理系院卒が選んだ、逃げ場のない最前線
「難しいから面白い」―物理に没頭した学生時代
まずは学生時代のお話から聞かせてください。どんな学生活を送っていたんですか?
学生時代は理系で、応用物理学科に所属していました。物理の中でも光を扱う分野、いわゆる光学を専門にしていました。正直、内容としては結構難しいことをやっていたと思います。周りから見ても「大変そうだね」と言われることが多かったですね。ただ、物理自体は昔から好きだったので、学ぶこと自体が苦ではありませんでした。
光学というと、かなり専門的な印象があります。具体的にはどんな研究をしていたんでしょうか?
いわゆる画像処理の研究です。写真を撮る際の、アナログ処理とデジタル処理の両面での技術を扱っていました。例えば、被写体にピントを合わせて写真を撮ると、手前や奥はぼけますよね。そのとき、どこまでピントが合って見えるかという深さがあります。これは被写界深度と呼ばれるものです。その被写界深度をどうやったら広げられるのか、そういったことをいろいろな方法で検討していました。大学4年生から大学院の修了まで、その研究をずっと続けていました。
なかなか根気のいりそうな研究ですね。その分野を選んだ理由は何だったんですか?
一番大きい理由は、もともと物理が好きだったからです。数学や物理は比較的得意で、理系に進むことは自然な選択でした。中でも物理は汎用性が高い学問だと思っていました。ただ、研究室選びについては、研究テーマそのものに強いこだわりがあったわけではありません。実際には研究室をいくつか見学して、雰囲気や先輩の人柄、就職実績などを総合的に見て判断しました。
理系×営業という選択。叩き込まれた“成果の出し方”

理系で大学院まで進まれていますが、就職では研究職には進まなかったんですね。
はい。研究職に進むつもりは最初からありませんでした。理系ではありましたが、性格的に人と話すのが好きで、どちらかというと外交的なタイプだったと思います。黙々と研究するよりも、人と関わりながら仕事をする方が自分には合っていると感じていました。
その中で、最初のキャリアとしてどんな軸で会社を選ばれたのでしょうか?
そうですね。キーエンスを選んだ一番の理由は、コンサルティングエンジニアという職種だったことです。これは技術的な知識を持ちながら営業を行う仕事で、いわゆる理系の営業職です。大学で学んだ画像処理や理系の知識が、多少なりとも活かせる点に魅力を感じました。また、内定が最初に出た会社だったことや、給与水準が高かったことも正直な理由としてあります。
その結果、キーエンスには約7年ほど在籍しました。その間、営業としてかなり濃い経験をさせてもらったと思っています。
その後、転職を考え始めたのは、どんなタイミングだったのでしょうか?
キーエンスは、今振り返っても本当に完成度の高い組織だと思います。仕事の進め方やルール、評価制度まで含めて、無駄がなく、再現性の高い仕組みが徹底されていました。会社としては理想的な環境だったと思います。
一方で、数年働く中で、個人として求めるものが少しずつ変わっていきました。仕組みが非常に整っているからこそ、成果は安定して出せる反面、個人の工夫や意思決定が結果に与える影響は限定的になります。そのため、3〜4年ほど経った頃には、「次はもっと自分の判断や実力が、そのまま結果に返ってくる環境に身を置いてみたい」と感じるようになりました。
そうした中で、2019年には2期連続で事業部の最優秀賞を取ることができ、自分の中で「ここではやり切ったな」という感覚が強くなりました。正直、この会社でこれ以上学べることはないかもしれないと思えたことが、転職を意識し始めた大きなきっかけです。
より厳しい世界へ。自分の実力を試すために
次の選択肢として、なぜM&A業界だったのでしょうか?
当時は、一般的に見れば十分に高い評価と報酬を得られていましたが、そこからさらに上を目指そうとすると、正直なところ選択肢は多くありませんでした。会社に残っても、自分の役割や成長曲線が大きく変わるイメージが持てなかったんです。
それよりも、よりシビアに自分の実力が問われ、判断や行動がそのまま結果として返ってくる環境に身を置いてみたいと思うようになりました。
そうした中で、成果を出せば出した分だけ評価され、上限なく挑戦できる業界としてM&Aに強く惹かれました。楽そうだからではなく、むしろ一番しんどそうで、一番成長できそうだと感じたのがM&Aだった。だからこそ、この世界に挑戦することを選びました。
その中でも、上場企業は選ばなかったんですね。
M&A業界は、人数が多くなればなるほど、どうしても先に入社している人が有利になる構造だと感じていました。案件の割り振りやチャンスの回数も、後から入る人ほど少なくなりがちです。そう考えると、上場していて人数の多い会社よりも、少人数で一人ひとりに任される裁量が大きいベンチャーの方が、自分にとっては成果を出しやすいと判断しました。
その中でMABPを選んだ決め手は?
会社選びについては、かなり時間をかけました。感覚ではなく論理で判断したかったので、Excelで比較表を作りました。インセンティブの設計、営業の進め方、案件の取り方、社内ルールなどを細かく書き出して、一つひとつ比較しました。その中でMABPは、自分が成果を出したときに、その成果が最もダイレクトに評価と報酬に反映される仕組みだと感じました。
また、無駄なルールや管理が少なく、自分で考えて動ける余地が大きい点も魅力でした。ここなら言い訳できない環境で、本気で自分を試せると思い、MABPを選びました。
ここまでのお話を聞いていると、相当な覚悟を持ってMABPに入社された印象があります。実際に入社してみて、ギャップはありましたか?
