M&Aストーリー M & A Story
有限会社H社(非公開)

入居者も従業員も継承者も救ったM&A。

会社名
有限会社H社(非公開)
業種
グループホーム、有料老人ホームの運営
M&Aで達成した内容
後継者問題の解消
M&Aアドバイザー
岡田 卓也

M&Aに至る背景かつて繁栄したグループホームだったが、財務状況は厳しく後継者探しも難航。

M&Aに至る背景
グループホームや有料老人ホームの運営を手がける有限会社H社は平成12年、創業者が70歳の時に立ち上げた施設だ。
創業者はもともと市役所で要職にあったが、脳梗塞を患い、職を辞すこととなった。
その後は自身の経験を活かす形で起業。当時は市役所の人脈から優秀なメンバーが集まった。
創業者の娘であり、後に施設を預かることになるK氏は、これまで関わっておらず「どんな施設があってどのように運営されているのか、全く分かっていなかった」と話す。
K氏のご主人は近くでクリニックを開業し、産業医として時折、施設に出務していた。

創業者はグループホームを中心に、訪問介護やデイサービス、高齢者専用の賃貸住宅など、あらゆる事業を展開していた。
当時はとても華やかだったようで、K氏は「中庭でいろんなイベントをして、地域の人々がたくさん集まっていた」と回想する。
また、施設には近くに住む方々が働きに来てくれたり、入居者を紹介してくれたりといった交流があり、時には働き口に困っている方を雇い入れることもあった。
このように、地域の人々や従業員に慕われ、地元の人たちが集う場所を作り出していた創業者。
「起業から5年から10年までは、美しく語れる状況だった」とK氏は振り返る。

しかし、次第に雲行きが怪しくなっていく。
創業者は90歳を超え、起業時にいた心強いメンバーは全員が引退。
一人での運営は体力的に厳しく、財政は悪化の一途をたどり、内部では人間関係のトラブルも絶えなかった。
見かねたK氏夫婦は、創業者に対し親族では継げないから後継者を探してほしいと懇願する。
一旦は創業者が推薦した施設の税理士が代表取締役として就任し、安堵したのも束の間。
直後に税理士が脳梗塞で倒れ、令和5年4月末に辞任したことで、後継者問題は振り出しに戻ってしまう。

M&Aの経緯創業者の思いから施設を引き継ぐが、破産寸前まで追い込まれる。


前代表の辞職を受け、K氏は急遽取締役として就任し、株式を引き継ぐことに。
その背景には、創業者の「従業員や入居者を守って欲しい」という強い願いがあった。
K氏はそれまで猫好きのごく普通の主婦だったが、必要なメンバーやライセンスなどを懸命に市役所に問い合わせながら、介護に必要なシステムの変更、更新の勉強もスタート。
また、K氏のご主人も医療関係ということで役員として名を連ね、自分のクリニックと並行して夫婦で経営に関わることとなった。
しかしながら、これらはあくまでも暫定的な措置であり、後継者探しを継続していた。

この時期、素性を隠したまま他社のM&A仲介会社に打診したが、K氏によると「仲介料が高い上に、業者からは不安になる話をひたすらされた。M&Aという手段はあくまでも大きな会社のものか」と感じていたようだ。
財務状況がよくない自分たちでは難しいと判断し、落胆したようだ。

その間にも、施設の状態は悪化していった。
就業規則に則ってスタッフの退職を促し、知る限りの人に相談を持ちかけたが事態は改善せず、最終的に「破産するしかない」というところまで追い込まれる。
後継者のあてもなく、入居者や従業員には別の施設に移ってもらい、弁護士を立てて会社を清算しようと考えていたタイミングで、救世主が現れた。
同業の経営者から、弊社M&Aベストパートナーズ(以下MABP)のM&Aアドバイザー、岡田を紹介されたのだ。

K氏夫婦は、創業者に経緯の詳細を聞く傍ら、把握する限りの現状を電話で1時間半かけ、マイナス要素も含め全てを岡田に打ち明けた。
連絡を受けた岡田は「最初の電話で全てを話してくださったので、どう動けばいいのか判断しやすかった」と振り返る。
本来であれば依頼から資料の提出、トップ同士の面談までに1ヶ月半はかかるところ、K氏の熱意を受け今回は、創業者の年齢や施設の状況から、岡田はあえて異例の対応をとった。

