M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
M&Aストーリー
株式会社ささき
M&A成約事例
譲渡企業
株式会社ささき
取締役社長 佐々木 吾郎氏 インタビュー
「整理回収機構の方に『社長を交代して、あなたが継いでください』と、再建の条件を突きつけられまして。まさにどん底からのスタートでした」
そう笑って話すのは、東京都内で外装塗装やリフォーム工事を手がける株式会社ささき(以下<ささき>)の取締役社長、佐々木吾郎氏だ。
今回、M&Aベストパートナーズ(以下MABP)のサポートによって、東京証券取引所に上場する株式会社ニッソウにグループ入りした。
<ささき>は1960年、北海道から上京した佐々木氏の父親が創業した会社だ。
地道に塗装業を営んでいたところ次第に仲間が集まり、1967年には「佐々木塗装株式会社」として法人組織を設立。時代とともに塗装の需要が落ちるとリフォーム業にも参入し、1987年には現在の社名に改称した。
当時はバブル景気で発注は山のようにあり、最盛期には職人も50~60人ほどいたという。
「今だったら考えられないですけど、私も7歳ごろから現場に入って養生や掃除などを手伝っていました。ただ、お小遣いをもらえるという一心で、会社を継ぎたいという気持ちは全くありませんでした」と佐々木氏は懐かしそうに話す。
そんな佐々木氏だったが、20歳から2年間ほど同業他社で修行した後、本格的に父が経営する<ささき>での仕事をスタートさせた。ところが、昔ながらの職人気質である父親と折に触れて衝突し、たまらず1年ほどで家を飛び出してしまう。
「それからは、自分だけで生きていこうと決心しまして。数年間は盛岡、沖縄、大阪と住まいや職を転々としました。妻とは大阪で知り合いました」と佐々木氏ははにかむ。
弟の結婚式がきっかけで数年ぶりに実家に戻ると、母親の懇願もあって再び<ささき>で働き始めた佐々木氏。
「やっぱり父親とは何度も衝突しましたね。けれども、今度は奥さんも一緒に帰っていましたから、足枷代わりに何とか踏みとどまれた」と苦笑いする。
上手く立ち回れないこともあっても腐らず、営業成績も常に社内トップを張るなど、がむしゃらに働いていた矢先、会社を揺るがす大事件が起きた。
メインバンクから、<ささき>の債権を整理回収機構へ移すと一方的に通告してきたのだ。
当時の<ささき>は持ちビルを4つも所有しており、莫大な借入金を抱えていた。
「周囲からは『あの会社はもうダメだ』という声も聞こえてきましたが、生き残りをかけて交渉を始めました。幸か不幸か私はこんな口調なので、彼らにこちらの主張をじっくりと聞いていただけたんです」そう穏やかに話す佐々木氏を、いつしか機構の担当者も信頼するようになる。
話し合いの中で、父親に代わり会社を継ぐことも決まった。
結果的に、<ささき>は債務を3年で整理できた上に、持ちビルも1つだけ手放す程度で済む。
佐々木氏は「私はあまり実感がなかったんですけど、周囲からは『普通ならあり得ない、あなたの勝ちだ』と驚かれましたね」と笑った。
会社は持ち直したものの、経営自体は「鳴かず飛ばず」だったという<ささき>。
「事業の柱は不動産と建築の2つでしたが、建築の方は売上に大きな波があって。マイナスが出たら不動産の家賃収入で埋めていました。そのため、借金は確実に返済してはいたものの、減り方は鈍かったですね」と佐々木氏は明かす。
将来的には古くなった自社ビルも建て替えたいが、このままでは20年以上かかってしまう。
そう考えた佐々木氏は、自身の後継者がいないこともあり、建築事業の営業力を補完する手段としてM&Aに目をつける。
「実のところ、M&Aには抵抗がありました。社員や家族はどうなるんだろう、会社を売ったら自分たちは出ていかなくてはならないのでは?とか、当初はいろいろと考えました」
とりあえず話を聞いてみようと佐々木氏は2019年、とある大手のM&A仲介会社の門を叩く。
「手付金の高さに驚きました。相場を知りたくて、他社も回ってみたんです」
松尾アドバイザーが所属するMABPとの面談は、実に3社目だった。
「松尾さんはとても爽やかな方だなというのが第一印象でしたね。話しやすく親身になって聞いてくれて。極めつきは、彼がかつて箱根駅伝に出場されていたことでした。自分には到底できないことですから、やっぱりすごいなって思います」と明かす佐々木氏。
奥さまも「主人は人を疑わないタイプなので、また騙されていると思って。ですが、最初にお会いした時に駅伝の話を聞いて、私も信用できると直感しました」と口をそろえる。
他にも2社ほど話を聞いて回ったが、担当者の事務的な応対がどうしても気になった佐々木氏。
「話を詳しく聞いてみようかなって思ったのは、松尾さんだけでしたね」