ありましたね。しかも、かなり大きかったです。
キーエンスでは徹底的に管理される環境で、「何を、いつまでに、どうやるか」が常に明確でした。一方でMABPは、良い意味でも悪い意味でもほとんど管理がない。かなり自由な環境でした。
教育体制も最低限なので、待っていても何も始まらない。自分から動かないと、案件も情報も入ってこない。その環境に慣れるまで、正直かなり時間がかかりました。
ただ、今振り返ると、このギャップはすごく良かったと思っています。自分で考えて動く力が一気に鍛えられましたし、キーエンスで培ってきた営業経験や製造業の知識を、そのまま活かすことができました。「誰かが用意してくれる環境」から「自分で作る環境」に変わった感覚ですね。
逃げ場のない世界で向き合う“本当の実力”

改めて、この仕事の一番の魅力はどこにあると感じていますか?
完全に成果主義であることです。
成果を出せば青天井で評価されますし、逆に成果が出なければ何も得られない。すごくシンプルで、その分かなり厳しい世界だと思います。
でも、ごまかしが一切きかない分、自分がやった分だけ結果として返ってくる。そこには怖さもありますが、自分の実力を真正面から試せる面白さもあります。逃げ場がないからこそ、覚悟を決めて向き合える仕事だと感じています。
経営者と直接やり取りする機会が非常に多いのも、この仕事ならではです。経営というものが特別な世界ではなく、すごく身近なものになりました。中小企業のオーナー経営者と日常的に話す中で、意思決定の重さや責任の大きさをリアルに感じるようになりましたし、同時に「経営者も一人の人間なんだ」という実感も強くなりました。
その結果、自分自身が将来、経営に関わる、あるいは経営する立場になることも、現実的な選択肢として考えられるようになったと思います。
これまでで、特に印象に残っている大変な経験はありますか?
1年半ほどかけて進めていた案件が、最終契約の直前で破談になったことですね。
そこまで積み上げてきたものが、一気にゼロになる感覚でした。会社の売上への影響も大きかったですし、自分自身のインセンティブも数千万円単位で変わる案件だったので、精神的なダメージはかなり大きかったです。正直、「本当にこの仕事を続けられるのか」と思うくらい追い込まれました。
普通に落ち込みますし、引きずります。でも、この仕事は立ち止まると前に進めない。誰かが代わりに進めてくれるわけでもないので、最終的には自分で前を向くしかありません。気持ちを整理した上で、「次にできることは何か」を考えて、次の案件に集中する。その積み重ねしかないと思っています。
論理と先読み、誠実さが信頼をつくる
日々案件を進める中で、大切にしていることを教えてください。
論理性と先読みです。感覚だけで動くのではなく、起こり得るリスクや問題点をできる限り事前に洗い出すようにしています。M&Aは関わる人も多く、工程も複雑です。だからこそ、どこでつまずきやすいのか、何が問題になりやすいのかを先回りして考え、準備しておくことが、結果的には一番の近道になります。
またオーナー経営者との関わりで意識しているのは、誠実さと正直さです。彼らは修羅場をくぐってきていますし、人を見る目も非常に厳しい。少しでも嘘をついたり、ごまかしたりすると、必ず見抜かれます。だからこそ、良いことだけでなく、リスクや厳しい現実も含めて、正直に伝えることを大切にしています。
時間を使うことは、期待をかけること
後輩やチームメンバーと関わる上で、意識していることはありますか?
相談されたときには、きちんと時間を取ることです。忙しいからといって適当に対応すると、相手の成長を止めてしまうと思っています。自分自身も、これまで多くの先輩に時間を使って教えてもらいました。その経験があるからこそ、後輩に対しても同じように向き合いたいと思っています。
仕事以外の時間は、どんなふうに過ごしていますか?
後輩や同僚とゴルフに行ったり、筋トレなどで体を動かしています。意識的にオンとオフを切り替えるようにしていますね。体力が仕事のパフォーマンスに直結すると感じたのが、筋トレを始めた理由です。M&Aの仕事は精神的にも体力的にも負荷が大きいので、体が資本だと強く思うようになりました。実際に始めてからは、疲れにくくなりましたし、集中力も続くようになりました。
個人プレイヤーから、チームで成果を出す存在へ
今後のキャリアについて、どのように考えていますか?
短期的には、マネジメントを通じて、関わっているメンバーがしっかり成果を出せる状態を作ることです。自分が前に出るだけでなく、チームとして結果を出せる組織にしていきたいと思っています。長期的には、経営に関わることも含めて、まだ明確に決めているわけではありませんが、常に選択肢として意識しています。
その中でも、私がMABPにいる理由は、この会社を初期から一緒に作ってきた感覚があり、これからどう成長していくのかを当事者として見てみたいからです。今は自分の成果だけでなく、周りのメンバーが成果を出せるように支えることにも、強いやりがいを感じています。
最後に、これからM&Aアドバイザーを目指す方へメッセージをお願いします。
正直に言えば、今の時代にM&Aアドバイザーを誰にでも勧めたいとは思っていません。業界全体の水準は年々上がり、簡単に成果が出る世界ではなくなっています。覚悟なく飛び込めば、厳しさだけが残る仕事だと思います。
それでも、MABPのM&Aアドバイザーは、自分の判断・行動・覚悟が、そのまま結果に返ってくる仕事です。案件の取り方から経営者との向き合い方まで、一つひとつに当事者として関わるからこそ、表面的なスキルではなく、本質的な実力が磨かれていきます。「稼げそうだから」「流行っているから」では続きませんが、自分の力で価値を生み出したい人にとっては、これ以上ない成長環境です。
決して楽な仕事ではありません。ただ、経営者の人生に深く関わり、重い意思決定に伴走できる経験は、どこでも得られるものではありません。厳しさを理解した上で、それでもこの仕事を選びたいという覚悟のある方と、同じ目線で悩み、考え、結果に向き合っていける。
そんな仲間と一緒に、MABPの最前線を走れることを楽しみにしています。
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