MABPとの初回打ち合わせと同時に、トップ同士の面談を、相談を受けてからわずか1週間後の令和5年5月25日に行った。
かくして翌月の18日には譲渡手続きが完了するという、異例のスピードで契約を実現した。

岡田は、ヘルスケア分野の事業継承を得意とする。
その岡田がすぐに連絡を入れ、トップ面談時にK氏夫妻と創業者を引き合わせたのが、株式会社武上の代表取締役、武井裕樹氏だった。

M&Aの決断創業者の理念が相手企業とマッチング。M&Aは1ヶ月弱という異例のスピードで成立。

M&Aの決断
武井氏が率いる株式会社武上は、沖縄出身の先代が千葉で立ち上げた会社だ。
会社は「H社」と同じく、先代のやりたかったことを事業に反映させるという理念重視で運営されており、武井氏は2代目として平成27年に会社を継いだ。
継承は親子の流れですんなり決まったが、時代の流れや外部環境の変化から、創業者の想いだけで事業が展開できるような状況ではないと考えるようになる。
売却して身を引くか、思い切って攻めるか、どちらかに判断を迫られる中、介護という事業は今現在の入居者様だけではなく、退去された後のご家族様との関係も深く、理念追及のポリシーを守り抜く為には自らが筋肉質の組織に成長させるしか道はないと考えた。
そんな折、千葉市の施策でグループホームの増床が決定した事もあり、武井氏は事業拡張をしていくと腹をくくる。

武井氏のもとには引き続き「会社を売らないか」というM&Aの打診もあったようだ。
しかし武井氏は逆に、仲介企業に「事業承継を望む会社の情報を提供して欲しい」と要望する。
「武上」は、入居者様とご家族様をサークルの中心とし、単に認知症ケアのサービスの観点のみならず、人事、法務、総務、広報、財務、不動産管理、医療・医薬、食等、さまざまな観点をサークル状に置き、それらを並行して強化するといった目線で事業を展開している。
M&A仲介企業との付き合いは、今後の事業戦略強化の業界動向を探る、ないし事業拡張の為の強力な武器になると考えたのだ。
実際に今回の話がくる半年前にも、破産寸前のグループホームを引き継いでおり、この時の企業再興の経験が今回の「H社」への対応にも活きていたと武井氏は回顧する。

トップ面談では、K氏夫妻は武井氏に対して「すごい人が出てきた」という印象を持ったようだ。
「H社」にとっては、正に青天の霹靂ともいえる提案であり、その後は不安を感じる暇がないほどのスピードで話がまとまっていく。
一方で、武井氏は「積極的にM&Aをしているが、どことでも一緒にできるという訳では無い。「H社」の譲り受けを決めたのは、今まで培われてきたオーナー家に魅力を感じたためであり、方向性が違えば引き受けなかったかも知れないと回顧する。辛い決断もあっただろうがそれを耐え抜き、地ならしして組織を保っていただいたからこそ、これなら再興の可能性が大いにあると感じ、引き継ぎを決断した」と打ち明ける。

またK氏夫妻は、このM&Aを仲介した岡田の印象をこう話す。
「今風の外見だが対応は早く、1つ質問したら、それに対して10つの返答をしてくれるような人で、とにかく安心感があった。M&Aには会社の乗っ取りのような想像もつかない世界で怖いイメージを持っていたが、岡田さんの誠意ある対応でその不安は見事に払拭された」
武井氏も、岡田には「抽象的に物事を並べるのではなく、具体的な道標をつくってくれる点が心強く、安心感がある。他のM&A仲介会社の担当者ともやり取りしてきたが、岡田さんは先回りして事業計画やメリット・リスクを示してくれるため、仕事が進めやすい」と太鼓判を押す。

かくして「H社」と「武上」のM&Aは、MABPの仲介によって類を見ない速さでスムーズに実行された。

M&Aの振り返りと展望ポリシーを持った指導者によって、劇的に変わった施設の雰囲気。

M&Aの振り返りと展望
契約を終え、K氏夫妻は「会社の後継者を探すということは、素人にはとてもハードルが高いことを実感した。そもそも、何から調べればいいかもわからず、頼れる人脈もなく、途方に暮れていた中での提案だったので、とにかく助かったとしか言いようがない」と安堵の表情で当時を振り返る。
また、「初めて岡田さんに電話したのは週末でした。当時は心の余裕がなく、待たされると不安しか感じなかったでしょうが、週末でありながらその日の内に対応してもらえて大変心強く思いました」とも話しており、岡田の誠実さとスピード感が信頼につながり、異例の速さでの進展となった。