最終的には各社とも断りを入れ、担当者の人柄重視で仲介依頼先をMABPに1本化した。
こうして佐々木氏は、M&Aの実現に向けて歩を進める。
「話があればすぐに決まるものだと思っていたんですけどね、意外に難しいなって。だけど松尾さんを信じていましたし、上手くやってくれる人だと信頼していました。本当に有言実行な方でしたよ」と佐々木氏はにこやかに話す。
コロナ禍もあって、<ささき>のM&Aは契約に至るまで4年半かかった。
1社目の候補企業との話し合いはトントン拍子で進み、最終契約前の食事の席で「これからよろしく」と挨拶を交わす段階までいったが、先方の都合で見送りに。その後、別の1社とも話を進めるも、やはり先方のやむを得ない事情により、交渉打ち切りの連絡が入った。
二度にわたり、上手くいきそうな話が立ち消えてしまう事態となったが「こういうのはご縁ですから。なるようになると思っていましたね。ただ、松尾さんが紹介してくれる会社のトップの皆さんは、本当に素晴らしい方ばかりでしたよ」と佐々木氏は振り返る。
担当した松尾アドバイザーも「我々は一蓮托生です。私も最後まで取り組みますよ」と佐々木氏を励ましつつ、M&Aの実現に向けて奔走した。
最終的に<ささき>の譲受企業となったのは、東京を拠点に、首都圏でリフォーム工事を手掛け、創業者の前田浩氏が代表取締役社長を務める株式会社ニッソウだ。国内で数少ない賃貸不動産業界向けに強みをもつリフォーム会社で、30年以上にわたり培ったノウハウを活かして不動産会社を支える。
「前田社長はとっても気さくな方でしたね。一方で、一代で会社を築き上げ上場までされていて、信念の強さを感じました」と明かす佐々木氏。
ところが、今度は<ささき>側のトラブルによってM&Aが頓挫してしまう。
「このトラブルに1年半ほど手を取られたのが原因で、契約が遅れました。ただ、前田社長は『解決するまで待つので、終わったら声をかけてください』と仰ってくれて」としみじみ語る佐々木氏。
松尾アドバイザーも「前田社長はトラブル解決までの1年半、本当に待ってくださったんですよ。佐々木社長のお人柄から、ぜひ一緒にお仕事をしたいと仰っていました。コロナ禍で業績が悪化した時期もありましたが、それでも話が進んだのは正直なところ前田社長の人柄の部分が大きかったようです」と補足する。
実際に、佐々木氏がトラブルが解決したその日に前田社長へ連絡すると「ぜひ会いましょう」と即答されたという。松尾アドバイザーの手配で、トップ面談はすぐに実現した。
「お返事を聞いて、本当に嬉しかった」という佐々木氏は、万感の思いで契約日を迎える。
ニッソウとのM&A後、新しいやり方にチャレンジした<ささき>は好調だ。
「さっそく彼らのノウハウを取り入れ、営業を始めました。最初はその手法に半信半疑だったんですけど、蓋を開けてみると問い合わせが殺到して」と佐々木氏は驚きを隠さない。
その一方で、これまで培ってきた<ささき>のやり方も活かす。
「これまで人とのつながりを大切にしてきたこともあって、<ささき>の顧客は主にリピーターさんなんですよ。新規客も彼らからの紹介によるもので、これまで営業はしてきませんでした」と佐々木氏は打ち明ける。
これが売上に波が出てしまう要因だったが、今後はニッソウとの協業でカバーする計画だ。
名刺にもニッソウのグループ会社として東証上場のロゴが入り、周囲からも「ますます信用のある会社になりましたね」と声をかけられるようになった<ささき>。
ただ、ニッソウは上場企業ということもあり、今までの家族経営的なやり方は通用しない。特に書類関係などは襟を正さなければならず、管理体制を懸命に変えているところだ。
今回のM&Aを担当した松尾アドバイザーは「佐々木社長は心から『この人のために頑張りたい』と思えるほどの素晴らしい社長でした。4年半の長い付き合いでしたが、最終的にニッソウさんと良縁を結ばさせていただけて、本当によかった」と胸をなでおろす。
佐々木氏の奥さまも「松尾さんからは一生懸命さがひしひしと伝わってきて、私もとても信頼していました。いい会社さんとM&Aできて、本当に感謝しています」と満面の笑みを浮かべる。
その傍らで、佐々木氏は「今は、ニッソウさんのやり方を試行錯誤しながら必死に学んでいます。ニッソウさんには本当に感謝していますが、今度は彼らに応えていかなければならず、身が引き締まる思いです。<ささき>をグループ化してよかったと思ってもらえるよう、これから頑張っていきたいですね」と将来を見据えた。
M&Aによって新たなフェーズに入った<ささき>。MABP一同、これからも見守っていきたい。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
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