出資や資金・人事や技術などに重要な影響を与える関係にある場合、影響を受ける会社のことを関連会社と呼びます。「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」においては、次のように定義されています。
“この規則において「関連会社」とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいう。”
第一編 総則 第八条 第5項
2. 関連会社と子会社・グループ会社の違い
関連会社と似たものに、子会社やグループ会社があります。
それぞれの定義と判断基準、各名称との違いを確認してみましょう。
子会社の定義と判定基準
子会社は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」において、以下のように定義されています。
“「親会社」とは、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している会社等をいい、「子会社」とは、当該他の会社等をいう。親会社及び子会社又は子会社が、他の会社等の意思決定機関を支配している場合における当該他の会社等も、その親会社の子会社とみなす。”
第一編 総則 第八条 第3項
支配力基準
子会社は会社法で、以下のように定義されています。
“会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。”
第一編総則 第一章通則 第二条 第三項
つまり、親会社がその総株主の議決権を過半数以上有し、実質的に経営を支配している会社を示します。なお、親会社が株式を100%保有している場合は、その企業は「完全子会社」と呼ばれます。
出資比率基準
関連会社と子会社の大きな違いは、親会社の株式保有率です。関連会社は親会社が20%以上の株式を保有している会社であるため、他の株主の影響も受ける可能性があります。一方、子会社は親会社が50%以上の株式、過半数以上の議決権を保有しているため、完全に支配されている状態です。
ただし、親会社の保有する株式が50%未満であっても、以下の基準に当てはまる場合は、関連会社ではなく子会社とみなされます。
グループ会社の定義
グループ会社とは、ある企業に関係性があるすべての会社のことを指します。つまり、関連会社や子会社も、グループ会社の1つとなります。
法律上の明確な定義はない
グループ会社には法律による明確な定義はありません。一般的には、特定の会社が親会社となり、親会社が直接的・間接的に経営支配する別の会社がある場合、親会社も含めてそれらがすべてグループ会社となります。
関連会社も含まれる概念
グループ会社と呼ばれるものには、主に以下のようなものがあります。
- 親会社
- 子会社
- 関連会社
- 持分法適会社
グループ会社は、共通の経営理念や哲学を持った会社であり、互いに連携しやすい関係にあります。意志の決定や疎通がスムーズに行われるため、スピード感ある事業展開が期待できます。
4. 関連会社設立のメリット・デメリット
関連会社を設立することには、いくつかのメリット・デメリットがあります。
それぞれ、詳しく解説します。
メリット
関連会社を設立することによって、主に以下のような3つのメリットを得ることができます。
- 経営を分割することで事業効率が良くなる
- 後継者育成や教育の場となる
- 節税対策となる
各メリットを詳しく確認してみましょう。
経営の分割による効率化
関連会社を設立すると、事業を分割することができ、効率よく経営することができます。会社の規模が大きくなりすぎると、情報伝達が遅くなったり意思疎通がうまくできなかったり、従業員や部署同士でトラブルが発生しやすくなったりと、様々な弊害が生じます。
経営陣の目も届きにくくなり、正常な事業運営が困難になってしまいます。そこで事業を分割して関連企業として独立させることで、少人数でスピーディーな業務が可能となります。
後継者育成の場
関連会社は、後継者の教育や育成の場にもなります。大きな会社では、責任者も歯車の1つとなってしまい、経営に関する経験や知識を身に付けることは簡単ではありません。
しかし、関連会社の経営を任せることで、経営に対するノウハウが身につき、将来的に親会社の経営陣となり得る人材を育てることができます。
節税効果
関連会社の設立は、節税対策として行われることもあります。事業の利益が大きければ大きいほど、会社に課される税金の額も大きくなります。
そこで関連会社を設立して親会社の事業の一部を引き受けることで、利益を分散。結果、税金の負担も減少し、1つの会社だった時と比較すると大幅な減税効果が生じます。また、それぞれの企業ごとに軽減税率を利用できれば、さらなる減税効果も期待できます。
デメリット
関連会社はメリットがたくさんある反面、以下のようなデメリットもあります。
- 設立にコストがかかる
- 各企業の評判が連鎖する
それぞれ詳しく解説します。
設立手続きコスト
関連会社を設立するためには、時間や手間、費用など、大きなコストがかかります。関連会社であっても、設立するための手続きは通常の会社設立と変わりません。
会社の概要を策定し、定款を作成して法人登記の申請を行い、設立後も多くの手続きや申請が必要となります。それに伴い、多くの時間や費用がかかります。
会社設立・法人設立については、専門家である「匠税理士事務所」にぜひご相談ください。
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評判リスクの連鎖
関連会社や親会社の評判は、互いに影響を与え合います。例えば、関連会社が不祥事を起こしてしまった場合、親会社である会社にも影響が及びます。逆に親会社が不祥事を起こした場合は、関連会社の信用が低下します。
5. その他の関連する会社形態
関連会社に関わる会社には、以下のようなものがあります。
- 持分法適用会社
- 持株会社
- 兄弟会社
それぞれどのような会社か、詳しくご紹介します。
持分法適用会社
持分法適用会社とは、親会社が保有する議決権が20%以上50%以下の関連会社や非連結子会社のことです。ただし、重要性が低い場合は持分法を適用しないことも可能です。
連結財務諸表上に純資産や損益の一部を反映させる持分法が適用されることから、「持分法適用会社」と呼ばれています。持分法適用会社は会計負担が軽減できるというメリットがありますが、連結財務諸表規則に従った正しい記載が必要であること、自社の判断で外れることができないなどのデメリットもあります。
持株会社
持株会社とは、他の会社の株式を保有して傘下に入れることを目的として設立された会社のことです。「ホールディングカンパニー」とも呼ばれており、日本にも三菱UFJフィナンシャルグループや東京海上ホールディングス、トヨタ自動車やアサヒグループホールディングスなど、多くの持株会社があります。
持株会社には、他社の支配を本業として自社は事業を行わない「純粋持株会社」と、本業を行いながら他社の支配も行う「事業持株会社」の2種類があります。また、中には持株会社の傘下でありながらも、他の子会社・関連会社などをまとめる「中間持株会社」もあります。
兄弟会社
兄弟会社とは、親会社が同じ会社同士のことを指します。持株会社のように、同じ親会社が複数の会社を傘下に置いていることも少なくありません。その子会社同士はすべて兄弟会社になります。ただし、兄弟会社は法律によって明確に定義されているものではありません。
まとめ
会社同士の関係性を表す名称は複雑で、理解するのが困難なもの。今回は「関連会社」の定義や子会社・グループ会社などとの違い、設立することのメリットやデメリットをご紹介しました。経営に関する用語を理解することで、よりビジネスに必要な知識を深めてください。