また、K氏のご主人は「介護はただの家政婦的な仕事ではなく、プロ意識をもって取り組むものだ。認知症となった高齢者を医療から介護へ引き継ぐ際に、人間としての尊厳を守りながら対応していかなければならないことを痛感した。
取締役として1年間ほど施設に関わったが、当時のスタッフにはそういった意識が欠けていたように感じる。」と語る。

さらに、K氏のご主人はこう続ける。
「認知症ではなく”痴呆”と呼ばれていた時代の価値観を持ち続けたまま現在まで運営されてきたが、人権意識が高まっている現代では、その考えはもはや通用しない。M&Aによって武井氏が施設のトップとなり、根本的な介護の考え方・やり方が変わり、初めのうちはスタッフも戸惑うと思う。しかし、時間をかけて、スタッフ達の豊富な経験と新体制の方針がうまく融合して乗り越えてくれることを願うばかりです。
MABPさんは、ただただ会社同士を引き合わせ紹介するのではなく、ポリシーを持った時代の先端を走る介護のプロを選んで紹介してくれた。これは「H社」にとって最良の選択ができたと思います。スタッフも私達も、今回の事を前向きに捉え、自分達や施設が時代に見合った形に進化していく様子を楽しみにしていきたいと思います。」

実際に「H社」の施設では、これまでは後ろ向きだったスタッフも、武井氏の提案に対しては「やってみよう」という姿勢に既に変わってきていると聞いている。

一方で武井氏は、「H社」とのM&Aについてこう話す。
「譲り受ける企業とは対等に接している。なぜなら、我々が成長できるからだ。我々の事業所である「武上」本体だけで働いていると従業員は井の中の蛙になってしまう。「H社」との交流によって、我々も今までにない経験を積ませてもらっている。お互いウィンウィンの関係だ。
オーナー家の皆さんにはこれからも施設の再興に関わって貰えると約束していただいているので大変心強い。創業者が目指した地元の皆さんが自然に集まるような雰囲気に、早く持っていきたい。
またフランチャイズ化するのではなく、各地でオーナー家や、創業時から残るスタッフのカラーをあえて残したオリジナリティあふれるグループホームの展開を目指していきたい。それが、他との差別化にも繋がるだろう」

「武上」による「H社」とのM&Aは、ただの事業継承にとどまらない。
両社の従業員に刺激を与え、ともに成長する関係性を構築している。



これからM&Aを行う企業へ希望を捨てず、早く専門家に頼って欲しい。


無事にM&Aの手続きを終えたK氏夫妻は「介護に関わる専門用語も分からず、従業員からは介護の素人による経営と揶揄されていたかもしれないが、この2年間で少しは信頼関係も築けたかと自負している。武井氏に来ていただいて言葉には言い表せないくらい助かった、心から感謝もしている。ポリシーのある指導者が来ると、こうも違うのかと思った。従業員との関係も劇的に改善して、施設に向かう足が軽くなった」と打ち明けてくれた。
そして「今回はご縁があって我々は助かったが、中には追い詰められた環境で苦しんでいる人達はたくさんいると思う。M&Aと聞くと、相談するまでにハードルが高く、M&A=会社を売るというイメージが先行しており従業員に対してもイメージも悪い。大量の書類の提出など、疲弊してしまうかも知れないが、是非希望を捨てずにMABPなどM&A専門の企業を頼って相談して欲しい」と話し、事業継承に悩む全ての企業に向けてエールを送る。

一方の武井氏は「こういった課題には、公的機関も力を入れて取り組んでいるものの、MABPは民間企業ならではの更にスピード感のあるサービス提供をされていると感じた。K氏夫妻は、我々の支援によって施設が生まれ変わったと言ってくれたが、M&Aでは譲り受けた企業が我々の事業所である「武上」本体の従業員に刺激を与えてくれるというメリットもある。これからも、未来志向・減点主義ではなく加点主義で組織を盛り上げていく。
今まで複数の事業譲渡を経験したが、企業ごとに創業者の多種多様な思いがある。これからもそれを大切にしていきたい」と締めくくった。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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